断った男
とっくに3アウトチェンジのはずが
攻撃側のチームは、巧みにルールの解釈を変えて
平然と攻撃を続けた。
守備側や、審判の言う事を
ましてや観客などお構いなしに。。。
スタジアムに響く怒号は
最高潮に達した。
交代のため、ブルペンから現れたピッチャーは
2、3球キャッチャーに向かって練習球を投げた後
攻撃側のベンチ目指して数歩足を進めたかと思うと
ベンチでヘッドコーチと談笑していた監督の顔面目掛けて、
時速97マイルの速球を投げ込んだ。
審判団は、これを危険球とはしなかった。
球を顔に受けた監督は、バッターボックスにいなかったと言うのが
その理由だった。ピッチャーは、退場処分にはならなかった。
しかしそのピッチャーは、スタジアムから忽然と姿を消し
その後の行方は、杳として知れなかった。
………………
ここまで書き上げたところで
男は、これはあくまでも
自分の頭の中で勝手に
想像を膨らませた
野球サスペンス掌編に過ぎない事を
読者に断った。