王子様と妻と、騎士と死体ごっこ
※この作品はサクラハルカ様主催の企画『クリスマスに死体ごっこ』の参加作品です。
死体ごっこ、地面に、あるいは室内の床等にうつ伏せの形状、手や足は揃え、死んだフリをするのがルールらしい。
脳内がある願いに支配されている俺の妻は、ウェブサイトからそれを見て何かを思いついた。
「これならば!騎士の協力があれば、王子様に、ぺろチューして起こして貰える!」
全く迷惑千番極まりない。何故にそうなるのか、そしてそれを実行する我が愛妻。家庭の平和の為に、それに付き合わなければいけない俺。
うつ伏せというのが、はたまためんどくさいのである。
何故なら我が家で騎士の称号を与えられている俺は、うつ伏せで倒れている妻を、助け起こす役を与えられたからだ。
そして特筆しておこう、妻はふくよかだ。おデブちゃんだ、俺はそのふくふくとした柔らかい彼女を、こよなく愛している♡
話を戻そう。
仕事を終えて家に帰る、玄関を開けたら妻の死体ではない、朝起きたらリビングに死体なのである。まぁ、休日のみだけなのだが……、しかし放置をすれば、気まずい事この上ない、なので俺は、俺は……、それに付き合っているのだ。
〜 佐藤家の休日 〜
「…………!わーた!わーた!起きる起きるから♡」
王子様のペロちゅー♡で起きた俺、ひとしきり彼のマッサージを行う、肉球マッサージしろ!腹を撫でろーとアピールするロングコートチワワ様。おおう!癒やしの時。
彼は俺のシングルベッドでお眠りになられる。妻のベッドではない。当初はダブルベッドと意見をしたところ、寝相が極めて悪い妻が、別にしてぇとの願いを出して来たのを聞いたからだ。
王子様は、妻と一度寝た事がある。彼にとっては悪夢の夜を過ごしたらしい、二度と彼女のベッドに上がる事は無かった。
「よしよし、そろそろ行かなきゃダメかなぁ、面倒くさいなぁ……」
柔らかいお腹を撫でていたら、うー!わんわん!満足したらしい。ご飯に連れていけと、催促をする。仕方ない起きるか。抱っこでリビングに向かう。
ガチャとドアを開けて、彼を下に下ろす、そしてそこには…………、
うつ伏せので倒れ伏す妻のお姿が!ここは面倒くさくとも、俺のテンションを上げなくてはいけない、何故なら主役をその気にさせる為だ!
レッツショーターイム!
慌てた風を装い駆け寄る俺。声は大きく高めに。
「おお!麗しの妻!どうされたのですか!」
わんわん!ワンワン!ワンワン!
お遊びモードのスイッチオン!主役である、王子様が参戦!
うー!ワンワン!わんわん!ワンワン!
王子様が吠える!ぐるぐる回る、回るうちに彼の頭のネジが、ピン!と飛んだのだろう、リビング中をマッハで跳ねるように駆け回る。
白いボアのラグの上で死んだふりをしている妻、その姿、さしずめ氷の大地にうち上がったアザラシ。
本当なら丸太をゴロリと転がすように、仰向けにしたいところだが、騎士である俺は、その手は使えない、ふくよかな妻を抱き起こす。この時、よっこいせと口が裂けても言ってはならない。
わんわん!ワンワン!わんわん!ハフハフ!
俺の様子に気が付いた彼が、ハッハッと息を切らしてこちらに来た。
う!重い、声に出さず気合を入れる。『くぉぉぉ!』
「大丈夫でございますか、王子様!妻に目覚めの口づけを!」
わんわんワンワン!ペロペロ!ペロペロ!
主役のペロ舐め開始、これがして貰いたく、我が愛妻は休日になると、俺を巻き込み死体ごっこをしているのである。
「元祖に従ったらどうだ、ロミジュリは仰向けだ、なんとなくごっこらしきオーロラ姫や、スノーホワイトも仰向けだ」
俺は提案をしてみる。今俺は、妻に膝枕をしているのである。重いのだが、重いのだが……口が裂けても言えない。王子様はしっぽフリフリでペロチュー。
「いやん、ロミジュリ?でも、バレエの振り付けならいいわねー♡だけどちゅーは王子様でね。オーロラ姫か、衣装作ろうかしら、スノーホワイトは小道具もほしいわね、王子様の衣装も買っちゃおうかな、わんこの王子様衣装カワイイ♡」
はぁぁぃ!なんて事を言い出すのだとツッコんだ。バレエのロミジュリだとぉ?墓場で姫様抱っこだぞ!ふくよかなお前を愛しているが、出来ない事もあるぞ!
ムリムリ!ムリムリー!絶対に自信が無い!俺があたふたと、どう答えるか考えていると、
「お腹空いたぁ!フレンチトースト作るね」
身体を起こして、王子様を抱き上げた妻、死体ごっこが終了したらしい。それを見て俺はホッとした、そして立ち上がろうとした時、クキ!腰に一撃!硬直!
「ぬぉぉぉぉ!うおぉぉぉぉ!こ!腰が!」
「え!あなたどうしたの?まさかのぎっくり腰!」
ワンワン!わんわん!うー!ワンワン!
…………、おおおお、そのまま俺はラグの上にそろりと、うつ伏せになった、
そろりと膝を伸ばした。う、動けん………。
「まぁ!王子様、我が家の騎士が、屍になってしまったわ」
うー!ワンワン、わんわん!
妻と王子様の気楽な声が、上から降ってくる。
お、わ、り。




