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6話

読んでくださってありがとうございます!




追記

<Another side>と<美咲視点>は別物です。



「……………」


「こ、これは何かな?」


「……………」


「なんでこんな物があるのかな?」


………今の状況をありのまま説明しよう。


……美咲さんが僕の部屋に来ました。


……部屋を漁られました。


……出てきたアレな本の数々。


……嗚呼、良くはない人生だったなぁ……


今の説明で理解出来る人は出来るだろう。


出来ない人は………うん。その純真さを失わないようにね!


……話を戻すと、僕は今、社会的な生命の危機に晒されているのです。


何故このような惨状になったのか。それは今から少し前まで遡る……


* * *


朝、僕はいつもの様に美咲と登校していた。

今日は珍しく冬香も涼介もいない。


つまり、2人きりと言うわけで……


「はぁ……なあ美咲。」


「なに?」


「視線が怖いんだけど。」


「……き、気のせいでしょ?自意識過剰じゃない?」


その言葉の濁し方と泳ぎまくっている目は一体何の暗示なのか……


…まあ、大分慣れてきたけどな。


「……そうそう!今日放課後空けといてね!」


「え、何で?」


「ふふふっ、内緒!」


「えぇ……」


昔、美咲が「内緒」と言う時は碌でもない事ばかりだったが……


放課後……碌でもない事…………ダメだ。思いつかない。



その日も退屈な授業を受け、涼介と駄弁っていると直ぐに放課後が来た。


「圭介、帰ろうぜ」


「あ、すまん。今日も美咲に呼び出し食らってるんだよ」


「じゃあ、今日も帰れないのか?」


「多分そうなるな……」


「帰れるよ?」


にゅっ、と涼介の背後から顔を出した美咲はそう言ってきた。


「え?でも、放課後空けとけって……どうせ碌でもない事だろ?」


「碌でもないとは何よ!普通の事よ!」


「あ〜はいはい。普通の事ですよ。」


「……なんかムカつく……」


「ほらほら、圭介も西川もこんなとこで痴話喧嘩なんかすんな。」


「「誰が痴話喧嘩だ!」」


「分かった分かった。取り敢えず帰るぞ。」


野郎……


僕達は荷物を纏めて教室を出た。


* * *


3人で帰り道を歩き、僕たちが何時も別れるY字路に来た。

ここで涼介とは別れる。美咲は家が近いのでもう少し一緒だ。


「………そういえば、朝のあれってなんだ?」


「……もう少ししたら分かるよ。」


「そうか。」


美咲と歩く。


歩いて……歩いて……美咲と別れる交差点に着く。


歩いて……歩いて……


「って、なんで付いてきてんだよ!」


「ん?帰る家が同じだからだよ?」


「はぁ?」


どう言う事だ?帰る家が同じって………


と、そこで慌てた顔の美咲と目があった。


「あ、遊びに行くだけだからね!べ、別に一緒に住むとかそんなんじゃないんだから……」


「いや、それは流石に分かる。」


ツンデレかよ。


「……美咲が遊びに来るなんて、5年振りくらいか?」


「…最後に来たのが小学6年生の時だから……うん。そのくらいだね。」


「というか、遊びに来るんなら言えよ。」


「言ったよ?冬香ちゃんに。」


「冬香に言ったんなら……まあいいか。」


ちゃんと準備してくれてるだろうしな。



「ただいまー」


「お邪魔します……」


「お兄ちゃんお帰り!美咲さんもいらっしゃい。」


「ほら、上がって」


「うん……」


なんだ?珍しくしおらしい………ああ、緊張してるのか。


「美咲、別に緊張しなくてもいいだろ?」


「なんか久し振りだし……」


「そんなに中は変わってないよ。ほらほら、さっさと上がった。」


僕が急かすと、美咲は素直に上がってくれた。


「じゃあ、私は夕飯の支度してるからごゆっくりどうぞ。」


そう言って冬香は台所に戻っていった。


「じゃあ、僕の部屋に行くか。」


「うん。」



部屋に入ると、美咲はキョロキョロと見回し始めた。


「そんなに見ても面白いものなんてないぞ。」


「あ、いや、色々変わっちゃったなぁって……」


「そうか?そんなに変わってないと思うけど……」


「……あ!この写真まだ取ってたんだ!」


美咲が手に取ったのは、額縁に飾られた一枚の写真。


小学生の僕と美咲が一緒にピースサインをしている写真だ。


………あれ?こんな写真無かったぞ?


「え、なんでそれ……」


「?どうかした?」


「あ、いや。……ま、前に額縁を貰ったんだけど、飾る写真がそれしか無かったから……」


後から分かった事だが、実はこの写真、冬香がわざわざ額縁を買って来て、美咲が来る日の朝に飾られていたものだった。


「ふーん………」


美咲の顔が緩んでいる。嬉しいのか?


「…とりあえず、そこに座って。何か飲み物とってくるから。」


「うん。」


………この行動が、命取りとなった。

あの時、冬香がお茶を持って来てくれるまで待っていたなら………!



冬香が準備していたお茶と茶菓子を持って、2階へと戻る。


「美咲、お茶持ってきた………ぞ………」


「………………………」


そこには、クローゼットの底に隠してあった筈の僕の秘蔵書物の数々があった。


* * *


「…………」


「こ、これは何かな?」


「…………」


「なんでこんな物があるのかな?」


とまあ、僕がお茶を取りに行った隙に、美咲は僕の部屋を漁りまくっていた。その結果がこれである。


……漁るスピード速くないか?


「………………」


「答えなさい。」


考えろ。考えろ、学年順位一桁の頭!


自分の部屋…………隠してたエロ本………それを見つけ出した美咲………


……あの方法しかないか………


「…なあ、美咲。」


「何?」


「自分の部屋の扉を開けると、さっきまで綺麗だったはずの部屋が散らかってて、自分にとって一番見られたくないものがそこにあるって、美咲ならどう思う?」


「え、え?それは……嫌、かも……」


「そうだよね。」


「…け、圭介?」


「…うっ……グスっ……」


「え!?ちょっと、圭介!?」


勿論、嘘泣きである。


「ううっ………ぜったい美咲には…………見られたくなかったのに………だから隠してたのに………」


「け、圭介……」


チラッと見ると、美咲はオロオロとしていた。

……よし。ラストスパートだ!


「う………うわぁぁぁぁん!」


小さな子供のように、僕は部屋から飛び出した。

目指すは公園。


これぞ、普段は絶対に涙を見せる事は無い男の切り札。


“泣き落とし”だ!!


……恥ずかしくは無い。


もう一度言おう。恥ずかしくなんかない!



“泣き落とし”は、一般的には女性の武器だと思われがちだが、男性がこの技を使っても十分な武器となる……筈だ。


……気持ち悪いが。


普段滅多に涙を見せない男が見せる涙ほど、感情がこもっているのだ。


……情け無いが。


まあ、これは本当の非常事態にしか使えない技だ。

何度も使っていると、普通に見破られる。

というか、普通に屈辱的だ。


* * *


「ふう……やっと着いた……」


近くの公園。ここは家から一番近い公園の一つで、先日美咲をナンパから助けた場所だ。


ブランコに近づき、座る。


……ここからの計画を説明しよう。


・大事なもの?を見られて号泣した僕は、一番見つけやすい公園に来る。


・如何にも沈んだ面持ちでブランコに座る。


・追って来た美咲に、自分は沈んでいますアピールをする。


……僕は、ラブコメの主人公のようなその場で弁解しようとする馬鹿な奴らとは違うのだ!


それから十分。僕はずっと美咲を待っている。


………今更だが。本当に今更だが、あまりにも女々し過ぎないか?


………うん。完全に女の所業だ。



* * *


<美咲視点>


「……どうしよう………」


私は今、非常に不味い状況に陥っていた。


さっき圭介がお茶を取りに行った時、私はつい魔が差して部屋の中を漁ってしまっていた。


ちょうどあった家具が、クローゼットと本棚とベッドだったので、気まぐれにクローゼットから調べたところ……


「これって………」


クローゼットの底から本が数冊。

俗に言う、”エロ本”だった。


「ううう……どうしてこんなの圭介が持ってるのよ!」


部屋を横切るように、本を並べていった。

その数6冊。


と、そこで圭介が帰ってきた。

私は正座して待つ。


扉を開けた圭介は、目の前の状況にポカンと口を開けて呆けている。


私は圭介に尋問を始めた。


「こ、これは何かな?」


圭介は顔を真っ青にしていた。私に見つかったのがショックだったのだろうか?


「何でこんな物があるのかな?」


「……………」


ちょっと強めに聞いてみる。


「答えなさい。」


すると、圭介が口を開いた。


「なあ、美咲。」


「何?」


「自分の部屋の扉を開けると、さっきまで綺麗だったはずの部屋が散らかってて、自分にとって一番見られたくないものがそこにあるって、美咲ならどう思う?」


「え、え?それは……嫌、かも……」


そう答えると、圭介の雰囲気が変わった。

何だか、凄く重たい感じだ。


「そうだよね。」


「け、圭介?」


私がそう聞くと、急に嗚咽が聞こえてきた。


「うっ………グスっ……」


「え!?ちょっと圭介!?」


嘘………まさか泣いちゃうなんて……


「ううっ………ぜったい美咲には…………見られたくなかったのに………だから隠してたのに………」


ど、どうしよう………


「け、圭介……」


すると、圭介はこちらをチラリと見て、


「う……うわぁぁぁぁん!」


号泣して部屋から飛び出して行ってしまった。


そして、今の状況に至る。


「……どうしよう……」


圭介を泣かせてしまった。


……そうだよね。誰にでも見られたく無いものはあるよね……


酷いことしちゃったな………


でも、このままじゃダメだ。

またあの時の二の舞になるのは嫌だ。


私がそう決心した時、扉が開いた。


「どうしたんですか?何か凄く気持ち悪い鳴き声が聞こえたんですけど………」


「あ………冬香ちゃん………」


圭介の事、動物か何かと勘違いしてない?


冬香ちゃんは、部屋の中の本と、圭介が居ない事を見て一瞬で状況を理解したようだ。

何処か呆れたような表情で、


「美咲さん。謝りに行くのなら、お兄ちゃんは多分公園にいます。」


「あ、ありがとう。」


「後、多分お兄ちゃん泣いてると思うので、お母さんみたいに抱きしめてあげて下さい。そうしたらお兄ちゃんは許してくれると思います。」


「よ、よく分かるね………わかった。泣いてたら抱きしめれば良いんだね?」


「はい!もうギューッとしてあげてください!」


そう言って冬香ちゃんは親指を立てた。

何故かニヤニヤしている。


私は、公園へと走り出した。


* * *


「はあっ!はぁっ!……ほ、本当に居た!」


半信半疑で公園まで来たのだが、圭介はブランコに座って項垂れていた。

遠目に見ると、泣いているようにも見える。


私は少し息を整えると、圭介に向かって歩き出した。


近づくと、圭介の肩は震えていた。


そして声をかける。


「………圭介………」


読んでくださってありがとうございます。


次回は甘々にしようと思います。

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