2話
1話を読んで下さった方、ありがとうございます!
投稿スピードは多分、だんだんと遅くなって行くと思います。
これからもよろしくお願いします!
「ただいまー」
ドタドタと足音が聞こえて、冬香が顔を出した。
「お帰り!お兄ちゃん!」
「ただいま、冬香。」
冬香は1つ下の妹だ。僕とは違い、可愛らしい顔立ちをしている。父親が何時も仕事で忙しいので、冬香がこの家の家事をしてくれている。僕の顔を見ると、冬香は何故か息を呑んだ。
「……お兄ちゃん、何かあった?」
「別に。いつも通り何も無いよ」
「………ふーん……分かった」
なんて鋭いんだ……我が妹ながら恐ろしい。
階段を登って自室に入り、カーテンがちゃんとしまっている事を確認し、部屋着に着替える。
ベッドに倒れ込んだ後、目を瞑ってさっきの事を思い出す。
……チンピラどもは30分もあれば目が醒めるだろう。
だけど………
「どうすっかなぁー……」
「何を?」
「うおっ!?」
さっきまで一階にいた筈の冬香がドアの前で仁王立ちしていた。
「どうやって入った?」
「普通に入った。そしたらお兄ちゃんが何か言ってたから聞いてた。」
「……そうか」
「ねぇ……」
「……なんだ?」
「話してよ……どうせ、あの目のことでしょ?」
「……よく分かったな。」
「お兄ちゃん、帰ってきた時も目が紫色だったもん。」
「…………」
不覚、だな……話すしかないか。
僕は冬香の方を見ずに話し始めた。
「実はな、……………」
全て話し終わって冬香の方を見たのだが、僕は驚いて目を見開いてしまった。
無だ。顔から表情が抜け落ちている。
これは………キレている表情だ。
「ど、どうしたんだ?冬香」
「……お兄ちゃん……」
「はい。」
怖っ!!どっからそんな声出したんだよ!?
「お兄ちゃんにお礼も言わずに怯えた美咲さんも悪いけど、お兄ちゃんもお兄ちゃんだよ。」
「…….と、言うと?」
「誤解をちゃんと解く!お兄ちゃんのその目は悪いものじゃないでしょ!?なんで説明しないの!」
「…………」
これに関しては答えられない。
あの状況で僕が会話しようとした所で、怯えさせていただけだと思う。
悩んでいると、冬香が強引に迫ってきた。
「取り敢えず、明日美咲さんの誤解を解くこと。わかった?」
「……努力します」
そう言うと、冬香は満面の笑みで頷いた。
「よろしい。じゃあ、晩御飯出来てるから下に降りてきてね?」
「了解。」
その後、冬香と一緒に夕食をとり、風呂に入った。
「………どう説明するかな」
脳をフル回転させ、解決策を編みだそうとする。
「…真面目に説明しようとしても、取り合ってもらえないだろうし……いっそのこと手紙にするか?…いや、でも…」
悩むこと30分。
「まずい………クラクラする………」
のぼせてしまっていた。
風呂から上がった後も色々と考えたのだが、全く良い案が浮かばなかった。
どうなっている。僕の脳味噌。
冬香にも聞いたのだが、"自分で考えろ"との事。
一体どうすれば良いんだ………
「……よし。寝よう。」
こうなれば、明日の朝に良い案が都合よく浮かんでいることを祈ろう。
* * *
アラームが鳴り、新しい朝が来た。希望の朝だ。
「はぁ………」
分かってたよ……昨日僕がした事は只の現実逃避。分かってたんだよ………
「はぁ…………」
「お兄ちゃん、うるさい」
しょうがないだろ……こんなに学校に行きたく無いと思ったのは、中学校の修学旅行以来なんだよ……
え?なんでかって?
そりゃあ、ぼっちにとって修学旅行なんて地獄の合宿と変わらないからさ!
冬香が用意してくれた朝食をとった後、歯を磨いたり、寝癖を直したりして準備を整える。
「「行ってきます」」
冬香と共に我が家に別れを告げ、学校に向かって歩き出す。
暫く歩くと、何時ものY字路で涼介に会った。
「よお!おはよう圭介!それに冬香ちゃん!」
「……おはよう涼介……」
「おはようございます。」
「ん?どうしたんだ、圭介。」
「色々あったんだよ……」
「……そうか。大変だったな……」
察してくれたようだ。
なんて良い奴なんだ。涼介。見直したぞ。
「昨日お兄ちゃんは、美咲さんに怯えられて泣いて帰ってきたんですよ」
「おい、それは違う」
「へぇ?あの西川に、ねぇ……」
何平気な顔で嘘を付いているんだ?
冬香。
お兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません。
「まあ…色々とな」
「まあ、頑張れ!」
「ああ……」
その後も3人で話しながら登校した。
僕はその間もずっと策を考えていたのだが、やはり浮かばない。
これは、もうどうにでもなるという事だな。うん。きっとそうだ。
下駄箱で冬香と別れ、涼介と一緒にクラスに行こうとしたのだが、何やら上履きに違和感を感じる。
「すまん、先に行っててもらえるか?上履きが変だ。」
「りょーかい。じゃあな」
そう言って涼介は去っていった。
さて……
この感触は、恐らく紙だろう。そして、靴箱に入れる紙など1つだけしか無い。
……そう。果たし状だ。
因みに、ラブレターという選択肢は初めから無い。僕を好きになる人がいたのなら、それはただの変態か、極度の変態である。
僕は、周りの人に見られないようにトイレに入り、なるべく潰さないようにして手紙を出した。
………ん?
ピンク色の封筒……だと!?
震える手で封筒を開ける。
<伊坂 圭介さんへ>
今日の放課後、少しだけ時間をください。お話したい事があります。
体育館裏で待っています。
……え?これだけ?
この便箋にこれだけって、勿体無くないか?
それにしても……字体は女の子で間違いない。もしかすると、昨日のチンピラは実はこの学校の生徒だったとか?
……あり得るな
取り敢えず、録音の準備だけしておくか。
教室に行くと、早速涼介が話しかけてきた。
「大丈夫だったか?」
「ああ。問題ない」
……何か今日は違和感があるな。
あの果たし状を貰ったからか?
ふと昨日の事が気になって美咲の方を見るが、いつも通り人に囲まれている。
……まあ、良いか。取り敢えず今日も授業を頑張ろう。
キーンコーンカーンコーン
……もう終わりか。今日は授業が終わるのが早かったな……
「圭介ー帰ろうぜー」
「あー……すまん、今日はちょっと用事があるんだ。」
「なんだ?お前に用事なんてないだろ?」
「言い切るなよ……」
"親しき仲にも礼儀あり"だぞ。
「職員室に呼ばれたから、さっさと行かないといけないんだよ。」
「そうか。なら仕方ないな。」
「ああ。じゃあな。」
「また明日な。」
さてと……行きますか。
この後、朝の違和感の正体に僕は気付くこととなる。
2話を読んで下さって、ありがとうございます!
前書きで書いた通り、投稿スピードは落ちて行くと思いますが、どうぞよろしくお願いします。