削除された記憶の中の私は…
第5幕が開かれた──
皆様もご存知の通り、私による手記はナチュラルコンプライアンス違反でデリートされました。
これは私自身が体験した伝記であり、構想約10年を制作時間0コンマ03秒で創作した子供達でした。
まだ私はこの異世界には慣れてはおらず、大変に曲がりくねった廊下に立たされておりますが、
たった一人だけ、5歳になったばかりの女の子は生きて頭上から私の顔を無邪気にも眺めております。
なぜ、この子だけが助かったのか、
なぜ、この子だけが私の元に駆け寄ってきたのか、
その体躯に似合わぬ二つの大きなファボとリツ、
まるで5歳とは思えぬ凜とした顔で「大好きだからだよ」と娘は私に愛を囁きます。
しかし、その学生服の袖には亡くなった数々の稀少暗器が仕込まれ、
日夜勉学に勤しんでいます。
もちろん私はその対抗手段として、そして娘を本当の意味で守るため、
胸ポケットには記入済みの婚姻届と辞表が忍ばせてあります。
──貴方のことが今でも好きだから。
この大きな窓ガラスは私にとってはあまりに辛すぎる虚構のワルツ。
そして、学園生活内での逃亡劇はまだまだ終わりそうもないのだった…… それもロック☆