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苦手な方はご注意ください。

【声劇台本】濃霧島殺人事件(のうむとうさつじんじけん)

作者: ルカ

執筆協力:進撃のMGS

協力:他12名の声劇演者の方々


上演時間:120~150分



―利用規約―

・ツイキャス、ニコニコ、リスポンなどで上演する際は、作者に断わりの必要はございませんが、連絡やツイッタ―通知を出していただけますと、録画や上演枠に顔を出させて頂きます。


・上演する際はこの台本のタイトルとURL、作者(協力は不要)、配役表をコメント欄にのせていただきますようお願いいたします。また、mojibanなど補助ツールの使用は可能としますが、台本のURLの代わりにするのはやめてください。


・過度のアドリブ(世界観の改変)、性転換は一切しないようにお願いします。また、適度なアドリブや読みにくい個所の語尾改変は、世界観の変わらない程度ならOKといたします。


・無断転載はしないでください。もし、発見や連絡があった場合、作者が確認したのち法的処置を行いますのでよろしくお願いします。








ー登場人物ー

高城解たかぎ かい

高校三年生。高城探偵事務所の次期所長として、祖父の繁雄に育てられている。父は北海道警の警視とサラブレッドとして育てられた。物腰は優しいが仕事になると時には厳しくなる。犯人を追いつめるときは、持っている証拠を小出しにして徐々に追い詰め、犯人を逃げられなくして自白、自首を促す。ただ、セリフ数、セリフ量多し。


中務なかつかさ 真紀まき

高城と同じ学校の同級生でクラスも同じ。中務コンツェルンのお嬢様。しかし、お嬢様と思わせないようなフランクな口調で話している。高城とは幼馴染で、多少なりとも高城の事は頼りにしているし、気がある。明るく活発でスタイルもよく男子の人気が高いが、高城に一途なため、断り続けている。恋愛に関しては、中務自身も見えるようにしているつもりだが、解は気づいていない。


佐伯さえき おさむ

高城と同じ学校の同級生で隣のクラス。中丸組のお嬢様の貴子と中学校のときから付き合っている。性格は弾けた感じだが、意外に真面目で成績優秀かつ仲間思い。だれかが傷つけけられると、身をもって止めにいき相手にも同じ痛みを負わせるということをしている。


中丸なかまる 貴子たかこ

中丸組のお嬢様。年齢は高城たちと同い年だが、学校は女子高に通っているお嬢様。佐伯の彼女。佐伯のことをよくみているおしとやかなお嬢様。真紀よりも容姿端麗で清楚な感じが受け、男女ともに人気が高い。佐伯とは中学校から付き合っている。


田丸たまる

中務家に20年以上仕える執事。真紀の教育係でもある。間違っていることは旦那様とて許さない。45歳。


中務なかつかさ 周子しゅうこ

真紀の母親で、源次郎の妻。豪気な源次郎の手綱を引く存在。優しく、自分よりも他人の精神のため、社員からの信頼は厚い。45歳


中務源次郎なかつかさ げんじろう

真紀の父親で、周子の夫。豪気な性格で超絶プラス思考。社員にも無礼講で接しており信頼も厚い。45歳


高橋権蔵たかはし ごんぞう

アルビド塗料の社長。経営はそこそこ良かったが、中務コンツェルンとの提携話があったため、賛同した。その後の業績はうなぎ登りとなったため、源次郎に頭が上がらない。性格はかなりフランクであるが、社長らしい圧力、信頼感はある。43歳


高橋和子たかはし かずこ

TEC(Takahashi Economic Company)の社長。権蔵と結婚したことで、アルビド塗料とともに仕事している。優しく母性のある性格をしており、社員には人気である。42歳


平良たいら 恵一けいいち

中務源次郎の専属医師で、中務コンツェルンの、第一秘書。常に敬語で話しているが何を考えてるかわからない。35歳


高城たかぎ 繁雄しげお

解の祖父。65歳


セリフ数

高城:379

佐伯:212

田丸:175

平良:115

高橋:46

源次郎:57

繁雄:23

中務:237

中丸:118

和子:52

周子:63




配役

高城:♂:

佐伯:♂:

田丸:♂:

平良:♂:

高橋/源次郎/繁雄:♂:

中務:♀:

中丸:♀:

和子/周子:♀:



ー本文ー


高城M「2018年12月23日、北海道のある学校で、終業式を終えた俺は、天井を見上げながらため息をついた。」



高城「さて、帰るか……」



中務「ねぇ……解……」



高城「どうした?真紀」



中務「今日、一緒に帰らない?解に話しておきたいことがあって……」



高城M「彼女は中務真紀。中務コンツェルンの次期社長でいわゆるお嬢様だ。」



高城「話?あぁ……構わないけど……」



中務「ありがとう!話は家についてからね!」



高城「あぁ……」



高城M「この話から始まった最悪なクリスマスを、俺は一生忘れないだろう……」



佐伯「でけぇぇぇぇ!」



高城「知らなかったのか?真紀は中務コンツェルンの次期社長だぞ?」



佐伯「知ってたけどここまでとは……」



高城M「こいつは佐伯修。今回、中務コンツェルンが主催するパーティーに出席することになっている。たまたま、真紀の家に向かう道中で会ったため、真紀が連れてきたのだ。」



田丸「おかえりなさいませ、お嬢様……そちらの方は?」



中務「あぁ、佐伯くんは初めてだったわね。紹介するわ!中務家の執事を長年勤めている田丸よ!」



田丸「田丸でございます。中務家には執事として20年ほどつかえております。」



佐伯「ほへぇ~、執事さんまでいるのかぁ……あ、俺は佐伯といいます。よろしくっす!」



田丸「よろしくお願い致します。それではみなさん、こちらへ……お嬢様は……」



中務「あぁ、私は着替えてから部屋にいくわ。」



田丸「かしこまりました。」



―間―



佐伯「なぁ……田丸さん……だっけ?」



田丸「はい、なんでございましょうか……」



佐伯「田丸さんは解のことを知っているのか?」



田丸「えぇ……詳しいお家柄などは存じ上げておりませんが、よく遊びにいらしておりました……」



佐伯「へぇ……」



田丸「……ハーブティーでございます……お茶菓子にはラズベリーのクッキーをご用意いたしました……」



佐伯「お!あざす!」



高城「ありがとうございます!(カップを手に取り飲む)……うん!胸がスゥッとする……」



佐伯「(カップを手に取り飲む)……おいしい……さすがだ!」



中務「ごめん……待った?」



田丸「お嬢様……中務家の令嬢とあるものがなんたる振る舞いですか?その服を着たからには中務家の令嬢としての振る舞いをしていただかないと困ります。いくらご友人の前とはいえそのような粗暴な口調を用いることは中務家令嬢の名折れとなってしまいます。」



中務「私はお父様に許可を得ております。私は中務家令嬢以前に一人の人間ですわよ……田丸」



田丸「しかし……」



中務「私が公務の時に今のような口調になってしまった時はいつでもおとがめくださいな……しかし、今とがめようものならばこのことをお父様に報告させていただきますわよ?」



田丸「失礼いたしました。わたくしめの無礼をお許しくださいませ……」



高城「……それで?話ってなんだ?」



中務「あぁ、そうね!その話をしなきゃ!田丸……あの手紙を持ってきてくれる?」



田丸「な!?お嬢様!!いくらお嬢様の頼みといわれましても見ず知らずのご友人にそれは……」



中務「心配いらないわ。この方は高城探偵事務所の次期所長よ?彼の祖父は現高城探偵事務所の所長であり、父親は北海道警の警視……だから彼に今回の事件を暴いてほしい……」



高城「事件?」



佐伯「……クッキーうめぇ」



中務「佐伯くんのことはおいといて……お願い……田丸……」



田丸「かしこまりました……少々お待ちくださいませ……」



中務「ごめんね……」



高城「いや……気にしてない……しかし……」



佐伯「解!!お前探偵の孫なのか!?」



高城「え!?言ってなかったか?」



佐伯「きいてない!」



高城「……うちの探偵事務所には多くの事件が舞い込む。主にじいちゃんが解決していくんだけどさすがに年だから俺も少し仕事を請け負ってるんだ。だけど、俺も最後の年は学業を過ごしたいということで、じいちゃんに話をして……って、どうしてそんな嬉しそうなんだ?」



佐伯「嬉しいに決まってるだろ?だって……だってよ?」



田丸「お楽しみのところ申し訳ありません……お嬢様、お持ち致しました」



中務「ありがとう!」



田丸「では、わたくしは……」



中務「下がらなくていいわ」



田丸「ですが……」



中務「田丸にもいてほしいの……私だとうまく説明できるかわからないから田丸に説明をお願いしたいの。頼めるかしら?」



田丸「……かしこまりました」



中務「それじゃぁ、本題にはいるわね……田丸」



田丸「かしこまりました。高城様……こちらの封筒なのですが……」



高城「あ、ども……」



佐伯「この封筒がどうかしたのか?中務?」



田丸「貴様!!中務コンツェルンの次期社長を呼び捨てとは何事か!!」



佐伯「ひぃっ!」



中務「田丸!!私の友人なの!呼び方でどうこう言わないで!」



田丸「……すみません、お嬢様。そして、佐伯様……まことに申し訳ありませんでした……」



佐伯「あ……あぁ……こちらこそ……」



中務「田丸……続けて」



田丸「かしこまりました。こちらの手紙が、今から一週間前に中務コンツェルンに届きました。赤い封筒で気味が悪く、2・3日そのままにしていたのですが、そろそろ開けないとと思って封を開けたところ……」



高城「『You make them take your life in the party opened on December 24.  It’s revived in darkness in Christmas Eve, ”Jack the Ripper” 』……ジャック……!?……これって」



中務「ねぇ……この意味分かる?」



高城「ま、後で修に訳を確認するとして、確実に言えるのはこれが脅迫文だということだ。」



田丸「脅迫文ですと!?」



中務「うそ……そんな……」



佐伯「根拠はあるのかよ?」



高城M「修の質問に答えるため、俺はルミノールを鞄から出した。その液体を手紙にたらした俺は、田丸さんに頼みカーテンを閉めてもらった。少しするとその文字が微かに光った。」



中務・佐伯・田丸「!?」



高城「……電気をつけてください」



田丸「か……かしこまりました……」



ー間ー



高城「予想通りの結果が出た。これは血文字だよ……」



田丸「なんということ……まさか……」



佐伯「よし!!解読できたぜ!!」



高城「そうか!何て書いてあった?」



佐伯「ん~と、『12月24日に行われるクリスマスパーティーで貴様らの命を奪わせてもらう。聖夜の闇によみがえりし切り裂きジャックより』だってさ……」



高城「そうか……はぁ……予想通りの展開だ……」



中務「ちょっ……ちょっと!切り裂きジャックって!」



田丸「イギリスで実際に起きた連続殺人事件の犯人ではないですか!?」



高城「最悪のことになった……切り裂きジャック本人がパーティーに来ることはあり得ないが、今回切り裂きジャックの模倣犯がパーティーの参加者にいるとしたら……このパーティーで殺人事件が起こる……」



中務「うそ……でしょ……」



田丸「なんてことを……一体、誰の仕業だというのですか?」



高城「それはわからない……けど……おそらく、中務コンツェルンに恨みをもった人物の犯行かと……」




―間―




中務「解!」



高城「な……なんだ?」



中務「お願い!!私と正式な探偵として契約して!!」



高城「え?でも……事件を未然に防げるかどうか……」



中務「それは……関係ない!!たとえ失敗しても成功しても犯人が捕まればこの事件の解決報酬は用意するわ!!だから……私と契約して!!」



田丸「わたくしからもお願い致します!」



高城「……わかりました。だけど、1度祖父と相談させてください。」



田丸「……かしこまりました。」



中務「いい返事を待ってる!」



高城「あぁ……」



中務「もし、解がこの事件を引き受けてくれるのなら、今回のパーティーは私……いえ、中務コンツェルンもちでやるわ」



佐伯「うらやましいぞ!解!!俺なんて費用全額払ってすかんぴんなんだからな!!」



中務「何言ってるのよ……あなたのお金は貴子もちじゃないの……」



佐伯「そ……それをいうなよぉ……」



高城・中務・田丸「フフフ……ハハハ……」



佐伯M「解は話を終えると、クッキーを食べていた俺の腕を引っ張り田丸さんと中務にお辞儀をして部屋を去った。成功報酬などの話は追ってすることになって、俺たちは中務の家をあとにした。その後、クリスマスパーティーが解の家でも行われたらしい。」



―間―



高城M「普通の家族にしたら盛大なクリスマスパーティーは俺の心の不安を和らげていった。しかし、俺がどこか上の空だったのをじぃちゃんには見透かされていた。」



繁雄「解、あとでわしの部屋に来なさい……」



高城「じぃちゃん……そんなに酔ってて大丈夫なのか?」



繁雄「なにをいっておる!わしはまだ酔っておら……おっとと」



高城「あぁあぁ、いわんこっちゃない!」



繁雄「いや……わしよりお前の方が話したいことがあるんじゃろと思ってのぉ……」



高城「……」



繁雄「まぁよい……では、わしは部屋に……」



高城「じいちゃん!」



繁雄「……」



高城「話があるんだ……じぃちゃんの部屋にいってもいいかな?」



繁雄「……あぁ……まっておるぞ……」




ー間ー




繁雄「ばぁさん!解がかなり大きな依頼を受けてきたんじゃ!!これでわしも解に事務所を任せられそうじゃわい!ハッハッハッ!」



高城M「……この事件を本当に受けていいのか……未然に防ぐことができるかどうか」



高城「じいちゃん……いい?」



繁雄「おう!解、入れ!」



高城「じいちゃん……あのさ……」



繁雄「解……」



高城「ん?」



繁雄「ワシが探偵になったときに先代……ま、お前のひいじいさんから口酸っぱく言われていたことがあるんじゃ……探偵はの……事件を未然に防ぐことはできん。未然に事件を防げたら……それは奇跡じゃ……探偵は目の前で起きた事件を解決する……依頼人のいう条件を飲めんくてもえぇ……事件を解決する……それが探偵の仕事じゃ……」



高城M「そういえば、真紀も事件を未然に防ぐことよりも、事件の解決を願っていたっけ……」



繁雄「だから……解……気を……おとす……(倒れる)」



高城「じいちゃん!?」



繁雄「(いびきをかく)」



高城「寝た……のか?ったく、ここで寝ると風邪ひくぞ……じいちゃんのお陰で探偵のことが少しわかった気がする……絶対に……この事件を解決してみせる……」




ー間ー




高城M「朝起きると、じいちゃんがもしものために検死セットとノートパソコンを持たせてくれた。他にもじいちゃんに聞きたいことはあったが、時間がギリギリだったので家を出て港まで走った。真紀に叱られた俺は田丸さんに促されるまま船に乗り込んだ。」



ー間ー


高城「大きな島だなぁ……」



中務「当たり前じゃない!私たちを誰だと思っているのよ!」



高城「そうだったな……にしても霧が濃いなぁ……」



中務「しらなかったの?あの島は年中、濃い霧につつまれているのよ。その光景が神秘的なことから、各リゾート施設が取り合いになったところを私たちが買い上げたのよ。まぁ、私も来るのは初めてだけどね……」



高城「そ……そうな……ウブッ」



中務「まさか船酔い!?」



高城「ハァ……ハァ……あぁ……少し酔った……」



佐伯「おう!解!早速船酔いか?」



高城「そういうお前もいきなり彼女と腕組んで楽しそうだな……」



佐伯「まぁな!」



高城「まあなって……それより、そこの彼女のこと……俺知らねぇんだけど?」



佐伯「ナンパか?」



高城「違うよ!!早く紹介しろよ……」



佐伯「あぁ、そうだな!中務は知ってると思うが、彼女は中丸貴子。ほら、建築会社中丸組の……CMでやってるだろ?」



中丸「どうも……中丸貴子です……」



中務「あれ?元気ないじゃん!どうしたの?」



中丸「ハァ……ほら、今回呼ばれたのは私の父でしょう?だけど……急に海外に行く用事が入ってしまったので……」



中務「あぁ……それでお父さんいないんだね……」



中丸「そうなのです……」



田丸「それではみなさん、今から宿の方にご案内いたしますのでついてきてください!」



高城「はい!わかりました!」



中務「とりあえずホテルについてからね!」



佐伯「よっしゃ!早くいって飯くうぞ!」



中丸「もう……修ったら……」




ー間ー




佐伯「でけぇ~……これってホテルなのか!?」



中丸「すごく大きなホテルですね」



中務「そうよ!じつはね……この島をリゾートにする予定なの!」



高城「こんな霧隠れの島をか?冗談きついぜ!」



中務「さっきも言ったけど、この幻想的空間が各リゾート会社の取り合いになるぐらいなのよ?何よりもこの島はパパのお気に入りなの!まぁ、スポーツ施設は流行らなさそうだけど……けどね、この幻想的な景色を見るための観光地としてならこの島を活かせるんじゃないかと思うの!」



高城「確かにそうだけど、お客は来るのか?」



中務「実は三年先まで予約が埋まっているのよ!」



佐伯「マジでか!?」



中務「えぇ……おおマジよ!じつは今日泊まる予定の場所もこの濃霧島リゾート化のためにつくられたホテルなのよ!宿泊施設は合計5つ!島の東西南北と中央に1つずつ。今日はそのうちの中央にある『セントラル』という場所に泊まる予定よ!」



高城「中央だからセントラル……ププ」



中丸「真紀らしいです」



中務「もう!貴子まで……」



源次郎「皆様つきました。このホテルこそが中務コンツェルンが誇る宿泊施設『セントラル』です!」



高城「真紀……紹介してくれよ……」



中務「うん!いいよ!んーと、いまお父さんと話しているのは高橋権蔵さん。私たちと提携しているアルビド塗料の社長よ。もともとは業績不振が続いていたんだけど、私たちと提携してから一気に業績を伸ばしたの……」



高城「アルビド塗料って学校の前にある大きな看板のか?」



中務「そうよ?」



高城「でも、頭が上がってないようだけど?」



中務「そりゃぁそうよ!私たちの会社と提携して業績が昇ったのだから」



高城「てことはあの人は……」



中務「いえ……あの人の実力もしっかりあるわ。そうじゃないととうにつぶれているもの。業績が悪かったのは先代の話で、権蔵さんになってからは業績が少しずつ上向いていたのよ?」



高城「そ……そうなんだな……?あそこの女性は?」



中務「あの人は高橋和子さん。夫の権蔵さんより2歳年下なの。」



高城「ちょっと待て……高橋和子ってあのTECの?」



中務「そうよ!何で知ってるの?」



高城「いやぁ……Takahashi Economic Companyって、俺の住んでいたマンションの隣だったからさぁ……」



中務「あぁ!そうだったのね!」



高城「あぁ……よく挨拶もしてくれたし……ま、いま名前をきいて思い出したんだけど……」



中務「そうなのね……それで、あの人……ッ!?」



高城「どうした?真紀?」



中務「あ……あの人は……あの……人は……」



高城「どうした!?真紀……」



中務「…………」



高城M「なんだ?真紀があいつを見た瞬間……」



田丸「皆様!準備が整いました!!中へお入りください!」



高城「……真紀、入ろう……」



中務「え……えぇ……」




ー間ー




佐伯「うわぁ!でけぇ!!」



中丸「修!さわがないでください……恥ずかしいじゃないですか」



佐伯「だってよぉ……」



中務「ほんとカッコ悪いわね?普通の建物じゃない!」



佐伯「けど!こんなすごいところでクリスマスパーティーなんてよ!」



中丸「確かに、私の会社の建てた最高級ホテルより大きいです……さすが中務コンツェルンってところでしょうか」



中務「貴子まで……」



田丸「皆様!部屋の鍵をお持ち致しました!男性のお部屋は1号室~3号室、女性のお部屋は5号室と6号室でございます。夕食は18時30分からでこちらのレストラン、サンセット・ミストでのパーティーとなっております。それまでは自由行動となっておりますので、ごゆっくりお過ごしください!あと昼食につきましては食堂でご用意致しておりますのでそちらでお召し上がりくださいませ。それでは、お部屋にご案内いたします!」




ー間ー




田丸「男性部屋はここを左折した先でございます。一番奥が1号室となっております。女性の方はここを右折した先でございます。一番手前が5号室となっております。」



源次郎「おお!助かるぜ!田丸」



田丸「ありがたきお言葉……」



源次郎「おいおい、バカンスぐらいは肩のちからを抜けや!」



田丸「ありがとうございます。」



周子「田丸もゆっくりなさってね」



田丸「かしこまりました。奥様」



高橋「さて、俺たちも行くか!ゴルフ楽しみだぜ!」



和子「あなた……無理なさらずに……」



高橋「わかってる!怪我したらアルビド塗料社長の名が廃る!」



和子「まぁ!あなたったら……ふふ……」



高城「あの夫婦、二組とも仲がいいなぁ」



中務「あたりまえじゃない!おしどり夫婦なのよ?」



中丸「そうは聞いていましたが、噂は本当だったんですね」



中務「えぇ、そうなのよ」



佐伯「それより、俺たちも行こうぜ!田丸さん!俺たちの部屋はどこっすか?」



田丸「佐伯様方の部屋はこちらの階段を上がっていただきました3階となっております」



中務「わかったわ。あとは私たちで行くから下がっていいわよ。」



田丸「かしこまりました。」




ー間ー




中務「さて、私たちもあがりましょうか!」



高城「そうだな!ベッドで足伸ばしたいなぁ」



佐伯「俺は腹が減った……」



中丸「じゃぁ、部屋に荷物を置いたのち軽食でも?」



中務「そういえばお昼時だったわね……」



佐伯「ほんとだぜ……朝飯食ってくりゃよかった……お、俺の部屋はここだな?」



高城「しかし、どれだけ歩かせるんだ……」



中務「そんなこと言わないの!このセントラルは全室スイートなんだから!」



中丸「それは楽しみですね」



佐伯「それじゃ、荷物置いたら下の食堂で集合な!」




ー間ー




佐伯「遅いぞ!解!」



高城「ど……どうしたんだよ!時間には間に合っただろ?」



佐伯「俺は腹が減ってんだよ!!早くしやがれ!!」



中丸「ごめんなさい……お腹が空くとあのようになってしまうのです。」



高城「知っているよ。昔からの付き合いだ……」



中務「(ため息)……私たちも入りましょうか」



中丸「そうですね……また怒られてしまいますし……」




ー間ー




高橋「あんちゃん!隣いいか?」



高城「どうぞ……」



高橋「悪いな!」



和子「すみませんね、お友達同士なのに……」



中務「気になさらないでください。久々に和子さんたちともお話ししたかったので……」



和子「あら、そうなの?うれしいわ」



中務「あの、高橋さんはこのあとのご予定は?」



高橋「ん?あぁ、中務さんとこのご令嬢……」



中務「もう!その言い方はやめて!」(解の背中をたたく)



高城「グフっ!?何すんだよ!真紀!」



中務「近いからよ!」



高城「おま……だからって……」



高橋「ガッハッハッ!愉快だな!」



和子「あなたったら……」



高橋「あぁ、わりぃわりぃ!」



和子「私は中務の奥様とショッピングをしようかと……このホテルには免税店があるらしいのよ。そして主人は、会長さんとゴルフに行かれるそうで……」



佐伯「ゴルフ!?こんな霧なのに!?」



高橋「確かに霧は濃いが、あと一時間ぐらいしたら霧は晴れるんだよ!そうだ、予定がないんならここの2階にある娯楽施設に行ってみるといい!ダーツやビリヤードのほかにカラオケもあるらしいぞ?」



中務「そうだったわ!娯楽室があったんだった!」



中丸「あら、ビリヤードがあるなんていいじゃないですか」



佐伯「お?やるか?」



高城「……おれ、初めてなんだけど……」



中務「大丈夫!私が教えるか……!?」



高城「おい、真紀……大丈夫か?」



中務「……ッ」



和子「あぁ……そういえば彼もここにきてたのね……」



高城「あの男は誰です?」



高橋「なんだい、真紀ちゃん紹介まだだったのか!?」



和子「あんなことあったら無理ありませんよ……」



高城「あんなこと?」



高橋「おいおい、そこまで聞くのは男として野暮だぜ!それにその話は真紀ちゃんに聞いたほうがいい……が、知らねえのも気分悪いだろうから素性だけは紹介しておくか……」



和子「あなた!!」



高橋「素性も知らないで一緒に過ごすのはあんちゃんたちもいい気分じゃねぇだろ?」



和子「確かに……そうね……」



高橋「あいつは平良恵一たいら けいいちだ。年は32歳ぐらいだったかな……会長さんの担当医師だそうだ。」



高城「あぁ、それで手袋をしているのですね。あ、あと会長さんの担当医師って中務さん体調悪いんですか?」



高橋「あぁ……そうらしい……毎日18時には注射を打たないといけない体らしい。だから将来、真紀ちゃんに継がせるために自分は会長職をして、真紀ちゃんのお母さんに社長をしてもらっているんだよ。」



高城「(小声)つまり、源次郎さんに近い人物ということか……」



高橋「あぁ……そして、今は会長の第一秘書だ。」



ー間ー



高城「……どうして、僕の独り言を拾うんですか?」



高橋「ガハハ、悪かったな!ついつい職業病みたいなものでな!ほら、こう見えても社長だからな……お、そうだ。真紀ちゃんを守ってやれよ!彼氏さん……」



高城「ちょっ……俺とこいつは……」



和子「もう、あなた……それぐらいにしてあげましょ?」



高橋「そうだな!それじゃ、俺は時間があるから行くぜ!また夜な!」



高城「あ、はい!ありがとうございました。」



和子「それでは、ごきげんよう……」




ー間ー




高城「(ため息)あの人、いつもああなのか?」



中務「うん……悪い人じゃないんだけど……一度話し始めるとなかなか止まらないの……」



佐伯「そのようだな……ふぅぅ、さすがに疲れたぜ……って、なんで、お前らは平気そうなんだよ……」



中務「なんでって、慣れてるし……」


中丸「えぇ……それに、彼の言葉にはなにか人を元気にさせる力があるように思うのです」



高城「確かにな……」




ー間ー




高橋「真紀ちゃんを守ってやれよ!彼氏さん……」




ー間ー




高城M「この言葉の意味は何なのか……そして、真紀の家に送られた殺人予告……その殺人予告の対象は真紀なのか……それとも……」



佐伯「おい、聞いてるのか!解」



高城「あ?」



中丸「大丈夫ですか?高城さん……」



高城「あ……あぁ。なぁ、真紀。今回の手紙のこと……参加者は知っているのか?」



中務「えぇ……私のほうから全参加者に伝えているけれども……貴子はお父さんから聞いている?」



中丸「えぇ……殺人予告が届いたって話ですよね?」



佐伯「おい!貴子!そんなダイレクトにーー」



中務「大丈夫よ……ここにいる人たち全員には話してあるわ……」



高城「それなら、このホテルには殺人計画のことを知っている人たちばかりということだな?」



中務「えぇ、そうよ」



高城M「ここには、今回のことを知っている人物しかいない……ただ、誰が誰に狙われるかというのはわからないな……」



中務「もし、ここで何かあっても監視カメラに映るはずだから大丈夫よ!」



佐伯「とはいえ、不安なのは不安だな……」



中丸「そうですね……見た感じ、警備員などの配備はないようですし……」



佐伯「実際に事件が起きない保証はない」



中丸「でも、そのために高城さんがいるのでしょう?」



中務「探偵がいるから事件が未然に防げるわけじゃないの。そこは理解してないと……ね」



中丸「そう……」



高城「なるべく期待に応えられるようにするが、情報が少なすぎるんだよな」



佐伯「なぁ、そんなことよりさぁ、今から娯楽室に行こうぜ!!」



高城「こんな時に遊ぶってのか?」



中務「こんな時だからでしょ!私、ビリヤードやりたい!!」



中丸「それじゃぁ、勝負しましょうか?」



中務「望むところよ!!」



中務・中丸・佐伯「(高城にどうするの?と詰め寄る。お好きなように詰め寄ってください。)」



高城「あぁ、もう!!わかったよ!!娯楽室に行くよ!!」



佐伯「よっしゃ行こうぜ!」



中務「私と貴子は着替えてくるわね!」



中丸「それではまた後程」



佐伯「おう!行こうぜ、解!」



高城「あ……あぁ……」




ー間ー




高城「はぁ~……」



佐伯「まぁまぁ元気出せって!」



高城「まさか一球も入らないとはな……」



中務「ほとんどダフってたしね……」



高城「うるせぇ!お前ら3人はガチ勢だろうが!」



佐伯「これでも手加減したんだぜ?」



中務「まぁね」



中丸「はい」



高城「なんか余計傷つくんだけど……」



源次郎「おぉ、真紀!何をしていたんだ……?」



中務「はい。お父様……」



源次郎「よせ。今はプライベートだ。いつも通り話せ。」



中務「パパ!!私ね、解とビリヤードしていたんだよ~!!」



源次郎「解?」



高城「あ、俺です。あの……真紀……さんとはーー」



源次郎「よせ……いつも通り話せ!俺はそんなにお偉いさんじゃない!田丸!」



田丸「は……」



高城M「源次郎さんの一声で田丸さんは葉巻を源次郎さんに渡した。それを受け取った源次郎は、口の方にゆっくりと持っていきくわえた。その姿はまるでポパイ……」



佐伯「ぷっ……」



高城「!?おい!」



佐伯「だってよ……ぷくく……」



源次郎「中丸家のご息女そくじょの彼氏は教養がなっていないらしいな!!」



佐伯「ヒッ!?す……すみません……」



源次郎「フフフ……ガッハッハッハッハッハ!!そんなに縮こまるな!俺はそのような性格嫌いじゃねぇよ!(煙をはく)」



佐伯「ゲホゴホ……ゴホ……」



田丸「旦那様!煙を吐く場所をわきまえてください!」



源次郎「わ……わりぃ……中丸家のご息女そくじょの彼氏……名前は?」



佐伯「ゲホゴホ……佐伯……ゴホ……修です」



源次郎「佐伯くん、先程はすまなんだ……これはお詫びの印だ!」



田丸「旦那様……そのコーラは……」



源次郎「んなもん、売店で買えばいいだろ!」



田丸「そうでございますね。」



佐伯「ありがとうございます!」



源次郎「礼にはおよばんよ。それに……」



平良「会長……そろそろ注射のお時間ですが……」



源次郎「おぉ、もうそんな時間か……わかった!けどその前に売店に行かないとな……じゃあな!未来ある若者たちよ!!パーティーを楽しめよ!」



中務「えぇ、またね!」



高城「さて、俺たちも部屋で休むか……」



佐伯「そうだな……なんか疲れちまったぜ……」



中務「まぁ、まだ時間があるしそうしましょうか……」



中丸「それじゃぁ、17時半に食堂前に集合ね」



高城「あぁ……わかった」



ー間ー




高城「すこしはやく来すぎたかぁ……お?パーティーの準備が……」



平良「進んでいるようですね……」



高城「あなたは?」



平良「失礼しました。私は平良と申します……」



高城「平良さんはお医者さんなんですよね?」



平良「……えぇ。どうしてそれを?」



高城「高橋さんからお聞きしたんです。中務さん……源次郎会長の病名って何ですか?」



平良「……糖尿病ですよ……」



高城「糖尿病ということはインスリン注射?」



平良「えぇ……最近は症状が落ち着いてきているため夕食前の18時だけに注射するようにしているんです。」



高城「でも、インスリンなら自分で打てるんじゃ……」



平良「それがね……私が打たないと打たないのですよ……困ったものです……」



中務「解!待った?……あ」



中丸「ごめんなさい……修がなかなか起きなかったので……」



佐伯「わりぃな!30分だけ寝るつもりが起きれなくてよ!」



高橋「だらしないな!男なら女が起こしてくれたらすっと起きねぇか!」



佐伯「高橋さん!」



和子「よくいいますね……私が起こさなければあなたはずっと寝ているじゃない……」



高橋「そ……その話は今はなしだろ!?」



佐伯「人のこと言えないじゃないっすか」



高橋「う……うるせぇ!」



田丸「はて?旦那様と奥様はどちらでしょうか?」



周子「私はここにいるわよ……田丸……」



田丸「あ、奥様……申し訳ございません……」



周子「いいのよ田丸……あと、主人なら少し具合が悪くなったから休むそうよ……」



中務「え!?」



平良「それなら、私が見に行きましょう……」



高城「あ、俺も行きます!」



高橋「高城君!先生の邪魔をしちゃいかん!」



平良「かまいませんよ……」



高城「ありがとうございます!!」



佐伯「おい!解!……たく、しゃぁねぇなぁ……」



高橋「おい、あんちゃん!彼はいつもあぁなのか?」



佐伯「あ、はい。むしろ今がおとなしいくらいで……」



中務「本当だったら探検してる頃よね」



中丸「そうなのですか?」



佐伯「あぁ、はじめての場所は特にな……」



中務「ましてや今回はあの事件が関わっているからね……」



高橋「なるほどなぁ……それはあのあんちゃんも心中穏やかじゃねぇだろ」



和子「好奇心旺盛なのかしら……?」



佐伯「いや、バカなんですよ……一人でなんでもかかえこんで……」



中務M「解……どうしてあなたは一人で抱え込むの?私は……あなたにとってなんなの?」



高城M「俺と平良さんは源次郎さんの部屋に向かった。しかし、反応がなかったので、俺たちは引き返したのだった。」




ー間ー




高城「おまえらその服どうしたんだ?」



中務「うちで用意していたのよ!ほら、急にパーティーを開くってなったときにドレスとかはあったほうがいいでしょう?」



高城「そうだろうが、いくらなんでも準備が……」



田丸「(遮るように)あなたも着替えに行くのですよ」



高城「あ……あぁ……」




―間―




佐伯「……まったく、解も鈍いねぇ……」



中丸「そうね……」



中務「いやぁ……いいの!私はほら、気にしてないし!」



佐伯「いやぁ、少しは気にしろよ!なんのためにブレスレットに解のイニシャルをいれたんだ?」



中務「そ……それは……」



中丸「そのドレスの色も高城さんが好きな色でしょう?」



中務「う……だ……だって、解はその……えー……と」



中丸「好きじゃないのですか?幼馴染のカップルなんてよくいますよ?」



中務「も……もう」



中丸「はぁ……まったく不憫ふびんな二人ですね……」



佐伯「まったくだ……」




ー間ー



田丸「その服装を見ていると昔の旦那様を思い出しますなぁ……」



高城「この服って源次郎会長のおさがりですか?」



田丸「そんなわけないでしょう……ま、レプリカではありますが……」



高城「…………」



田丸「あの……何かお気に召さないことでもございましたか?」



高城「あ、すみません、職業病みたいなものなんです。人の言葉を聞くといろいろ考えてしまう癖が……」



田丸「そうでしたか。さぞかし苦しかったでしょうね……」



高城「小学校の時は本当に苦しかったですね……友達の言葉を聞くと全部嘘に聞こえてしまって……だけど……」



田丸「だけど?」



高城「真紀……中務お嬢様にお会いして変わりました。彼女の言葉には嘘がない。彼女のような純粋な言葉に出会ったことで僕も変わったかもしれませんね……」



田丸「なるほど……高城さん!」



高城「……はい?」



田丸「お嬢様を……どうか、真紀お嬢様をお守りください!この通りでございます!」



高城「ボクは絶対お嬢様を……真紀を死なせません」



田丸「お願いいたします……高城さん……どうか、お嬢様を……」




ー間ー




周子「ただいま……」



中務「おかえり!どうだった?」



周子「だめ……でてこないわ……」



高城「ん?どうしたんです?」



中務「ねぇ、解……パパが部屋にいるはずなのに返事がないのよ……」



高城「なんだって?」



周子「今、平良先生が様子を見に行ってくれているのたげれど……こんなの初めてだわ……」



高城「こんなのとは?」



周子「過去にも主人が注射を打った後にパーティーをすることはあったのだけど、その時は時間通りに降りてきていたのよ……しかたないわね……プログラムを変更するわ……あの人の挨拶を最後にして最初の挨拶を私、乾杯の音頭は真紀がとりなさい。」



中務「え!?うそ!?どうしよう!!私……」



周子「落ち着いて……乾杯の音頭よ?そこまで気張った挨拶はしなくていいわよ。それに見知った人たちだから何も言わないわ」



中務「もう!!なんでこんな時に体調を崩すかな?」



平良「すみません、遅くなりました。会長は少し吐き気がするということでパーティーの前半は部屋で休んでいるそうです。」



周子「わかったわ。じゃぁ、真紀、手筈通りね。」



中務「わかったわよ……」



ー間ー




周子「皆様、本日はわが中務コンツェルンのクリスマスパーティーにお集まりいただきまして誠にありがとうございます。本年は皆様方のお力添えがありましたお陰で、中務コンツェルンもより良い発展を歩むことができました。私たちはこれからも歩み続けます。そのときは皆様のお力が必要です。どうか、これからもよろしくお願いいたします。」




(SE:拍手)




佐伯「うちの学校の校長と違うな……」



高城「だな……」



中務「あにょ……ふぁっ!?」



高城「!?」



佐伯「いきなりかよ……」



中丸「(小声で)がんばって……」



中務「あの、急遽乾杯を任されました。中務真紀です!みなさん、お集まりいただきまして本当にありがとうございます!これからも私たちのためによろしくお願いいたします!乾杯!」



全員「乾杯!!」



高城M「今回はノンアルコールパーティーということでお酒は全くでなかったが、大人連中もいろいろ楽しんでいた。俺はこの光景を見ていると自分がここにいる意味を忘れてしまいそうだった。

 パーティーも終盤に迫り、いよいよこのパーティーのメインイベントであるダンスパーティーが始まった。そのパーティーで踊る組み合わせは事前に決められていたらしい。俺は誰と踊るのか楽しみに待っていた。」



中務「そろそろパパを呼びにいかないとね……」



周子「そうね……私行ってくるわ……」



高城「真紀のお母さん……強いな……」



中務「うん……ママはパパよりポジティブシンキングなのよ……」



高城「そうか……ん?おい、真紀、背中のチャックが降りてるぞ?」



中務「え?ちょ!!解のH!!」



周子「イヤアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!」



高城「おい!今の真紀か!?」



中務「違う!!私じゃない!!」



高城「真紀じゃない……ということは……!!」



佐伯「解!!どこに行くんだよ!!」



高城「2階だよ!源次郎さんの部屋に周子さんが向かっているんだ!!」



佐伯「なんだって!?……ってまて!!俺もいく!!」



ー間ー


高城「中務社長!!」



周子「(震えた声で)高城さん……」



高城「何があったんです!!」



周子「…………しゅ……しゅじん…………が……」



高城「ここって源次郎会長の……」




(SE:扉の開く音 )




高城「な!?」



中務「ママ、どうしたの!?」



高城「来るな!!真紀!!」



周子「真紀……真紀――――っ!!」



中務「ママ?どうし……たの?」



田丸「奥様?どうされたので?……ッ!?だ……旦那さ……うぶっ!!」



佐伯「おい、解!?どうし……ッ!?」



中丸「なにが……ッ!?」



中務「え?う……うそ……でしょ?」



高城「うそじゃない……お前のお父さんは……中務源次郎会長は…………死んだ」



中務「え……えぇ……うそでしょ?イヤ……パパ?私……パパ……まだ…………なにもできて……イヤ……イヤ……イヤ……イヤァァァァァァァァァァァァァ!!」



高城M「雪が降ってる……なんてホワイトクリスマスだ……この雪に紛れて……切り裂きジャックが生き返ってしまったか……」




ー間ー




高城「平良さん……検死をお願いしたいのですが……」



平良「わかりました」



高城「高橋さん、修、みなさんを三階の修の部屋に案内してください」



高橋「まかせな!」



佐伯「あぁ……なぁ、解……」



高城「ん?どした?」



佐伯「俺も捜査手伝えねぇか?」



高城「え?」



中丸「私も……何かお手伝いできることがございましたら教えてください」



高城「2人とも、ありがとう。そうだな……中丸さんは真紀と周子さんについててほしい……」



中丸「どうしてでしょうか?」



高城「一番辛いのは真紀と周子さんなんだ。彼女らについて彼女らの気持ちを楽にしてあげてほしい。」



中丸「……わかりました」



高城「修は田丸さんに聞いてきてほしいことがあるんだ。」



佐伯「なんだ?」



高城「スタッフの人たちが持ち場を離れてないか聞いてほしいんだ。」



佐伯「わかった!田丸さ~ん!どこ?」



田丸「はい、わたくしはこちらでございます。」



佐伯「あ、田丸さん!田丸さんってさ、スタッフの取りまとめっすよね?」



田丸「えぇ、そうでございますが……」



佐伯「昨日のパーティー中に持ち場を離れたスタッフはいる?」



田丸「わたくし以外になると場長じょうちょうに確認しないといけませんが……」



佐伯「そっかぁ……ちなみに田丸さん自身は?」



田丸「はい。わたくしは持ち場を離れることが多々ありましたが、すべて2人以上で行動しておりました。」



佐伯「それを証明できるのは?」



田丸「えーと、この2人でございます。(ノートを見せる)」



佐伯「なるほどね……」



田丸「あの、佐伯様……もしかしてわたくしを疑っていらっしゃいますか?」



佐伯「いや、みんなに聞いてっからきにしないでくださいよ!」



田丸「……えぇ。ならよろしいのですが……」



佐伯「そんじゃ、ありがとうございま~す……てな感じでいいのかな?あとで解に報告だ!」




ー間ー




高城「……さて、俺も捜査を始めるか……平良さん、検死の状況はどうですか?」



平良「血液の固まり方からして、死後1時間ということでしょうか……現在時刻は20時……ということは死亡推定時刻は19時……前30分をとっても18時30分~19時の間ですね……死因は首を斬られたことによる失血死……首からの出血が特にひどいのでそう判断しました……あと口許からアーモンド臭がすることから青酸カリを飲んだのちに殺され……」



高城「(遮るように)いや、その線はない!これは源次郎さんが吸っていた葉巻の臭いだ……」



平良「葉巻?」



高城「源次郎さんはRIPE VAPESライプベイプスという葉巻をお吸いでしたでしょう?」



平良「確かに、その葉巻の臭いはアーモンドみたいな臭いがしましたが……その葉巻の臭いですか……なるほど……ん?高城さん!少しお願いします」



高城「どうしたんです?」



平良「これを見てください……この血文字……」



高城「ん?……ッ!?“Jack the Ripper” !?切り裂きジャックだと!?」



平良「あのイギリスで起きていた殺人事件ですか……」



高城「ん?あの血文字……どこかで……それに、この部屋の夥しい血液の量はなんだ?」



平良「高城さん、一度みなさんに報告を入れませんか?」



高城「え?」



平良「私たちだけがこの情報を持っていたって仕方有りません。一度みなさんに話しておくべきです」



高城「……ですね。わかりました。」



平良「なら、行きましょうか」



高城「……はい」



高城M「首と体が切り離されている。さらには腹も……切り裂きジャックの事件は今だ解決されていない。肉屋や医者などの説はあるが、まだわかっていない。そんな状態で日本で事件を起こす事はないだろう。……だが違和感がある……この違和感はなんだ……切り裂きジャックが殺したのは全員女性のはず……それが……なぜ男性を……」



平良「高城さん?」



高城「あぁ……今いきます!」




ー間ー



中務「なんで……どうして?どうしてなの……パパ……」



周子「あなた……」



佐伯「なぁ……暗くなんのは……」



中丸「修……」



佐伯「けどよ……」



中丸「彼女らは最愛の人を亡くしたのですよ」



佐伯「中務の最愛の人は解だろ?」



中丸「だからと言って親や夫を失う悲しみが和らぐわけではありません。」



佐伯「…………」



中丸「私たちも辛いですが、それ以上に……」




(SE:扉の開く音)




高城「ただいま」



佐伯「解!」



高城「わりぃ、思いの外時間がかかった……」



平良「えぇ……」



田丸「お疲れ様でした……それではハーブティーを……」



高城「あ、田丸さん!」



田丸「は……はい!」



高城「(小声で)源次郎さんの部屋の鍵を閉めたら僕にください……」



田丸「(小声で)それはなぜ?」



高城「(小声で)犯人が部屋にはいれなくするためです……」



田丸「(小声で)現場保存でございますね……わかりました……」



佐伯「おーい!何こそこそしてんだよ!」



田丸「あ、いえ、なんでもございません!追加のケーキをとってまいります」



佐伯M「俺たちは、部屋の中で源次郎さんの死の状況を聞いた。死体の状況、現場の状況、切り裂きジャックの血文字、すべて……その状況を聞いた俺たちは、女性陣は嗚咽混じりで泣き叫び、男性陣は唇を噛んだ。本当に辛く厳しい話だった。窓の外の雪はそんな俺たちの心を知るよしもなくしんしんと降り積もった。」




ー間ー




全員「…………」



周子「……どうしてよ」



高城「え?」



周子「どうしてなのよ!あの手紙が来た後すぐに、真紀が優秀な探偵に声をかけたといったから安心していたのよ!!なんで……なんで主人が殺されないといけないのよ!ねぇ、探偵さん、主人はね私にとって命よりも大事な存在だったのよ?わかる?その主人を亡くした私の気持ちわかる?」



中務「そうよ!私のパパを返しなさいよ!!解!」



高城「……!?」



佐伯「おちつけ!中務!」



田丸「奥様も!およしになってください!」



周子「何とか言ったらどうなのよ!」



中務「そうよ!か……ッ!?」



(SE:ビンタ音)



中務「え……貴子?」



中丸「……失礼します」



周子「え……ッ!?」



(SE:ビンタ音)



周子「…………」



中丸「御無礼を承知で申しあげますが、あなた方2人は高城さんの今の心境を理解できないほどの大馬鹿者なのですか?」



中務「なっ!?」



周子「大馬鹿者って……」



中務「そんな言い方ないじゃない!!」



佐伯「ちょ……貴子!!訂正しろよ!すみませ……」



中丸「だまりなさい」



佐伯「……はい」



中丸「大事な人を亡くした気持ち、探偵である高城さんが知らないわけないじゃないですか?彼はいままでかなりの数の事件現場を見てきているはずです。殺された被害者には家族がいる。大切な人が殺された場面も多く見てきているでしょう。」



中務「でも……でも……」



中丸「真紀……あなたは何のために彼を雇ったのですか……事件を一切起こさない為?そうじゃないでしょう?」



中務「!?」



中丸「私の家に専属で働いてくれている探偵に聞いたことがあります。探偵が事件を未然に防ぐのは不可能だって。それを承知で頼んだのではないのですか?」



中務「私は……私は……」



中丸「中務社長も……そうとわかっていたから許したのではないですか?」



周子「…………」



中務「解、ごめんなさい……私……」



周子「私からもごめんなさい……気が動転していたわ」



高城「いえ、大丈夫です。俺も、守ってやれずにすみません。」



周子「いえ、大丈夫よ……さぁ、話を続けて」



高城「……えぇ~、改めまして俺は中務コンツェルンから依頼を受けてこのパーティーに来ました高城解です。どういった内容で来たかというのはあらかじめ真紀さんより聞いているかと思います」



佐伯「あの、脅迫状だな」



高城「…………」




(SE:殴打音)




佐伯「いったぁ!なんでだよ!?」



高城「お前の言い方に腹が立った……」



高橋「ちょっといいか?真紀ちゃんには話していたんだが、探偵のあんちゃんにはまだだったのでな……ほらよ。それを読んでくれや」



和子「あなた……タバコは……」



高橋「一本ぐらい吸わせろや……いいなぁ!田丸さんよ」



田丸「問題ございません」



(SE:タバコに火を点ける音)



高橋「(煙をはく)……どうした?読んでくれや」



高城「……ッ!?」



佐伯「どうした?……ッ!?You make them take your life in the party opened on December 24.  It’s revived in darkness in Christmas Eve, ”Jack the Ripper” ……解!!この手紙、中務グループに送られてきたものと同じだぞ!?」



高城「あぁ、一言一句一緒だ!」



中丸「その手紙ならこちらにも届いています」



佐伯「貴子もか!?」



中丸「あなたには言ったでしょう?」



佐伯「いろいろありすぎて忘れてたぜ……」



平良「私の所にも……です」



高城「てことは、ここの参加者全員に恨みのある者が犯人……ということか……なるほど……それでは、みなさんお聞きください……あれ?おきき?」



高橋「おい、あんちゃん!堅苦しいのは無しで自分の話しやすいようにしゃべりな!」



高城「え?」



高橋「俺は堅苦しいのは嫌いなんだ。もっとフランクに行こうぜ!」



高城「え……え~と……」



和子「確かに探偵の世界ではそれが普通かもしれませんが、堅苦しすぎると人に不安を与えてしまうこともあるんです……主人はそのことを人一倍経験しているんですよ……」



高橋「そういうこった!だから、俺のことも苗字じゃなくて権蔵で頼むぜ!……な!」



高城「……わかりました。権蔵さん。では、続けますが……」




ー間ー




高城「……とここまでが、現場についてです。そして、死亡推定時刻が午後6時30分~7時の間なのですが、みなさんその時に何をしていましたか?」



佐伯「お。アリバイ調査ってやつだな?」



高城「おい!修!これは遊びじゃ……」



佐伯「そんなのわかってるよ!それよりもその時間は全員の犯行が無理だろうが……」



周子「そうよ……その時間はパーティー中……主人以外全員が会場にいたのよ?殺人なんて起こせない……」



中務「なんで!?そんなのって……」



中丸「全員がパーティーの会場にいたわけですからその時間帯は誰にも犯行は不可能なのですよ」



高城「全員のアリバイが……成立した……」




ー間ー




高橋「っしゃ!いったんお開きにしようや!」



高城「え?」



和子「そうね。いきましょうか……」



高城「和子さんまで……」



和子「一旦、頭を冷やしましょう?クールダウンも必要よ?」



高城「わかりました……」



周子「あの、高城さん……先ほどはごめんなさいね」



高城「気にしていません。探偵なので慣れてますから」



周子「そう……」



田丸「一つ宜しいですか?もし可能でございましたら、今回の部屋割を二名ずつにしてはどうかと思うのですが……」



佐伯「ん?どうしてだ?」



中丸「殺人事件が起きたということは犯人がいるのですよ?フェリーや小舟の類がない今私たちはこの島に閉じ込められていますから……」



佐伯「……てことはこの事件は……」



高城「そう……この島にいる人物の犯行だ。しかも、ここにはスタッフがいるが、田丸さんがすべて監視をしていて、ことがあると逐一スタッフのイヤホンに連絡が入るということだし、今回の様な音が出てしまう犯行の場合、スタッフが身につけているマイクが音を拾ってしまうんだ。田丸さん……今回の事件の時、あなたはその監視部屋を離れましたか?」



田丸「はい……その時間、わたくしは食堂に入っておりましたので……監視部屋に残した二人のスタッフに確認いたしましたが、現場を離れていないと言っておりましたし、監視カメラにもわたくしはきっちり映っているということだったので……」



高城「ありがとうございます。これらのことから推測するとホテルスタッフには犯行は不可能……つまり、俺たちの中に犯人がいるということになる。」



周子「なるほどね……お互いがお互いを監視するということね……」



高城「いいえ……監視をしてしまうと皆が警戒しすぎてしまって事件の全容が見えなくなってしまいます。なので、ここでは犯人の行動を制限するということが正しいですね。」



田丸「それでは、それぞれ3階のお部屋となります。高城さんと佐伯様が2号室、髙橋様と平良先生が3号室、真紀お嬢様と中丸様が5号室、奥様と和子様は6号室でお願い致します。」



平良「わかりました」




ー間ー




高城「ふぅ~っ……疲れたぁ。修も風呂に入ったしじぃちゃんに連絡だな……んーと、パソコンパソコン……」




ー間ー



繁雄「解じゃないか!久しぶりじゃの!」



高城「今日の朝、あったじゃないか……」



繁雄「そんなの覚えとらん!」



高城「お酒の飲みすぎだよ……」



繁雄「そうじゃの!ハッハッハ!で、どうしたんじゃ?……の前にお前さんの後ろにいるのは誰じゃ?」



高城「ん?な……なんて格好で出てきてるんだよ!!」



佐伯「いいじゃんか!男同士だし!……ん?もしかしてここに映っているのって解の探偵のおじいちゃん!?」



繁雄「ほっほっほ!そうじゃ!」



佐伯「す……すみませんでしたぁ!!」




ー間ー




繁雄「ん~、すこし厄介じゃの~……」



高城「厄介ってなにが?」



繁雄「まだ何が厄介かわからん……解!今日とった写真全部送ってくれ!!」



高城「わかった。じゃぁ、切るね……」



佐伯「なぁ、解……」



高城「なんだよ……」



佐伯「この建物の中に犯人がいるんだよな?」



高城「俺はそう思っている……」



佐伯「そうか」



高城「なんだよ……どうしたんだ?」



佐伯「怖い……怖いんだよ……」



高城「怖いって何が……」



佐伯「貴子……あいつの身にもしものことがあるかもしれねぇだろ?」



高城「それは修だって一緒だろ?」



佐伯「俺は別に……さ……けど、貴子が……」



高城「自分は死んでもいいように言うなよ!!」



佐伯「……!!」



高城「わ……わりぃ……」



佐伯「いや……解は悪くねぇ……寝るわ」



高城M「なんで……起きちまったんだよ……せっかくのクリスマスパーティーなのによ……」



ー間ー



高橋「ったく、誰だ……こんな時間に娯楽室に呼び出したのは……しっかし、厄介なことになっちまったな……まさか、源次郎さんが殺されちまうとは……」


(SE:扉の開く音)


高橋「誰だ!!なんだ、お前さんか……お前さんも呼ばれ……ムグ……ンーンー……」



ー間ー




佐伯「解!早く起きろ!!」



高城「……うるせぇ……」



佐伯「早く起きてパソコンを見ろって!!」



高城「は?こんな時に何言って……」



佐伯「いいから!」



高城「ったく……!?ちょ……何で壊れて……まて!俺の捜査セットが盗まれた!」



佐伯「なんだって!?」



高城「カメラと手帳は無事だな……捜査セットの予備は……あった!予備を持ってて正解だったな……」



中務「あ、解……おはよう……ってなにこれ!?解たちも!?」



佐伯「あぁ……中務たちも……って、貴子!?」



中丸「……アァ」



佐伯「どうしたんだ!貴子!!震えてるじゃないか!!」



中丸「……あ…………あ……」



中務「まって、私が説明する。昨日の夜中に貴子の叫び声が聞こえたから飛び起きたの。」



高城「叫び声?」



中務「うん……それで、貴子の方を見たら服を全部ぬがされてて……」



佐伯「ッ!?……顔は見たのか?」



中務「ううん……顔は見てないの……マスクみたいなのしてたから……あ、けどね……近くにあったスノードームを投げつけたら手に当たってさ……すぐに逃げていったよ?」



佐伯「その時に扉がこんな感じになっていたんだな?」



中務「うん……誰も入ってこないようにバリケード作ったもん!」



佐伯「そうか……お?もうこんな時間か……朝飯でも食べに行くか……」



高城「そうだな……真紀、着替えるから一旦外でてくれ」



中務「わかった……いこ?貴子」




ー間ー




田丸「皆様!心配いたしましたよ!!」



中務「朝食は9時まででしょう……」



田丸「そうは言いましてもお嬢様……この状況下、何があるかもわかりませんし……まぁ、何事もなかったようでよかったです……」



高城「ん?田丸さん、右手どうされましたか?」



田丸「え?」



佐伯「ほら、包帯まいてんじゃん!」



中丸「お怪我でも……されましたか?」



田丸「えぇ、調理中にまな板が落ちてきまして……その時に右手を負傷してしまい……」



中務「大丈夫なの?」



田丸「えぇ、問題ありません」



和子「あの……お話し中の所すみませんが主人を見ていませんか?」



佐伯「主人って……権蔵さんいないのか?」



平良「おはようございます。」



高城「平良さん。あなた権蔵さんと同じ部屋でしたよね?」



平良「えぇ……。実は彼、夜中ぐらいにお酒を買いに行くといってから戻ってきてないんです……」



高城「なんだって!?」



佐伯「解!いくぞ!!」




ー間ー




高城「俺は2階を探すから修は3階を探してくれ!!」



佐伯「わかった!!」



高城「くそ!どこだ!……ん?あそこは娯楽室……あれは!?血痕!!これってもしかして……」




(SE:扉の開く音)




高城「ごん…………うぶ!!」



高城M「そこには首と四肢をバラバラにされた権蔵さんの死体があり、部屋中には血しぶきが飛び散っていた。おびただしいほどの死臭に俺は、自らの口を覆ってしまった……そこには今まで見たことのないぐらいの血液が部屋一面に広がっていた」



佐伯「解!!見つかったか!?ひ……!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



中務「佐伯くん!!どうしたの!?」



中丸「修!?」



高城「くるな!!真紀たちは見ないほうがいい……権蔵さんは…………死んだ……」



中丸「え……」



和子「うそ……でしょ?……私の……主人が死んだって!!!」



高城「…………」



和子「答えなさいよ!!!主人は生きてるんでしょ!!主人をどこに隠したの!!答えなさいよ!!!」



高城「……あそこを……見てくださいよ」



佐伯「おい!!解!!」



高城「おれだって!!こういうことはしたくないさ!!だけど……和子さんは現実を見れていない……時には現実を突きつけるのも探偵の……仕事なんだ……」



和子「ふんっ、何が現実よ!!嘘に……嘘に決まって……!?あ……あな…………た……?うそ……でしょ?ねぇ……答えてよ……あなた……あなたぁぁぁぁぁぁぁ!!」



中務「和子さん……」



和子「いや……イヤァァァァァァァァァァァァァ!!あなた……先に逝かないで……逝かないでよぉぉぉ!!」




ー間ー




中務M「ママたちが階段を下りたのを確認した解は大きく息を吸い込み、捜査を始めようとした。しかし、それを私たちは見逃すわけはなく、解に役割がほしいと頼んだら私たちに振り分けてくれた。私と佐伯くんと貴子は和子さんのところへ行くことになった。」



平良「それでは、また検死をしますね」



高城「はい……首に線状痕……絞殺……か……」



平良「(遮るように)死因は腹部を斬られたことによる失血死で間違いなさそうですね」



高城「え!?失血死ってどういう了見です?線状痕があったから絞殺でしょう?」



平良「いえ……絞殺はあり得ません。見ていてください……腹を開きます……」



高城「うぶ……ん?内臓がない!ここって内臓がありませんでしたっけ?」



平良「そうなんです……ここには内臓があったはずなんですけど、それがすべてなくなっているんです……そして胸の方は……」



高城「肺と心臓がない!?」



平良「そう。これらを取り出した時におびただしい量の血液が体から出てしまい失血死をしたのだと思います。高城さん、今回も切り裂きジャックの犯行でしょうか?」



高城「可能性としてはありますね。切り裂きジャックの死体で内臓がない死体も出てきてますし。あ、そういえば死亡推定時刻はいつですか?」



平良「それが分からないんですよ……ここまで死体の損傷がひどいと……」



高城「確かに判別は難しいかもな……」



平良「ひとつ言えるとすれば、血液の固まり方から少なくとも5時間前にはすでに死亡していたものと思われます」



高城「5時間前ってことは……今が10時だから午前5時には死んでたということか……時間的にも今度は全員のアリバイなしか……ん?待てよ?あいつらなら何かわかるかも……」




ー間ー




高城「あ、和子さん!すみません!真紀たちはどこに……」



和子「真紀さんたちなら部屋に戻りましたよ……」



高城「その……なんて言ったらいいかわからないですけど……ご主人……」



和子「もういいのよ……私たち、さっきも話をしていたのだけど、探偵さんが来たから大丈夫だって心のどこかで思っていたのよね。その心のすきを犯人につかれてしまったのでしょうね。」



高城「そんな……探偵が来たから安全だという感情は誰もが持つ感情で、それに答えられなかった俺は……」



和子「それは違うわ。まだ、あなたは答えられなかったわけじゃないでしょ?この事件はまだ終わっていないのよ。探偵が諦めたらそこで事件は迷宮入りなのよ?」



高城「!?」



ー間ー




繁雄「探偵が諦めたら事件は迷宮入りじゃぞ……」



ー間ー



高城「そっか……今なら……ありがとうございます!!俺、この事件絶対に解決してみせます!!」



和子「じっちゃんの名に懸けて……ですね」



高城「……そうですね。絶対に許さないぞ……切り裂きジャック!」



和子「高城さん」



高城「はい」



和子「周子さんと私の無念。どうか晴らしてください」



高城「……必ず」




ー間ー



佐伯「はぁ~、俺たちにも何かできることってないのかなぁ……」



中務「そうよ!私たちにもできることがあるはずよ!」



中丸「でも、邪魔はしない方がいいとおもいますが……」



中務「何言ってんのよ!解だって、本当は手伝ってほしいと思っているはずよ!」



佐伯「そうだぜ!こんなきつい仕事、あいつだけに任せられるか……」



中丸「修……わかりました。だけど、聞いてみて彼が必要ないと思っているのならおとなしく待ちましょう」



佐伯「わかった!」



中務「えぇ」



高城「ただいま」



佐伯「(遮るように)解!なぁ、俺たちに何かできることはないか!?」



高城「!?おちつけって!どうしたんだよ!!」



中務「私たちね……ずっと話をしていたの……解だけが働いているのに私たちはこれでいいのかって……だから……さ……私たちにも何か手伝わせて!」



高城「そうだな……わかった!!協力してもらうとするか!!」



佐伯・中丸・中務「(喜ぶ)」



高城「それじゃぁ、真紀と中丸さんは周子さんと和子さんに昨晩の午前1時から午前5時の間に権蔵さんを見ていないかとその時間のアリバイを聞いてきてくれ!忘れないようにメモを取ることも怠らないでほしい。それが終わったら医務室に行って輸血パックの数を調べてきてほしい。もともとあった数は田丸さんに聞けばわかると思うから……あと、捜査が終わったら全員を食堂に集めてくれないか?」



中務「わかったわ!!」



中丸「メモは私がとりますね」



高城「修は俺と一緒に現場検証だ!気になったところを写真におさめてほしい。」



佐伯「死体慣れしてないけどわかった。」



高城「すべて調べ終わったら食堂に集合だ!じゃぁ、いくぞ!」



佐伯・中務・中丸「おう!(えぇ!)」




ー間ー




佐伯「相変わらずおっかねぇな……源次郎さんの部屋……」



高城「あぁ……修、写真を撮ってくれ。気になるところもすべてを教えてくれ!」



佐伯「わかった!」



高城「ん?これは……毒物反応?なんでだ?メモには……見つけた」



佐伯「解!!」



高城「どうした?」



佐伯「これ、なぁんだ!」



高城「それは……注射器!?」



佐伯「ゴミ箱を漁ってたら出てきたんだ!」



高城「それ、貸してくれ!!」



佐伯「あと、見つけたんだよ、明らかにおかしいところが……」



高城「それは何?」



佐伯「床の血痕が2種類あるんだよ!」



高城「は?」



佐伯「ほら、ここと……ここ……色が違うだろ?」



高城「やっぱりな……これは……ひょっとしたらひょっとするぞ……」



佐伯「な、お手柄だろ?」



高城「あぁ……お手柄だぜ!!この調子で権蔵さんのところも行くぞ!」



佐伯「おぅ!」




ー間ー




高城「この部屋にもあるな……」



佐伯「あぁ……あったな……切り裂きジャックの血文字が……」



高城「爪の中にあるこれは皮膚か……キットに装着してと……不一致……これを引き合いに出せば犯人はすぐにおちる……」



佐伯「いいの見つかったか?」



高城「あぁ……戻るぞ!」



佐伯「おぅ!」




ー間ー



中務M「私と貴子は、ママと和子さんに事件の夜についての話を聞いた。2人とも落ち着いており、解の事を悪くいうこともなく、むしろ解の行動力に感心していた。その時、4人での話に花を咲かせていた私たちの近くを田丸が通ったので、ママたちと別れ田丸に声をかけた。」



中務「田丸!」



田丸「ん?お嬢様方。どうされたのですか?」



中丸「あの、この建物の中にに輸血パックがあると思うのですが、知りませんか?」



田丸「えぇ、医務室にございますよ?」



中務「その輸血パックの個数とかわかる?」



田丸「わたくしの管理ではございませんので、正確な数はわかりかねますが……わたくしが昨日、医務室を掃除した時に見たのはひと箱だけでした。平良先生が使っていなければ、ひと箱残っているはずですが……」



中丸「ひと箱にどれぐらい入っていますか?」



田丸「確か15パックだったはずです。」



中務「わかった!!ありがとう!!」



田丸「お役にたてたのであれば光栄でございます。」



中丸「それじゃぁ、医務室に行きましょうか」



中務「そうね!」




―間―




中務「ここが医務室ね、薬品の臭いがすごいわ……」



中丸「そうですね……あ、この冷蔵庫の中に……」



中務「あ、本当だ!15パックちゃんとある!」



中丸「てことは輸血パックは1つも減っていないということですね」



中務「う~ん……」



中丸「……とりあえず食堂に行きましょう」



中務「うん」




―間―




高城「皆様、お待たせしました。今回は皆様の部屋にお邪魔させていただいて、不審な物はないかを調べさせてもらいます。」



田丸「不審なもの……ですか……」



佐伯「まぁ、凶器とか調べたいんだと」



平良「なるほど……いいでしょうそれでは、私の部屋をさきにどうぞ」



和子「私たちも調べてほしいわ」



高城M「そうして、俺は田丸さん以外のすべての部屋を調べた。平良さんは医療用品としてメスなどの刃物を持っていたが、それ以外は何もなかった。和子さん、周子さん、真紀、中丸さん、修の部屋も順当に調べた。そして……」



田丸「こちらがわたくしの部屋です。この部屋は物置部屋も兼ねておりますので、鍵はかけておりません。」



高城「どうしてですか?」



田丸「それは、基本的にわたくしは動いていないといけないので自室よりも監視部屋にいる方が多いためです。また、物置部屋ですので、誰でも部屋に入って物を持ち出せるようにしているのです。」



周子「負担をかけてしまってごめんなさいね。せっかくのバカンスなのに……」



田丸「いいえ……気にしておりません。それではどう……ッ!?」



高城「どうしたんです……な!?」



中務M「そこにいた皆は驚いてしまった。田丸の部屋にある机の上には、瓶詰された内臓、クローゼットの前には凶器で使われたであろう鋸が置いてあり、ゴミ箱には輸血パックの袋が入っていたのだ。」



田丸「な……」



周子「た……田丸?これは……」



田丸「ち……ちが……わたくしじゃない……わたくしじゃ」



佐伯「いやいや……この状況でそれは見苦しいって……」



中務「田丸……あなたがパパを」



田丸「ち……ちがいます!!お嬢様!!!」



高城「もしそうならその右手の怪我も不自然じゃないが……」



田丸「高城さん!?……あなたまでも……あなたまでもわたくしを犯人に仕立て上げるつもりか!!」



高城「現時点ではそう思ってもおかしくありません。」



田丸「!?……見損ないましたよ……お嬢様の事を任せたわたくしがばかだった!!!」



高城「そこまで言うなら、田丸さん……本当にやってないんですね?」



周子「聞くまでもないじゃない……この殺人鬼!!」



田丸「な……」



中務「返してよ……パパを返してよ!!」



高城「待ってください。まだ結論付けるのは早いです」



周子「どうしてよ!こんなにも証拠がそろっているじゃない。」



高城「田丸さんのものだという決定的証拠がまだないんです。それが出てからじゃだめですか?このままだと、罪のない人を逮捕してしまうかもしれない」



中務「それじゃぁ、解はこいつが犯人じゃないっていうの?」



高城「そうは断定できないが、候補の一人とみている」



田丸「……それでもかまいません。わたくしとしては無実が証明できればそれでいい」



中務「……」



周子「……」



高城「それではこれで解散ですね。また、何かわかったら連絡します」



中丸M「高城さんがそう告げると、部屋の中にいた皆はゆっくりと田丸さんの部屋を後にしました。真紀も周子さんも帰り道で気持ちを落ち着けたみたいで和子さんや私と話していました。」



高城「田丸さん、確認ですが、本当に、これらに心当たりはないのですね?」



田丸「あるわけないじゃないですか。こんなもの……どうしてわたくしが……」



高城「その腕の傷はどこで?」



田丸「え?朝お伝えしたと思いますが……」



高城「あぁ、そうでしたね……」



高城M「傷の事は本当のことを言っていたようだな……でも、これではまだ田丸さん犯人説が濃厚のままだ。とりあえずこの説で捜査詰めていくか」




―間―




高城「ただいま~」



中務「あ、お帰り~!」



中丸「コーラも用意していますよ」



高城「あぁ、ありがとう」



佐伯「それで田丸さんの件はどうだった?」



高城「あぁ、このまま田丸さん犯人説で行くしかないな。」



佐伯「そうか……あ。そういえば、中務たちの聞き込み、どうだったんだよ!」



中務「ん~、ママは夜中の0時ぐらいに先に眠っていたんだけどね……和子さんが、水を買いに2時ぐらいにロビーに行ったんだって……」



高城「ロビー?売店じゃなくて?」



中務「うん……ミネラルウォーターはロビーで買うことになってるの。それで、それを買った帰りに権蔵さんが血相を変えて三階に上がっていくのを見たんだって……」



佐伯「声はかけなかったのか?」



中丸「あまりに怖くて聞けなかったらしいです……それと輸血パックに関してですが、このセントラルに用意されている分に関しては全く使われていませんでした。」



高城「なんだって!?」



中丸「田丸さんが輸血パックの数を間違えるわけがない、ということは……」



佐伯「いや、待てよ!田丸さんの部屋に高橋さんの内臓があって、さらに輸血パックのゴミも見つかったんだろ?だから、田丸さん犯人説が濃厚だってのが解の推理だっただろ?」



高城「あぁ、そこがいまいちわからないところなんだけど、なんで田丸さんの部屋からそれらが出てきたのか。そこが田丸さんが犯人としてはあからさますぎる気がするんだ……確かにそういう犯人もいないことはないが……まぁ、田丸さんが精神錯乱に落ちていて平静を装っていたということで説明が付きそうだが……」



佐伯「あ、そういえば、貴子が襲われたのはどれぐらいだ?」



中丸「ごめんなさい……正確な時間はわかりません……けど1時過ぎぐらいだったかと……」



高城「1時過ぎか……」



佐伯「その時間に田丸さんが部屋に乗り込んできたか?ん~……解、何か見えたか?」



高城「あぁ……もうすこしなんだがなぁ……どうやって田丸さんが……まてよ?もしかして……これって……」



中丸「あ、そういえば……私、周子さんに呼ばれているのでそろそろ行ってもいいですか?」



中務「お母さんに?私じゃなくて貴子が?」



中丸「えぇ……どうも二人で話がしたいらしいので……」



中務「仕事関係の話かしら……まぁ、二人だけで話したいのなら、私は口出さないけど……」



佐伯「気を付けろよ貴子……」



中丸「心配しなくても大丈夫ですよ!」



佐伯「あぁ……」



中丸「それじゃぁ行ってきます!」



佐伯「……行ってらっしゃい」




ー間ー




中丸「周子さんの話って何でしょうか……仕事の話だとしたらどういえばいいのでしょう……。私……交渉苦手ですし……ッ!?あなたは……ング!?ン――ン――……ンー……」




ー間ー




佐伯「よし、それじゃぁ、菓子でも買いに行くか!」



中務「佐伯くんが食べ過ぎるから……」



佐伯「まてよ!俺だけじゃないだろ?……って解?」



高城「あぁ、すまない……どうしても腑に落ちないところがあって」



中務「腑に落ちないって?田丸が犯人ってことに?」



高城「そうなんだ。状況証拠的に田丸さんが犯人で間違いないんだけど、何かが引っ掛かって……」



中務「そういえば、田丸が輸血パックの管理は自分じゃないって言ってたような……」



高城「なんだって!?」



佐伯「お~い、いくぞ!!」



高城「わりぃ、すぐいく!……まぁ、とりあえず売店に行こうか……」



中務「えぇ。貴子の話立て込んでるわね……」



佐伯「仕事の話だろ?なら仕方ないんじゃね?」



中務「そう……ね……」



高城「とりあえず、中丸さんが帰って来るまでにいっちゃうか……」



中務「そうね!」




ー間ー



中務「ん?あ……ママ!!」



周子「真紀、どうしたの?」



中務「どうしたのじゃないよ!!ママこそ貴子に何の用だったのよ?」



周子「貴子さん?ん~……」



中務「ちょっとママ!!」



周子「そんなに大きな声を出さないでよ……私は貴子さんを呼んでいないわ。今から和子さんと買い物に行くのだけどそれまでの時間、一人でコーヒーを飲んでいたんだから……」



高城「ちょっと待ってください!一人ということは……確認なんですけど、中丸さんといっしょではなかったんですね?」



周子「え……えぇ……」



高城「中丸さんが……危ない!!」



佐伯「なんだって!?くっ!」



高城「修!!まて!くそ!真紀と周子さんは全員をよんで来てください!」



中務「来てってどこに!?」



高城「声のするほうにだよ!」



中務「声のするほうにって、ちょっと!解!解~!もう!大雑把なのよ!」




ー間ー




高城「修!!大浴場だ!!部屋から近くて誰でも入れる場所はあそこしかない!!」



佐伯「わかった!!」



中丸「イヤ……やめて……やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



佐伯「死ぬな……死なないでくれ……貴子―――――!!」




(SE:ドアを蹴破る音)




佐伯「貴子……貴子!!何で裸で……まて、バスタオルかけるから……」



高城「……まだ息はかすかにある……」



佐伯「本当か!?」



高城「あぁ……心臓マッサージと人工呼吸をするがいいか?」



佐伯「あぁ……たのむ!」



高城「1……2……3……4……5……6……7……8……9……10……(息を2回ふきこむ)1……2……3……4……5……6……7……8……9……10……(息を2回ふきこむ)」



中丸「……ケホ……ケホケホ……」



佐伯「貴子!貴子……よかった……」



高城「ふぅ…………あなたが犯人……切り裂きジャックだったのですね……」



???「…………」



高城「今回の事件の犯人があなたということに最後まで確信を持てませんでしたが……ピースはすべてそろった!!……さて、全員そろったことですし今回、濃霧島で起こった連続殺人事件の解決編といきましょうか……今回の事件は源次郎さん、権蔵さん、中丸社長あてに殺害予告が送られたことから始まったんだ。血文字で書いた殺害予告を送り付けることで、この3人を最初殺害する予定だったんだよ。しかし、犯人に誤算が起こってしまった。それは中丸社長の欠席だった。中丸社長が欠席したことで娘の貴子さんが来たことにより犯人は計画していた殺人事件を変更せざるを得なくなった。そして、クリスマスパーティーの中犯人は1人目の被害者である源次郎さんを殺害したんだ。その次に犯人は中丸さんを殺害する予定だった。だけどそれが未遂に終わってしまったんだ。」



中務「ちょっと待って!!もしかして、貴子が夜中に襲われたときって……」



高城「あぁ、おそらく中丸さんを性的に暴行したのち、そこで中丸さんを殺害して真紀に犯行を押し付けることが目的だったかもしれないな……」



中務「え!?私に……濡れ衣を……ちょっとあなた!田丸だけじゃなくて私にまで罪を着せようとしていたの?つくづく最低な人間ね!!あのときから何も変わっていないじゃない!!」



高城「中丸さんの事件が未遂に終わった犯人は権蔵さんを娯楽室に呼び出していたということもあり、すぐに娯楽室へと向かったんだ。犯人と二人になった権蔵さんはおそらく殺されるとは思っていなかったんだと思う……けど、犯人はそれを逆手に取り、権蔵さんを殺害した。」



和子「それじゃぁ、私の主人を殺したのは……」



高城「そうです……」



周子「だけど、それじゃぁ、なんで貴子さんはこの大浴場にいるの?」



高城「犯人としても焦ったのでしょうね……おそらく、彼女を性的に暴行しているときに顔を見られたと勘違いした犯人は、中丸さんを口封じのために殺害する必要があったのです。」



田丸「なるほど……あなたでしたか。何があったかは知りませんが、だからといってこのように下劣なことをするのはゲスの極みですな……」



高城「……おそらく犯人は貴子さんを溺死させた後、ノコギリを使って証拠隠滅をしようとしていたんでしょうね……これが事件の真相だ!!切り裂きジャック……いや……平良恵一!!あなたが切り裂きジャックの正体だ!!」



平良「…………」



佐伯「何とか言えよ!!この野郎!!」



高城「よせ、修!!」



佐伯「はなせ!解!あいつを……あいつを……」



高城「気持ちはわかる!だが、そんなことをしてなんになるんだ!!お前もあいつと同じ運命をたどるんだぞ!」



佐伯「!?わりぃ……とりみだし……」



中務「……ッ!?……なに……これ……」



高城「どうした真紀……」



中務「解……これって……その……」



高城「!?」



佐伯「た……いら……てめぇこのやろう!!」




(SE:殴打音)




平良「がはぁ!!」



高城「やめろ!修!!」



佐伯「てめぇ!何してくれてんだ!俺の女を犯しやがって!……許さねぇぞ!!(平良の首をしめる)ぶっ殺してやる!!!あいつの人生をめちゃくちゃにしたお前なんか殺してやる!!」



平良「……カ……ハァ……」



高城「やめろ!修!」



田丸「佐伯様!落ち着いてください!」



佐伯「離せ!離せ解!あいつを……あいつを殺してやらねぇと、俺の気がすまねぇ!!」



高城「修!気持ちはわかるが、ここで殺したらすべて終わりだぞ!!こいつの人生も……お前の人生も!!それに、ここでお前が事をおこして捕まったら、中丸さんは喜ぶか!?それが彼女を守ったことになるのかよ!!」



佐伯「……!?す……すまない……」



高城「いや、落ち着いたならいい……平良さん……あなたがしたことなんだ……わかるだろ?」



平良「……僕が犯人だという証拠はあるのですか?」



高城「証拠……か……それじゃぁ、源次郎さんの事件から振り返ろうか……まず、源次郎さんの事件での最大の謎は死亡推定時刻がパーティーの時間と被っていて全員のアリバイが成立しているということにあった。」



中務「確か、午後6時半~午後7時の間だっけ?」



高城「そう……真紀が言った通り午後6時半~7時と設定したんだ。しかしこの時間帯が間違えていたんだよ。」



平良「それは僕じゃなくてあなたが間違えたことでしょう?」



高城「確かに間違えたのは俺だ。だけど、俺はあなたが判断した死因から算出したんだ。あなたがそういう風に誘導したといっても過言ではないはずだ。」



平良「それなら、あなたが勝手に間違えたのを僕に擦り付けているといっても、過言ではないはずです。」



高城「なるほどね……それじゃぁ、俺の疑問を皆さんに見てもらいましょうか……すみません!場所を変えますので源次郎さんの部屋についてきてください。」



周子「主人の部屋に?でもあそこは主人の遺体しか……」



高城「とにかく来てください!」



和子「わかったわ……いきましょ?探偵のお兄さんの言うことよ?なにか考えがあるはずだわ」



佐伯「俺も行くぜ……」



田丸「えぇ……」



周子「そうね……わかったわ。いきましょう」



高城「きまりですね!それではついてきてください」



平良「…………」



田丸「逃げようとしても無駄ですよ……」



佐伯「もし逃げたらぶっ殺す……」



平良「ハァ……」



佐伯「貴子俺が守れなくて……ごめんな……よいしょ……いこうか……」



中丸「おさ……む……ごめんなさい……ほんとうに……」



佐伯「貴子は悪くねぇ……悪いのは平良の野郎だ。気にすんな……」



中丸「でも……でも……」



佐伯「今は気にせず、最後のシーンを見に行こうぜ!」



中丸「はい……」



佐伯M「くそ……平良の野郎め……絶対ぜってぇこのままじゃ済まさねぇ……」




ー間ー




高城「みなさん、この部屋に違和感はありませんか?」



周子「違和感といわれても……ねぇ?」



和子「あら?ここの点々の色が少し違うわね……」



高城「そう……実はここには2種類の血痕があるんです。」



周子「2種類……犯人と主人の?」



高城「いいえ……被害者の血液と輸血パックの血液ですよ……」



周子「輸血パックですって!?」



高城「そう。犯人はここにある血痕に輸血パックを使うことで死亡推定時刻の誤認をさせたんだ。」



平良「何を言うかと思えば……そんなことをしたからといって、何が分かるというんです?それでは僕が犯人という証拠にはなりえない……」



高城「確か最初に死亡推定時刻と死因を推測したのは、あなたでしたね?」



平良「……そ……そうですが?」



佐伯「どういうことだよ解!!今のが何だっていうんだ!!」



高城「修……確かこの部屋で注射器を見つけたよな?」



佐伯「あぁ……これだったよな?」



高城「貸してくれるか?」



佐伯「あぁ……」



高城「平良さん……これはあなたのものですよね?」



平良「し…………しらない……僕のじゃ……ない……」



高城「まだ否定するか……しかたない……それでは、いまから皆さんの指紋を採取するのでそれで確認させてください!」



平良「!?」



佐伯「いいぜ!採取してくれよ!」



中務「それで疑いが晴れるのなら……ね!」



周子「もちろん、協力するわ!」



中丸「私……も……」



和子「わかったわ!」



田丸「賛成です!」



平良「……チッ」



高城「それじゃぁ、さきに中丸さんの指紋からとるけど、いいか?」



中丸「えぇ……」



高城「ありがとう!……よし、とったそれでは順番に並んでください!」



ー間ー


高城「指紋が…………ない……?」



平良「ククク……クハハハハ!!僕が犯人だって?……笑わせんなよ!!ガキの探偵ごっこにつき合わせてんじゃねぇよ!!だいたい、なんで僕が中務会長を殺さないといけないんだよ!!僕は彼の担当医だぞ?それに、パーティーが始まる前に奥様に言われて会長の様子を確認した時はすでに死んでいて……ハッ!」



高城「あなたがパーティーの前に会長を見に行った時すでに死んでいたのですか……」



平良「あ……いや……」



高城「……おかしいなぁ……あなたはパーティー前の周子さんへの報告で……」




ー間ー




平良「会長は少し吐き気がするということでパーティーの前半は部屋で休んでいるそうです。」




ー間ー




高城「といっていただろ?どうして虚偽の報告をする必要があったんだ?」



平良「グッ……」



中務M「解ってあんな目するんだ……何もかもを見透かしてるような力強い目付き……膝が震えてる……」




ー間ー




高城「まず、源次郎さんは毎日午後6時に糖尿病のための注射を打たないといけなかったんだ。そしてその注射を打つのを担当していいたのが平良さん、あなただ。普通、インスリン注射は自分で打つことができるんだけど、平良さんを信頼していた源次郎さんは、平良さんに注射をお願いしていた。そして平良さんが午後6時、源次郎さんに注射を打ったんだけど、その注射の中身の薬品をインスリンから毒薬に入れ替えていたんだ。そしてそれを注射された源次郎さんは毒によって息をひきとった。それを確認した犯人は、源次郎さんの死を切り裂きジャックの殺人に見立てるように、源次郎さんの死体を切り刻み、血文字を残した。だけど犯人はそれでは終わらなかった。パーティーの始まる前に周子さんから報告を受けていた平良さんは医務室から輸血パックを持っていきそれを血痕の上にまいておいたんだ。おそらく、その輸血パックは平良さんの自前なんだろうね。これによってこの現場で、2種類の血痕ができてしまったことを相当あわてていたのか平良さんは見落としたんだ。そして平良さんは自分が医師であるということを利用して死亡推定時刻を30分遅らせて死因も偽装した。これが源次郎さん殺害の事件の真相だよ。」



平良「……まだだろ……まだだろ!!それではまだ推理だ!!決定的証拠がでていない……証拠は……証拠がないと認められ……」



高城「(遮るように)あるんだよ!」



平良「何!?」



田丸「ん?その機械は何でしょうか?」



高城「この機器はDNAを調べるためのものです。僕の探偵事務所が開発した持ち運び可能なもので、どこで何があってもDNA鑑定ができるものです。ここに、まず中丸さんに付着していた液体と爪垢そして源次郎さんと権蔵さんの爪垢と皮脂をセットしてと……」



平良「そんなことをして何になるっていうんだ!」



田丸「黙ってなさい!」



平良「おい!ふざけてんじゃねぇぞ!クソガキ!お前が……お前が!!」



田丸「ちょっと!!暴れないで……グッ……」



佐伯「暴れんなこら!」



平良「ハハハ!そんなクソみたいな機械つぶすんだ!そうすれば……そうすれば!」



高城「(遮るように)検査結果が出ました。」



平良「な!?」



高城「まず、源次郎さんの死体から検出された皮膚の皮脂から源次郎さん以外の人物のDNAが検出されました。そして権蔵さんの爪垢、中丸さんに付着していた液体および爪垢からも全くおなじDNAが検出されました。」



佐伯「ということは全員分のDNAをしらべれば一発だ!」



中務「しかもその貴子に付着していた液体は調べる人が限定されるんだよね?その人たちを調べてしまえばいいんじゃない?」



高城「それにその手袋の中には争ったときのひっかき傷と真紀にスノードームを投げあてられたときのアザがあるんでしょ?」



平良「まだだ、まだだ!じゃぁ、なぜ、そこにいる田丸の部屋から内臓などが見つかった!?おかしいだろ!?普通に考えて!!」



高城「あぁ、おかしいな」



平良「それに、あいつの右手、包帯が巻いてあるじゃねぇか!」



高城「じゃぁ、あなたの手袋の中身も見せてもらえませんかね?」



平良「え?」



高城「田丸さん」



田丸「はい」



高城「すみませんが右手を見せてもらえますか?」



田丸「えぇ……」




―間―



中務「なに?このあざ……」



田丸「お嬢様たちには、朝食前にお話したのですが、台所作業中にまな板が戸棚から落ちてきてしまいまして、ぶつけたのですよ」



高城「これについては調理スタッフにも確認しているから間違いない。さて、平良さん。あなたはどうなんだ?」



平良「あ……いや……」



佐伯「ほら、見せろよ!!」



平良「ちょ……やめろ!!」



―間―



佐伯「これは!?スノードームの……」



高城「これで決まりだな。まだ抵抗するか?」




ー間ー




平良「ここまで…………か……そうですよ……僕が切り裂きジャックですよ……」



高城「どうしてこんなことをしたんだよ……」



平良「僕は昔、たまたま源次郎会長が立ち寄った診療所で、医師として活動していたのです。その時の会長は豪気ではあったものの心労がたたって、何回もふらつくようになり甘いものの摂取がふえていました。そんな矢先、源次郎会長が倒れられたのです。救急車内で源次郎会長はこの診療所へと運ぶように言っていたらしくすぐに僕のもとへとやってきました。運ばれた会長を検査してみると糖尿病でした。軽度のもので投薬治療をすれば何とかなる状態だったので、一命をとりとめることができました。その後目を覚ました会長から中務家の専属の医師になってくれといわれたのでなることにしたんです。もちろん診療所経営をしながらね。そこで僕はある女性と出会ったのです。その女性はとてもきれいでまさしく僕のタイプでした。中学生とは思えないぐらい出来上がった性格とスタイル……僕の理想の奥さんにドンピシャでした。それから数か月、僕は僕の嫁になってほしくて彼女に猛アタックしたんです。」



高城「ちょっと待った。その猛アタックをしていた相手って……」



平良「そう……中学の時の真紀お嬢様だよ……」



高城「……それで?」



平良「何回もしたんだよ?けどね……僕が婚約の申し込みをすると真紀お嬢様は頑なに拒否するんだよ。僕自身、かなりイケメンなほうだと自負していたし性格も良いほうだった。けど……それがかなわない……なんでだと考えるうちに余計に彼女の行動……一挙手一投足が知りたい……彼女の細部が知りたいと思ったんだ。あの時はいろいろなことをしたっけなぁ。登校ルートを尾行したこともあったし、お嬢様の部屋に忍び込み、監視カメラや盗聴器……下着のチェックもしたっけ……。あ、下着は盗んではいないから……そこだけは信じてほしいなぁ……真紀お嬢様の勝負下着を見たときは僕のために買ってくれているのかと思って興奮したぐらいさ……けどさ……物事は踏み込みすぎるとばれるよね……ある休日の晩に彼女を夜這いしようとしたんだよ……中学生の彼女の家庭教師も僕は兼任していた関係で、中務家で勉強合宿をしたんだ。その日の晩の寝床が彼女と隣の部屋でね……その晩こっそりと部屋に忍び込んで彼女の服を脱がせたんだ……ボタンを一つずつ……ゆっくりとはずして……そしてボタンをはずし切って行為をしようとしたその瞬間……なんと真紀お嬢様が起きてしまったんだ。すぐに逃げたんだけど、僕の姿を起きてしまった真紀お嬢様に、さらに部屋から出たところを会長にも見られたんだ。翌日僕は会長から呼び出された。こっぴどく叱られたよ。そしてその後にこう言われたんだ……」




ー間ー




源次郎「警察につきつけると新聞に載ってしまい、お前の人生も大変だろう……そこでだ……お前が一生、この中務源次郎のドレイとして働くのであればこの件は水に流してやろう!」




ー間ー




平良「ってね……僕にとっては屈辱だったよ。僕が自分の人権を捨てることが条件なんだからね……だけど僕は飲み込んだ。そらそうだろ?あれだけ惚れた真紀お嬢様の近くにいられるんだからさ……それから数年……僕に対する会長の扱いは激化した。もう精神が壊れるほどに……挙句の果てには……」




ー間ー




源次郎「もう貴様にはあの診療所もいらんだろ……壊せ!」




ー間ー




平良「って言ってきたんだ。僕が汗水流して働いた診療所をだよ?僕はさすがにそれは拒否したんだけど、会長はその診療所をつぶすために、アルビド塗料の高橋権蔵と中丸組の中丸晋作の2人をつかって僕の診療所の評判を下げたんだ!!『平良診療所の平良はヤブ医者だ!!』『あそこの診察料はぼったくりだ!!』ってね……そんな噂が流れたことで受付や看護師が全員辞めて診療所をつぶさなければならなくなったんだ。その時に思ったのさ……中務たちをぶっ殺すってね……」



中務「そ……そんなことが……」



平良「その時の辱しめの復讐をしたんだよ!!何が悪い!!」



中務「そ……それじゃ……どうして貴子なのよ!!私じゃなくて、貴子なの!!貴子はあなたに何もしていないじゃない!!」



平良「あいつがしていなくてもその親がしているんだよ!!親が逃げたパーティーで娘が犯されて殺された……生きていたとしても、見ず知らずの男の種子が娘の中には入っている……これ以上の絶望があるか?そう思うだろ?彼氏さん?」



佐伯「どこまで……どこまで腐ってんだ!!お前はぁ!!」



平良「邪魔だ……それに、汚い手でつかむんじゃねぇよ……ガキ……」



佐伯「は?」



平良「ところで真紀お嬢様は誤解をしていらっしゃる!」



田丸「お前がお嬢様を語るんじゃない!!」



平良「邪魔だって言ってんだろうが!(回し蹴りをする)」



田丸「グハァ!」



佐伯「田丸さん!」



田丸「わたくしは……大丈夫です……」



平良「今はあんたと話していないんだよ……」



田丸「クッ……」



平良「あなたさまは僕がお嬢様を殺さないとおもっているようだがそうじゃない。あんたも殺すつもりだったんだよ。こいつの後でな。」



中務「な……なんですって!?」



平良「ククク……ハハハハハ!!あんたを殺して………その…………死体のすべてをホルマリンにつけて…………死ぬまで………愛でてやろうかと思ってよぉ!!…………そうすれば……そうすれば僕は…………あなたの一生の伴侶として…………そいとげられるんだぁぁぁぁぁ!!!!ヒャッハッハッハッ!」



中務「なんて……なんて男なの……復讐のために何人、傷つければ気がすむのよ!!」



高城「平良さん……俺はあんたが憎いよ……真紀にこんな思いをさせて……自分の欲望のために殺人をしてさ……」



平良「憎い?……なら殺すか?」



高城「違う!おれは殺さない。憎くても、辛くても、あんたと同じ位置には成り下がらない!平良さん……警察に自首してくれないか?確かにあなたは許されないことをした。だけど、罪をしっかり認めて償えば人生やり直せるんだよ!」



平良「笑わせないでくださいよ……それはただの殺人での話でしょ?僕の場合は連続殺人……今の法制度じゃ……僕は死刑だ……そう……生きられないんだよ!!」



佐伯「おいこら!どこに行く!!」



田丸「待ちなさい!!」



高城「くそ……追うぞ!!」



―間―




高城「ここは……医務室……!?」



平良「さてさてさ~て!私と共に火炎舞踏会で踊ってくれる皆様!!踊る準備はできてるかい!!シャル!!ウィー!!ダーンス!!ハハハハハ!!!」



中務「あいつは何を言ってるの?」



田丸「ん?皆様、何か臭いませんか?」



中丸「これって……」



佐伯「なんだ!?この臭いは……まさかガソリンとアルコールか!?」



高城「やめろぉぉ!!早まるなぁぁぁ!!」



周子「平良先生、もう……やめて……」



平良「さぁて……ここで実験です。ガソリンとアルコールが混ざったこの部屋でライターをつけるとどうなるでしょうか?」



和子「う……うそでしょ?」



高城「みんな!!後ろの窓から飛び降りろ!!そしてできるだけセントラルから離れるんだ!!」



中務「な……なんで……」



高城「早くしろ!死にてぇのか!!」




(SE:ガラスの破る音)




平良「アハハハハハハハ!!平成の殺人鬼……復讐の思いをもって闇に消える!!!お前たちの心のなかに永遠に残ってやるぞ!!平良恵一をわすれるなぁぁぁぁぁぁ!!」



ー間ー


中務M「客室の窓の下は池になっていたようで全員が無事着水することができた。そして解の指示で安全な場所まで避難したの。少ししてからセントラルのほうから 轟音が聞こえたのを私たちは確認した。その炎は黒煙に包まれてゆっくりと天へと昇っていったのだ。その後、私たちは先に逃がしていた従業員とともに西側の『ウエスタンホテル』で一夜を明かしたの。翌日、解は私と一緒にセントラルまで行くと殺されたパパと権蔵さん以外に別の焼死体をみつけたんだ。何とも後味の悪い結果に解は唇をかみしめ、私は苦しそうな表情をしている解に寄り添った。」



佐伯M「貴子の頭を撫でているときに、解たちがウエスタンホテルに帰ってきた。意識を取り戻した貴子から話を聞いた解はその話をメモに取ると貴子に頭を下げた。しかし貴子は気にしていないと返し、ただ窓の外を眺めていた。しばらくすると港に船が到着したと田丸さんから連絡が入ったので、解たちとともに港へと向かい船に乗った。その船の中では3企業の社長と社長代理が集まり仕事の話をしていたらしい。そのはなしのなかで、中務コンツェルン、中丸組、アルビド塗料の企業合併の話があり、社長には中務が、副社長には貴子が就任することで話がついた。」



中丸M「その一方で高城さんは田丸さんから解決報酬として100万円を受け取ることになりました。高城さんは断ったけれども、真紀からの気持ちも入っているといわれれば断ることができなかったようです。そして高城さんは中務家の専属探偵として中務コンツェルンに就職することになりました。翌年、高城さんが私と修と同じ日に真紀と結婚するのはまた別の話。毎年12月24日になると高城さんは複雑な気持ちになるとききます。彼はいまだ見つけられない答えをそこに置き忘れた気がしてならないのでしょう。しかしその答えが何なのかはもう誰もわからないのです。」



ー完ー

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