ついに転移!!説明が長いよ!!
天使と悪魔がにらみ合う。
「……一回あんたの事わからせなきゃいけないみたいね。」
「……できるだけ野蛮な手は使いたくありませんでしたが、貴方がそういう手段で来るなら私にも考えがあります。」
やばいやばいやばい。このままじゃただの口喧嘩じゃすまなくなりそうだよ……。アニメとかでよくあるオーラが見えるよ……俺が何とか宥めないと。
「まあまあまあまあ、喧嘩なんて野蛮な方法良くないよ!!」
「黒斗さんは黙っていてください。」 「あんたは黙ってて!!」
こ、怖すぎる……
「で、でも。喧嘩でしか解決ができない野蛮な女の人の試練なんて俺受けたくないなー。」
俺のそう語ると二人はぴくっと反応し、俺の方へと向いてくれた。ほっ……うまくいったぞ。
「……すぐ手が出る手段に頼るなんてやはり悪魔は野蛮ですね。嫌になります。」
「はぁ?それを言うならあんたもでしょ。……で、じゃああんたはどっちを選ぶのよ。」
「そ、それなんだけどさ俺、使命の内容も、二人の名前もまだ全然教えて貰ってないんだよ。せめてそれぐらいは教えてほしい。」
「……そうですね、名乗る事を忘れるとは失礼しました。私は第十三位階天使、ミカエルです。細かい位階などは分からないと思うのでそのままミカエルとお呼びください。」
「私は第十六魔界総領、マスティマよ。好きに呼びなさい。」
「なるほど、やっぱり二人とも本当に天使と悪魔なんだね。」
「ええ。」 「はい。」
「そんな二人がなんで僕をわざわざ異世界に?」
俺が疑問を口にすると、ミカエルは率先して説明を始めた。
「……それについては私から説明させて頂きます。」
マスティマも、不承不承といった様子でミカエルに説明させる。
「黒斗さんも理解している通り、貴方達の住んでいる世界とは別に、幾つかの様々な世界というものが存在します。」
それは俺もなんとなくわかる。そもそも異世界が無いと転生も転移もあり得ないからな。
「そして私達天使と悪魔といった存在は、それらの世界に囚われない半分概念的な存在なんです。様々な世界の知性体の精神活動によって生み出された、情報生命と言えば分かりやすいでしょうか。」
「うーん、よくは分からないけど君たちは色んな世界を行き来できる存在ってこと?」
「まあ、その認識でも間違ってはいません……そして、これが本題なのですが、私たちは知性体の精神的なエネルギーを燃料にして存在しているのです。」
「……精神的なエネルギー?」
「ええ、貴方たち知性体は感情を発露するとき大きなエネルギーを生み出します。それらを頼りに私たちは生きているんです。」
「あんたの世界に存在する多くの神話や伝承は私達天使や悪魔が干渉することで意図的に感情エネルギーを回収しようとした結果の産物よ。」
なるほど、難しい事の理解は出来ないが、彼女たちが人間の感情を必要としていることは分かった。
「でも、じゃあなんでわざわざ俺を転移させる必要があるんだ?感情を動かすなら別に元の世界でもできるんじゃないの?」
「実は、貴方が元居た世界で感情を私たちが操るのはもうだいぶ前に禁止されてるんです。」
「あ、そうなの?」
「ええ、あんたの世界は天使と悪魔が干渉しすぎて全人類滅亡しかけたこともあったから、もう私たちが触れちゃいけない事になってるの。」
「え?」
そんなことあったの??
「これからあんたは歴史で習うはずだったけど、意外とあんたらの世界ってヤバかったのよ?二回ぐらいは滅亡してもおかしくなかったくらい。」
「そ、そうなんだ……」
「コホン。まあそういう訳で私達は人の感情を貴方たちの世界以外から集める必要が出たんです。……そして、前回の反省を生かして直接介入することも止めました。」
「ん?」
「……天使は直接知性体に干渉する訳でなく、適当な人間。特にその世界に関係ない異世界人に力を授けて感情を集めてもらうことにしたんです。」
「その世界の人間だと、私情で世界を滅茶苦茶にしかねないからね。それは悪魔も一緒よ。」
な、なるほど。それで僕が適当に選ばれた訳か。
「それで、天使と悪魔って集める感情は違うの?」
僕がそう言うと、興奮した様子でミカエルがまくし立てる。
「勿論です!!天使は悪魔なんて言う野蛮な種族と違って人にとってプラスな感情を集めています!!私達天使は人の喜びの感情を回収しています。」
「ふん、その感情を生み出すためには何でもしていいと思ってる奴らがよく言うわね。私達悪魔は人の負の感情、悲しみや絶望といった感情を回収してるわ。」
「なんですって?」
「事実を言っただけよ。私たちが不幸にした人間の数より、あんたらが殺した人間のほうが多いんじゃない?」
二人の間に再び険悪な空気が流れる。
「落ち着いて!!っていう事は二人が俺に与えようとした使命って?」
「はい、私の使命は知性体を幸福にすることです。黒斗さんにはぴったりの使命だと思います。勿論天使の完全なバックアップも保証しましょう。」
「私の使命は知性体を不幸にすることよ。あんたには最高の仕事だと思うわ。私もバンバン力を貸してあげる。」
「「それで、結局どっちを選ぶのですか(選ぶの)?」」
ふっ……ここまでの説明で、既にどちらを選ぶかなんて、決まってる。そんなの簡単だ。
「人を不幸にする仕事なんて、ずっと続けたら鬱になりますよ。それに引き換え天使の仕事はみんな笑顔の完全ホワイト!!それに公私ともに私が慣れない異世界で黒斗さんをお世話します。」
「人を幸福なんてつまらないし、何より聖人ごっこなんてすぐ疲れちゃうわよ。私達悪魔の仕事のほうが楽しいしあんたには合ってると思うけど?そ、それに私があんたの事をお世話してあげたりしないこともないかも……ね?」
俺の……答えは……
「二人の使命、どっちも引き受けた!!二人とも、俺についてこい!!」
そう言うと、俺たちが今いる世界が白い光に包まれ、二人の姿が見えなくなる。二人からは各々はあああああああだのなんですかそれはだのと言った言葉が聞こえたが、そんなの知るか!!急に美少女二人から一人選べなんて言われて即答できるわけないだろ!!こうして、俺は結構な時間を経て、完全に異世界に転移したのだった。
「行くぜ異世界!!」