やめて!!俺の為に争わないで!!
「で、これっていったい何なんだ?なんで女神枠が二人いるの?」
俺こと天塚黒斗は悪魔っ娘(暫定)に吹き飛ばされた後、何もなかったかのように立ち上がり二人に疑問をぶつける。頬はひりひりと痛むがそんな事を気にしている場合ではないと俺の何かが囁いている。
「わ、私の体を嘗め回すように見た後とは思えないほどの真顔ね……それでもあんたが初対面の女の体を視姦した事実は揺るがないんだけど。」
「視姦だなんてそんなまさか。フェミニストを自認する紳士の俺が初対面の女性を性的な目線で見るなんてありえないありえない。」
「それにしては鼻の下が伸び切っていたようですけど……」
悪魔っ娘と会話していると、天使っ娘(こちらも暫定)から指摘が入る。痛いところを突いて来たので華麗にスルーしよう。
「ま、そんな俺が二人を性的に見ているかどうかなんて言うどうでもいいことは置いておいてさ、本当にどういうことなの?もしかして二人で一緒に僕を召喚したとか?」
俺がそう言うと、天使娘も悪魔娘も顔を曇らせる。しばらくどんよりとした空気が辺りを包んだ後、ため息をついて天使娘が口を開いた。
「……さすが趣味がネット小説を読みふけるオタクなだけあって、召喚されたこと事態は当たってます。……ただ、本来は二人で召喚する予定ではありませんでした。」
勝手にオタク認定されていることに疑問はあったが(オタクなので何も言えない)、そんなことよりも俺は彼女の言っている意味を詳しく聞く。
「二人で召喚する予定じゃなかったって……じゃあどうして今俺の目の前には二人の美少女がいるの?」
「びっ美少女……ふんっ!!当然ね。あんたのその殊勝な態度に免じてなんで二人ここにいるのか教えてあげる。それはそこにいる天使が私の召喚に割り込んできたからよ!」
「わっ割り込んできたのは貴方です!!私が長い間目を付けてた人の召喚を貴方が邪魔するからこんなことに……」
「それはあんたでしょ!!ふんっこれだから天使って嫌なのよね。まるで悪いことは全部悪魔のせいみたいに考えてるんだから。」
「なっ!!……ふぅ、これだから悪魔は嫌ですね。直ぐ天使を目の敵にして、自分の卑しさに気付いてないんじゃないでしょうか。」
「なんですって!?」
「事実を言ったまでですが?」
は、はわわ……なんだか美少女同士がガチの喧嘩を始めちゃったぞ……。俺この女同士の口げんかの雰囲気超苦手なんだよな……無理に伸ばしたゴムが切れる寸前の感じって言うか、風船が割れる寸前の緊張感って言うか……。
「ま、まあまあ落ち着いて。つまり今までの話をまとめると、二人が同じタイミングで俺を召喚したってことでしょ……そんな偶然あるんだな。」
依然険悪な空気のままだが、俺がそう言うと二人は言い合いを止めこちらのほうを向く。良かった……割と真面目に怖かった……。
「……まあ、話をまとめるとそう言うことです。それで、貴方はどっちの使命を背負いますか?」
「え?」
どういう事?
俺がぽかんとしていると、しびれを切らしたかのように悪魔娘(確定)が口を開く。
「私の使命か、そこの陰険天使の使命か、どっちを選ぶかって聞いてんのよ!!」
これって、もしかして私とこの娘、そっちを選ぶのかってやつか!!おお、一度は経験してみたいと思っていた出来事がついに俺…に……も………。
「は、黒斗さんが悪魔の使命なんか背負う訳ないじゃないですか。彼は純真な心をもった清らかな人間なんですけど??」
「はぁ?こいつの事何にもわかってないのね。こいつは他人が苦しんでいるのを見て喜ぶ最っ高の鬼畜なんですけど??やっぱ天使の目は節穴なのね。」
「は?」
「はぁ?」
うーん、胃が痛い。