表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「キラキラ望遠鏡」

作者: 月影 わたる

シナリオ形式です。

・仕組んだのはどっちだ?勇気を出して好きな人に尽くすことになった少女、恋を動かして、学校中を巻き込む騒動を起こして恋を成就させていくふわふわの学園ラブストーリー。

「キラキラ望遠鏡」・登場人物表

(さかい) ののみ(16~18)女子高生

酒井(さかい) (しゅう)(17~18)男子高校生・サッカー部員

久美(くみ)(17~18)女子高生

菜穂(なほ)(16~18)女子高生

(たか)(16~18)男子高校生

玲奈(れいな)(16~18)サッカー部マネージャー

(けん)(17~18)男子高校生・サッカー部員

ののみパパ(46)会社員兼業農家

ののみママ(46)同専業主婦

姉 みみん(23)会社員(都会に住む)

妹 ららか(12)小学生

愁父(48)宮大工棟梁

愁母同専業主婦 12年前死亡

るり子(73)祖母

愁妹 美眸(12)中学生

愁叔母(42)

筒居(つつい)(23)サッカー部コーチ

サッカー部員(16)



1.河原 昼間

   河原 昔

   石を拾う小さな女の子・・男の子に拾った白い小石渡す。

   (光り輝き、さざめく水面)

   XXX

   同じ河原 今

   石を拾う制服の女子生徒。

   川の水面を手の望遠鏡で覗いている。

ののみの声「手でこうやって、望遠鏡を作って、覗いてごらん、

     未来が見えるかも・・・」


2.お寺 夕方 薄暗くなるころ 冬2月 2年後

   にぎやかな参道前、ライトアップ(五色)された寺

   純白の白無垢風ドレス、小石のラリエットの角隠しの女。

   (うつろな目)歩く、誰かがぶつかり、しゃがみこむ、

    取り囲む観光客たち。


【転がり出した石】エピソード1

3.高校のグラウンド・午後4時・外 2年前 6月 高2

   脇の小屋の影。

   手の望遠鏡を覗く制服の女子生徒、ののみ(16、高2)、

菜穂(なほ) 「(小声)ねぇ、片思いって辛くないの?」

   (突然)ののみ背後、同じ制服の菜穂(16、高校2年生)

ののみ「(そのまま、覗いている)辛くないよ!こうやって

   望遠鏡で見ると未来が視えるんだよ、

   彼の幸せそうな笑顔が視えるんだ!」

菜穂 「そうなんだ!私も覗いてみよ、見えるかな?」

   手で望遠鏡を作り覗く菜穂。

ののみ「(慌てて)ダメだょ、彼を覗いたら!」

   と、振り返りながら(三つ編みが揺れる)。

菜穂 「ねっ、どの子?何番?10番でしょ!」

   サッカーボールを追いかける背番号10番

ののみ「うん!」

   と、再びグラウンドを見つめる。

   菜緒、ののみの正面に立つ。

菜穂 「私は菜穂、クラスは違うけど同級生だよ、

   いつもコソコソしてて面白いね!」

   ののみの顔を覗き込む菜穂。

ののみ「・・・面白くはないよ」

菜穂 「ねぇ、告白しちゃえば!」

   がっくり肩を落とすののみ(うなだれる)。

ののみ「告白!(ため息)しようとしたよ何度も。手紙もいっぱい

   書いたし、バレンタインなんか・・・もうパティシエになれ

   るくらい!」

    XXX

   回想 ののみの家 台所

   チョコレートを仕上げるののみ

   (LOVEの文字の歪んだチョコレート)

    XXX

菜緒 「何年も?すごいね」

   青い空、白い雲が流れていく。


4.同ベンチの周り 6月 高2

   サッカーする選手たち。

   遠巻きに見ている制服の女の子達。

   女の子達の間から突然飛び出すののみ。

   髪飾りの三つ編みを乱してののみ、愁(17、高2)

   の足元に倒れ込む。

ののみ「・・・あのぉ」

   愁の顔を仰ぐように見る。まぶたをパチパチさせる。

   子猫を見る目で見降ろす愁。

   ののみ、立ち上がるが、愁の目の前だ。

ののみ「お、お、お願いします」

   お辞儀をすると、愁の胸に頭突きをしてしまう。

    XXX

   回想 ベンチ前 直前

   ののみの手を引いてベンチの近くに行く菜穂。

菜穂 「行こう、行こう」

   ののみの腕を強引に引っ張りながら。

ののみ「ひっ、ひっひっ・・ぱぁ・・ら・・な・・い」

   ののみ、ほとんど横っ走り。

   菜穂に気づいて近づく愁。

   ののみを、まるでハンマー投げのように、力いっぱい

   振り放す菜穂。

   旋風を巻き起こしながら、回るののみ。

ののみ「あっれ~・・・」

   XXX

   愁、胸を押さえて、

愁  「・・・いてて」

   ののみの両肩を掴んで、自分の胸から押し返す愁。

   砂まみれになっているののみ、三つ編みが解け爆発

   している髪。

   愁は、ののみの全身を上から下に見て。

愁  「(あっさり)無理」

   ベンチでタオルを選手に渡している女の子に手を振り。

愁  「玲奈!」

   振り返ったのは超美人!ミニスカート姿。

愁  「知らないの?」

ののみの声「この高校では、NO1女子がサッカーのマネージャー、

     歴代そうやって決められていたのだ・・」

    XXX

   ののみの妄想 グラウンド

   ミニスカート姿のののみ、愁にドリンクを差し出すが無視

   される。

   玲奈(16、高校2年生)に選手たちが群がる。

   愁にドリンクを渡す玲奈。

    XXX

愁  「解った?、無理だろ」

   XXX

   校庭の脇の小屋にとぼとぼと、カムバックするののみ。

   菜穂がいない。小屋の周りを一回りしながら。

ののみ「(泣きべそ)菜穂ちゃん・・・」

5.競技場 薄暗い夕刻 6月 高2

   催し物の準備をするスタッフたち。

   二階の観客席に座るののみ。

ののみ「(溜息)ハァ・・・」

   飲み物を持って階段を降りてくる菜穂。

   XXX

   横に座り飲み物をののみに持たせる菜穂。

菜穂 「どうぞ飲んで、どうだった?」

   隣に座り、ジュースを飲む菜穂。

ののみ「(うつむいて)マネージャー希望と間違えられた

    かも・・」

   口に含んだ飲み物を吹きそうになる菜穂。

   回想 フラッシュバック

   玲奈のキラキラしたミニスカート姿。


6.ののみの部屋(夜) 6月 高2

   可愛い小物やピンクが多いののみと妹の部屋。二段ベッド。

   女の子らしいモノの中に、数々の石達、そして、机の上に、

   お弁当ノートと日記帳、砂時計、万華鏡、愁の石。

   愁の石、逆三角形の10cmほどの石に、3分の2ほどまで

   の袋。その袋の紐に「愁」と書いた札。

   日記を書くののみ。

ののみの声「今日初めて、愁君とお話しできました、菜穂さんの

    おかげです、サンキュー!片想いで良いって思ってた

    けど、やっぱり好きになって欲しいよ!がんばれ私!!」

7.蔵造おやき店 日替わり 6月 高2

   テーブルに座り、だべる久美とののみ。

久美 「告白したって(大声!)、あんなに、うじうじしてたの

   に!」

ののみ「菜穂って子に押されたから・・・正確には告白できてない

   かな、マネージャー希望と思われたみたい」

   大口でおやきにかじりつくののみ。

久美 「告白したってことでいんじゃない、愁君って、硬派って

   いうか、草食系男子代表でしょう、結果は予想通りでは

   あるね(うなづく)」

ののみ「・・・(噛んでる)」

久美 「これ見て、隠し撮りだけど・・・」

   スマホの画面を、口をモグモグしている、ののみに見せる。

   スマホ画面の中、男子の写真をメクっていく久美

久美 「彼がナンバーワンでバスケ部、2番バレー部、3番駅伝

   (早送り)・・・以上トップテン」

   言い終えると、どや顔の久美。

ののみ「あれ?、愁君は?、この順序って?」

久美 「これは私の決めたランキング(笑い)、実際の人気

   でわ・・・、サッカー男子は、上位だろうね!」

    XXX

   フラッシュ ののみの回想 グラウンド

   練習するサッカー選手たち。

   愁の顔以外ぼやける。

    XXX

ののみ「愁君って何番かな、背番号と同じ10かな?」

久美 「じゃトップテンに入れとくね」

   スマホ画面 愁のサッカー中の写真。

久美 「まぁ、推薦枠で」

   とスマホを操作しながら。

ののみ「チェ!推薦で、女子のランキングって誰が決めたの?」

   と、頬をしぼめて、ジュースのストローを吸い上げ、おやき

   2個目を頬張るののみ。

久美 「さぁ、男の子達で投票したとか・・かな?男の子って器

   小さいからね!何でも比べたがるのょ」

    XXX

   フラッシュ 回想 グラウンド

   玲奈のキラキラしたミニスカート姿

ののみ「応援したいのは判るけど、ミニスカでなくても・・

   セクハラ!」

    XXX

   フラッシュ ののみの妄想 グラウンド

   ミニスカ姿で愁にドリンクを差し出すが無視されるののみ。

    XXX

久美 「(指を折って)チァリーダー・レースクイーン・

   アイドル、振袖・・・男って女に応援されたいんだよ」

ののみ「振袖で応援するって?何」

   と、久美の薬指を掴んで揺らす。

久美 「痛いよ」


【恋は試練】エピソード2

8.教室内(授業中) 6月 高2

   自分の机から、窓の外の景色を見ているののみ。

   (飛行機雲が流れている)

   フラッシュ XXX

   回想 グラウンド

   愁の顔を仰ぐように見るののみ。

   子猫を見る目で見降ろす愁。

   XXX

   前の席から回ってきた、メモ片を受け取るののみ

   メモの文字[駅裏公園7時、愁]

   まぶたをパチパチさせ、反射的に立ち上がる。

   椅子が後ろの机にぶつかる。

   愁の背中を見つめ、口を半開きのののみ。

   後ろの生徒たち、ののみをいぶかし気に見る。

   教師、黒板に向かっているので気付かず話している。

ののみ「あぅ、い・い・天・気・・」

   と、周りの雰囲気を悟って、スローモーションで椅子に座る。


9.駅裏の小さな公園(薄暗い夕方) 6月 高2

   (小さな雑草の花)スマホを向けるののみ、背後に愁

愁  「それオオイヌノフグリだよ、ただの雑草!」

ののみ「この青キレイ、優しい青だよね(スマホを観る)」

   ののみ立ち上がると愁の目の前。

   ののみの顔に、顔を近づけ、唇を凝視する愁。

   眼を閉じ(薄目)、あごを出すののみ。

愁  「リップ?はみ出してない?」

   愁、人差し指で、唇のスイッチを押す。

   指を離すと、唇が指にくっついてくる。

    XXX

   フラッシュ 回想 化粧室 直前

   手が震え、口紅がはみ出すののみ。

    XXX

愁  「あぁ、ワリ、明太子かと思ったぞ・・からし・・」

   手で唇を拭くののみ。

愁  「昨日の話だけど・・・良いよ!俺の専属マネージャーなら

   だけど・・」

ののみ「え、専属って!・・・」

   スマホを操作し、(専属)を検索する、ののみ。

愁  「(遮って)専属契約、俺だけのってこと」

   と、愁、スマホを操作するののみのほほを両手で挟む。

ののみ「もっ、もちろん・・なります専属!」

   挟んだ手をさらに狭める。

愁  「じゃぁ、明日の昼飯から頼むな」

   暗がりに消えていく愁、後姿を見送るののみ。

ののみ「昼飯?」

   スマホを操作しようとするが。

ののみ「あぁ・・・」

10.ののみ家、玄関(その日夜) 6月 高2

   帰宅するののみ、玄関に靴を脱ぎ散らかして駆け込む。

ののみ「ママ!(叫ぶ)お弁当箱!カワイイの出して」

11.ののみの家のキッチン(深夜~早朝) 6月 高2

   机にお弁当箱(花柄)。

   スマホを見ながら書くののみ。

   ノートにお弁当中身の完成予想図とレシピ。

ののみ「よしできた・・・やばい、もう作り始めないと・・・」

   時計が4時を指す

    XXX

   まな板でニンジンを刻むののみ。

    XXX

   フライパンで炒め料理をするののみ。

ののみ「(調味料を入れ)愛を注入」

   料理をつまむ。

ののみ「しょっぱい(!)水足しとこ・・・」

    XXX

ママの声「あらぁ、派手にやってるわね」

   散らかされたキッチン。

ののみ「(汚い口元)ママ、手伝って・・・」

ママ 「がんばるわね」

   ののみとママ、話しながら料理する。

    XXX

   完成したお弁当、窓からの朝日

ののみ「さあ食べて」

12.学校のサッカー部、部室 休み時間 6月 高2

   愁の前にお弁当を広げるののみ。

ののみ「一生懸命作ったんだよ、卵焼きが甘いのは、我が家の

   味ってやつで・・・」

   ののみの話は聞かず、ペットを飲んだり、がっつく愁。

    XXX

愁  「うま(!)いいね!、これ冷凍食品じゃないよね、

   やっぱり手作りはうまい、明日もよろしく」

   あっという間に食べ終わると、弁当箱を置きっぱなしで、

   部屋から出ていく、愁(始業のベル)

   残された空っぽのお弁当箱。ボー然とするののみ。

ののみ「はやぁ・・・、感想は?、味分かってるのかな・・・

   あっ、やば・・・授業はじまってるし・・・」


13.河原 (夕方) 6月 高2

   夕焼けのオレンジ色が水面に反射してキラキラ光る。

   石を積み上げているののみ、背後から愁が来る。

愁  「(川に向かって)風が気持ちいい」

   立ち上がるののみ。

ののみ「ほんと、キラキラしてキレイだね!」

   手で双眼鏡を作って、その水面を覗くののみ。

愁  「ここに来ると色んなこと思い出す」

   と、ののみの横で、さらに石を積み上げる。

ののみ「楽しい思い出?」

愁  「まぁね(水面を見ている)」

    XXX

   ののみの胸にサッカーウエアやジャージを押し付ける愁。

愁  「これ洗濯して、乾かして、明日持ってきて!」

ののみ「乾かしてって無理だよ、家、乾燥機ないし、それに徹夜で

   寝てないし・・」

愁  「あっそ・・、いいよ、もう」

   行きかける愁。

ののみ「あっ、待って待って!やります、命かけて!」

愁  「じゃ、これな」

   ののみのおでこを人差し指で、押す愁。

愁  「スーパーウーマン、よ・ろ・しく・・・」

    XXX

   パンパンに膨らんだのバック、たすき掛けにするののみ、

   猫背だ。

ののみ「・・・(重い)」

   親指と人差し指で、Lを作る愁。

   帰りかける、ののみの背中にピストルにして向ける。

愁  「(バァーン・・・)」


【スコットホルム症候群】エピソード3

14.ののみの部屋(その夜) 6月 高2

   机で日記を書くののみ。

ののみの声「愁君!お弁当おいしかったかな?今度感想聞かせ

   てね。今までの片思いの時とは全く違う、石の上にも

   三年・・待った甲斐があった!」

   おでこを指で触って、愁の石を押す。

    XXX

   ののみの妄想

愁  「俺のスーパーウーマン!愛しい人」

   ののみを抱きしめ愁、キス・・・。

    XXX

   コインランドリーで洗濯しているののみ。

    XXX

   携帯プレーヤーにCD音楽を聴きながら録音しているののみ。

   家でお弁当作っているののみ。

    XXX

   スマホにお知らせが一件、(送信先、久美)

   「最近すぐ帰っちゃうけど、明日話せるかな?」


15.雑居ビル エレベーターホールの前 (早朝) 6月 高2

   椅子に座り待っている久美(16、高2)に(手を振り)合流

   し隣に座るののみ。

久美 「学校中の噂になってるよ、ののみが宅配弁当屋とクリー

   ニング屋してるって!」

   スマホ画面をののみの眼前に突き出す久美。

   スマホ画面 弁当を食べさす写真、愁にバックを押し付け

   られる写真。

ののみ「・・・」

久美 「なんでこんなこと・・・」

   スマホ画面をののみの前に、さらに目に近づけて。

ののみ「愁君のお世話焼いてるだけ!」

久美 「それが家政婦化されてるって言うんだよ」

ののみ「スーパーウーマンだって!」

   ののみの顔を、まじまじ見る久美。

久美 「アラフォー主婦ですって顔してるし、生活感丸出し

   だぞ・・・」

ののみ「愛って・・・辛抱だよね」

久美 「・・・」

   拳を突き上げ、すくっと立ち上がるののみ。

   カチューシャがずれるがおかまいないし。

ののみ「転がり出した石は、もう止められないんだょ、突っ走る

   しかないのさ!」

   見上げる久美。

久美の声「なんとかしなきゃ・・・」

愁の声「いいだろ、どうだって」

16.愁の家 日替わり 6月 高2

   脱衣室、愁と美眸(妹12)が言い争う。

美眸 「私のかごに、洗濯物入れないでって言ってるでしょ」

愁  「入れてないし・・・」

美眸「親父くさいのが移る(かごをたたく)」

愁  「小学生の癖に色気づいてんなよ」

美眸 「小学生じゃないもん、中学生です~、この前なりました、

   りっぱな女です・・・(洗濯機を指差す)自分でやってよね、

   自分のは・・・」

愁  「洗ってもらえるから・・・」

美眸 「おばあちゃんにやらせないでよ、年なんだから」

愁  「ばあさんじゃないよ」

美眸 「誰に、(まさか)彼女とか・・・」

愁  「マネージャー」

美眸 「マネ・・・そんな事してくれるの」

愁  「弁当も作ってくれるし」

美眸 「なにそのマネージャー?」


17.学校講堂 朝 6月 高2

   ひな壇、幕の裏に隠れるののみ。

   探しに来た愁。

愁  「逃げるな、バック(バック持ち手を引っ張る)」

ののみ「・・・(さらに奥に隠れる)」

愁  「バック・・・」

   立ち上がるののみ。

ののみ「私、家政婦なんて嫌!石に立つ矢と思ったのに!」

   と、愁の胸にバックを押し突けるののみ。

   ひな壇の1/3位まで押してします。

愁  「家政婦?馬鹿だな、俺にとってはスーパーウーマンだって

   いったろ・・・」

   ののみ押し倒され、押さえ込み状態の愁。

    XXX

   (音もなく)講堂に入ってくる生徒達。

   校長、二人の横に来る。

校長 「全校集会・・・」

   ステージを見ている(無言、冷たい視線)生徒達。

   起き上がり唖然とする二人。

   スマホを操作する生徒数名。


18.ののみの部屋(夕方) 6月 高2

   二段ベッド下段で寝そべりスマホを見るののみ。

ののみ「変な写真撮られちゃったな、でも・・・ツーショットだね、

   愁君!、芸能人みたいだね」

   ベッドで全身を、くねくねさせるののみ。

   愁の石にスマホを見せる。

ののみ「く~、なんだろ、ときめく~」

   その時、愁から電話(ウエディングソングの着信音)。

ののみ「あっ、愁君。ナイスタイミング~ぅ」

   親指を立て、スマホ画面をタッチ。

愁の声「土日は試合もあるし、塾もね、だからゆっくり休んで、

   月曜日はまた弁当頼む、それとDVDと週刊漫画!」

ののみ「DVDは何系がいいの?、SF?、アクション・・」

愁の声「任せるよ、いいの選んでくれたら・・・」

ののみ「えぇ、お任せ、ご褒美あり!!」

愁の声「ばか、いい映画だったらだぞ」

ののみ「ほんとにくれるの?」

   愁の声に耳が熱くなって(赤い耳たぶ)。

愁の声「じゃぁ(切断)」

ののみ「電話の愁君の声も、とろける~」

   手で耳を覆うののみ。

ののみ「愁君の声が消えませんように・・・」

   愁の石に、尖らせた唇を近づける・・・。

妹  「(ベッド上から覗き)・・・大丈夫」

    XXX

   ののみの夢

   耳元でささやく愁、照れるののみ。

愁  「君は寝顔もかわいいね・・」

19.公園ジャングルジムの前 何日か後 夕方 6月 高2

   女友達3名と話す久美。

久美 「愁を締めてやらなきゃ・・・」

    XXX

   やってきた愁。

女友達「かっこいい」「イケメンじゃね」

愁  「誰?」

   愁に詰め寄る久美。

久美 「どうゆうつもり」

   愁につかみかかる。

   愁の周りに詰め寄る女友達。

愁  「だから・・・誰?」

久美 「誰って・・・クラスメイト!、ののみの親友」

愁 「でぇ(切れ気味)・・・」

久美 「ののみ・・・、どういうつもり・・・」

愁  「関係ない・・・」

久美 「えぇぃ、問答無用・・・」

   丸めたタオルで、ぼこぼこにする久美と友達

   「女なめんなよ」「もてあそぶんじゃねえよ」

    XXX

   ダッシュで来たののみ、愁と久美達の間に割って入る。

ののみ「やめて(叫び)ハアハア!」

   ののみ、ショーパンで、サンダル履き、血走る眼。

ののみ「愁君は悪くない、私が勝手にやってるんだから」

   愁の前、立ちふさがり(仁王立ち)。

久美 「・・・」

女友達「・・・」

   ののみの肩を抱き掴み、振り向かせる愁。


【天使か悪魔か】エピソード4

20.続き 6月 高2

愁  「合格!彼女としてふさわしいことを認めます」

   と、ののみのおでこを人差し指で押し、ウインクする愁。

ののみ「・・・(瞼パチパチ)」

愁  「料理も、音楽や映画の趣味もピッタリ!」

   ののみの眼を見つめて。

ののみ「・・・」

愁  「いいよね?今から彼女ってことで・・」

ののみ「・・・(そっとうなずく)」

   ののみの顔を両手で挟んで、(唇に)キスをする愁。

   あっけにとられる久美と仲間、貴が袖から見ている。

   さらにその後ろにもうひとつの影。

愁  「これで封印したから」

    XXX

   スマホで、二人の写真に撮る久美。

女友達たち「なんだよ!馬鹿しい、帰ろう」

   帰ってゆく女友達たち。

    XXX

   スマホ画面

   SNSに拡散した二人のキス写真。


21.学校 次の日 朝 6月 高2

   校門に横断幕!「祝、愁&ののみ(ハートマーク)」

   横断幕を張る久美と女友達。

久美の声「これで嘘だよ・・とかは、無しだぞ」

   遠巻きに見ている生徒たちと、校長。

    XXX

   スマホ画面

   SNS書き込み「この写真合成だ」「やらせでしょ」


22.校庭 夕方 6月 高2

   校庭の石段に座るののみと久美。

久美 「(スマホを見ながら)ほとんど信じられて無い・・・」

   ののみを見る久美、ののみ上の空。

ののみ「愁くん・・やわらかい唇・・私のファーストキス・・」

    XXX

   ののみの妄想

愁  「ののみ愛してる、僕にはお前が必要だ、お前のいない人生

   なんて考えられない」

ののみ「愁君がくれた愛」

   愁が両手でLを作って、それを合わせ、人差し指を曲げて、

   ハートマークを作る。ののみもマネして、ハートを作ろうと

   するが・・・うまくできない!指の間を覗くののみ。

    XXX

   やってきた愁、荷物をののみに渡す。

愁  「靴も洗っといてよ・・・DVD30点・・」

ののみ「・・・(30点)」

久美 「・・・(靴?)」

   去っていく愁。

久美 「ボディーブロー・・・効いてねぇな」

   シャドーボクシングする久美。


23.学校食堂 日替わり、休み時間  6月 高2

   愁の前に、弁当を広げるののみ。

ののみ「今日は、おにぎりさんだよ、はい!・・お口開けて!」

   大きめのおにぎりを愁の口に無理やり入れようとするののみ。

ののみ「ほら噛んで噛んで」

   涙目になりながら、飲み込む愁!。(始業のチャイム)


24.同グラウンド 同 夕方 6月 高2

   サッカー練習後、タオルを愁に渡すののみ(制服)、

   タオルには変なマーク。

愁  「何これ(タオルのマークを見る)・・ラーメンに入っ

   てる・・・ナルト?」

ののみ「ののみって書いてあるの!」

愁  「ナルトでしょ」

    XXX

   フラッシュ 点描 比較写真

   タオルに書かれたののみのマークとラーメンのナルト

    XXX

   サッカー選手Aにタオルを見せるすののみ。

   (着信音)電話に出る愁。

菜緒の声「上手くやったね、でもそれでいいの?」

愁  「まあね」

   電話する愁、ののみの視線が刺さり、硬直する。


25.学校体育館裏(日替わり、夕方) 6月 高2

   体育館裏の階段に座る久美と貴(17)

   貴にキスしようとする久美。

   貴も顔を近づける。寸前で止める久美。

久美 「ほらね、男なんて誰とでもキスできるしょっ」

貴  「ちぇっ、(唇を尖らせ)誰でもって・・・」

久美 「あのキス、絶対怪しい!」

貴  「久美ちゃんは愁が腹黒説なんだ、しかしあの情熱的な

   キス・・」

    XXX

   回想 公園ジャングルジム前

   ののみのほほを両手で挟んで、キスをする愁

    XXX

   貴をにらむ久美

久美 「あんた居なかったでしょ!、ののみに目を覚まさせる

   しかないな」


26.高校グラウンド(日替わり) 6月 高2

   練習中の愁を見ている、ののみ(制服)。

   筒居コーチ(23)、両手の親指と人さし指でカメラの

   フレームを作りながら、ののみを下からじっくり舐めるよう

   に視る。

   ののみ、足を見られたときはスカートを押さえ、胸を隠し、

   最後は顔を両手で覆う。

   筒居コーチ、サッカー選手Aに話し掛ける。

筒居 「やっぱり圏外かな?」

選手A「どうでしょ、ベストテンではないですね」

   筒居、玲奈を呼び、ふたりを並べる!(うなずいて)納得

   する筒居と選手A

筒居 「我が校では、サッカー班のエースとNOワンマネージャー

   (玲奈を見て)は付き合うことになっている。

   それが伝統だ!。」

ののみ「・・・(玲奈を見る)」

玲奈 「(Vサイン)」

筒居 「君は圏外だし、愁のサブのサブ!、サブサブって言う事

   だ!」

選手A「コーチ、サブサブは、寒いですよ!」

   グラウンドから戻った愁と健(背番号11番(16、高2)

   にタオルを渡す玲奈。

玲奈 「愁!ののみちゃんの何処が好きなの?」

健  「顔が面白いところだよね」

玲奈 「私だって面白い顔出来るょ(と変顔をする!)」

ののみの声「これってセクハラだよね、クソぉ」

    XXX

   筒居コーチ、ののみをまた見る。

   視線に気づき、胸を隠すののみ。

ののみの声「セクハラコーチ!愁君助けて」

   サッカーボールをけろうとするが、コケるののみ。

筒居 「しかし、いいのか、あの子で・・・」

   XXX

   SNS書き込み

   「サッカー班の新司令塔が愛妻弁当」

   「毎日練習に女を同行させている」

   「それで勝てるのか」

    XXX

筒居 「よーし、勝負だ!どっちが勝つか」

    XXX

   愁と健がグラウンドで一対一オフェンス・ディフェンス

   の勝負している。

筒居 「勝った方がエースだからな」

選手A「玲奈を賭けて対決ですね」

    XXX

   愁の攻めを、防いでガッツポーズする健。

    XXX

健  「わざとだったら怒るぜ」

愁  「何でわざと負ける!」

   手でグーを創り、ぶつけ合う二人!。

愁  「健がエースだよ」

   玲奈の方に健を押し出す、手でLを作り二人に合図する愁。

ののみ「・・・(グーを作り)頑張れ!」

筒居 「健の奴、愁に彼女が出来て、玲奈を独占できるから、

   がぜん力が出てきたんだろう!これで我が校の伝統も守れる

   な・・うん、良いことだ!」


27.サッカー用具置き場(練習後) 6月 高2

   ボールなどの片付けるののみと玲奈

玲奈 「ののみちゃん、そのボールこっちに入れてね!」

ののみ「これですか?」

玲奈 「そうそれ・・・ねえ、ののみちゃんって、愁君の

   こと本当、好きなんだね」

ののみ「まさか(困惑)・・・玲奈さんは愁君が本命とか・・・」

玲奈 「そうだよ・・って言ったらどうする?」

   ののみ持っているボールを、上にあげる。

玲奈 「嘘!嘘!、マジ切れぅ?」

   ボールをかごに放り込むののみ。

玲奈 「大丈夫ほっとして、大丈夫、安心して、愁君のことは

   もう好きじゃないから」

ののみ「もう?(もう)・・・」

玲奈 「どうしても比べるよ、司令塔とフォワードは、一体だけど

   ライバルでもあるからねぇ」

   適当な道具に座る玲奈。

玲奈 「どっちが好きって言われても、どっちもってなるよね」

ののみ「なんないよ!好きなのは一人でしょ」

玲奈 「ののみちゃんはでしょ!(笑い)」

   立っているののみの手を引き、横に座らせる玲奈。

玲奈 「安心したなぁ、愁君に好きな人が出来て、だって・・・

   健に集中できるからね・・・」

ののみ「集中・・・」

玲奈 「かっこいいし、さっき勝ったからね」

ののみ「私、応援する(ガッツポーズ)」

玲奈 「ありがと、でも大丈夫、健が私のこと好きって知ってる

   から、あとは玲奈次第でしょう(腕組み)」

ののみ声「・・・すごい自信たっぷり、完璧上から目線」


28.サッカー部室 昼休み時間 数日後 6月 高2

   ののみ、弁当箱を開ける(アンパンマンのキャラ弁)。

ののみ「はぁぃ、本日のキャラは定番アンパンマン!」

愁  「幼稚園児かよ」

   二人の横、玲奈と健が並んで座ってる。

   玲奈の弁当箱を開ける健(粗雑な弁当)。

玲奈 「どうぞ召し上がれ」

   健、目をつぶって、何か黒いものを口の中に入れなが

   ら・・・。

健  「いただきます・・・(はっほ!)」

   玲奈の弁当をチラ見する愁、ののみに向かって。

愁  「(小声)顔とスタイルは、負けてるけど、料理は勝利だね、

   (普通声)初勝利~~」

ののみ「初じゃないよ(すねる)、愁君をゲットしたし・・・」

愁  「俺は弁当でつられたのか?」

ののみの声「玲奈さんに、愁君を取られることは・・・たぶんなさそうです!」

    XXX

   フラッシュ 部室 翌日 昼休み時間

   ののみと愁が弁当を拡げている。

  ののみの弁当、豪華二段重。

29.教室内(日替わり、休み時間) 6月 高2

   教室の黒板、書かれている字を消している久美、傍にののみ

久美 「ねえ、愁のホントの気持ち確かめてみない?」

ののみ「ほんとの気持ち?、愁君は私を好きって・・・言ってない

   かぁ(_| ̄|○)・・・」

久美 「交際宣言はあったけど、好きとは言っていないっしょ、

   聞きたくない?愛の告白!」

ののみ「うんむ・・、彼女だけど、好きってことじゃないかぁ?」

   久美、黒板に書く。

   黒板の文字「youあなたの情、I(私は)情、

   Canする情」

ののみ「どんな気持ち・・・」

久美 「確かめないと(黒板を見て)・・・」

ののみ「・・・」

   黒板に追加で書くののみ。

   文字「he(非)情」

音  響くホイッスル



【貧乏神】エピソード5

30.高校グラウンド(数日後、サッカーの試合) 7月 高2

   試合終了のホイッスル、グラウンドでがっくりする愁と

   選手たちと筒居。

筒居 「愁のミスからの失点が響いたな・・・」


31.帰り道(夕方) 7月 高2

   愁の後ろ、よろよろ歩くののみ。

   手提げバックと愁のスポーツバックを肩から下げている。

   先に歩く愁から、少し遅れて、手の望遠鏡で愁の背中を

   覗いているののみ。


32.河原(夕方) 7月 高2

   スポーツバックをののみから受け取り、置いて、そこに

   座る愁、バックの空いた所を叩く。

   バックに座るののみ。

   河原でボールで遊ぶ子ども達の声。

愁  「・・・(子供たちの方を向く)」

ののみ「負けちゃったね・・・」

愁  「観てただんろ!」

ののみ「うん」

愁  「応援してた?」

ののみ「もちろんだょ、体中のパワーを送ってたょ(腕を大きく

   広げる)」

愁  「それだ・・・、ミスした原因!」

    XXX

   回想 高校グラウンド 試合

   愁、ボールを蹴ろうとして一瞬判断を迷い、ボールを

   奪われる、そのまま相手チームが得点を決めてしまう。

    XXX

ののみ「・・・強すぎたかな?」

愁  「(急に立ち上がり)そう破壊的だょ!」

ののみ「・・・破壊って(微笑む)」

愁  「(ののみの顔を見て)うざいなぁ、なんで笑ってんだよ」

ののみ「だって、愁君の前ではいつも笑顔でいようって決めた

   から・・・」

愁  「・・・どっか行けよ」

   バックを引っ張っる愁、投げ出され転がるののみ。

   そのまま行ってしまう愁、立ち上がって、愁を追いかける

   ののみ、途中で転ける。

   靴が脱げて、水溜まりに落ちて濡れてしまう。

    XXX

   ののみを抱き起こして、足とかのゴミを払う愁。

   後ろを向いてしゃがむ。

愁  「ほら(背中で後ろ手を広げながら)」

   (半べそで)濡れた靴を持って、愁におんぶするののみ。

愁  「(苦しそうに)重いなあ」

ののみ「・・・重いね」

   ののみとバックを背負ってよろよろ歩く愁。

愁  「あのさ(後ろに向かって)、アスパラ・・・茎のとこ

   入れるな!先っぽはいいけど、茎のとこ嫌いなんだ」

ののみ「好き嫌いはダメでしょ」

愁  「お前だってピーマンときゅうりダメじゃん」

ののみ「・・・なんで知ってるの?」

愁  「あっ、女の子はみんな嫌いでしょ!・・大抵」

   愁にしがみ付くののみ、首を絞めるので苦しそうな愁。


33.通学路 ハウス前~道路端 後日 夕方 7月 高2

   (夕焼け)歩く愁とののみ。

   道を曲がる愁。

ののみ「どこ行くの」

愁  「回り道」

ののみ「なんかあるの?」

愁  「気分転換・・・」

    XXX

   農業ハウスの前を歩く愁、トボトボ後を歩くののみ。

   愁振り返って・・。

愁  「なぁ、プレゼントあげようか」

ののみ「まさか?(目を閉じ)」

愁  「・・・」

   周りを気にしながら、ハウスに入っていく愁。

   ののみ、慌てて周りを警戒する。

    XXX

   薔薇の花を数輪もって愁が出てくる。

愁  「ほら逃げるぞ!」

   ののみの手を引っ張って、走り出す愁。

ののみ「待って、待ってよ、走れないよ」

   (ハウスの中に人影)

    XXX

   少し離れたところまで来た二人。

   荒い息遣いの二人

愁  「(はぁはぁ)キレイだろ・・・」

ののみ「(はぁはぁはぁ)?」

   青い薔薇をののみに差し出す。

愁  「これ!」

   愁の指から血が出ている。

ののみ「やだ、とげで(手を見回す)」

   愁の指を口に持ってきて、指を舐める。

   (血が止まってのをみて)

ののみ「傷テープ持ってるから」

   デイバックから絆創膏を取り出し、愁の指に巻くののみ。

愁  「実は・・・この薔薇・・・」

ののみ「私にあげたいって、思ったの?」

愁  「まあねぇ・・・破壊力を下げるアイテムとして」

ののみ「でもさ、泥棒はダメでしょ、育ててる人に悪いよ」

愁  「じゃ、謝るか?」

ののみ「家知ってるから、(謝り)行こう」

   ののみに付いて歩く愁。

愁  「・・・あれこっち?」


34.ある家の前 その後

愁  「ここって、お前ん家じゃ?」

ののみ「そうだよ、だってあのハウス私の家のだし、さあ謝って

   (腕組み)」

愁  「・・・薔薇を盗みました、ごめんなさい」

ののみ「好きな人にあげたのかい、じゃ仕方ないね、許しちゃる」

愁  「好きな・・・」


35.ののみの部屋 その夜

   小さな瓶に、さっきの薔薇が飾られている机。

   机の上で居眠りするののみ。

ののみ寝言「好きな人・・・」


【あめとむち】エピソード6

36.生徒昇降口前 夏休み中 8月 高2

   相談している貴と久美。

   (校舎締め切られた扉に反射する光)

久美 「三角関係は・・・健は玲奈に夢中でしょ、他は・・・」

   スマホを操作する久美。

久美 「ベストテンは、みんな彼女いるかぁ・・・」

貴  「俺は、駄目だから・・・」

久美 「(貴を見て)暴漢に襲われるのは?、愁の前で!」

貴  「俺は駄目だょ!、ボコボコにされる!、吉本じゃねんだ

   からさ、やわらかい棒でたたかれるのとは違うぜ・・・」

    XXX

誰かの声「誰か校庭で、倒れたって」


37.同校庭 同時刻 8月 高2

   急いで校庭に行く久美と貴、ののみが倒れている

   愁と筒居、玲奈、サッカー選手達が囲んでいる

筒居 「熱中症じゃないか!」

   愁がののみを抱き起こそうとするが、ののみ息が荒く

   起きれない。

   筒居コーチがペットボトルを愁に渡す。

筒居 「脇に当てろ!それからボタン外して」

   愁はののみのシャツのボタンを胸元まで外して、扇ぐ。

   玲奈がペットボトルの蓋を外し愁に渡す。

愁  「ののみ!、飲めるか(ののみの口にペットボトルを

   もっていく)」

  (意識なく)飲めないののみ。

   愁、口に水を含み、ののみに口づけして飲ます。

   取り囲む選手ざわめく、女の子たちの悲鳴。

   (救急車)校庭にサイレンが鳴り響く。

    XXX

   救急車が到着し、担架に載せられるののみ、一緒に救急車に

   乗り込む愁。

救急隊員「君は?」

愁  「彼氏です」

   救急隊員一瞬考えるが、そのまま出発する。


38.病院の病室(夕方) 8月 高2

   ベッドで横になり、点滴受けるののみ。

   いすに座って、ののみの手を握っている愁。

   周りに筒居、久美、貴と主治医。

    XXX

   飛び込んでくる、ののみママ(42)。

ののみママ「大丈夫?ののみ(愁を押しのけて、ののみの手を

    取りいすに座る)」

主治医「軽い熱中症です、それと貧血気味ですね、睡眠は十分

   取れてますか?、今夜は念の為入院してください」

    XXX

   眠っているののみ、残っている愁とののみママ。

ののみママ「ののみ(見つめて)、頑張ってるよ、こんなに頑張る

   子になったんだね・・・」

ののみ「うう・・(うわ言)」

愁  「・・・」

ののみママ「愁君(いい男)・・・」

愁  「はい・・・」

   立っている愁の手を取り、見つめるののみママ

ののみママ「愁君のことが好きなのに、なかなか告白できないって、

   悩んでて、ネガティブで、ほんと心配してたのよ」

愁  「はい・・・」

ののみママ「一生懸命で、生き生きしてて、わが子ながら輝いて

   まぶしく見てたのよ、ありがとうね、愁君」

愁  「いいえ・・・」

   窓の外を見る、ののみママ。

   遠くの山々、高い雲

ののみママ「愁君と、ここにいると・・・なんか不思議」


39.ののみの家 玄関前 翌日 8月 高2

   花を持って、ののみの家に入る愁。

   隠れて後をつけてきた久美。

   同じく後をつけてきた菜穂に会う。

   驚いてでこをぶつけ、照れ笑いする二人。

二人  「あっ、どうも~」

    XXX

   しばらくして、ののみの家の玄関からバックをもって出て

   くる愁。

愁  「(家になかに)それじゃお大事に!」

    XXX

   とっさに隠れる久美と菜緒。

菜穂 「親にも気に入られた」

久美 「なかなかしっぽを出さないね」

    XXX

   回想 ののみの部屋 少し前

   二段ベッドで寝ているののみ。

   ののみママと愁。

ののみママ「ののみったら、小さい頃いつも拡大ルーペで、石の

   サンプルとか、博物館から持ってきた、砂とか、視ていた

   のよ、変わってるよね」

    XXX

   フラッシュバック 博物館 昔 黒板の文字、

   「キラキラを見つけよう!」

   砂を拡大鏡で見るののみ(小学生)と他の子供たちと指導員。 

    XXX

   ののみの机の上、薔薇が飾られてる。

愁  「この薔薇・・・」

ののみママ「ののみのおじいさんが育ててるのよ、珍しいわね、

   あげるなんて・・・」

   ののみの部屋の中を見渡す愁。

   女の子らしいモノの中に、数々の石達、そして、机の上に

   お弁当ノート(2冊)と日記帳、砂時計、

   「愁君」と書かれた石がある。

愁  「確かに変人だな」

   愁の石を、指でつつく愁。


40.橋を渡るののみ 8月 高2


41.愁の家 リビング~愁の部屋(後日) 8月 高2

   愁の家に招待されているののみ(白いワンピース)。

   愁父(48)、愁母、妹(12)と話をしている。

    XXX

   回想 ののみの部屋。

   いくつかの服が、ベッドに広がっている。

ののみ「清楚で、清潔感が大切・・・」

   と、スマホを見ながら、選んでいる。

    XXX

   リビングのソファーに座る、ののみと愁父。

ののみ「本当ですか?お父さん!私が愁君と結婚したら、カワイイ

   家建ててくれるんですか」

愁父 「棟梁なめんなよ!あっという間に建ててやるよ」

    XXX

   建築現場 点描

   愁父や職人が働いている、手伝っている愁。

    XXX

   愁の部屋の前廊下

   ののみを愁の部屋に案内する、美眸(12、愁妹)。

妹  「そこの部屋だよ、その向こうが私、そっちは物置部屋」

    XXX

   愁の部屋 愁とののみ。

   ベッドに座る愁、床の座布団に座るののみ。

愁  「この本(分厚い本を渡す)読んで、ストーリー聞かせて

   それと・・・」

ののみの声「部屋に入れてもらえる関係だなんて、親公認ってこと

   だね、て、この本、英文ですけど・・・」

    XXX

   ののみの妄想 愁の部屋

愁  「いつもありがとう、君のおかげで僕は本当に幸せだよ、

   好きだよ」

   ののみをベッドに押し倒し、顔を近づける愁

    XXX

愁  「古文のプリントやっといて、得意だろ、じゃ下にいるから、

   あっ、丸文字は駄目だょ!角文字で!終わったら、部屋の

   掃除」

    XXX

   プリントを机に広げたまま埃トリで、本棚を掃除するののみ。

ののみ「エッチな本とかあるのかな」

   神社仏閣城の本が並んでいる。

   壁には、城や古い建物の写真が飾られている。

ののみ「なんだこらゃ!」


42.ののみの部屋 夏の夜 夏休み 8月 高2

   愁の石と薔薇を見つめるののみ

ののみ「愁の本心は解らないままだなぁ・・私を好き?、迷惑なの

   かな?嫌われたくない・・・でも・・・」


43.ののみ家 キッチン 早朝 

   パジャマで、寝ぼけ気味に弁当を造ってるののみ。

ののみの声「お世話も苦にならなくなってきたなぁ!・・・でも

   早起きが辛い(目が半分開いていない)・・・夏休みなのに

   毎日練習試合って、あのコーチ鬼なの?」


44.同 ののみの部屋 夜 

   机で勉強するののみ(伸びをする)。

ののみ「はぁ!そうだ!思い切って行っちゃぉぅ、飛び込んじゃぉ、

   家政婦でもいい何でもいいからそばにいたい、だから、そう

   するの・・・家も近いし、その方が楽だし!、ついでに勉強

   も教えてもらっちゃお、いいよね、愁君」

   愁の石にキスをする

    XXX

   階段を勢いよく降りるののみ

ののみ「ママー!(叫ぶ)」



【陣取り合戦】エピソード7

45.愁の家(日替わり、夜) 夏 8月 高2

   愁とののみの家族(愁父、ののみパパ、ののみママ)が集ま

   ってリビングで会議をしている

愁父 「ほんとにいいんですか、うちは構わないんですが」

ののみパパ「ののみのこと、よろしくお願いします!こいつは

   言い出したら聞かない子でして、石頭でして、家出とか

   されるより、良いかなと!」

ののみママ「・・・」

ののみパパ「(愁を見て)そんなに心配はしてないんだが、ただ

   最近女性らしくなってきてね(ののみを見る)」

ののみ「やだー、パパ!」

   手で顔を覆うののみ(指の間から愁を見る)

ののみパパ「だからなんだ・・これだけは、(愁を見る)愁君約束

   してくれ、そのつまり・・・、あれの事だか、要するに

   (A)までにしてほしいんだ」

愁  「・・・」

ののみ「・・・(照れ)」

愁父 「私が監視して守らせます!ご安心して下さい」

   愁の顔を覗き込むののみ。

ののみの声「修君、反対しないのかな?」

愁  「・・・(黙っている)」

ののみママ「・・・」


46.橋を歩くののみ 


47.愁の家 同日 夜 8月 高2

   玄関に荷物をもって乗り込むののみ。

    XXX

   物置部屋を片付ける、手伝う愁父。

   XXX

   ののみの新しい部屋の中。

   ドアの隙間から、部屋を覗いく愁。

   机の上に、愁の石が置いてある。


48.愁の家の前 8月末 高2

   一緒に玄関から出てくるののみと愁。

   ののみの荷物も持ち歩く愁。

   ステップ踏むように歩くののみ。

   (電信柱に人影)


49.高校教室 新学期、休み時間 8月末 高2

   机で話すののみと久美。黒板に始業式の日程。

  ののみ、久美に顔を近づけて。

ののみ「(小声)秘密だよ!、やだぁ、もちろん部屋は別だよ」

久美 「えっ、同居・・・マジマジ!」

   (しぃ)唇に指を立てるののみ。

ののみ「(小声)休日は帰るから」

久美 「単身赴任のお父さん?」

    XXX

   回想 愁の家 リビング

   家族会議の後、乾杯する家族たち。

    XXX

ののみ「大人の色気みたいな、ェロモンでちゃってるから、愁君

   我慢できるかな?」

久美 「フェロモンでしょ?・・・そこまでやるか」

ののみ「愁君がさ、私を好きなのは間違いないょ」

久美 「知ってる?男って尽くされると浮気しちゃうんだってね」

ののみ「ヤダーないよ、ねえこういうの、おっかみ・・・んぁ、

   やっかみ!だ」

   英語の参考書を見る久美。

久美 「She is seeking a happening」

   聞き取ろうと右耳を向けるののみ。

久美 「お風呂で鉢合わせて、ヌードを見られたり、見ちゃったり

   するハプニング期待してるんでしょ」

ののみ「残念!、愁君ち、職人さんもいるし、男女それぞれの

   お風呂あるんだよ」

   教室に入ってきて、机に座る愁。

   愁の背中を見つめる久美とののみ。

久美 「愁君、鍛えてるのかな?」

ののみ「変な想像しないで・・・」

久美 「想像してるのは、ののみでしょ」

ののみ「・・・部室で着替えてるとこ見ちゃったんだ・・」

久美 「やっぱり見てるじゃん」

   (顔を赤らめ)顔を手で隠すののみ

久美 「ののみは?・・・あぁ倒れた時!」

ののみ「えぇ見られた?・・・」

久美 「大丈夫、全部は見えてなかったから」

   ののみの胸を触ろうとする久美。

ののみ「ガァー・・・」

   爪を立て、久美の手を払いのけるののみ。

    XXX

   授業中、窓の外をぼんやり見るののみ、グラウンドに旋風が

   舞っている。

ののみの声「・・・最近優しい言葉かけてもらえないなぁ」


50.愁の家 洗面所 

   洗面台前に立つ愁。

愁  「ののみ、俺のタオル、使うのやめてくれる(切れ気味)」


51.愁家 キッチン 後日 真夜中 

   冷蔵庫からパックを出し、コップに注ぐ愁。

   愁、飲み物を飲みかけると、ののみがやってくる。

ののみ「おいしい?冷たくていいの?」

愁  「(一気に飲み干す)・・・」

ののみ「勉強?」

愁  「・・・ああ」

ののみ「そうだ、これ見て(スマホを操作し愁に見せる)」

   男子とののみの写真。

愁  「誰?・・・」

ののみ「中学の同級生、今日ね、久々会ったんだ」

愁  「偶然・・・」

ののみ「・・・まあね」

愁  「で、元カレ?」

ののみ「どう思う?」

愁  「どっちでもいいけど」

ののみ「どっちでもって(落胆)・・・」

愁  「嫉妬とか束縛とか・・・時間の無駄」

ののみ「そんな(愕然)・・・」

   愁、冷凍庫から、チューブアイスをだし、二つに割る。

愁  「(ののみにひとつ渡し)・・・彼氏居なかっただろ」

ののみ「(え!)知ってた」

愁  「ハハ(大笑い)・・・てかさ、かわいそう」

ののみ「(?)・・・」

愁  「これみなよ、巻き込まれ事故」

   ののみのスマホを取り上げ、ののみに突き出す。

ののみ「うぅ・・・」

   (写真)ののみのひじが男の子の腹に決まっている。苦笑い

   で写っている男の子。


52.愁の家、ののみの部屋 その後 9月 高2

   モノトーンで統一されてののみの部屋。

   ベッドでうつぶせで、もがくののみ。

ののみ「あぁ、うそは駄目、ばかばか私、・・あぁ嫌悪感、ただ

   でさえ重い女なのに、嫉妬や束縛まで・・・」

   顔を上げるののみ。

ののみ「自分に自信ないからだな・・・もっと愁君に認めてもらえ

   る彼女にならなきゃ・・・通じ合わなきゃ」

   紙に何か書いているののみ。


53.愁の家 廊下 その後

   壁に、色々な折り紙なとでデコレーションした紙を貼り出す

   ののみ。

ののみ「じゃん!造ったょ」

   彼女五箇条

   1いつもキレイで笑顔

   2先に起きる(平日)

   3男子とツーショット禁止

   4外出は事前報告

   5門限は7時

ののみ「全く放置なんだもん、さすがに不安になるょ、あれ以来

   キスどころか・・・」

    XXX

   回想 公園 

   キスをする二人

    XXX

   彼女五箇条を読む愁

愁  「いい歳こいて、門限7時って小学生かよ、それに早起きは 

   平日だけなんだ・・・」



【伝統の恋】  エピソード8

54.愁の家 ののみの部屋(日替わり) 夜 9月 高2

   訪問してきたののみの姉、ねねん(22)と話すののみ。

ねねん「びっくりだょ、ののみの行動力には、親公認の家出して、

   同棲って!」

ののみ「同棲・・じゃないけど・・・」

ねねん「同棲だよ、立派な!」

   部屋を見渡して愁の石を見つける。

ねねん「相変わらず、変な石、持ってきてるんだ!ねぇ、愁君」

   愁の石を撫でる。

ねねん「私、好きな人に会ったんだ!だけど好きって言われな

   かった・・・別れるときキスしたの、お互い好きって

   わかったけど」

   天井を見上げるみみん。

ねねん「言ったら・・、生活換えなきゃいけなくなる。それが恐く

   て、泣きながら別れてきたんだ!」

   鼻をすするののみ、両目の下を指で撫でる、涙のポーズ。

ねねん「ののみは凄いね!好きって素直に言ってさ!その位パワー

   出さなきゃ恋なんて、できないもんね」

   スマホを握りしめるねねん。

ののみの声「好きって・・・言ってないかも・・・」

ねねん「連絡ならいくらでもつくけど、やっぱ会わなきゃね!」

   手を取り合う二人。

ねねん「すれ違えない恋なんだって気づいたよ、私これから行って 

   告白する!」

   ののみ姉の決意表明に、涙が止まらないののみ。

   ティッシュペーパーを引き抜き、鼻をかむののみ。


55.同 廊下 

   ののみと「彼女五箇条」を見るみみん。

ねねん「五箇条じゃ足りないよ」

ののみ「もっと・・・?」


56.同愁の部屋(夜) 9月 高2

   何かと理由をつけて、愁の部屋に出入りするののみ。

ののみ「愁君、お菓子たべよう」

    XXX

ののみ「この英語訳せる、ねぇ教えて」

    XXX

ののみ「参考書貸して」

    XXX

愁  「出たり入ったりされると落ち着かないんだよ、もうここに

   居ろ!(座布団を叩く)」

ののみ「居てやるよ(座布団に座る)」

愁  「いいか、大人しくしてろよ!動くなょ!石になれ!」

   石のようにうごかず、愁の顔を見つめるののみ。

   同じように(あきれ顔で)ののみの顔を見つめる愁。

愁  「あっまばたきした!、俺の勝ち(笑)」

ののみ「(深呼吸をする!)・・・まばたきと呼吸はするょ」

    XXX

   ラジオ放送 聞こえるのは、英語のバラード。

   ラジオをテーブルに置く愁。

   聞き入る二人。

    XXX

   ののみの耳たぶを引っ張る愁。

ののみ「(はぁ)」

愁  「今の歌詞、訳してみて、簡単だろ」

ののみ「・・・いあぃ、私は・・(歌い気味)私が会いたい

   人・・・」


57.高校グラウンド 後日 サッカー場 9月 高2

   眩しい日差しの中、練習するサッカー選手たち。

   ベンチの側。

   筒居コーチの視線に気づくののみ、ジャージ(背中にののみ

   のマーク入り)姿。

ののみ「鬼コーチ、またセクハラ!、今日こそ言いつけてやる」

    XXX

   愁にタオルを渡しながら、耳打ちするののみ。

   筒居のところにダッシュで行く愁。

愁  「コーチ」

筒居 「なぁ、なんだ」

愁  「コーチも呪文をかけられました?」

筒居 「どっかに魔女でも?」

   ののみを見る愁。

   玲奈の陰に隠れているののみ。

筒居 「メインな方?、サブの方?」

愁  「サブの方です」

筒居 「彼女を見ていたと言うより、彼女のお姉さんを思い出して

   た」

愁  「ののみのお姉さん?」

   筒居、愁の腕を引き、グラウンドの隅まで行く筒居。

筒居 「実は・・・」

    XXX

   フラッシュ 回想 公園 前日の夜

   筒居に詰め寄るねねん。

ねねん「キスしたよね、あれは何だったの?」

筒居 「弾みって言うか、ノスタルジーって言うか」

ねねん「わかるように言ってよ、卒業する時もそうだった、都会に

   行く私を止めなかったでしょ」

    XXX

筒居 「というわけで、ののみの姉さんに迫られてね・・・」

愁  「コーチと、ののみのお姉さん、付き合ってたんですか?」

筒居 「おれがエースで、ねねんがNo1だから・・・」

愁  「それで、ののみの事、結構気にしてたんですね」

筒居 「似ていないようで、似てるのかもしれないな・・・」

    XXX

ののみ「鬼コーチと愁君どこ?」

   と、グラウンドを見渡す。

筒居 「鬼ではない」

   ののみ、ギクッとして振り返る。

   後ろに腕組みをした筒居が立っている。

ののみ「げぇ・・・」

筒居 「オニでなく、おにいさん・・・と呼んでくれ」

ののみ「げぇげぇ・・・」


58.愁の家 台所 9月 高2

   愁の祖母、るり子(77)が料理を作っている

ののみ「るり子さん、手伝うよ」

   おやきを作っている

るり子「ありがとね、これ(あんこ)入れたら、こうやって

   (丸めて)、こっちに」

ののみ「うまく丸めらんないなぁ、あんこのおやきって、おはぎ

   じゃ?」

るり子「おはぎじゃない、おやき」

   蒸し器で蒸したおやきを皿に盛るるり子。


59.同 仏間 

   仏壇におやきを供える、るり子とののみ。

   線香をあげ、手を合わせる。

   飾られたご先祖の肖像 老人ばかり。

ののみ「愁君のお母さんは・・・居ないですよね」

るり子「ここ(むねを叩く)に居るって言って、飾らない!」

   愁が来て、手を合わせる。

ののみ「愁君・・・」

愁  「・・・」


60.同 居間

   おやきを食べる愁。

   ののみ一緒に黙っておやきを食べる。

愁  「おれさ、あんこのおやき得意じゃないんだ、でも、昔から、

   ばあさん作ってくれるから・・・」

ののみ「お茶入れるね、ここは渋いお茶だよね」

   ののみお茶を入れてくる、お茶を飲む愁とののみ。

愁  「ほんと、劇渋だ」

ののみ「渋いって言うより、痛い」

   急須のふたを開けるるり子。

るり子「なんだい、こんなにお茶ッ葉入れて・・」

ののみ「夫婦湯呑み茶碗買わなきゃね」


61.愁の家 裏の小屋 同日 9月 高2

ののみ「どこかな、バケツ、バケツ・・・」

   家の横、物置を探すののみ。

   おりがある、中から動物の唸る声。

   ののみ、薄暗いおりの中を目を凝らしてみる。

ののみ「ワンちゃん!」

   おりに近づくののみ。

   「猛犬注意!」の札。

ののみ「だぁれかな」

   おりの戸を開けて中に入るののみ。

ののみ「きゃっ」

   駆けつけ、おりの中に入ろうとする愁。

ののみ「やめて、舐めないで・・・」

   大型犬に抱き付かれ、顔を舐められているののみ。

愁  「大丈夫・・・そうだね」

   と、おりを覗く愁。


62.同 居間 直ぐ後。

愁父 「ポチが、なついたって!」

   食卓で、おやきを食べる愁父、愁とののみと話している

ののみ「猛犬なのに、ポチって・・・」

愁父 「ポチは、母さんにしかなつかなくって・・・母さんが

   死んでからは、暴れて言うこと聞かなくなってね」

愁  「お母さんとののみ、似てるとか?」

愁父 「顔は似てないよ、母さんは貴婦人系だし・・・雰囲気が

   似てるか?」

ののみの声「貴婦人系?、じゃ私は何系?」

ののみ「写真は無いんですか?」

愁  「あるけど、見せないよ」

ののみ「なんで?・・・」

愁  「美人だから、お前がショックを受けるだろうし・・・」

   お茶をすする愁父。

愁父「うっ、渋(ののみを見る」」

ののみ「すいません、入れ直しますね」

   流し台に行くののみ。

   愁父、愁の耳元に小声で。

愁父 「雰囲気もかなり違うぞ、ののみちゃん、かなりの肉食系

   で、ポチもビビったんじゃないのか?」

愁  「犬にまで、呪いかけるとは・・・恐ろしい」

   急須を持ってくるののみ。

ののみ「は~い、入れかえましたよ」

   と、愁父と愁の湯飲みに、お茶を注ぐ。

ののみの声「誰でも、夢中にさせちゃうぞ(ウインク)」


【ビターデート】エピソード9

63.お寺前 秋、早朝 10月 高2

   朝日が射してくる参道ののみと愁。

   方向が変わってる(回っている)柱を見る二人。

愁  「この柱大地震で回ったんだって!でも建物は大丈夫だった

   んだ、この基礎石も動いてない!建物の基礎は絶対石

   なんだ」

ののみ「コンクリートじゃないの?」

愁  「コンクリートも元は石だょ、石を砕いて作ってる、

   コンクリートが固まるとすごい強くなるだろ、でも科学的に

   原理は解明されてないんだぞ」

ののみ「石って凄いんだね!もっと石のこと知りたいなあ」

愁  「(変わってるな)・・・」

ののみ「ねぇ、大地震て、いつ?」

愁  「江戸時代?」

ののみ「その時、どんな被害があったのかな?、その時の事が分か

   れば、また地震があったときでも、被害を少なく出来るんじ

   ゃない。」

愁  「災害は繰り返すからね」

ののみ「近くの山で海の化石が見つかるんだよ、地球ってどんどん

   変わろうとしてるんだね」

愁  「変わろうとしてる訳じゃなくて・・・」

    XXX

   フラッシュ 境内 点描

   写真をツーショットや並んで撮ってもらう二人。

    XXX

愁  「じゃ」

   写真を撮り終わると、愁はいなくなってしまう。

    XXX

   境内にひとり写真を撮るののみ

   キラキラしたものを探して写真を撮るののみ。

   点描 お寺の中の飾り。お寺建物の金の飾り。土産屋の

   土産品等々。


64.お寺近くの路上 10月 高2

   愁の後、つける菜緒。

   愁は女の運転するの車に乗り込んで走り去る。

   菜緒、スマホを操作して、動画撮影する。


65.河原(夕方) 10月 高2

   ののみ泣きながら、河原に行く。

   ののみが積み上げた石の塔が崩れている。

ののみ「愁・・今どこ?違うよね!」

   泣きながら河原にしゃがみ込む、キラキラ光る石(?)を見

   つける。

    XXX

   愁がやってくる。

愁  「泣いてる?」

ののみ「(愁を見ない)愁くんが女の車で・・・」

愁  「泣くな・・・俺の前では笑顔なんだろ」

ののみ「だって(顔を上げて)、愁・・・他に年上の好きな人

   が・・」

   ののみの両ほほを両手で挟む愁。

愁  「女?・・・見てたの?」

ののみ「菜緒さんが・・」

愁  「はぁあ、いい望遠鏡もってんだな」

ののみ「・・・」

愁  「あれ叔母さんだけど・・・」

ののみ「・・・叔母さん?」

愁  「パパの妹、若作りしてるから」

ののみ「・・・オバ・・・サン・・」

愁  「これ、一緒に探してくれたんだぜ!」

   袋の中は、リボンの架かった箱が入っている。

ののみ「何?」

   愁が取り出して箱を開ける。

   箱の中、蒼い石がトップのネックレス。

ののみ「(ドキドキ)」

   後ろに回り、ののみの首に掛ける愁。

ののみ「この青って・・」

   スマホの写真を探して見るののみ。

   オオイヌノフグリが映った写真。

愁  「アメジスト分かる?」

   高速半回転するののみ。

ののみ「私の誕生石、そうでしょ!、うそでしょ(震え声)アメー

   ジング!」

   ネックレスのトップを指に乗せて愁。

愁  「この青、中々なかった、石の意味知ってる?」

   ののみ、スマホで検索する。

ののみ「美少女の化身えぇまさに(私)・・・」

愁  「まだ、その後(スマホを覗く)・・・」

ののみ「愛の守護石、真実の愛を守る・・・(愁の顔をみ

   て)・・・」

愁  「もっと後(スマホを覗き)」

ののみ「高まりすぎた情熱を穏やかに冷ます力・・・(愁の顔を見

   る)・・・」

愁  「このくらいハイパワーなアイテムがいるんだよ、お前の

   破壊力下げるには・・・」

   ののみ、アメジストを握り締める。

ののみ「真実の愛を守る美少女ってことで、(愁の顔をみて)いい

   ですか?」

久美 「真実の愛ねぇ~」


66.水力発電所 屋外広場 (夕方) 10月 高2

   石のベンチに座り、たこ焼きを食べる、久美とののみ。

   ののみの首に青く光るネックレス。

   ネックレスを触るののみ、無視する久美。

久美 「ののみが愁君を好きになったきっかけの事件、あれが

   あったから、好きになったんでしょ」

ののみ「うん、それまでは私、心を閉ざしてて、恋もしたこと

   なかった・・」

久美 「愁君に助けられてなかったら、死んでたかもなんで

   しょ・・・」

ののみ「うん、河原で石探ししてたとき・・・」

久美 「川の水が、急に増えてきて、流されて溺れかけたとき、

   愁君が助けてくれたんでしょ!」

ののみ「(うんうん)」

久美 「それで脳天キーーーーンってなったんでしょ、てかぁ、

   何回聞いたか!耳にイカだよ・・・」

ののみ「(手を合わせ)ごめん、大げさ、過大広告・・

   本当は・・・耳にたこ焼きだし」

   たこ焼きをほうばるののみ。

ののみの声「私の中では、大事件で・・」

    XXX 

   フラッシュバック 回想 河原 3年前 

   中学生の制服のののみと中学生のジャージの愁。

   こけて脱げた靴が流されるののみ、その靴を川から拾い

   上げる愁。

    XXX

   河原 回想 続き

   ぬれた靴を持ち、ののみを背負って歩く愁。

   周られた腕で首を絞められ苦しそうな愁。

    XXX

ののみ「あの時の背中の感じ・・・」


67.公園 後日 10月 高2

   公園で筒居、うろついている。

筒居 「愁、どこだ?」

   やってくるみみん。

みみん「ののみ、どこ?」

   対面する二人。

筒居 「やあ(待ちかねた)」

みみん「やあ、は~ん、そう言う事、べただね」

筒居 「いつまで、こちらに?」

みみん「今日行きます、それでは・・・」

   行こうとするみみんの前に先回りして、振り向く筒居。

筒居 「あのさぁ・・・行くなって言ったら、行かないってことは

   ないよね」

みみん「さぁどうかな?」

   腕を出す筒居にタックルするみみん。

みみん「言えるなら、言ってみなよ」

   受け止める筒居。

筒居 「俺を置いて行くな」

   二人抱き締め合う。

みみん「こんなベタな展開でいいの?私たち」

筒居 「結構、遠かったよ、このゴール・・」

   木立の影、覗くののみ。

   ガッツポーズ・・空を見上げて溜息。


68.愁の家、愁の部屋 10月 高2

   並んで座り、愁に勉強を教えてもらってるののみ。

ののみ「サイトやアプリで日記かけるけど、やっぱり手書きが

   いいよね、交換日記したいなぁ、交換日記・・・」

愁  「(にらんで)めんどくさい!」

ののみ「字が汚いの?解読が難しいパターン?」

愁  「宿題の字、読めてるだろう(ペンで机の紙をつつく)」」

ののみ「カップルアプリでも良いかな!(スマホを見る)」

愁  「別れたとき、余計辛くなる・・・」

ののみ「お別れは、データ消すだけだ・・・指だけ

   (ため息)・・・」

愁 「ほら、ここ(ノートを指す)間違えてる、いいから、遊ん

   でないで公式覚えとけよ!」

ののみの声「伝わっているのかな?私の重い思い、別れ道またまた石の上にも三年なんて辛抱できないよ」


69.愁の家、廊下

   壁の十箇条を見ている愁。

   五箇条が十箇条に増えている。

   1いつもキレイで笑顔、

   2先に起きる(平日)、

   3男子とツーショット禁止、

   4外出は事前報告、

   5門限は7時、

   6日記を共有する

   7連絡は即反応、

   8スマホチェック厳禁、

   9GPSは切らない、

   10みんなを大事にする



【ギブミージェラシー】エピソード10

70.東京 渋谷~原宿 10月 高2

   ののみと久美が渋谷で買い物している。

    XXX

   原宿で、貴が合流する。

    XXX

   大学、学生食堂、ののみ、久美、貴。

久美 「アイドルの劇場なんて行く?私たちいつでも会える

   アイドルが居るのに!」

貴  「じゃ、歌って、踊れるの?」

久美 「踊りません、あんたのためなんかでね」

貴  「アイドルは、こんな俺のためにでも、踊ってくれるん

   だぜ」

ののみ「(イチゴをフォークに刺して)・・・」

久美 「お仕事だからでしょ」

貴  「無償の愛をささげる子もいるのにね(ののみを見る)、

   あぁ俺にも天使来てくれないかな」

久美 「悪魔と小悪魔ならここにいるけど・・・」

貴  「小悪魔(久美)?、悪魔ののみ?・・・」

   ガラスの器で、フォークを回すののみ(チャリーン)。

ののみ「やば、今度の新幹線に乗らないと、門限破っちゃう、愁

   との約束破っちゃうよ、じゃお先に」

   慌てて、学食を出るののみ。

   手を振り、残された久美と貴。

久美 「男尊女卑の時代遅れ!いいの!日本の法律は認めて

   るの?」

貴  「オレオレ系が良いらしいんだよね!器がデカいって感じが

   するじゃん」

久美 「イヤぁそれはマンガ、少女マンガの世界だけだよ!」

貴  「草食系ってのは?優しいぞ」

久美 「男の優しさの裏には裏切りがかくれてるものょ」

貴  「肉食系男子は狩人だぜ、狙った獲物は逃がさないのさ」

久美 「野蛮!(貴を見て)そう言うあんたはどうなのさ!」

貴  「負け犬ですけど(がっくり肩を落とす)」


71.新幹線 車内 10月 高2

ののみの声「好きって言われなくても、私を必要としてくれる

   なら良いって思ってたけど・・・」

   流れていく、街や山並み。


72.駅 改札前 10月 高2

   改札を、一人遅れて出てくるののみ。

   大勢の客が出てっ吐けていく中、愁が立っている。

ののみ「愁君、迎えに来てくれたんだ」

   愁に駆け寄り飛びつく(ぶつかりぎみ)ののみ。

愁  「(受け止め)門限破りはご法度だぜ」

ののみ「牢屋!、牢屋行き」

   ののみの前髪を整える愁。

愁  「さらし首かもな」


73.タクシー 車内 10月 高2

   夕方の町並みが流れていく

   いつの間にか愁の肩に寄りかかり寝ているののみ。


74.愁の家 ののみの部屋 10月 高2

   ののみを抱きかかけて部屋に運ぶ愁。

ののみ寝言「迷子だよ・・切腹・・」


75.同 愁の部屋 夜

   愁のタンスに、ペアTシャツを忍ばせるペアTシャツの

   ののみ。


76.高校 日替わり 教室 窓辺 10月 高2

   雨で濡れる校庭

   愁が窓際で校庭を見ている。

   ののみ、横に来て。

ののみ「今日は、練習休みだね」

愁  「ああ(小さくうなずく)・・」

ののみ「まっすぐ帰る?」

愁  「ああ?(なに)・・・」

ののみ「ねぇ、寄り道して帰ろうよ」

愁  「受験生は、遊んでる暇ない」

ののみ「この前は、デートって感じじゃなかったし・・・」

愁  「う~ん・・・」

校内放送「台風が近づく予報が出てます。生徒は速やかに帰宅

   してください。明日については、連絡網を確認してくだ

   さい・・・」

ののみ「(輝く瞳)カラオケ、映画、それとも・・・」

愁  「(渋い顔)・・・」

ののみ「ねぇ、お願い(手を合わせ)ご褒美。ちょっとだけで

   いいから・・・」


77.ボウリング場 レーン その後 10月 高2

   17レーン、ゲームするののみと愁。

   愁とののみ、投げ方をののみに教える愁。

    XXX

   ののみ、ストライクを出す。

   笑いながらハイタッチする二人。

    XXX

   レーンの後ろのテーブルに座る二人。

愁  「ストライクはなかなか出ないな」

ののみ「私出たよ」

愁  「たった一回な」

ののみ「愁君は何回かな(スコアカードを見る)」

愁  「俺もストライクは一回・・・」

ののみ「えぇ、1.2.3.・・・」

   愁、レーンを見ながら。

愁  「・・・お前だけ・・・」

ののみ「えぇ、なんか言った?」

愁  「(ののみの腕を引き)行こう」

    XXX

ののみ「楽しかったね」


78.ボウリング場、ホール その後 10月 高2

   ホールに降りてくる二人。

   入り口のガラスに、激しく当たる雨。

   ガラスを流れる雨水。

   たちすくむふたり。

美眸 「・・・帰って来たよ、るり子」


79.愁の家 玄関 その後 10月 高2

   玄関に立つ、愁とののみ。

   全身から雨だれ。

るり子「(慌てて来て)はい、タオル!タオル!(と渡す)」

   ののみをタオルで拭くるり子。

   自分でタオルで拭く愁。

テレビの音「各地で浸水、土砂崩れが発生し・・・」

るり子「すぐお風呂入って、あったまって・・・」


80.愁の家 愁の部屋 その後 10月 高2

   コンコン、戸をたたく音。

ののみ「愁君・・・」

   戸を少しだけ開けて、部屋に半分顔を入れるののみ。

   愁がベッドで寝ている。

ののみ「ごめんね、怒られちゃったね・・・」

   ベッドの傍に行くののみ。

愁  「(ごそごそ)・・・」

ののみ「怒ってる?怒ってるよね?(赤い顔)」

   布団をめくり、急に顔を出す愁。

愁  「怒ってないから、早く寝ろ」


81.愁の家 ののみの部屋 その後 10月 高2

   戸を少しだけ開けて、部屋に半分顔を入れる愁。

   ののみ、ベッドで寝ている。

愁  「寝てる?」

ののみ「(寝言)ど・ストライク・・・」

愁  「(寝顔に顔を近づけて)熱ある?」

   ののみのおでこに自分のおでこをくっつける愁。

愁  「少し熱いか?(そのままおでこにキスする)」

   戸の隙間から覗く美眸。

美眸 「・・・(じぃ~)」


82.プラネタリウム 日替わり11月 高2 

   座席に座り、星座の物語を見て、聞くクラスメート、愁と

   ののみは隣同士。

ナレーション「冬の星座おうし座は、牛の姿になって、姫を乗せて

      ヨーロッパに渡り幸せになったゼウスの話から出来た 

      星座です」

ののみ「牛になって、近づくなんて・・・」

愁  「好きになると、どんな事しても、そばに居たく

   なる(?)」

ののみ「(キレイ)・・・」

愁  「牛に近づく女もどうかと思うけど・・・」

ののみ「大昔の牛は、ポチ見たく可愛かったのかな?」

愁  「猛犬ってあるのに、近づくのもどうかと思う・・・」

    XXX

   フラッシュ 回想 愁の家の裏

   猛犬注意の看板。

   ポチとじゃれるののみ。



【求めるもの】エピソード11

83.ののみの夢 クリスマスイブイブ 

   サンタ帽の愁。

夢の中の愁「頑張った君にプレゼント・・・」

   と、宝石箱を開ける。上半身が人間で下半身が牛。

夢の中の愁「さあ、背中に乗って・・・」

   ののみ、愁の首につかまって、背中に乗る。

   締め付けるののみ、苦しがる愁、ののみを振り落とそうと

   暴れる。必死につかまるののみ。


84.愁の家 薄暗い玄関 クリスマスイブ 早朝 

   クリスマスリーフの飾られた玄関。荷物を担いで出ていく愁。


85.愁の家 点描 クリスマスイブ 12月 高2 1回目

   廃材で作られたクリスマスツリーに飾り付けるののみと愁妹。

   クリスマスの御馳走をキッチンで作るののみ。


86.同 居間 夕方

   居間のテーブルに料理やケーキを並べるののみ。

   るり子が来る。

ののみ「あっ、るり子さん(居た居た)、愁君知らない?」

るり子「出かけたよ」

    XXX

   愁に電話するののみ。

電話 「電源がはいってないか・・・」

   スマホを操作するののみ。

ののみ「GPSも駄目だ・・・健君に電話してみよ」

   電話するののみ。

健の声「チョッと行って来る・・・って言ってたよ」

ののみ「あっそ、ちょっと出かけたんだね・・」


87.同 キッチン 点描 夜

   イブの音楽が流れるキッチン、洗い物をするののみ。

   余ったチキンにかじりつき、炭酸ジュースをがぶ飲みする

   ののみ。


88.同 居間 翌日 朝 

   居間に来た愁父、ソファーにののみ。

愁父 「あぁ、久々、二日酔い・・・」

ののみ「あぁ!愁君、大学見学とか?」

愁父 「はっ(頭に響く)、聞いてない?、職人見習いで、ドイツ

   から来ている、ミハエルっているだろ・・・」

    XXX

   フラッシュ 作業場 

   職人達が材木加工作業している。

   金髪の外人と話している愁。

    XXX

愁父 「そのミハエルが、帰るんで、愁も一緒に行ったよ」

ののみ「一緒に行ったって・・・」

   ののみ、スマホを操作し、話しかける。

ののみ「ドイツって大学・・どこ?」

   スマホ画面を凝視するののみ。

ののみ「ちぇっ、あいつ・・・」

    XXX

   荷物を抱えるののみ。ソファーにるり子。

ののみ「るり子さん、私行ってくる」

るり子「どこへ?(お茶を飲みつつ)」

ののみ「ドイツって国!」

るり子「・・・パスポート持ってるのかい?」

   開けかけたドアをそっと閉め、居間に戻るののみ。

ののみ「・・・もらうよ、だから、これから市役所に寄ってくん

   だよ」

るり子「(せんべいを割りながら)そんなに早くもらえるのかね」

    XXX

   テーブルに顔をうずめるののみ。

ののみ「るり子さんの言うと通り、パスポート、すぐには貰え

   なかった・・・愁君」

   愁父、居間に来て。

愁父 「ののみちゃん、連絡先って言われても、住所読めないし、

   電話も通じないし・・・、そのうち連絡してくるよ」




89.正月 お寺の賽銭箱の前 1月 高2 

   三が日の年賀客でにぎわう中で祈り続けるののみ。

   殺気づいていて、誰も近づかない。

   寺の外、ライトが、降る雪を輝かしている。


90.ドイツ郊外 古城 二週間後 1月 高2

   田園風景の中、走る車、森の中に吸い込まれる道。

   車から降りる3人の影。

ガイド「ここです・・」

   ののみとみみん、ガイドの手の方向の城を見上げる。

ののみ、みみん「す、すごい・・・」

   石造りの古城が、そびえたっている。


91.古城城内 大広間 

   執事に案内される、ののみとみみん。

   クラシカルな大きなテーブルに座る、ミハエル。

ミハエル「の、ののみ・・?」

   ののみ、ミハエルに詰め寄り、首根っこをつかむ。

ののみ「愁君どこ!」

ミハエル「行きましたで(苦しい)・・・」

    XXX

   フラッシュ 回想 霧の中の古城前 早朝

   荷物を背負って出発する愁。

    XXX

   ののみの携帯が響き渡る(ダークな着信音)。

   ポシェットからスマホを取り出すののみ

ののみ「(愁父)お父さん!、愁君が居ない!、もう出発し

   たって」

愁父の声「愁から連絡あったよ、ウィーンの日本料理店テングに

   いるって・・・」


92.舞踏会 会場 ののみの妄想

   正装の愁と白いドレスのののみ、ワルツ、回る二人。


93.ウィーン 日本料理店「テング」 翌日

   高さの揃った建物が続く通り。

   車が到着する。ののみとみみんが飛び降りる。

   ののみとみみん、店内に入ると、愁が働いている。

   ののみ、愁に突進、頭突きをくらわす。

愁  「痛てて・・・」

    XXX

   店のテーブル、愁とののみ、みみん。

愁  「バックパッカーして、ここで働いて金貯めてて帰ろ

   うと・・・」

みみん「・・・(はぁ?)」

ののみ「帰りの飛行機代ないって・・・牛の一散」




94.地元 駅 翌々日 1月 高2

   改札前。

   ののみとみみん、愁の腕をそれぞれ抱え、改札から出てくる。

ののみパパ「お帰り、やぁ、おっきな、みやげだな」


95.ののみ家 その後

   食卓に豪華な食事が用意されている。

   猛烈に掻きこむ愁、見つめるののみパパ、ママ、みみん、

   妹とののみ。

愁  「日本料理店でも味微妙だった、この味付け懐かしい、

   うま・・・」

みみん「よかったよ、見つかって!、ののみったら、死霊に

   魂抜かれた岩、お岩のようだったんだから・・」

   ののみ、愁の顔を見つめる。

ののみ「生きてた、亡霊じゃないよね」


96.愁の家 愁の部屋 その後

   机の椅子に愁、座布団に座るののみ。

愁  「ヨーロッパの家って、石だけで出来てるんだ、見たろ

   ミハエルの城」

ののみ「すごかったよね、重厚で濃厚な存在感」

愁  「(?)いろんな建物見たんだ。いい経験できた」

   スマホの画面、写真をめくる愁。

ののみ「私もヨーロッパ旅行出来ちゃった、今度は二人きりで

   ゆっくり行きたいね」

愁  「旅行代は、きっちりパパに返せよ」

ののみ「君もでしょ!」

   ののみの手をトリ、手のひらに、石を握らせる。

愁  「これミハエルの城で拾った石、もってきちゃた」

ののみ「なんだろ?」

   半透明で凸凹している石を光に透かして見るののみ。


【起死回生】エピソード12

97.高校 正門前 夕方 2月 高2

   他校の制服女子から話しかけられている、(の)の字の

   ニットキャップの愁、ニット手袋にも(の)。

   しばらくして、うつむき駆け去る女子。

   ののみ慌てて、愁にダッシュして詰め寄る。

ののみ「何?、今の女の子、近くの女子高の生徒でしょ」

愁  「告られた(にやけ顔)」

ののみ「もちろん断ったよね」

愁  「断ったから、行っちゃったんだろ(残念顔)」

ののみ「よかった(ほぉ)・・・」

愁  「あの子みたいのを、接着系女子って言うらしい、女子高

   は出会いがないから、捕まえた男は一生離さないんだって

   (ののみを見る)」

ののみ「私も?接着・・・」

愁  「同じ接着系でも、美人で、輝くダイヤで、でも糊!、

   小学校で使ってたチューブのやつ、あのくらいの接着力

   ならなぁ・・」

ののみ「チューブ糊・・・」


98.同 教室 昼休み

   久美と話すののみ。

久美 「ひどくない、そんな言い方、ののみが接着系って・・・

   まあ、超強力なんだけど・・・」

ののみ「私、愁君からそんな風に思われてたのかな、ゼウスの

   ように私の気持ちをさらったくせに・・・」


99.愁の家 ののみの部屋 点描

   メッセージを送るののみ。

   愁の返信「友達とスケート中」。

   ののみ、LOVEのチョコレートをチョップで真っ二つに割る。

    XXX

   休日 

   メッセージを送るののみ。

   愁の返信「友達とスキー中」。

   ののみ、焼いたもちにかじりつく、伸びるもち。


100.高校グランド 日替わり 4月初旬 高3

   桜が舞い散るグラウンド

   サッカーをしている選手たち。

   一人ベンチに座って、英単語帳をめくりるののみ。

ののみ「Lose momentum、Lose one,s place、lose

   sight of、ロスアンゼルス?・・・」

   玲奈と筒居、そんなののみを見て話してる。

筒居 「(グラウンドを見て)愁に相手されてないらしいぞ」

玲奈 「こう言うの、なんて・・・」

筒居 「・・・倦怠期(?)」

   疾風で、ののみの肩に、桜の花びらが降り注ぐ。

    XXX

   ののみを真ん中に挟んでベンチに座る筒居、玲奈。

筒居 「卒業・・って恋の転機でもあるんだよ」

ののみ「The turning point・・・」

   と、顔をあげるののみ。

筒居 「99%の恋人は、卒業と同時に、まさに卒業となる」

ののみ「graduation・・・」

筒居 「俺とみみんは、復活したけどね・・・」

   ののみ、筒居の顔を一瞬見るが、またうつむく。

ののみ「復活(顔を上げる)・・・」

筒居 「あれ、戻ってくるって・・・聞いてない?」

ののみ「ベタだ・・・」

筒居 「俺たち、遠距離で、自然消滅したんだが、奇跡的に復活

   したんだ」

玲奈 「奇跡ですね・・」

ののみ「・・・(走る愁を見る)」

玲奈 「私と健は、99%の方かな」

   玲奈の顔を見るののみ。

玲奈 「多分、遠距離で、・・・フェードアウトになるね」

ののみ「fade-out・・・自然消滅・・・」

   玲奈、筒居の耳元で。

玲奈 「(小声)99%ってのは、まったくフォローになって

   ませんよ」

   桜の花びらが、グラウンドで渦巻いている。


101.高校 休憩コーナー 日替わり 昼休み 5月 高3

久美の声「接着系は、どっちなのさ」

   テーブルに、ののみと愁が、弁当を広げて一緒に食べている。

   久美やって来て、二人の前の席に勢いよく腰掛ける。

久美 「愁の方でしょ、粘着じゅない」

愁、ののみ「・・・」

久美 「毎日毎日、こき使って・・」

   と、テーブルを叩いて、ののみの顔をガン見。

ののみ「久美・・・」

久美 「ののみ、もう止めなよ、こんな事、水滴が岩を砕くって

   言ってたけど、そんなのあり得ないよ」

ののみ「砕くよ・・・」

   立ち上がり、一瞬、愁を見るののみ。

ののみ「いつかは・・・砕くよ・・・」

   ダッシュで出ていくののみ。

   愁も立ち上がり、腕を伸ばす・・・。

愁  「弁当、片付けてけよ・・・」


102.高校グラウンド外 日替わり 5月 高3

   サッカーをしている選手たち。

   グラウンドの、脇の小屋の影。

   手の望遠鏡で覗くののみ、菜穂が来る。

菜穂 「どうしたの、もっと近くで観れば良いのに・・・」

ののみ「近すぎて、ピントが合わないんだよね!距離感!傍に

   居たいって気持ち、接着力が強すぎたかも」

菜穂 「・・・そうなの?」

ののみ「菜穂ちゃんのおかげで、愁君と話せて、それだけで

   良かった(両手を斜に握り)!」

    XXX

   フラッシュ 回想 グラウンド

   ののみを、まるでハンマー投げのように、力いっぱい突き

   放す菜穂。

   旋風を巻き起こしながら、回るののみ。

    XXX

   振り反って、菜穂に向かいなおす、ののみ

ののみ「でもね、気持ちがエスカレートして、優しくされたい

   されたいって、欲が出てきちゃったんだ!」

菜穂 「欲張り・・・」

ののみ「チューブ糊みたく、ちょっと離れてることにしたんだ、

   私の気持ちは濃密密度、最重量級らしい・・・」

菜穂 「・・・(首を傾げる)別れるつもりなの?、もっと

   ワガママにすればいいのに・・私ならそうするよ・・」


103.愁の家 日替わり  朝 5月 高3

   愁の家からカバンを持って出るののみ。

   犬小屋のポチに、別れを告げるののみ。


104.橋を渡るののみ 5月 高3


105.愁の家、廊下 5月 高3

   壁の十箇条を見ている愁、愁の石を持っている。

   壁の紙(1いつもキレイで笑顔、2先に起きる(平日)、

   3男子とツーショット禁止、4外出は事前報告、5門限は

   7時、6日記を共有する、7連絡は即反応、8スマホ

   チェック厳禁、9GPSは切らない、10関係者を大事

   にする)

愁  「ちゃんと守ってたみたいだな・・・」

   愁の石を持って、家を出ようとする愁。

   靴を履きかけて止まる愁。

愁  「手のひらで踊らされる石・・・かな?」

   もう一度靴を履き掛けた時、石が愁の手からこぼれる。

   玄関に転がる石、袋から飛び出す。

愁  「あぁ、ヤバ・・・」

   慌てて拾う愁。袋の中に入っているものに気づき取り出すと

   、鍵だ。

愁  「(はぁとして)」

   家の中に戻る愁。


106.愁の部屋 その後

   押入れから、宝箱を出す愁。

   箱の中に入っている絵や通知表などを取り出す。

   一番下に錠前のついた箱。


【新たな関係】エピソード13

107.学校校長室 同日 昼 5月 高3

   ソファー、ののみパパ・ママと愁父が座っている。

   校長机に座り、PCを操作している。

校長 「だいぶ派手に恋愛してるようですね」

   立ち上がり、机の前に移動して、PC画面を反転させる。

   PC画面

   二人に関する投稿!二人が愁の家に出入りする写真など

   過去の二人の行動がアップロードされている。

校長 「高校生なのに同棲しているのを確認したと担任から報告

   がありました・・・」

   うろたえる両親(お互いの顔を見る)。

校長 「教育委員会が・・・このような問題ある生徒の卒業、

   進学に関して・・・」

ののみパパ「(立ち上がり、校長を遮って)待ってください!、

   ののみは、嫁にやったようなものでして・・・」

愁父 「えぇ、いい嫁さん・・みたいな感じですよ」

校長 「ご結婚されている?・・・それでしたら、問題ないですよ

   、夫婦は・・・そらゃぁ一緒に住むのは当然です

   からね・・・(ウインクする)」


108.愁の家・リビング 夜 5月 高3

   ののみと愁、ののみパパ・ママ、ソファーに座っている。

   愁父が二人のそばに立つ。

   愁とののみの前に、おかれた婚姻届。

ののみパパ「二人ともサインしなさい(ペンを愁に渡す)」

   愁とののみ、顔を見合わす。


109.橋の上 回想 朝

   橋にたたずむののみ、追ってくる愁。

愁  「ののみ!」

   振り返るののみ。

ののみ「愁君・・・」

   近づく愁。

愁  「やっぱりきてくれた」

   愁に飛び付こうとするののみ。

   寸前で避ける愁。

ののみ「あは、愁・・・」

愁  「ののみの思い通りには成らない」

ののみ「ちぇっ、読まれてる」

   ののみに愁の石を渡す愁。

ののみ「連れ戻すんでしょ」

   欄干から橋の下の川の流れを見る愁。

愁  「・・どうしようかな・・・」

ののみ「連れ戻すよね」

愁  「(ののみをガン見)誓う、離れないって・・・いい?」

ののみ「(愁をガン見)誓うよ、離れない・・ダイヤじゃなくて

   いい?」

愁  「原石がいいかも」

   ののみの肩を両手でつかんで、自分の胸に強く引き寄せる愁。

ののみ「・・・苦しいよ」

愁  「超強力なんだろ」


110.愁の家・リビング 回想戻り 

ののみママ「学校・・・卒業出来なくなるのよ」

愁父 「こんな形で急なことになって、申し訳ありません

   (ののみパパママに向かって)ののみちゃんを大切に

   します」

ののみパパ「もちろんです、箱入りですよ」

愁父 「進学が決まったら、式は派手にドカンと、かまします

   から」


111.同 回想・数日前

   ののみと久美、貴、健、玲奈が集まっている。

友達 「おめでとう」

ののみ「愁君、18歳、お誕生日おめでとう」

   ののみ、造った特大ケーキを運ぼうとして、つまずき、

   愁に・・・。

    XXX

   崩れたケーキの破片にたてた、ロウソクを吹き消す愁・・・。


112.同 リビング 回想戻り

   愁、覚悟を決めてサインし、ののみに回す。

   ののみ半泣き。手が震えてサインする。涙が1滴婚姻届に

   落ちる。

   婚姻届のうえで、涙が落ちて砕けて、きらめく。

   婚姻届けを見る愁、文字がにじんでいる。

愁  「書き直しだな・・・」

   愁にそっと耳打ちするののみパパ。

ののみパパ「あの約束の事だが・・・、結婚式までは待ってく

   れるよね!」

    XXX

   回想 愁の家のリビング

ののみパパ「Aまでにしてくれるよね・・・」


113.役所 数日後、 6月1日 高3

   窓口 6月1日の掲示

   着物姿のののみ、愁。

   婚姻届を窓口に出す。


114.お寺 同日 その後 6月 高3

   本堂の中、お祈りする愁とののみ。

    XXX

   本堂の裏、ののみ、前に立つ愁。

   愁、ののみのほほを両手で挟んで。

愁  「いいか、絶対内緒だからな!もし漏らしたら、

   即離婚だ!おまえの友達は、直ぐシェアしちゃうからな!」

ののみ「ジューンブライドだね、女神の月・・・」

   泣いてしまうののみ。

愁  「眼薬隠してる?」


115.愁の家作業場 別の日 6月 高3

   作業場、愁父とののみ

   ののみは拾った石を機械で磨いている。

愁父 「これガラスだな、ビンかなんかの割れたのが、川に

   流れるうちに丸くなったんだな」

    XXX

   回想 フラッシュバック 河原

   もらったネックレス(アメジスト)をみるののみ。

愁  「この川の上流でも、見つかった事あるそうだ」

ののみ「流れてきてるかも」

愁  「キラキラの砂のなかにあるかもな」

    XXX

ののみ「ガラスですか(残念)、でも綺麗」

   磨いたガラスに紐を通すののみ。

   愁父に見せながら。

ののみ「できた、恋玉、恋のたましい」


116.滝 別の日 6月 高3

   滝に打たれるののみ、ガラスのお守りを握っている。



117.愁家、愁の部屋のまえ 朝 6月 高3

   愁にガラスのお守りを渡すののみ。

ののみ「引退試合、頑張れ愁!」

   キスしようとするが、ドアが閉まり、顔面をぶつける!


118.試合会場グラウンド 同日 6月 高3

   愁のアシストでゴールを決める健。

   手を振って応援している玲奈。


119.神社石段 同日、同時刻 6月 高3

   パワースポットの石段で、気を送っているののみ。


120.愁の部屋 日替わり 6月 高3

   机、並んで勉強する二人。

愁  「このページからここまで、書写すこと、神も仏もない、

   自分の力のみしか頼れないんだぞ!受験は!」

ののみ「教えてもらってごめんね、愁君の勉強時間短くさせて」

愁  「いいよ、まあ、教えるのも復習になるから・・・」

ののみ「(はっとして)相乗効果!恋の相乗効果!」

愁  「相殺・・(眉をひそめ)されちゃってるけど・・」

ののみ「葬祭!、冠婚葬祭、冠婚・・・、ウエディングドレス

   着たいなぁ」

愁  「白無垢(ペンを振る)断然、白無垢!」

ののみ「爺クサ!愁君爺クサ」

愁  「COOLジャパン!だろ、(ノートを指差し)ここまた

   間違ってる、弱点克服しないと、点積みあがらないぞ」

   ノートに赤ペンで×を書く愁。

ののみの声「相変わらずスパルタだなぁ(半泣き)」

   横を向いて、目薬を差す(涙がこぼれる)。

   目の下、指で涙のポーズをする。

   無視してノートを添削する愁。


【一直線】エピソード14

121.ののみの部屋 後日 6月 高3

   ののみの部屋のドアを半開けで、ののみに

   学部案内書を渡す愁。

愁  「だいぶ成績上がっている、俺と同じ工学部にしろよな!」

   受け取ったののみ、学部案内を見ながら。

ののみ「工学部かぁ・・」

   愁の石を見つめるののみ。

    XXX

   いろんな場所 点描

   河原の石、拡大ルーペで見たきらきらの砂、滝修業で

   見た荒々しい岩肌、古城・・父と畑の土・・・ののみ

   の頭の中を巡る映像!。

    XXX

ののみ(あっそっか)愁の石を手に取り、キスをする。


122.愁の部屋の前 直後 6月 高3

   愁の部屋のドアを叩くののみ。

ののみ「愁君ねぇ、愁!」

愁  「何、問題終わった?(ドアを少し開けて)」

   強引にドア開けると愁に飛び付くののみ。

ののみ「私決めたよ!石の勉強する、石とか土とか・・・」

愁  「じゃ、土木工学だな」


123.いろいろな場所 点描 7月 高3

   並んで、勉強する愁とののみ


124.点描 夏の海 砂浜 8月 高3

   水着の愁とののみ、愁父、愁妹、若い職人、海岸で遊んで

   いる。点描。

   砂浜で、お城を作る、愁とののみ。

    XXX

   夕方 海岸 

   きらきらした夕日の落ちる海。

   護岸の上に座り、たそがれる(夕日を見る)愁とののみの影。

    XXX

   夜の海岸

   手持ち花火をする一行。

   浴衣のののみ。


125.民宿 夜 食堂 8月 高3

   いくつかのテーブルに用意された食事、座っている愁一家。

   立ち上がりビールのコップを持つ愁父。

愁父 「(ううん)夏を乗り切るための、毎年恒例のバカンスで

   鋭気を養ってほしい・・・新しく離れを建てるための工事

   を始め・・・」

   女将さんが駆け込んできて。

女将 「今年は、愁君の彼女も来てるんですってねぇ」

   ののみ、みんなから、指を指される。

ののみ「(首をちょこんとする)」

愁  「カンパ~イ」

   乾杯する一同。

    XXX

   ののみの横に座り話す、女将。

女将 「かわいい子ね(ののみの顔を見ながら)、さすが愁君の

   選んだ彼女さんだわ」

ののみ「かわいいなんて、正直なんですね」

   照れて、片手で髪を掻き揚げる。

女将 「毎年来てくれるのよ、もう20年くらいになるかな」

   女将、愁家族を見る。カニを夢中(無言)で食べる家族たち。

女将 「お母さんが亡くなった後に来た時は・・・」

ののみ「・・・」

女将 「愁君にお母さんはって聞いたの、そしたら死んだって

   言うじゃない、びっくりしちゃって・・・」

ののみ「・・・」

女将 「まだ、小さかったからかな、わかってなかったのかもね」

    XXX

   女将の回想 昔 民宿座敷

   一緒に遊ぶ、男の子と、泣きべその女の子。


126.海辺の漁港 同深夜 8月 高3

   愁が漕ぐ、ボートに乗っているののみ。

ののみ「大丈夫なの、真っ暗だし、なんか流されてる・・」

   街の明かりが遠ざかっている。

愁  「やばい、ほんとに流される・・」

ののみ「えぇ、えぇっ!」

   立ち上がろうとするののみ。

愁  「立つな!!」

   木の葉のように揺れる船、そーっと座るののみ。

   愁、ボートの中、横になる、ののみも、隣に横になる。

   夜空、太陽のような月明かり。

愁  「月が眩しくて、星が見えない」

ののみ「怖いよ、このまま流されてどうなるの」

愁  「やばいな・・・流れ着くのは、ロシアかな」

   ののみ、スマホを探す。

ののみ「スマホ持ってきてない」

愁  「誰にも気づかれないままなら・・」

ののみ「怖いけど、愁君と一緒だから・・でも怖い(ふるえ)」

   ののみ、愁の横顔を、見ていたが、夜空に目を向ける

    XXX

   月が傾き、星の蛍光。

ののみ「(落ち着いて)ねぇ、星は無数だけど、ほとんど名前

   あるんだよね・・」

愁  「名前ない星見つけたら、自分で名前つけれるらしい」

ののみ「なのに、石や砂には名前ないよ、無数にあるのは同じな

   のに・・・」

愁  「自由だから・・自由だから動けるし、姿も変えら

   れる・・」

ののみ「だから、土台になったり、建物になったり出来るん

   だね・・」

愁  「石を探すのもいいかも・・」

ののみ「石もこの星と同じ・・う~ん、それ以上にきらめいて

   いるんだね」

愁  「・・」

   手をつないでいる二人。

ののみ「・・愁君の手、あったかいね・・・」

   そのつないだ手を自分の胸に置く愁。

ののみ「・・・(目を閉じる)」

    XXX

   ふいに、ボートが動き出す。

   起き上がる二人。船外機付きのボートでけん引されている。

    XXX

   桟橋、固定されるボートから、降りる二人。

   (陸だ~)と、手を取り、地面を踏みしめるふたり。

   船外機付きボートを運転していたのは、若い職人。

   愁、職人に話しかける。

愁  「怖かったぁす・・」

職人 「お化け屋敷なんかより、よっぽど怖いべ」

愁  「最高の肝試しでした」

ののみ「肝試し(!)・・・」

   腰が抜けしゃがみ込むののみ。


127.点描 部屋、図書館、塾

   愁とののみ、ノートに書き込んだり、ヒアリングしたり、

   講義を受けたりする。(いくつかシーン)




128.点描 試験会場 

   試験を受ける愁とののみ(いくつかシーン)


129.愁の家リビング 数ヵ月後 12月 高3

   ののみと愁、ののみパパ・ママ、愁父、るり子、愁妹、

   みみん、筒居が集まっている。

   テーブルの上、料理、ケーキ、飲み物、そして家の模型が

   並んでいる。

   万国旗が張られ、バルーンが壁が彩られている。

ののみ「なんと推薦入試で、愁君と一緒の大学に合格しました!」

   それぞれ合格通知を広げる二人。

愁  「同じ工学部!俺は建築学科で、ののみは土木工学科、

   石の研究をするんだって」

   クラッカーが鳴る。

一同 「おめでとう」

ののみパパ「おめでとう、よく頑張ったな」

愁父 「ののみちゃんの頑張りには感動したよ」

ののみママ「・・・(泣く)」

   くす玉を割るののみパパ、垂れ幕に文字。

   垂れ幕の文字

   「祝!!合格 バレンタイン結婚式」


130.愁の家作業場(日替わり) 12月 高3

   愁が工房で作業している。

   やすりがけする愁、職人が手伝っいる。


131.愁の家ののみの部屋 日替わり 12月 高3

   クリスマスリーフ作りをするののみ。

   リーフに河原の石を付けている。


132.愁の家 夜中 12月 高3

   愁の部屋に忍び込もうとするののみ、部屋に内側から鍵が

   掛けられていて入れない!

ののみ「チェッ・・・」


133.愁の家 後日クリスマスイブ 12月 高3

   竹ぼうきで作ったクリスマスツリー、派手に飾り付けられ

   ている。

   ののみ、トナカイのコスプレ。

   テーブルに食べ終えたオードブル、ケーキなど並ぶ。

   電話するしているののみ。

   つながらずスマホを放り出し、ソファーにうつぶせに

   倒れこむ。

ののみ「あいつ、またバックレやがった・・」

   大きなモアイのぬいぐるみを正拳突きするののみ。

   ののみのスマホが唸る(犬の遠吠えの着信音とバイブ

   レーション)。

   スマホ画面「愁とデートする女を見た!!久美」


【テイクアウト】エピソード15

134.街中 その夜 点描 12月 高3

   久美とののみ、街中のクリスマスツリーや電飾の間を歩き

  回る。

   レストラン前、正装した玲奈と健に会い、一緒に探す。

   (いくつかシーン)


135.ある雑居ビルの前 その後 12月 高3

   人集りが出来ている。

   その中に愁。久美ダッシュで愁に詰め寄る。

久美 「どう言う事?可怪しいと思ってたんだよ!女がいるんだ

   (怒鳴り声)、ののみはただの家政婦代わり・・・」

   (遮って)玲奈、ビルの上を指差す。

玲奈 「あれ、あれ・・・」

   ビル、飛び降りようとしている菜穂がいる。

菜穂 「飛び降りてやる(叫び)」

   みんな見る(さほど高くない)。

菜穂 「無償の愛とか、求めない愛とか、そんなの愛じゃない!

   全力で求めるのが愛でしょ、でしょ!(叫ぶ)。」

   愁、菜穂に向かって。

愁  「止めろ!(叫ぶ)。」

    XXX

   警備員に腕をつかまれ、降りてくる菜穂。

警備員「落ちたら怪我するよ・・・」

   愁、ののみ、久美、玲奈、健が対峙する。

   警備員を振り切って、ののみに食って掛かる菜穂。

菜穂 「愁と別れるっていってたよね・・、なのに結婚してる

   って何なの、ふざけないで・・・」

久美 「結婚(玲奈を見て)・・・」

玲奈 「してるって(久美を見る)・・・」

   首をかしげる(どういうこと)久美と玲奈。

   菜穂とののみの間に入り、ののみをかばう愁。

   その愁を見て、菜穂が切り出す。

菜穂 「カッコ悪いね私!、二人のこと認めたくなくてさ!自殺

   するふりなんかして!最初から、そう、私が・・ののみ

   ちゃんに声をかけた時から・・・」

   愁の腕にしがみつくののみ。

菜穂 「あれは愁に頼まれたからだったんだ!そう、最初から、

   愁は、ののみを好きだったって話」

   愁の両腕を掴むののみ。

菜穂 「それをバラすぞって私が脅してたの、脅迫!、無理に

   デートしてもらって・・」

   愁の両手をにぎっているののみ。

菜穂 「ネットに写真アップしたり、書き込みしてたのも

   、私・・・」

    XXX

   回想 ネット書き込み

   愁とののみのツーショット写真、「同棲してる」

   「サッカーのエースが貢がせてる」・・などなど・・・

    XXX



健  「ほー、スパイ活動が返って、結婚を早める結果になった

   ってエピソードか」

   と、健、玲奈の肩を抱く(何度かうなづく)。

   愁の腕を脇に挟み、歩き出すののみ、引っ張られる愁。

菜穂 「愛のキューピットが、悪魔になって、弓に毒を塗って

   射ろうとしてさ・・・」

   膝から崩れ落ちる菜穂。

久美 「何!何!解かんない!(うろたえている)」


136.雑居ビルそば ミニ公園 その後

   愁の顔のほほを手で挟むののみ。

ののみ「・・・(目を見開いて)ホントなの!」

愁  「実は・・・すごく昔から・・・好きだったんだ・・・」

    XXX

   河原、昔

   石を拾う小さな女の子と男の子。

    XXX

ののみ「そんな大事なこと、妻に隠してたなんて

   (への字口)・・・」

   笑顔になって、愁のほほを両手で挟んで、キスをするののみ。

ののみ「これで封印したからね!ダーリン、もう秘密は無しだょ」

    XXX

愁  「好きだ!」

   夜空に向かって叫ぶ愁。

   ののみ両手で、両耳を塞ぐ。

   おもむろにポケットから、指輪ケースを取り出す愁。

愁  「(清々した笑顔)ののみ!いつもありがとう、

   結婚してください・・・奥さん」

   と、ケースを開ける。白い石のリング。

ののみ「うん(じらし)・・してやるよ」

    XXX

   見つめ合う二人、指輪をつかむサンタ帽の愁。

愁  「創ったんだ(ののみに見せる)、いいでしょう」

ののみ「遅れてきたサンタさん(ウインク)・・」

   ののみの指、すでにエンゲージリングをしている、

   その上に白い石があしらわれた指輪をはめる愁。

ののみ「キレイ(眼を輝かせる)、やっと好きって言わせたぞ!」

愁  「で、ののみは?・・」

ののみ「あぁ~・・・好き(照れて小声)」

愁  「えぇ(聞こえない)?」

ののみ「好き!(大声)」

愁  「えぇ(なんて)」

ののみ「す~き~(絶叫)」

愁  「やっと言った・・で、いつから」

ののみ「うぅ~・・・生まれる前(かな?)」

愁  「(えぇ)やっぱり(こわ)」

    XXX

   手で望遠鏡を造り覗く愁。

愁  「俺たちお互いに、覗き合ってたって事だね、ハニー」

ののみ「(うなずく)ダーリン・・・」

愁  「俺の望遠鏡の方が性能は良いけどね!だって俺の方が

   先におまえ見つけたし」

ののみ「(首を振って)私が先だよ!」

   愁、指でLを作り、ののみもLを作って合わせて、

   ハートにする。

    XXX

貴  「あの・・・お熱いおふたりさん、焼け石に水かもしれま

   せんが・・みんな帰っちゃいましたけど」

   二人と貴以外、誰もいない。

愁  「何で残ってんの?ってか、いつから居た?」


137.愁とののみの部屋 日替わり お正月 1月 高3

   着物のののみ、髪飾りに達磨、袴の愁。

   鏡餅、破魔矢、招き猫、繭玉、熊手、羽子板が飾られている

   室内。和風テイストのインテリア。

   ソファーでビデオを見せながら、ハンバーガーを食べる二人。

   ののみのビデオ。

   映像(発表会で、ののみ、久美、貴がお遊戯)

   感想を言いながら笑う二人。

    XXX

   愁のビデオ。

   映像(小さな愁とののみが公園の砂場で遊ぶ)

   愁母も映っている。

ののみ「ほんと、キレイな人、この人が愁君のお母さんなんだ」

愁  「・・・(ののみの顔を見る)」

ののみ「あ、この女の子、かわいい・・・私だ!」

愁  「俺がひとりでいると、よく遊んでくれた子だよ」

ののみ「だから、私・・・この頃、ほんとは私のこと好きだった

   んだね」

   映像(ののみが泣いている、そばに愁が立っている)

ののみ「泣かされたなぁ、この子に(愁を指さす)、あれから

   男の子とうまく話せなくなったんだ・・・でも・・・」

愁  「俺も・・・女子は苦手だったな、直ぐ泣くし・・・」

   愁の肩にもたれかかるののみ。

ののみ「・・・もう泣かないね」

愁  「まさか、目薬・・・」

   ののみの顔を凝視、そのままキスをする。


【微笑み】 エピソード16

138.結婚式場 後日 バレンタインウエディング 2月 高3

   仏前結婚式の会場、愁、家族、親戚、友達が整列している。

   愁、袴風のスーツ。

   駆け込むスタッフ。

スタッフ「(あっせって)新婦・・はな、花嫁がいません」


139.回想 ののみ家リビング 前夜

ののみ「パパママ、今まで育ててくれてありがとう」

ののみママ「実はね、話しておかなきゃいけないことがあるの」

ののみパパ「ママ(困惑)・・」

ののみママ「愁君のお母さんと、私は親友で、彼女が病気

   になったとき、小さかった愁君と妹ちゃんを、

   入院するたびに預かってたの・・・」


140.回想 病院の病室 12~3年前

   ベットに起き上がっている愁母。ののみパパ、ママと愁父。

ののみママ「心配しないで治療に専念して、子供たちのことは

   私に任せて・・」

愁父 「家の事は、おばあちゃんも元気だから・・・、子供たち

   も大きくなったら手伝ってくれるだろうし・・」

ののみパパ「そう、ののみ!、ののみを嫁がせます。将来は

   愁君のお嫁さんとして、ねぇママ」

ののみママ「そうね、うん、・・・約束しましょ(うなずく)」

    XXX

   ベッドで、書き物をする愁母。


141.お寺の参道前 結婚式の時間

   ののみ、純白の白無垢風ドレス、ヘッドドレスは小石で

   作られたラリエットの角隠し。

   うつろな目で歩くののみ、参道の途中でしゃがみこむ、

   取り囲む観光客たち。

   着込んでいるのでふっくらした姿、化粧が落ちてまるで

   パンダのような顔。

ののみ「やっぱり信じられない・・・」


142.お寺の裏山 その後の時間 

   雪舞い風が吹いて、粉雪、ぼやけてる街。

   ベンチに座っているののみ。

   スマホの画面を見ながら来る愁、ののみのコートを

   持っている。

   ののみの背中にハグする愁。

愁  「見つけた!」

ののみ「怒ってる?・・・、私は怒ってるよ」

愁  「俺もさっき聞いた、母さんの事をののみに話したって」

ののみ「約束知ってんだ・・、だから私と結婚したの?もう秘密

   は無しって・・」

愁  「結婚はハプニング、俺も予想してなかった、お前を

   家政婦代わりにするだけって」

ののみ「ひどい・・・」

愁  「でも気づいたんだ、お前の笑顔見ていたら、大事な人

   がいた事を・・」

   ののみの正面に回る愁、ののみを立たせる

愁  「親が決めたとかじゃなくて・・・」

ののみ「愁君・・・」

   ののみに手紙を渡す愁。


143.点描 披露宴会場 同時刻

   バラの花で彩られた披露宴会場、ひな壇は空席。

   大勢の客が、いくつものデーブルに座って歓談している。

   二人の成長のビデオが流される。

   チョコレート(LOVEの文字)のウエディングケーキを

   切り分けるみみんと筒居。


144.回想 フラッシュバック 愁の部屋

   押入れから、宝箱を出す愁。

   箱の中に入っている絵や通知表などを取り出す。

   一番下に錠前のついた箱。

   その箱の錠前を外すし、ふたを開けると、中に手紙。



145.回想戻り お寺の裏山 

   手紙 宛名 「ののみちゃんへ」

ののみの声「ののみちゃん、ご結婚おめでとう、この手紙を

   見てるあなたは、何歳でしょうか?」

愁母の声「本当に好きな人と結ばれることでしょう、もし、その

   相手が愁君だったら、この先を読んでください・・」

   夜空、雪雲がなくなり、オリオンやおうし座の点光が

   見えてくる。


146.披露宴会場 数時間後

   ガランと何もなく暗い会場。

   会場の真ん中に二人。そこだけライト。

   ののみ、バラのドレス、胸に愁がミハエルの城から持って

   きた石をネックレスにしている。

   愁、シルバーのスーツ、ののみのお守りをブローチにして

   いる。

   ろうそくを持った一人が入ってくる。そして、また一人、

   また一人と次々と。

   皆に囲まれ、祝福される二人。


147.ライトアップされた寺院 その後

   コートを羽織り、参道の光の道を歩く二人。

148.蔵造の店 店内 その後

   テーブルに座るののみと愁。

   ののみ、愁母の手紙の続きを読む。

愁母の声「その相手が愁君だったら、この先を読んでくだ

   さい・・、愁君はとてもシャイな男の子です、愛して

   るって言いましたか?幸せにする約束しましたか?

   お勉強もお仕事も真剣に取り組んでますか?いつも微笑

   んでますか?やさしく抱き締めてくれますか?

   (質問が続く)・・・最後に心から幸せですか?」

ののみ「愁君のお母さん、愁君を生んでくれたありがとう。質問

   いっぱい(のどを詰まらせながら)いっぱいですね、

   お答えします、心から幸せです」

   胸がいっぱいのののみ、愁の目を見つめる。

ののみ「でも、ほんというと、幸せって何かよくわからない

   かも?」

愁  「俺もよく分からない・・・でも隣にいるだけでいいって

   思えるから・・」

ののみ「・・・(うなずき)」

愁  「幸せにできる確証はないけど・・・幸せになれる確証は

   あるかも・・・」

   ののみに別の手紙を見せる愁。

   手紙 宛先「愁君へ」

ののみの声「(手紙を読みながら)まだまだ未熟で愁君に迷惑

   かける駄目な奥さんですけど、愁君に幸せにして

   もらいます」


149.ミニ公園 屋外 その後

   イルミネーションの光のシャワー・フラッシュの下に二人。

   ののみ、愁の胸に、顔をうずめようとする。

   愁、ののみの両肩を掴んで。

愁  「鼻水・・・」

   鼻水を手袋で拭くののみ。

   愁、ののみをハグして、頬を両手で挟んで、キスをする。

愁  「冷たくて、感覚無い・・・」

   ののみ、手袋を脱ぎ、愁のほほを素手で挟む。

    XXX

   逆光線の光の中の影。

   タキシードにダウンジャケットを着たミハエルが立っている。

   手の平を上にして、差し出し、二人に手招き。

ミハエル「ダイヤ・・原石・・・返して」

二人 「・・・ダイヤ~~(叫ぶ)!」


150.河原 後日 ののみバースディー 2月 卒業

   陽光、水面がきらめく。

   学生制服の、ののみと愁。

   ののみは頭にティアラとブーケ、薔薇のブーケを持つ。

   愁の左胸に薔薇のブートニア

   (二人だけの結婚式)

   逆光、手を取り合い、やがて重なる二人の影。

   XXX

愁  「誕生日おめでとう、卒業おめでとう」

   ののみの首元と耳に光るアメジスト。

ののみ「卒業おめでとう、今日までの軌跡、

   アメイジング(奇跡)だね」

    XXX

   山の上、夕日が傾く。

   手の望遠鏡で川面を覗くののみ。

愁  「何が見えるの?」

ののみ「ダーリンの笑顔」

   キラキラ波が光ってる。

   愁も望遠鏡を覗く。

ののみ「何が見える」

愁  「ののみの・・・変顔!」

ののみ「変顔してないけど(半泣き)・・・」

   愁、ののみの頬を両手で挟んで・・・キスをする。

   ののみの涙が、頬をつたって、愁の手に流れてくる。

愁  「ののみの・・・笑顔」

ののみ「(微笑む)・・・」

    XXX

   やがて大学生活が始まって、ののみも忙しい日々を送ってる。

   (いろいろなシーン)


151.THE END




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ