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ギムルの変化

本日、2話同時投稿。

この話は1話目です。

「……なんか、雰囲気変わったな……」


 ファットマ領から馬車を乗り継ぎ、無事に到着。

 約一ヶ月ぶりのギムルの町は、懐かしさよりも違和感を覚えた。


 人の往来は以前よりも多いくらいなのに、どこか寂れたというか、


「待てっ!」

「!!」


 店に向かう道中、街中に突如響いた声の方を見ると警備隊の人が3名。

 白昼堂々ひったくりでもやらかしたのか、少し前を走る男を追っているようだ。


「確保!」

「くそっ! 放しやがれ!」


 警備隊の1人がとても速く、すぐに犯人に追いついた。

 しかし、


「! 危ない!」

「うわっ!?」

「へっ! バカめ、っ」

「逃がすな!」

「おおっ!!」


 犯人の取り押さえ方が甘く、犯人は隠し持っていたナイフを抜いて振りまわす。

 それによって警備員は顔に傷を負い、犯人の拘束がさらに緩んだ。

 再度逃げ出そうとした犯人は、追いついてきた他の警備員が確保したが、


「大丈夫か!」

「う、うう……」


 命に別状はないが、顔の傷だけあって出血量が多そうだ。

 回復魔法をかけさせてもらえないだろうか?


「すみません」

「なんだ! 取り込み中なのが見て分からんのかッ!」

「回復魔法を使える者ですが、良ければ手当てをさせていただけませんか?」

「回ふ……すまん! それは助かる!」


 許可が出たので、傷を確認して中級のハイヒールを使用。

 出血の勢いに対して傷はそれほど深くなかったため、魔法は1回で十分だった。


「どうでしょうか? 違和感などありませんか?」

「ああ、もう大丈夫だ。痛みもない」

「良かった」


 傷の治った警備員の様子を見て、今度は先ほどそばにいたもう1人が声をかけてくる。


「少年、協力感謝する。そして改めて、先ほどは申し訳なかった」

「同僚の方が怪我をしていたのですから、仕方ないですよ」

「いや、我々にとって怪我など日常茶飯事。常に覚悟しておくべきであって、それを理由に守るべき街の住民に声を荒げるなど、あってはならないことだ。ましてや治療を申し出てくれた者に当たるなど言語道断。言い訳になってしまうが、今日はずっと虫の居所が悪かったのだ」


 どうやらこの方、かなり真面目な人のようだ。


「もう謝罪は受け取ったと思っていましたが……あ、では少々聞いてもいいでしょうか?」


 自分がしばらくこの町を離れていたことを話し、街の雰囲気の変化について聞いてみる。


「それなら、南で建造されている新しい街は見たか?」

「はい。まだ外壁だけ、とはいえかなり建造が進んでいましたね」

「うむ。工事が順調なのは良いのだが、実は働き口を求めて来た労働者が街に溢れてしまっていてな……ほら、そこにも、あちらにも」


 次々と示されるのは細い路地。そこには道端に座り込んだり、寝ていたり。料理店の残飯を漁って追い払われたりしている……


「大通りから道を1本外れただけで、こんなに?」

「先月までも人は増えてきていたが、ここまでではなかっただろう? どうも他所から来る労働者の数が、想定をはるかに超えていたらしい。おかげで喧嘩や問題を起こす者が急激に増えてしまった。我々も急遽人員を増やし対処しているのだが……未熟な新人まで動員しても、朝から晩まで働き詰めなのが現状でな」


 警備隊の皆様には、1人の市民として頭が下がる。


「そうでしたか……お忙しいところありがとうございました。お仕事頑張ってください」

「ありがとう、君も気をつけてな。暗くなる前には家に帰りなさい」


 こうして警備隊の人と別れ、改めて店に向かう。


 ■ ■ ■


 そして到着。従業員用入り口から中へ入ろうとしたのだが、


「どちらさまですか? ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」


 見知らぬ男性に呼び止められた。


 俺としては、あなたこそどちらさま? って感じなんだけど……


 とりあえず自分も関係者であることと、事情を説明してカルムさんへの面会を求めた。

 すると彼も思い当たることがあったようで、平和的に中に入れてもらえて、


「おかえりなさいませ、店長!」


 無事に俺が店長であることが証明された。


 そして、


「さっきは失礼したね。店長が子供とは聞いてたんだけどさ、てっきり何かの冗談か、子供にしてももう少し大きい、成人ちょっと前くらいだと思ってたからね」

「いくら年齢制限はないといっても、普通はそう考えますよね」


 お互いの素性を確認しあって、和解? 争っていたわけではないのでちょっと変な感じだが、とにかく親しい感じで話しかけてくる彼はユーダムさん。


 人族で金髪、ちょっと軽い感じの20代男性。格闘家を自称していて、実際に体はかなり鍛えられている様子。筋骨隆々というよりも無駄をそぎ落とし、よく絞り込んだボクサーのような体格だ。


 なんでも彼は腕試しをしながら国中を回っているらしく、旅の途中でたまたまギムルに立ち寄ったところ、店の食材を買いに出て絡まれていた料理人のシェルマさんを発見し、助けてくれたそうなのだ。


 その後、彼はシェルマさんを店まで送ってくれて、シェルマさんはカルムさんや店の皆に事情を説明。治安の悪化と防犯を懸念したカルムさんが念のためにと警備員の増員を決定し、オックスさんやフェイさんとも相談した上で、ユーダムさんに声をかけ、臨時の警備員として雇い入れたとのことだった。


「カルムさん、いつも店を守ってくれてありがとうございます。それにユーダムさんも、ご協力本当にありがとうございます」

「これが私の仕事ですから」

「僕も路銀が底を尽きかけていたところだったから、丁度良かったよ。待遇も悪くないし、店の雰囲気もいいし、何より手合わせをする相手に事欠かない。僕にとっては最高の環境だよ」

「そういっていただけると嬉しいですね」

「そういえば店長もかなり腕が立つって聞いてるけど……うん、間違いなさそうだね。一試合どうだい?」


 おや?


「どうかしたかい?」

「いえ、僕は弱そうに見えるらしいので。珍しいというか、新鮮なお誘いでちょっと驚きました」

「ああ、確かにその年齢と体格じゃ、一見して強そうには見えないかもね。でも僕はさっき、警備員として君を注視していたから。格闘家として道場破りも繰り返してきたし、体の動きでなんとなく実力があるのは分かるのさ」


 おお、それは頼りになりそうだ!


「帰ってきてから街の雰囲気がおかしく感じていて、ちょっと不安だったんですよね……カルムさん、皆の様子はどうですか?」

「そうですね……今はフェイさん達に加えてユーダムさんもいますし、店の守りという点では特に不安などなく、元気に働いていただけています。ですが、やはり買い物などで外出が必要なこともありますし、治安の悪化は不安に感じているようです。

 やはり事件の発生件数は増えましたし、つい先日はモーガン商会でも放火事件が発生しましたから」

「えっ!? セルジュさんの所にですか?」


 驚きのままに聞くと、カルムさんは重々しく頷く。


 彼と2号店にいる姉のカルラさんは、セルジュさんのご厚意でモーガン商会から来ていただいた人材だ。彼にとっての古巣に火をつけられたとなれば、心穏やかではいられないのだろう。


「モーガン商会も夜間警備の人員を用意していたのですぐに消火されましたが、数人がかりで油の入った壷を投げ込んだ上で火の魔法を撃ち込むという大胆な犯行。犯人は消火の混乱に乗じて逃走し未だ捕まっていません。決して警備が手薄だったわけではないので、綿密な計画を練ったプロの犯行で間違いないかと……事件当時は街にも大きな動揺が走りました」

「当然でしょう」


 モーガン商会は言わずと知れた超有名店。

 その名前には信用、ブランドがあり、しかもギムルの店はその本店だ。

 多くの人が利用し、そうでなくても一目置かれている店での放火事件。

 前世だったらあっという間にマスコミが押しかけることだろう。


「セルジュさんは」

「ご無事です。人の無事を最優先にと指示が出ていたため、従業員にも被害は出ていません」

「そうですか。それは良かった」


 しかし、気になるな。町の様子もだいぶ変わってるし、ちょっと相談したい。


「カルムさん。お仕事で急を要するものはありますか?」

「確認していただきたい書類はありますが、長旅でお疲れでしょうし、明日でも特に問題はありませんよ」

「そうですか! では今日はお言葉に甘えて、失礼させて頂きます。ファットマ領でいくつか仕入れてきた物があるので、セルジュさんのところに寄ってみます」

「分かりました。僕がよろしく言っていたとお伝え下さい」

「あ、そうだ。皆さんにもちゃんとお土産がありますから、整理して明日お渡ししますね。

 それでは!」


 帰ってきて早々、俺は店を後にしてモーガン商会へ駆けだすのだった……

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― 新着の感想 ―
闘わないか?がヤラナイカに脳内変換されてしまう
[一言] こらw明日でも特に問題はないって言うのは今日は休めって言ってるんだぞ!!
[気になる点] 彼と2号店にいる姉のカルラさんは、セルジュさんのご好意でモーガン商会から来ていただいた人材だ。 →セルジュさんのご厚意で  厚意とは好意や善意からの行動を指しますので、この場合はこちら…
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