waniのブログ小説“妄想マン夢見ケン”
被害妄想癖
2015-02-11 11:44:35
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
私の幼い頃からの友人に“夢見ケン”と言う男がいる。
彼はミュージシャンの道に進み
現在は山陰の山里にスタジオと古民家音楽茶房を構えて暮らしていて
明日から始まる新年の関西ツアーのことをボヤ~と考えながら
ツアー途中での松江のレトロな街の
温泉ホテルから二軒目の小料理屋の松葉ガニに舌鼓を打っている。
私も幼い頃からミュージシャンに憧れ
ギターやオリジナル曲作りに勤しんでいたが
一人の女性に惚れてしまい家庭を持ち子供が生まれ
家族を守るために事業家の道に進んでいたが
大人になってからも東京や大阪の音楽イベントに出演している
“夢見ケン”を見かける度に私の魂の奥方から
今のままの私で良いのか?と問い掛けられていた。
しかし、ケンと私とは生まれ落ちた場所が全然違うのだ。
ケンの父親は生涯三人の妻を娶り
それぞれの女性との間に複数の子供を授かり
8人の子供達にそれぞれ一戸立ち家を与え
その中から事業家に興味を示す息子には
最初は資金を提供し、経営センスの無い息子には
無利子で追加資金出来る程の近所でも評判の
大金持ちなのだが
表向きは、小さな玩具町工場の経営者であった。
私には劣等感があった
幼いとき音楽のことや何かでケンと口喧嘩したとき
つい言ってしまった。
『これやからボンボンは嫌やねん!世間知らずで。。』
するとケンは
『俺、ボンボンちゃうで、
小2の二学期までオレとこ金持ちや!思てたけど
三学期なってボンボン学校に転校させられて
仲良くなったヤツの家行ったら屋敷やったで、
オレとこ金持ちチャウッ、中の上や!』
このケンという男。。
ちょっとアホというか被害妄想壁があり
その辺りではよくケンと口論になったことがある。
誰が見ても解るのだ
彼の父親が只の町工場の社長でないことを!
彼は今、目の前にある現実しか見えないのだ
明日を信じていないのだ。。
そしていま、彼は松江のレトロな街の小料理屋で
松葉ガニ三昧の中、明日の宿でもある
神戸・山手に立つ一軒家に棲む
職業カフェのママである“見多目カワイ”と過ごす
三週間のことでお得意の妄想に浸っていた
このあと起こり続ける
地獄の現実をかいま視さされる事も知らずに。。
幼いケンの病
2015-02-13 00:26:54
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
このケンという男の妄想癖はいまに始まったことじゃない
まだ幼稚園にも行かない4~5歳の頃
なんか時間が存在する限り死は確実にやって来るけど、何か?
みたいな哲学者めいた問いを気骨のありそうな年上の人に投げかけるが、
周りからは、まだ小さいのにかわいそうにと思われていた。
小学校に上がると
掛かりつけの医者をはじめ、近所中の人が驚いて一目見ようと
彼の家に押し寄せる奇病を患った。
風邪を引いた彼は、寝たまま目の前のテレビと二日間過ごしていた
すると突然キツネか何か執りつかれたかのような形相になり、
『ウォーッ、ウォッ ウォッ 』と唸りだした
なんの騒ぎだ!と近所の人が集まりだし
彼のようすを見たある婦人は漢方を煎じて
チョコレートだから言って彼に飲ましていた。
別の近所のおばさんが祈祷しを連れてきて
祈祷師は彼の周りで厄払いの舞を踊りだした。
やがて、掛かりつけの医師高橋ドクターが現れ、彼を診察した
高橋ドクターは動揺していた。
(今まで見たこともない患者だ。。)
『これは大きな病院に任せるしかないカルテは私が書きますから。』
当時、巷では日本脳炎が大流行であった。
ケンは病名“疑似日本脳炎”で二週間の入院生活を体験している。
後日、彼自身どんな感じだったのか?痛かったのか?苦しかったのか?
ケンが言うには痛くもかゆくもなかったらしい
なんでも二日間テレビを見続けていたら
大量の光が体の中に雪崩れ込んできて
ビックリして体から飛び出してしまったと言うのだ。
体の上方から周りで起こっている現象を只見守っていたと言うのだ。
高橋ドクターの動揺も、煎じ薬も祈祷しもちゃんと憶えていると言うのだ。
世に言われている“幽体離脱”を体験したと言うのだ。
そして20代後半にインド生まれの神秘化にイカレてしまい
師と仰ぎ神秘化を追っかけ海外放浪をしはじめ
インド哲学・瞑想という
私には理解しがたい道を歩きだしていた。
白い冒険者
2015-02-13 12:11:45
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
ケンが“見多目カワイ”を初めて見たのは8年前だった。
SNSのミクシーで神戸に近い大阪北部でカフェを経営する
彼女を見つけ、大阪、名古屋、東京とライブツアーするので
メールで彼女が経営するカフェでもライブパフォーマンスをしてみたい
とお願いしてみると、意外と会ったこともないオッサンミュージシャンにも拘らず
あっさりOKしてくれて後日のある夜、大阪にある彼女のカフェに愛車で辿り着き、
見た目30才、実際は45才のカフェママ“見多目カワイ”を初めて見た。
妄想マン・ケンは白衣に身を包んだ神社の巫女のイメージを
勝手に彼女に対して抱いてしまい、
その妄想は膨れ上がり、深夜ライブパフォーマンスを終え
彼女の店を去る直前には“運命の出会い”に進化していた。
『今晩、どこで泊まるのん~?』
カワイのオッサン心を和ます綺麗な高温が
すっかり人が居なくなった店内に響き渡った。
『ブログ書いてるんで、これからネットカフェ行きます。。』
すると
『うちとこパソコンあるからブログ書けるよぉ、
うちとこ来たらぁ~、泊まれるしぃ~、
ネットカフェ高いやん!!』
カワイの顔が凛々しいカフェママに変化していた
ケンは(この人、ちょっとカッコいい!)なんて思ったりして
その夜、躊躇することなく彼女の神戸・山手の家に転がり込んだ。
家のリビングで彼女の男性遍歴を聞かされ驚いた!!
現在、彼女は若い彼氏と一緒に暮らしているが
一年前に15年連れ添ったミュージシャンの旦那をガンで亡くしたばかりであった。
しかもその旦那はネパール生まれのプロのタブラ奏者で
ケンとはジャンルが違うがプライベートでは何回かセッションしていて
東京の音楽イベントなどでケンを見かけると『ケン兄!!』と叫ぶ
弟分的な男であった。
更に、カワイは若いときに
サーファーと3年間の結婚生活を体験している。
そのサーファーの友達連中がケンが追っかけたインドの神秘化“KOSHO”を
ケンのあと同じように追っかけグループに加わった
顔見知りの後輩的クルーであり
そのグループは“ユメミシン”と呼ばれており
その頃彼女の廻りはユメミシンばっかりだったと言う。
ケンは軽い感動を覚えていた
もう3次元の脳に届いていた
その運命の出会いは、その妄想は
彼女をエスコートする白い冒険者に進化していた。。
超わがまま社長令嬢モード
2015-02-13 17:06:21
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
『ユメミシンって貞操観念おかしいわぁー、
わたしの友達何人も妊娠させられたわ。』
リビングの窓からは薄明るい光が漏れ出した頃、
カワイは“元社長令嬢一人娘モード”に突然変化し
超わがまま鶴の一声ならぬ“女神の一声”を炸裂させた!!
(あの。。ボクもユメミシンなんですけど。。)
知り合って12時間ほどの若い女性から
こんなハードコアな声明を浴びせられた妄想マン・ケンは
禅スティックで頭をガツンと張られたか如く
“彼女をエスコートする白い冒険者”などという
180度カン違いの妄想はいっきに吹き飛び
目の前に現れた自分も含めた出来の悪い“ユメヤシン”達の
師“KOSHO”の教えを都合よく誤解し世間にてやりたい放題な行いの
お客様、苦情係のキャラに変化し
現前に居られるカン違いユメヤシン達の被害によって“KOSHO”本人にまで
マイナスイメージを持たれてる元社長令嬢に対応し
説明責任を感じたので、わかりやすく彼女の誤解を解こうとするが
さっきまで“白い冒険者”だった自分と
いまあるお客様苦情係の自分のギャップに頭がすこし混乱していて
相手は世間知らずのお嬢さん。。
全然説明にならず、明日は名古屋に向かうので
二階の個室で寝ることにした。
部屋には木製の二段ベッドが備わっていた
ベッド下段にバタリと仰向けに体を預けた
(明日は名古屋か。。それにしてもあんな可愛い社長令嬢とオイラが
合うわけないわなぁ、やっぱりオレは寅さんでいいんだ,寝よ!)
目が覚めたケンはリビングに下りてみたが
カワイの姿は見かけなかった
夜の仕事で朝は遅いみたいだ
ケンはテーブルの上にあった紙切れにボーペンで
『ありがとう!ケン。』と書き残したあと
愛車に乗り込み、エンジンを2~3回ふかし
東に向かって発進した。
恋愛相談
2015-02-13 22:51:30
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
それから2年後、
55才のケンは故郷である大阪の町で半年ほど暮らしていた時に
再び“見多目カワイ”に出会い、彼女の家でウクレレを弾きながら
自作の歌を歌う歌声は、
妄想マン・ケンのほのかなユメである
“歌姫!サウンドプロデューサー”への道を目覚めさせ
カワイ自作のこの曲をレコーディングし
家と店とファンをすでに持っているカワイとバンドユニットを組んで
ライブもしてみたらお客はいっぱい来て楽しく過ごしていたが、
既に二十年以上も山暮らししてしまっている彼の体は
大都会には馴染めず、
とっとと山陰の山里に畑付き古民家を借りて
大阪から逃げ出した。
更に2年後のある日、
朝から体調を崩し、スタジオで休んでいたケンに
カワイから電話が来た。
最近ケンスタジオと同じ町に移住した大阪の友達の車に乗せてもらって
今近くに来ているというので、体調は決して良くはなかったが
うれし、なつかし、よく来たね!で久しぶりのカワイの顔を見に出かけた。
カワイはなんか疲れているようにも見え、ちょっと、ブスになったようにも見えた。
こっちに来てまだ海は見ていなかったみたいだったので
彼女の友達の家から海岸まで車で連れ出した。
海を眺めながらカワイがポツリとしゃべりだした。
『うち、街に疲れたはわぁ。。田舎に住みたいなぁ、良いとこ無いかな?思て来てみてん。。』
ケンは参考になればと、20キロ程離れた彼が管理する二つの家を案内することにした。
彼の家に向かう途中車中、カワイは恋愛関係性にホトホト疲れていると
カミングアウト!しはじめ出した。
カワイが言うには、
近年、いままで一緒に暮らしていた彼氏との恋愛関係が末期状態突入の最中、
フラフラとカワイの前に20代の癒し系イケメンが現れ、ツィそっちに走ってしまい
気がつけば、いままでの彼氏を含め三角恋愛関係が成立し
自責の念を感じた彼女は
どっち共別れるという究極の選択をして今は独りだ!と言うが、
一人になってから友人にケンと同い年のシングル男性との交際を
進められていて、どうしょうかなぁ~と思っているらしい。
生みの母親が小5で他界し男社会で育ったケンは
女性の繊細な気持ちを理解する能力に欠けている。
朝から体調が悪い、カワイの恋バナにも上手く対応できなかった。
家を案内したあと、彼女の今晩の宿である友人宅まで送り、
カワイはケンとこのあと一緒に音楽したそうだったが、
ケンはクタクタになっていて帰って寝ることにした。
数ヵ月後、
カワイから相談したいことがあるので彼女の仕事が終わる頃
ケンに電話しても大丈夫かな?とメールが入った。
カワイからの頼みだ。。ケンは好物のコーヒーを啜りながら
彼女からの電話を待った。
真夜中過ぎにカワイから電話が来た、恋愛相談であった。
なんでもケンと同い年のユメミシンの男性と交際してるのだが
一緒にいて楽しいけれど、貞操観念の部分で意見が対立し
何日も話し合ったが、疲れてしまっているらしい。
『“KOSHO”ってフリーセックス教えてんのん~?』
開口一番、受話器の向こうから神の一声が飛んできた!
恋愛相談ではなかった。
アンチユメヤシン様の苦情電話であった
ケンは真夜中過ぎにもかかわらず、精一杯説明責任を果たそうとした
お客様苦情係になってしまってから二時間たった頃、
ケンのテンションが落ちたことに気づいたカワイは
明日もう一度コールして大丈夫か?ケンに訪ねた
ケンは起きていたら電話に出るよとだけ言って電話を切りかけた時!
カワイの悪戯っぽいトーンの声が聞こえた!
『そのユメヤシンの男、ケンちゃんの知ってる人やねん~、フ、フ、フ、♪』
その男は昔ケンが所属していた浪花の老舗バンド
“バカアンド システム”のリーダー
金持ち一人息子“何故加茂照”であった。
疲れ果てたケンは次の晩
カワイからのコールに出ることさえ出来なかった。
デュエット曲
2015-02-14 21:07:53
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
そして去年の夏、
若い頃ニューヨークで世話になった大阪の友人とFACE BOOKでつながり
久しぶりなんで、彼と大阪でうまいもんでも食って昔話でもしてみたい
ついでにライブもとって空いた日はディープOOSAKAの旅もいいなと
数年ぶりに大阪・奈良で4箇所のツアーで関西に向かった。
初日はとりあえず石橋でライブ一発行い、次の日のライブ処である
カワイのカフェに電話してみた。
『けんちゃん~♪おつかれさんぁー!』
カワイの張りのある高音が聞こえてきた。
今日はもう遅いのでネットカフェで寝て、明日の朝
ケンの実家のマンション一階の倉庫が空いているので
愛車をそこに泊めさせてもらって、夕方彼女のカフェへ行くつもりだったが、
『うちとこ車泊めれるよぉ~、御宅なんか一ヶ月ぐらい泊めてたよ、
うちいま一人やし、泊まれるし。。』
御宅とは2年前からのカワイの若きビジネスパートナーで
“真雑魚御宅”と名乗る芸術家肌の青年で
最初はカワイと一緒に暮らしていたが、
カワイに恋愛感情を持ってしまい、
若気の至りで燃える思いをカワイ本人にぶちまけた上、
居候のくせにビジネスパートナーとしてカワイと同等の立場を要求したため
カワイに一蹴され、現在はカフェの近くでアパートを借り一人で住んでいる。
と彼女は言っていた。
ケンはカワイ優しいこと言ってくれるなぁ、甘えよぉ~♪、
と彼は思った。。
その夜、ケンが見た彼女からは何か吹っ切れたような
無垢な白銀の光が放射されていた。
次の日の夕方、彼女が運転する車の助手席にちょこんと座り
ライブで店に向かう車中で、きっぱりとした表情をしながら
“何故加茂照”との一年交際終了声明を高らかに上げていた。
そのあと一週間ほど関西に滞在することになるが
関西から山里に帰る日の朝はカワイと一緒にいた。
出発間際にカワイは、数年前にケンと一緒に作った曲の音源CDを
お客の評判が良いので店で流したいから送って欲しいと言われ
『山里に帰ったら音源残ってると思うから、探して送るわぁ。』
この曲が二ヵ月半後、季節は秋、
二人の距離が大接近する火種になることを
まだ二人は知らない。
二夏の経験
2015-02-15 12:21:53
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
山里に戻ったケンに知り合いから短期のおいしいバイト誘いが入り
体力を使わず田舎じゃ破格ギャラのこのバイトに通勤しだした頃
ケンは、ふとカワイのことを思い出した。
(こないだの旅でずいぶん世話になったなぁ~、
そうだ!数年前のあの曲2105年バージョンで創ってあげたい!)
その夜、
ケンは電話でカワイに自分の思いを伝えたあと、彼女の方のやる気を確かめた。
『やる気?ある、あるぅ、やった~~♪』
彼女は以外にも凄く喜んでいた。
妄想マン・ケンのハートにジーンと来た
(えぇ娘や、バイト頑張って又カワイに会いに行こ!)
もう只のキャバクラ嬢にハマってるフリターのオッサンなのだが、
妄想マン・ケンの脳内では、
ミュージシャン・ケンとカフェママ・カワイとの
純愛バンドサクセス物語のはじまりだった。
二ヶ月後の秋、
ケンは神戸・山手のカワイ宅の玄関で靴を履き、
大阪・北ネオン街にある洒落たジャズバーでのライブに出かけようと
小脇に数本の竹笛を抱え、立ち上がり後ろに振り返ると
愛犬を右腕で抱えた、まるでジブリアニメ少女のようなカワイが
あどけない笑顔で、
『いってらっしゃ~い♪』
家を出て徒歩で坂を下り、阪急電車で北のジャズバーに行き、
竹笛ライブを2ステージやりビールとテキーラシングルと
ディナーを店側から提供され、一万円相当集まった投げ銭を
100パーセントミュージシャンのケンにチャージバックされた後、
阪急梅田駅まで歩き帰宅した。
次の日は日曜日でカワイは休日だった。
ケンもこの日はライブも無く、リビングで例の曲のリズムトラック作りで
ヘッドフォンを被りギターパートを録音していると
昼ごろ、リビングにカワイが現れ
ケンの創っている音を聞きたいと言い出し、ヘッドフォンを被り
彼女はしばらくの間黙ってケンの録音したばかりの
ギターの音を聴き入っていた。
ヘッドフォンをはずしたカワイは、ちょっと不思議そうにケンの顔を見て
『えーかんじやん~~☆、よっしゃ!うちご飯作るわぁーっ!』と、台所に立った。
しばらくすると彼女は先に出来上がった味噌汁を一杯お椀に注ぎ、
リビングのテーブルに箸を付けて運び(休憩して味噌汁の味見してみてぇ、)
みたいな顔をしてケンの顔をチラッと見たあと、台所に姿を消した。
ケンは(おっ、らっき~!)と作りたてのカワイの味噌汁を頬ばった。
味噌汁の具には山芋やゴボウが入っていて、女性ならでわの食の気遣いによる
旅の途中の家庭の味に癒やされた。
大阪下町で育ったケンは、神戸・六甲山に甘酸っぱい青春の思い出がある。
二十歳過ぎのケンは、六甲山ホテルが税金対策で立てた“夏休み限定レストラン”で
2年連続レストラン下広場にある2段ベッドの寮で集まった男女の大学生と共に
毎夜のように、神戸100万ドルの夜景を眺めては
浮かんできた、詩をギターに乗せて歌ったりして暮らした
“二夏の経験♪”がある。
そこは若い男女のことだから、そこら中で恋の花が咲き乱れていた。
ケンも例に漏れず2年連続ちがうタイプの女子大生と恋に落ちてしまい。
下山してからも、それぞれと一年ぐらい交際することになるが
男社会で育ち、女性の扱いがガサツで私立男子校に通ったケンの前から
芦屋と三田のお譲さん達は、一年ぐらいでどちらも姿を消してしまったが、
ケンにしてみれば、それまで一年間も交際が続くような女性に出会った経験は無く
どちらの女性もちゃんと交際した初めての女性であって
どちらの女性もバージンであったことは、
当年61才のかれの脳裡にもしっかりと焼きついているので
神戸・とかお嬢さん・とかの単語でさえ
彼の妄想スイッチのスタンバイランプが点灯することがあるゆえ
この“二夏の経験”のお譲さん回顧妄想は広がって行き、
いま、一つ屋根に暮らす目の前に居る
神戸・元社長令嬢・カフェママ・カワイに
若き日のはじめての女性の未来像を勝手に投影してしまい
彼女が作ってくれた味噌汁を飲み干して
器と箸をもって台所に行くと
カワイの洗い物うしろ姿を確認し
フラ~ふら~と彼女の傍により
食器を洗っているカワイの顔を覗き込んだ
彼女は幸せそうな、平和そうな微笑を浮かべ食器を洗っていた
その瞬間、ケンの妄想ランプはパトランプに変化し、緊急サイレンがけたたましく鳴っていた
ケンは。。
抑えきれない衝動に襲われ
バックから台所に立つカワイの体を抱きしめた
しばらく、そのままじっとしていた
彼女は動かなかった、首をのばしカワイの横顔を覗き込んだ
幸せそうな微笑はそのままだった
この瞬間、妄想マン・ケンは彼女の虜になってしまった
余談ではあるが。。
いつかケンと男同志で飲みながらY談したことがある
私は女房との夜の営みで早漏ぎみの愚痴を彼にこぼしていた
ケンはセックスの体位はうしろからが好きみたいだった。
“新婚モード(ターボ)流し目モード”
2015-02-15 19:34:11
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
すっかりカワイにイカレてしまった妄想マン・ケンは
それから関西を離れる朝までの10日間、ごきげんで彼女宅で過ごし
別れの朝、愛車のドア前で出発しようとしていたケンに
目を閉じたカワイがケンに抱きつき、彼女の左頬を
ケンの右頬にくっ付けてスリスリした。
ケンは(この感触ってなつかしい。。)
愛車に乗り込みエンジンを掛け、
坂道を50mほど下った頃チラッとバックミラーを覗くと
坂の上から、小さくなっていつまでもケンの愛車を見ている
カワイの姿が写っていた。
山里に戻り旅のなごりも薄れかけた頃、ケンのスタジオにカワイから電話が来た。
『青春ちゃんの2月のイベントでケンチャンをゲストで呼びたいっていってるよぉ』
青春ちゃんとは神戸・須磨で30年間レゲエイベントをプロデュースした
関西ミュージックシーンでは有名な“森田青春”で、30年前ぶりに開催時に出演したケンに
先日カワイのカフェで再開し、いまのケンのライブを最後まで見ていた。
ライブの箱は、神戸・新開地(一度ケンが行ってみたかったライブのメッカ)
えっ、又ーッ、それも真冬~?とは思ったが、行ってみたかったのでOKした。
年が明け、関西にライブツアーに出る10日前にカワイから
ケンのライブスケジュールのフライヤーを、画家の息子の“真雑魚御宅”に
デザインさせ知人やお店に配っていることや、
雪が心配なので、天気予報をチェックして、
出来れば少し早めに関西に来るようにと電話があり
気がつけば、
ケン個人が3発、イベントゲストが1発、カワイとのバンドライブが2発と
〆てライブ6発滞在3週間の、カワイ音楽オフィス企画の
雇われミュージシャンと言う立場が形成されつつあったが、
この時点では、面倒くさいことの嫌いなケンは、まぁそれもアリかなであった。
関西に向かう途中、松江の温泉と松葉ガニ三昧余韻も薄れないうちに
ケンの愛車はハチ北高原を超え、夕方には神戸のカワイ音楽オフィスに到着した。
荷物を車から降ろしたケンは、秋のバイトで貰った新米2キロを
カワイにあげた。
いきなり新婚モードのカワイであった。
リビングで彼女とお茶を頂きながら、雑談タイムに入った
カワイは2月4日は宝塚の神社でケンと一緒に節分したいので
ケンの予定を訪ねた後、
『これで栗ご飯つくろ~か♪』
テーブルの上の新米を両手でグッとにぎりしめ、
流し目で、京都の小料理屋の艶っぽい女将のような表情で
ケンの目を見つめた、
これは効いた
“新婚モード(ターボ)流し目モード”
ターボが付いてやがった
ケンの体の尾骶骨あたりが何年ぶりか熱くなった
眠っていた性センターのチャクラが目を覚ましたのだ
ケンは41才のとき、ある女性から
好きなバックスタイルのセックスに励んでいる最中に
パッと、四つんばいに屈んでる女性に下から振り向かれ
『ねえ。。まだ?』
と言われて依頼“メンタル性不能症”を患っている。
それ以来、余程の状況・環境がそろわない限り
女性に性的興奮しない体になってしまっている。
ここからがケンには大変だった。
いままでカワイに対する想いはハートチャクラだけが発動している
中学男子のものだったが、
ここへきて、性センターが発動してしまい
成人した男性のものへと変化した。
2階のケンの寝室の隣の部屋にカワイは寝ている
ここで夜這いでも出来たら何の問題もないのだが。。
あいにく今のケンにはその気力、体力は無くおまけに不能者だ
発散できないエネルギーは負のパワーとなり
ケンはキスも手も握らないうちから
カワイにモラスハラスメントしはじめた。
孤独の海底
2015-02-16 08:17:48
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
この旅の1発目ライブはケンとカワイ二人のユニットライブだった。
その朝ケンは機嫌が悪かった。
バラ色の新婚モードは二晩で終わり、
昨晩のカワイとのリハーサルもあまり楽しくなく、
カワイの曲のバッキング練習ばかりしてるうちに
ケン自身の曲の練習が全然出来ていない事に気づき
カワイとのリハーサルはこれぐらいにして
彼女宅に戻り、深夜にも関わらず独り地下室に引きこもって
自分のリハーサルに集中して今日のライブに備えていた。
ライブ処へは彼女の車一台で運転手係りの御宅とカワイとケンの
三人で向かうと言うので、彼女の曲のバッキングで使う楽器を積み込もうとすると、
既に車内には沢山の荷物や楽器が積んであった。
彼女と一緒のライブには、バッキングの為の楽器が沢山必要で
アフリカ太鼓やピアニカを積みはじめると、ちょっと狭かったので
(じゃまくさ~~い)と思ったケンは、
彼の愛車で彼らと離れて単独でライブ処に向かうので
箱の場所の地図を書いてくれないかと頼んだが、
さらっと流されて、彼女は御宅に車内の荷物の整理を指示した。
すると、ケンの荷物も普通にすべて積み込めて
結局、車一台で三人一緒に出発した。
車の後部座席に独り座るケンは無口なオッサンであった。
彼の被害妄想ランプは点灯していた
(カワイが居なけりゃ一人でライブ処にも行けない。。
カワイに捨てられたら関西で音楽活動やっていけない。。
でも独りで自由に行動したい。。)
少し混乱していたが、今はライブに集中することに専念した。
ライブは良かったみたいで、ライブ後楽器を片付けているケンに
若者が近づいてきて、来週末の神戸・新開地のケンがゲストで出演する
イベントにも行ってみたいと言った。
ライブに集中していた彼のカワイに対して抱いている妄想ランプは
一切点灯しなかった。
彼の目に映っていたカワイは、
集まった彼女のファン男性に飛び回り細やかに気配りする
普通のカフェママで健気な女性であった
このときのケンの妄想はほとんど消え去り、
只、“普通の目”で世界を見ていた。
帰宅する車内の後部座席に独り座るケンは
一言も語らなかった、時折助手席のカワイが彼に振り向き、
灰皿はあるかとか気配りするが、ケンは寝たふりしていた。
ケンは疲れて寝ていると思った彼女は
隣で運転手係をやっている青年“真雑魚御宅”に
隣町の愛犬を預かってくれた友達宅に
夜も遅いので急いで欲しいと要請していた。
御宅は彼女に惚れている、彼女はそれを知っていて
どうすれば一時も速く、
御宅青年が愛犬に会わしてくれるかも知っているようで
パッと“キャバ嬢モード”に切り替え
そのカワイの様子に御宅の妄想ランプは
けたたましいサイレンと共に激しく点灯してしまい、
車内でカフェママと青年画家との愛の劇場がはじまってしまい
彼は舞い上がってしまい、何度も道を間違え
カワイ宅に着くまでに一時間半の時間を費やすことに成ってしまい
後部座席で寝たふりしていたケンにとっては
“地獄の90分神戸の夜”がはじまった。
長かった、90分が9時間ぐらい長かった
(なんでこんな茶番聞いてなアカンねん。。
待てよ、このカン違い青年御宅はそのままオレやんーっ!)
車内ではカン違い“愛の劇場”がヒートアップしていた。
寝たふりケンは、そのまま孤独の海底に沈んだまま動けなかった
一秒でも速くここから逃げ出したかった。。
迷いの愛の巣、置手紙モード
2015-02-16 12:00:26
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
それからケンとカワイのすれ違い生活が始まった。
カワイは夕方リビングに降りてきて、食事、支度し仕事に出かけ
ケンは日中は地下室で音楽を創ったり、ライブのある日は日中から出かけ
悪友を呼び出し、ライブ箱の近くの人気立ち飲み屋、扇町“得一”で一杯やって
そのあとライブやって、帰ってバタンと寝るパターンになっていたので
カワイとは事務的なことを訪ねられたときに、一言二言答えるだけで
全然顔さえ見ない日もあり数日後の朝、夜に新開地ライブがあるのでそのついでに
思い出の六甲山に登ろうと、出かける支度をしていたら
リビングのテーブルの上にカワイからの置手紙が置いてあったが
急いでいるのでロクに読まずに、たたんでポケットに入れ
六甲に向け愛車のエンジンを吹き上げた。
道中、買い物をしたり道を間違えたりで
お腹が空いたので、国道沿いの寿司屋に入りお茶を飲んでいると、
今夜のライブプロデューサー“森田青春”から電話が来た。
彼はケンのリハ入りの時間を尋ねたが
『まだわかれへん、今メシ食うてて、その後六甲登って
思い出の青春に浸ってからそっち行こ思てんねん!』
実際、そのとき夕方リハの一時間前だった。
しばらくの間“森田青春”は言葉を失い
子供に尋ねるような口調でケンの今いる正確な場所を尋ねた。
それから、六甲は明日にするように諭し、新開地のライブ箱までのナビゲートを行い、
今晩は彼の家に泊まることを勧め、そのあと彼がケンを確保する一時間の間に
数回ケンにナビゲート電話を入れていた。
新開地のライブ音は最高だったので楽しかった。
青春とのオッサン漫才も若い女の子たちに受けていた。
その夜、
森田青春宅で風呂から上がり、リビングでジーンズを刷いている時
ポトリと紙切れが落ちた、
『ケン、なんか落ちたよ。。』
青春が手のかかる子供に気づかす様なトーンで注意した。
『あっ、それカワイの置手紙や!オレ目悪いから読めへんねん、
ちょっと読んでみて。』
青春は朗読しはじめた
『ケンちゃんお疲れどす~♪うちは、なんかケンちゃんの機嫌が悪いように感じています、
昨日のうちのカフェでライブの後、車に荷物積んだら帰ってく思て待ってたのに。。
ゆっくり話ししたいな、
明日は店休みやから家にいます、遅くなってもいいので
帰って来てください。カワイ』
読み終わった“青春”は、しばらく黙って首をたらしていた。
それから首を上げ、ケンの顔を見た彼の目はキラキラとしていて
『ええ~娘やなぁ~~!』
ケンは以外な顔に成りながら無言でつっ込んだ
(えっ、そこ?何がえぇねん!こっちは心臓ヤバインじゃ!)
ケンは自分自身に疲れ果てていた
混乱していた、いまは只残りのスケジュール消化して
速く山里に帰りたかった。。逃げ出したかった。。心の整理をしたかった。。
それはメンタルなものから身体に影響を与えていた
実際、心臓ヤバイいのだ!
ご縁の縁モード
2015-02-16 16:12:41
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
『オレが悪いんかーっ!?出て行ったらー!!』
次の日の夜、
カワイとゆっくり話しをしはじめて五分後
ケンの“出て行ったらーっ!”コールが久しぶりに炸裂した!
ケンは30代に上京してレゲエバンド“KANI”を立ち上げ
ヒモミュージシャンを三年間経験していて
3LDKのマンションで一年に一回は当時の女性に炸裂させていた。
カワイの反応は以外でもあった。
彼女は“最強!女の涙モード”に突入し
右手を高く上げ、人差し指を振りながらジブリアニメのキャラに変化し、
『こんなことで大げさに、ポイッって捨てられるなんてぇ~、あんまりやわー!
エーン、エーン、ェーン。。』
(あかん~)
ケンは観念した“ご縁の縁モード”に突入してしまった。
このモードに突入した彼に意志は無くなり
いくら逃げても逃げても彼女が生きている限り
彼女の手の平にもどり、安らかに眠ってしまう
彼はこの日、生涯二人目の女に出会った。
『カワイ~、泣かんといて~、こうなったらオレあかんねん、
出て行っても又帰ってくんねん~、そやからナァ ナァッ、』
彼女は泣き止み、ケロッと吐いた。
『わたしが、気がつけへんかったんが悪いんやなぁーッ、
やっぱり言葉にせな解れへんな、ケンちゃん!うち風呂はいるわぁ、』
風呂から上がってリビングに戻った彼女はジッとケンの方を観ていた
それに気づいたケンは、ふと彼女の顔を覗き込んだ。
瞳を大きく見開いて、視線を外さず
さらに小顔を上下に2~3度うなずいた
それは女心にうといケンにとっても充分なサインだった
ケンは、
フラフラと彼女に近づき、その小顔を両手の平で押さえ、
自分の身体を彼女に預けた
『おれの~、かわい~~、ウオーッ!』
ケンは泣き弱っていた、彼女はジッとケンを受け入れていた。
一度小顔から手をはなしたケンは、彼女全体を眺め
今度は両腕で彼女の身体を抱きしめた後、
彼女は、
すーッとリビングを出て、二階に続く階段を上がって行った。
股間を押さえながらカワイを追いかけた
『カワイ~!。。反応したーッ☆』
それは、成熟した女性の魅惑の微笑みであった、ケンの顔を覗き込み
『うん?ア・ホ・☆』
彼女はそのまま二階に消えた
ケンは
リビングに一人座り
久ぶりの性的興奮を見守っていた。
エピローグ
2015-02-16 18:44:41
テーマ:waniブログ小説『妄想マン!夢見ケン』
このケンとカワイの物語がこれで終わるのか?まだ続くのか?
いまの私には、どうでもいい。
ただ、一つ気がかりなのは、
いま、ケンは山里に戻り、この旅を振り返っている
ケンの妄想はほとんど消えたが
その中の彼女が好きだという妄想は
いつまでも消えない
妄想マン・ケンは
男の道は、女より自由を尊ぶ
けったいな都合のいい哲学を持っているが
実は、
本当の愛が足音をたてて近づくたびに
それを恐れだし、それから逃げていることに
気づいていない。
ーーーーー完ーーーーーーーーーーーー