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閑話 身体測定

梅雨が訪れる少し前、僕たちの小学校に身体測定という女子には特に来てほしくない日がやってきた。

身長体重と座高を測るだけの簡単な物なのだが、女子達は躍起になって食事を抜いたり運動したりしている。

その顔には大量の汗と、食べていないのが丸わかりである、女子がしてはいけない不機嫌な顔を見せていた。

周りの男子どもはその豹変ぶりに、若干引いてしまって近くに寄ろうともしない。

小学5年生だろうと女性は女性、体重がやはり気になる性分であろうことは想像に難くない。


しかし元男である僕から言わせてもらうと、少しぐらい体重があっても男子は気にしないものだ。

逆に気にし過ぎて痩せ細った体であると、男子としては萎えてしまうというもの。

体重は軽いほうがいいなんてことはないのだ。平均体重程度あれば健康的で、病気にかかりにくい良い体であると言える。

だから気楽が一番、それにこういうのは日ごろの食生活が一番重要なので、今だけ運動しても無意味だと悟っている。

彼女たちはまだ小学5年生という成長期。多少重くても関係はないはずだ。

逆に余りに体重を抑えてしまうと、ホルモンバランスが崩れて生理不順となったりするし、注意が必要だな。



「…おいあわせの野郎よゆーしゃくしゃくだぜ。ムカつくな一人だけあんなに澄ましてるとよ。」


「あーちゃんはお肌スベスベだし、可愛いから許します。あーちゃん小さくて細くて可愛い私のあーちゃん。」



二人の友人も遠くで体を動かして少しでも減らそうという足掻きを見せていますね。

体伸ばしたり、走り込みをしたり。お疲れ様ですお二人共。

ですがやはり僕は自然体の方がいいと考えます。ありのままの自分たちを曝け出した方が賢明ですよ


すると先生方が何やら慌ただしく動き出しました。如何やらそろそろ始まってしまうようです身体測定が。

さあいざ体育館へと行きましょうか。そろそろ集合がかかる頃ですし。

遅れてしまうのは先生方に悪いですから。ほら既に落ち込んでいる子達も前見て歩きましょう、ほら。



「あーあーなんだあいつ!涼しい顔して!ぜってー負けねぇからなあわせにだけは」


「そうだねぇー少なくともしずちゃん、体重では勝ってるもんねぇ?」


「うっせー!言うんじゃねぇ!?人が一番気にしてるってのによ!」


「きゃっあーちゃん助けて!」



後ろの方で騒ぐ声が聞こえます。

どうせいつもの二人でしょうし、僕は無視を決め込みました。


それはそうと前世のころから身長体重とか気にしたことはないので、あまり高揚感もないです。

普段通りの僕ですが、周りの人たちはとてもそわそわしてますね。

始まってもいないというのに世界に絶望するかのように暗い人もいれば、この日の為に必死に体重を落としたのでしょう。顔には期待と不安で上気している方もいます。

見ていると面白い人だかりの中、僕は保健指導員の誘導の元、身長体重を淡々と測っていく。

自らの結果を見て特に思うことはなく、記載シートに名前と数字を書いていきます。

そこでふと結果についてグレートスさんがとても知りたがっていたことを思い出しました。

こんなの知ってどうするというのか、僕は疑問に思いますが今日の放課後のお屋敷訪問は何か良くないことが起こる。そんな予感だけがヒシヒシと感じます。



「ぎゃー!やっぱ増えてんじゃねぇか!身長は伸びねぇのになんでだよ俺!」


「むー私も身長はあまり伸びてません。残念です、あんなにぎゅうにゅー飲みましたのに」



そんな二人の友人の嘆きを聞きながら、少量の雨が囁くように体育館の屋根を優しく叩いたのでした。






















「ふーん、合ちゃんの身長体重座高は138㎝、32キロ、70㎝ね。把握したわ。」


「…何に使われるのか、本当に怖いです。グレートスさん」



いつものように放課後グレートスさんの屋敷にお邪魔しています僕は、遂に身体検査の結果を伝えるに至りました。

グレートスさんの真顔がとても怖いです。真剣な目つきでメモ帳に書き記しています。

何に使われるというのでしょう。僕はとっても怖い。



「あぁちなみに私のスリーサイズは、97・58・83よ。アンダーは76なのでHカップ程度かしら」


「聞いてませんし、知りたくないです。グレートスさん」



何が悲しくてその豊満な胸のサイズまで聞かねばならないのか。

ですが納得しました。グレートスさんに抱かれるととっても気持ちいいと思っていたのはその大きさもあったのかもしれませんね。

要約メモも取り終わって、自らの膝を差し出すグレートスさん。

何でしょう、もしかして膝枕させてあげますということでしょうか。

いや、それは、ちょっと悪いですよ。いつも撫でられたりマッサージしてもらっていますが、女性の膝で寝てしまうなど恥ずかしくて出来ません。

近くにはいつも傍にいる家令さんの涎を垂らした姿が存在していましたが、そちらは完全無視の方向で行きましょう。



「ふふっ可愛いですね合ちゃん。もう私の愛玩用としてこの屋敷に永久就職してくれませんかね。」


「…相応の対価をいただけるのであれば、考えてやらんこともないです。」



本気で言えばここで堕落した生活を送るのは、悪い考えには思えません。

まあ人としてどうなのかってことは問題ですが、何も考えずに日がな過ごせるのならば誰でも食いつきましょう。

それが特に今後の未来も見えぬ者であれば尚更断る理由なんかない。



「…よし、今から『合ちゃん貯金』を初めて3億円から交渉してみることにしましょう。」


「やめましょう、この話止めましょう!」



何かきな臭い匂いがしてきました。僕はやっぱり真面目に生きたいと思いますよ。ええ



「ではその先行投資で、まず合ちゃんの、体を頂くことにしましょう。」


「やめっ止めてくださいグレートスさん!誰かこの人止めて下さい。」



結局その日も散々にやられて息荒く、家へと帰宅することになったのです。

えぇひどい目にあいました。もう二度と行ってやりません。


しかしその後も何だかんだ屋敷に訪れてはグレートスさんの執拗な悪戯に合うわけなのですが、それはまた別のお話です。

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