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親友キャラとの対談は

放課後僕はグレートスさんから連絡がないのをいいことに、とある喫茶店に入ることになった。

小学校の通学路から大きく外れた脇道を通り、少し日当たりの悪い立地の喫茶店。

僕の行きつけと雰囲気こそ似ていますが、流石に同じマスターの店ではありませんでしたね。当たり前ですけど


マスターよりも遥かに若い三十代ぐらいの男性が正面でコーヒー豆を挽いています。僕が一人で来店したのを見て少々驚いているのが印象的でした。

ですがそれもそうでしょうね。こんな小さな小学生が、こんな喫茶店にひとり訪れることなど経験上あまりないでしょうから。


僕は入って一番奥から二番目の濃茶のソファーに座り、オレンジジュースを注文しました。

程なくしてやってくる氷がたくさん入ったオレンジジュースで喉の渇きを癒しながら、僕は待つ。

本当はコーヒーが飲みたいのですが、此方を何度かチラ見するマスターに云う勇気は持ち合わせていません。

年齢的に断れることは承知しているのです。ここは無難にオレンジジュースにしておいたほうが良かったでしょう。


彼女はもうじきやってくるだろう、ゲーム通りならいつも彼女は放課後ここに座っていたはずだから間違いない。

握りしめる小さな財布、肩から下げたショルダーバックの中身は大抵下らないものしか入っていない。

時間の立つたびに机に置かれたジュースは水滴を作り、氷はその形を維持できないでいる。


すると待ちわびた来店の鐘が鳴り響く。姿を見せたのは昨日見た時と何一つ変わっていない赤髪の少女だった。

学校帰りなのだろう、ゲームで何度も見た制服姿で僕の元へとやってくる。

その顔には薄い笑みを浮かべ、右手には学生鞄を携えて。僕と対面になるよう座り、彼女はブラックコーヒーを注文した。

気持ち悪いほどにこちらを見て笑う少女はどこからどう見ても悪人面で、何もかもを見透かされいるような、そんな気がしてくる。

女筒さんは机に手を投げ組み上げて、膝から数センチ上を机の縁に乗せていた。



「…やっぱり来ると思っていたよ。君もやっぱり私と同じ傍観者というわけだ。」



ブラックコーヒーの芳醇な香りが、僕の鼻を擽ります。

彼女は一口だけ口をつけて、また僕へとその小さな瞳孔を見開きました。


女筒さんの言う傍観者とはつまり、この現状をただ見ているだけの臆病者のことでしょうか。

僕は元ゲームプレイヤーとして、この世界に非常に興味を持ちますけれど本当に傍観者となることなどできないと思うのです。

例え今の僕が死亡フラグを持っていなかったところで、何らかの干渉を試みてしまう。

あの世界が目の前に存在する。それだけで行動する理由くらいにはなるでしょう。

大団円で終わるはずの結末を、その目でその耳で空気を感じてみたい。

そう考えるのが妥当でしょうね、もし今の僕が死亡フラグを持たなかったらという前提があった、場合の話なのですが。



「随分探しました、要約普通に話せる人に出会えて感激ですよ私。」



普通に話すとはこの世界、乙女ゲーの話だろうか。

この世界そのものがゲームを元にした世界だなんて、普通思わない。

誰にも話せずにいて貯めた思いを誰かと分かち合いたい。そう考えるのは理解できる。

だがそもそも僕の姉とどのようにコンタクトを取ったのか、気になって仕方ない。

ゲーム中でも姉の姿は確認されない為どこに通っているかぐらいしか情報はなかったと思うが。

どうやって探し出したのか、僕は気になり質問を投げかけた。



「簡単な話です、学校が分かっているなら傍織なんて珍しい名前、名簿を見てしまえば直ぐに分かる話です。そして片っ端から集めた情報がこうして実りを迎えて、私は嬉しい。」



話せるということは各も人を笑顔にさせるものなのでしょうか。

聞けば僕の他にもしずくやひかり、勿論グレートスさんにも探りを入れたらしいですが芳しい結果には至らず。

昨日何度目かの正直で名簿から得た情報を元に姉へと接近して、家へと招かれた。

そして僕の目を見て思ったそうです。あっこの子は知っている、と。

なんて第六感が優れているのでしょうか。勘で僕がこの世界に住む人間でないと見抜いたわけです。

恐るべし女筒さん、心なしか気味の悪いとしか感じぬ笑顔も若干安らいで見えました。


兎も角彼女は僕の味方となってくれそうですから、怖いですけど聞いてみることにしましょう。



この世界の攻略法をーーー




「あぁそう云えばそうね。そんな役柄だったね君は、私はもう役割なんて終わっちゃったみたいなものだけど。」



親友キャラはそもそも攻略対象者の好感度を教えてくれたり、時にはイベントへと出張して助けてくれる存在。

だが主人公が一人の対象に的を絞った今、彼女のやることは存外少ないものとなる。

言って休憩時間の普段の会話イベントか、大きなイベント時に頭出す程度。

親友であるはずなのにこの出現率の低さには失笑を禁じ得ない。

まあもし主人公の選んだのがアクトくんだったり、幼馴染の彼だったりしたならまた話は変わったろうが。

彼女の出番はそこに集中する。だから今の状況暇するのは分かる。

主人公も彼女をあまり頼らない。

その姿勢が、更に学校に通う彼女の空気を薄くしてしまっていたのだった。



「ま気楽にやるよ、逆らったってどうせ私たちの意識なんて簡単に刈り取るんだからこの世界は」



それは言われずとも連休初日に訪れた遊園地で痛感していた。

体が思うように動かず、頭痛み、意志は簡単に折られてしまう。

彼女はそれ以上に沢山のことを試みたらしいが、その結果は彼女の何とも言えない顔を見ればわかる。

何一つ実りはなかったらしい。だがフリーイベントであればある程度の介入が出来た。

重要なイベントが起こらぬ自宅にて、僕が主人公と会い話が出来たのも偶然ながらイベントのないフリーな状態であったからに思える。

だからと言って今から主人公の家に行き、説得しようにも彼女は首を縦に振らないだろう。

女性とは理性で動く生き物ではない。感情を優先し、行動する。

ならば逆に意地となって、二人の愛は強固なものとなろう。それだけは絶対にしてはいけなかった。



「…うーん、だったらさ。こうして見るのはどうかな」



今になって僕の耳元に囁く親友キャラの言葉に僕は戦慄する。

そういう考えがあるのかと、なんて残酷なんだと思わずにはいられない。

だが他に方法も思いつかなかった。僕がすがるとすればこの方法以外には難しいだろう。

彼女の提案、それは――――




『主人公のポジションを奪っちゃうんだよ。他の攻略対象者、全員を君のものとする。そうすれば主人公の格が下がり、君はモブキャラではなくなるんじゃない?』





会長以外の攻略対象者全員に向けて、文字通り『攻略宣言』を彼女はしたのでした。

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