遊園地の昼食(手作りの重箱重ね)
遊園地は相変わらず人で溢れている。
昼食をとろうにも売店には人が長蛇の列を作り、並べば30分程度は待たねばならないだろう。
全ての遊具にも列が作られていた。まあそれもそうでしょう、何たって華の大型連休、ゴールデンウィークですからね。
近場に遊園地があれば、そこに行くというのは短絡的ではありますが理にかなっています。
辺りを見渡さば当然のように子供連れの方やカップルがうようよといて気持ち悪い。
人が多いところは苦手なのです。午前中は人の流れが少なめでしたので耐えられましたが、ここに来て甘いものに群がる蟻のように人が側で存在しています。
早く体を休めたいものです、足が地面を捉えきれずその場に倒れこみそうになりました。
しかし運悪く座れるような場所すら見当たりません。
どうしたものかと焦る一同に、グレートスさんの一言が響く。
「座れないなら場所を作ればいいのですわ。」
無茶苦茶だ、こんな人が溢れんばかりにいる場所にスペースなど作れるはずもないと僕は思います。
近くには売店がいくつもあり、幾つかの建物が連なる。
だがその多くがアトラクションの一部で一般人立ち入り禁止であります。
ちょうどアーケードの中となるここからは見えないが、一応近くにホテルは存在していた。
僕たちも今日はそこに泊まる予定となっているが、まさかあそこまで言って食事というわけにもいかないだろう。
一度遊園地から出ることとなるし、近くにあるといっても徒歩で数十分はかかる。
ならばどうするのでしょう、グレートスさんはどう場所を作るつもりなのでしょうか。興味がわきます。
「それではまず邪魔な人間を排除いたします。」
おい待て、それ不穏な気配しか感じませんが。
もっと上手いやり方はなかったのでしょうか。見ているこちらが、余りにも呆気なく言うグレートスさんに恐怖を覚える。
「そしてカップルを皆殺しにします、慈悲はありません。」
ちょっと待とう、冷静になりましょうグレートスさん。
まだ夏も遠いですよ、まだ熱中症となるには早い。そこまで暑くもありませんし、気を確かに待ちましょう。
「するとどうでしょう、周りにスペースができるではありませんか。不思議、摩訶不思議ですわ。」
いやいや、あんなに黒服の方たちが威嚇してましたから人も寄ってこないだけですよね。
流石に言われた通り殺しはしていませんのを(当たり前なのですが、この世界で人殺しが許されるわけもありませんが)安心しながら僕たちは家令さんが敷くビニールシートに腰掛けます。
下はアスファルトで、しかも近くには売店もあるわけですが、そこにどこから持ってきたのか重箱を取出し振る舞うグレートスさん。
どう見ても店に売られているものより美味しそうです。
これは営業妨害に当たるのではないでしょうか。それについてはどう考えているのですかグレートスさん。
「わー美味しそうです。流石お嬢様ですおねえさん、ありがとう。」
「うひょーこんな食い物みたことねぇぜ!なんだこの髭みたいな奴は、ちゃんとした食べ物なんだろうな?」
無邪気にはしゃぐこの子達が羨ましい。
今も黒服の方達が周りを囲んでいます隙間から迷惑そうな視線を感じる。
とても居心地は悪いです、早いところ食事を済ませるのが先決ですか。
どうも僕が言ったところで、箸が止まらぬ二人を止めることは難しそうなので。
皆の前に取り分ける小皿と箸が用意され、ようやく僕も食事をとることが叶います。
僕の正面にグレートスさん、その横に家令さんが一歩下がって存在し、僕の隣を安谷光と穂枯雫が陣取る。
重箱は全部で五段あります、一段目はご飯もののようです。
おにぎりが敷き詰められていました。
グレートスさんから手渡されたおにぎりを一口頂くと中身は、鮭ですか。いつもの鮭と違いその身は柔らかく、肉厚。
二段目と三段目はおにぎりに添える惣菜が所狭しと並んでいます。
ハンバーグや唐揚げという定番の物から、見たことのない職人芸が光る一品まであり食べる者を飽きさせません。
二人がその手を止めないのも頷けます。まずこのような食材を食べる機会などありはしないでしょうから。
いつも見た料理が全然別のもののように感じる。
それは何事にも勝る感動でしょう、世界は広いと幸せだと感じる瞬間。
それが箸を止まらなくさせている原因でしょうね。
僕はグレートスさんのお屋敷によく行くので、すっかり三週間ほどで慣れましたけどね。
それでも美味しいですけど、全然箸は止まりませんけれど。
「そんなに慌てては喉に詰まってしまいますわよ。合ちゃん」
反対側にいましたのにいつの間にか僕の隣を陣取ります。
グレートスさんはその手にマイボトルを持ち、僕に飲み物を促す。
非常にありがたい提案です、実は僕の喉はカラカラに渇いていたのでした。
午前中はほとんど飲み物を摂取することなく、射的に明け暮れましたから。
ではここは一つグレートスさんの親切に甘えて、飲み物を頂くとしましょう。
グレートスさんからマイボトルを受け取り、詰まりかけた食物を流し込む。
ふと二人の小学生を見ると、同様にボトルを煽る姿が見えました。
如何やら彼女たちは喉に詰まり、家令さんから飲み物を頂いたと見えます。
まああれほど量のあった二段目と三段目も半分を切る勢いでしたから、それも当然のように思いました。
四段目の野菜や五段目のデザートも早く食さねば。
こうして僕たちは思い思いに重箱をつつき、昼食をこれでもかというほど楽しんだのでした。




