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遊園地のメリーゴーランド楽しい

楽しかったメリーゴーランドは数分も経つとやがて止まってしまい、夢から現実へと引き戻されます。

順番が次へと回り、僕たちはまたアスファルトの道へと返されました。

名残惜しくて後ろを振り返りますと、先程僕たちの後ろにいた方たちが馬に跨ります。

列は後ろに10人以上引きつれているようで、また乗るとなると思わぬ時間を食ってしまいそうです。

ならばここは諦めて次に行くのが、無難なところでしょう。

さて次は何処に行きますか。何だか楽しくなってきましたね。


コーヒーカップですか、それとも射的ですか。やはり最後は観覧車で締めくくりたいものですが贅沢は言いません。

ここの入場料、乗り物代と全てグレートスさん持ちなので文句は言えるはずもない。

今日だけは我儘に付き合ってあげてもいいです。

絶叫マシン以外なら割と大丈夫ですから、さっさと行きましょうグレートスさん。



「もしかして私忘れられていませんか?」



どんよりとした曇り空を周りにばら撒く、迷惑な方が一人います。

誰でしょう、僕の知らない人ですね。迷子になったのでしょうか、コールセンターなら走ってすぐのところにありますよお姉さん。



「お嬢様も大概ですが、合様も相応に酷いですよね?これが苛めと言うやつですか?私泣きたいです」



いつも一束縛るだけの髪は肩のところで二つに結ばれ、白のシャツにベスト。

下は膝が見えるぐらいの短パンを履いています。

中性的な顔立ちが更に良い味を出して、このまま女の子をナンパしてもきっと釣れるんじゃないでしょうか。

そう思ってしまう程イケメンオーラが放出されている。

何ですかこれ、うちの姉と同等かそれ以上の王子様です。きっと学生の頃は女性の方からラブレターを貰っていたことでしょう。

余りの恰好よさに素直に憧れてしまいますよ家令さん。



「あっ合ちゃんの視線を10秒は釘付けにしました。これは帰たら折檻どころでは済まないかもしれませんね。」


「おっお嬢様!?お気を確かに、私が一体何をしたと言うのですか!」



家令さんを見る目が養豚場の豚を見るそれに近い。

嫉妬に駆られるグレートスさんの為、僕は彼女のお召し物も一度確認しておくことにしました。

淡い薄桃色のカーディガンに中は白のシャツを着ていると思います。

何せその豊満な胸がカーディガンを今にも張り裂かんとしていますからね。中のシャツは僕の小さな体で見える位置にはないのです。

残念ですが、下から眺めるようになるので眺めは良い。

これがグレートスさんでなければ、ずっと眺めていたいと思えるほど艶めかしいのですが。

下は薄い生地の長スカートで、激しく動くと隙間から太ももが見え隠れしますので目のやり場に困ります。

最もこれを言ったら常時スカートをヒラリ翻しそうなので、絶体に言いません。



「あら、今度は私に見惚れているんですか。全く節操がありませんね、私だけ見ていてくださってよろしいのですよ」


「…一言多いです。それを言うなら二度と見てやりませんから」



薄く笑って何処から持ってきたのか分からない扇で口元を隠す。

いつものグレートスさんについ、僕は顔をそむけました。

自信満々で大変よろしゅうことですが、僕は天邪鬼なもので。

見てくださいと言われれば見たくなくなるのです。だからさっさと別の遊具を見つけて、一人で乗ってやる。



「あっ待って、離れてしまっては迷子になりますよ。」


「なりません!子供じゃないです僕」



大股で歩いて行く僕を止める者はいません。

皆僕の気迫に負けて道を譲ってくれます。今はそれがとても有難いです。

もう、一人でコーヒーカップとか回し続けてやる。



「あぁ行ってしまいました。折角二人で心行くまで楽しもうとしてましたのに。それも全ては貴方の差し金ですねセバスチャン」


「使用人全てセバスチャンと言っておけば良いみたいな物言いは、止めて頂きたいお嬢様!」



周りの喧騒に混じり二人の声も聞こえない位置にまで来ました。

これで少しは自由になれると言うもの。今を楽しんでやりますからね僕。



「ん?それにしても僕、何か重要なことを忘れているような気がするのですが」



何だったでしょうか。

目の前を見知った仲睦まじい男女が通りますが、思い出せる気が露ほどしません。

まあ簡単に忘れてしまうぐらいの用事ですから、きっとそれほど重要ではなかったのでしょう。

兎に角今は愉しみましょうか遊園地を。

自意識過剰なグレートスさんとも別れましたし、やらねばならぬことが途端に減りましたけどね。

小さな二人を探しに行きましょうか。それともコーヒーカップでしょうか。

どちらも決めかねる、ならばやけになって乗り物を全て乗り倒してしまいましょうか。そうだそれがいい。そんな気がしてきます。



「さあどう料理してくれましょう。皆々様よ」



僕は心からの笑みを浮かべます。

周りはそんな僕を遠くから見つめる形をとって、中々寄り付こうともしません。

どうしたのでしょう、ただ僕は笑っているだけですのに。

僕のことは気にせずにどうぞお通りくださいませ。他の皆様も遊園地を存分に楽しむがいいですよ。

僕は歩き出します、もう最初の標的は決まっているのです。

今の時間なら空いているはずですし、さっさと行ってしまいましょう。



「待っていてください。僕が必ず仇をとるからね。」



午後お昼ご飯を食べるということで僕を探しに来ただろう4人が見つめる先には、一心不乱にコルクを詰め、賞品の山を築く僕の姿がありました。

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