起きたらグレートスさんがいます
暗闇の中に突如光が現れ、満たす。
全ては黒から白へと変わり、僕は目を細めてるしかありませんでした。
見えてきたのは何でしょう。
丸いような四角いようなもの。
人には到底思えないそれは、顔があるわけでもありませんのにこちらを見て口を歪めて笑う。
そんな気がしました、とても懐かしいようなでもさっきまで顔を見合わせていたようなそんな感覚で。
異様な形を取るそれは、何処か寂しそうに見えーーーーー
目が覚めました。
これで何回目となるでしょう。感覚的には二回目ですが、目が覚めるというこの行為はもっとやっていたのかもしれません。
目を開けた先にはシャンデリア。透明なガラスを幾つもつけた照明具。
また会いましたね、こんにちはこんばんはおはようございます。
この前見た時と寸分変わらないそのフォルム。世の女性たちが羨ましいとお嘆きになるでしょうね。
壁紙にも挨拶をしておきましょう。いつか見た物と全く変わりないです。
挨拶がてら頭を下げることによって判明しましたが、僕はどうやらお布団に寝かされています。
羽毛のように軽く暖かな掛布団。
沈むほど柔らかなベッドに、隣には熱い吐息をかける女性の姿が――――
「…グレートスさん、僕の隣で何をしているんですか。」
「うん?君の寝顔を見ていたに決まっているじゃないか。愛らしいその顔に私が手を出さなかったことを褒めて頂いてもよろしいことよ」
なんて傲慢なのでしょう。
僕の隣で同じお布団に入りこむグレートスさんは今日も平常運転です。
さて僕は何故こんなところで寝ているのでしょうか。
先程まで山を散策、もとい捜索をしていたはずでした。その後のあれは夢、だったのでしょうか。
定かではありませんが、僕がここにいると言うのは夢の世界であった可能性が高いですね。
心に留めておきましょう、さてなんでここにいるのかグレートスさんに聞くとします。
「…僕は何でここにいるんでしょう。穂枯雫さんはどうなりましたか」
僕の真剣な問いにグレートスさんは愛でるように僕を抱きしめてきます。
僕の顔はその豊満な胸の更に奥へと探究してしまうのですが、何かを見つける前に僕は死んでしまいそうです。
胸の中で窒息死、男としては本望であると言えるかもしれません。
しかし今の僕は年端もいかない少女、笑えた話ではありませんよね。
顔全体にあたる柔らかな胸の感触を味わいながら、僕は渋々グレートスさんを押して呼吸を整えます。
惜しいことをした感が否めません。もっとこの柔らかなものを弄びたかった想いで一杯です。
ですがそれはそれ、僕の質問にはしっかり答えてくださいねグレートスさん。
「余りにも可愛らしくてつい、抱きしめてしまいました。そうですね、しっかり説明させてもらいます。」
それからの説明は至極簡単であった。
僕がグレートスさんの腕の中で寝ていた間に、穂枯雫とグレートスさんの追いかけっこが勃発。
危うくお山を全焼してしまう程、白熱なさったそうです。
ありとあらゆる罠を携え迎え撃つ穂枯雫にハイスペックのグレートスさんが真っ向から対峙する。
それはそれはハリウッドのアクション映画さながらの演出が目白押しだったそうで、段々と巻き込まれた安谷光の体調も心配になってきます。
夜もすっかり更けて、お開きとなる頃合い。
彼女たちが無茶したおかげで腕に抱かれる僕の体には擦り傷の跡がつき、一向に目覚めない僕は大層心配されたそうで。
屋敷に戻って寝かせたところ起きる様子もなく、そのまま二人は家へと送り届けたと聞きます。
そして今は朝、12時間を超えて僕は眠っていたらしいのです。
一時は医者を呼び出し、診断をしてもらったと言うのですからその深刻度が分かろうもの。
結果唯の疲れからくるものだと診断が下り、僕をお泊りさせたグレートスさん。
学校にもしっかり連絡を入れ、今日はお休みを言い渡されました僕。
はて、そんなに疲れるようなことをしましたかね。睡眠が足りていない、わけでもないはずなのですが
兎に角僕は今日一日ゆっくりできるわけですね。
お休みと言うのは素直に嬉しいです。早速おじさんと約束した生きるための提案をすることが出来ます。
そう思い僕が開こうとした口をグレートスさんが、人差し指で撫でる。
それは艶めかしくまるで食べることを吟味している獣みたいな、そんな感覚。
僕は押し黙ってしまいます。
グレートスさんの言いなりです、体は既に倒されグレートスさんの両手が顔の真横に突き出されていました。
その距離数十センチ、唇と唇が重なり合いそうで合わない。
吐息が掛かり、体の奥から熱を発する。耳まで赤くなっているのが、分かってしまいそう。
沈むベッドはけして僕を守ってなどくれませんでした。
「これからいいことをしましょう。合ちゃん?」
僕の耳を甘噛みするグレートスさんの息が妙に心を躍らせて、胸の高まりは留まる事を知らず。
僕の体は金縛りにあったように動かすことも叶いません。
このまま僕は性感帯を開発されてしまうのでしょうか。こんな美女に、やられるのならよいかもしれませんね。
体を委ねる僕は、体中を愛撫するその手を止めることは出来ませんでした。
「大丈夫です、初めてを奪うことはまだしませんよ。ただ気持ちよくなる、私なりのマッサージです。」
妙に心地よい声音が僕の脳を溶かしてしまう。
体の力は完全に抜け、快感になされるがままとなる。
ただ疲れをとるためのマッサージ、そんなことはあり得ない。
グレートスさんが一つ何かを動かすだけで甘い声が漏れてしまいます。
自分が自分で無くなっていく感覚、布団の中悶える僕にグレートスさんの笑みは虚ろに見え始めた。
時としてどれくらい経ったのか。
それは全てを忘れてしまえるほど、心地よく。
それは快感の先に思えてしまうほどの極地へと達する。
それは一つの生命が経験してはいけないと感じてしまうほど、壮大で深い感覚の底。
夜角目グレートスと呼ばれるお嬢様から放たれるそれらは、人には耐え難き欲の果てが示されているようだった。
 




