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なんで俺たちは出会ってしまったんだろうな。
結ばれないことは決まっていたのに。
この歳になって、初恋のように恋焦がれるなんて。
しかもあんな小娘相手に。
始めて会った時のことは今でもしっかりと覚えている。
俺はコックで、雇われシェフだけど自分の店を持っていた。
それに加えて趣味のバイクの維持費のために、昔のつてでバイトをしていた。
金曜日の夜だけ、夜の9時から閉店の朝3時まで。
昔働いていた会社の店で、自分もチーフをしていたため勝手は分かっていた。
そこに現れた。
男だらけの職場にポトリと落とされたように。
4月に入ってきた新入社員。
色が白くて背がスラリと高い、ホワッとした娘。
『中里みのり』
その初出社に出くわしたのだ。
忙しかったために、ちゃんとした挨拶も出来ないままにその日は終わってしまった。
チーフは女ということで、深夜営業には残さなかったからだ。
正直あまり期待はしていなかった。
専門学校を出たからと言っても頭でっかちで使えない奴が多いし、しかも見た目から男の中で我慢は出来ないと思った。
そして次の金曜日に改めて挨拶を交わした。
内気そうに見えたそいつは、ビックリするほどサバサバとしていてクシャっと笑う笑顔に何か掴まれた気がした。
女臭さを感じないのに、その存在からは愛らしさが滲み出ていた。
一緒に仕事をしてみれば、とても真面目で「はい!」という返事が気持ちいい。
気付けば、何かと気にかけていた。
元気が無ければ、ちょっかいを出して笑わせたりしていた。
でも俺はただ、アイツの笑顔が見たいだけだったのかもしれない。
構っていると、みのりはすぐに心を開いて懐いてきた。
金曜日俺が行けば、すぐに笑顔で迎えてくれて一緒に仕事を始めた。
まわりを寄せ付けないほど、俺とアイツは二人で居た。
そんな俺たちをチーフが快く思うわけが無かった。
上司であるチーフよりも、金曜日だけ現れるバイトの俺を信頼して尊敬する。
それでも俺はこの立場から退く気は無かった。
みのりの一番の理解者であり、此処で唯一心を許す相手を誰かに譲るつもりは無い。
それは兄が妹を思うような感覚なのか・・・
深く考えることはしなかった。




