ヤーネー裏文明会議
お久しぶりです。今回は少し視点を変えまして、民葉に暮らすとある時空獣の話です。
ここ民葉の人間と時空獣を語る上で欠かせない時空獣がいる。それが文明時空獣「コブリス」である。
ネズミの様な姿と大きさを持つ彼らは、その器用な両手と高い知能で人間と同じ水準の文明を築き上げることに成功している。
しかし、時空獣を認めない人間はあくまで彼らをネズミ扱いし、「駆除」と称された単なる殺戮を人間は繰り返した。
この愚行をコブリスは幾度となく咎めど、幾度となく権利を主張すれど聞く耳なし。
何せわざわざ林にある彼らの街に殺鼠ガスを撒き散らすなど、人間たちの駆除姿勢は最早嫌がらせとしか思えない。
そんな理不尽に耐え切れず、彼らの怒りは駆除業者に宣戦布告を仕掛けるまでになった。
初めこそはこれまでの猛威の分駆除業者が優勢だったものの、業者から身を隠すため屋根裏にコロニーを打ち立てたり、
彼らの技術の粋を集めた大型兵器「機計獣」を使って直接の撃退に成功するなどから結局両者の戦力が拮抗し今に至る。
一方、単鉱探偵事務所のあるアパートの屋根裏にもコブリスのコロニーがある。このコロニーはアパートが出来た当初から存在し、住民たちとの仲も良かった為長らく平和と栄花を極めていた。
しかし、怪揮が越して来るとその平和は脆く崩れ去る。という被害妄想に駆られるコブリスが増えてしまったのだ。本質的な平和は変わらないというのに。
「我々のコロニーではどういう訳か単鉱怪揮という人間を必要以上に恐れてしまっている、だがここの人間との仲は依然として良好である。この事態は完全に被害妄想ではないか。」
この発言をしたのが屋根裏コロニーの長。コロニー中のコブリスが怪揮や人間を必要以上に恐れ、殆どの産業がストップしている現状を見かね急遽会議を開くことにしたのだ。
「そうは言っても他のコロニーでは只今人間と交戦中だ、警戒心が強まるのも当然だろ。」コロニー国防軍の元帥が鋭く言い放つ。
「他所は他所、家は家。私は怪揮とかいう人間と一刻も早く和解するのが解決への近道だと存じます。」コロニーの外交官が一見最もそうな指摘をした。
だが、元帥は「馬鹿言え、どうやって和解させろと言うんだね。一歩間違えて奴の怒りを買ってみろ、滅亡だぞ。」彼の提案が未知数に過ぎる事まで指摘され、会議室は静まり返った。
すっかり凍りついたままの会議。長い静寂を打ち破ったのは最年少の意見。
「かいきにすずをつければ!?」しかしこの提案は「そんな事して何になる。」すぐさま却下された。和解と繋がるかけがないので当然である。
しかし、これを機会に堰を切ったかのように喧々諤々の会議論争が始まり、あらゆる提案をしては異議を唱える実のある会議となっていった。
だが、それも怪揮に見つかってしまえばそれまで。「何やってんだ!?お前ら。」コロニーを怪揮に暴かれたコブリスたちは上を下への大慌て。
呆れて物も言えない怪揮だったが、コブリスの長が怪揮の前まで近づき、挨拶した。「お初にお目にかかります、単鉱怪揮殿。」
それを受けた怪揮は「お前がこの屋根裏の長か。この騒ぎは何なんだ!?」と疑問する。
長は今のコロニーの事情を説明したところ、怪揮は「お前らが俺を恐れる必要性が何処にあるってんだ、バカバカしいにも程がある。」と言い捨てた。
すっかり呆気にとられた屋根裏のコブリス達はそれ以来単鉱怪揮に被害妄想を抱かなくなり、屋根裏コロニーは元の平和を取り戻したらしい。
コブリスの話楽しんでくれたら幸いです。次はいつになるはわかりませんのでご了承ください。