風切リ鷹来ル
単鉱探偵事務所に嵐がやってきます。その正体は単鉱怪揮の友人でした。
此処は単行探偵事務所。今日は朝から事務所に届いた手紙を二人で分別していた。
探偵にとって手紙は重要な資産となり得る。中でも依頼の手紙は重宝された。故に依頼の手紙が無いかを手紙が来るたびに確認しているのだ。
そんな中、単鉱怪揮はある手紙を取り出し、中身を見ることにした。その内容は彼の幼馴染がこれから此処に来ると言うことらしい。それを読んだが早く怪揮はダヴィンガで武装しつつ、更にファヴロスにもプテランスの発動を呼びかけ、これを聞いたファヴロスは慌てて羽根から槍を生成した。単鉱探偵事務所は臨時警戒態勢に入ってしまったのだ。
しかし、焦って装備してしまったファヴロスは怪揮の幼馴染について疑問を抱いた。
「怪さんの幼馴染って本当にこれ程の武装が必要なお人ですか?」
怪揮はため息と共に答えた。「そういやお前に教えてなかったな、この手紙を送ったのは風切鷹史、俺の腐れ縁でもある。彼奴は俺と違った方面でとんでもない奴だ。これくらいの武装じゃ逆に足りん。」
自分の凄まじさを自覚しているらしい怪揮と同じレベルの存在がこの事務所にやって来る。ファヴロスは戦慄と共に改めて警戒を行うことにした。
手紙に書かれた時間は午前10時。それまで警戒を怠ることはなく、改めて手紙の分別に戻った。
しかし、突如窓から突風が入り込み、手紙を散り散りにしてしまう。怪揮は「風切鷹史」が来たと叫び、銃を構えながら手紙を拾い集めている所に巨大な羽音が近づいてくる。そしてそれは竜巻に纏いながらその姿を現した。彼こそが風切鷹史である。
鷹史はいきなり怪揮の真ん前に現れたと思いきや、すぐさま怪揮を茶化し始めていた。
「やあやあやあ久々だねぇ怪くん。見たところ助手を雇い始めたのは確かなようさねぇ。」
怪訝な表情を浮かばせる怪揮だが、ファヴロスはこの状況を全く理解出来ずにいた。
彼は一体何者なのか、今この場でその正体を知るのは怪揮だけなのだから。そんな怪揮は鷹史に呆れながら話しかけた。
「お前、また何処かしら飛んでいたな。その放浪癖も全く変わっとらん。ほとほと飽きないと感心するばっかりだ。」
そう、鷹史は浮浪者なのだ。
怪揮曰く、彼は自らの意思で浮浪者の道を歩み、独自で安定した生活を築き上げているそうだ。
そして、鷹史にはもう一つの顔がある。彼は状況が理解できていないファヴロスにそれを見せようとしていた。
鷹史が目を閉ざすと、腕から羽毛が生えてやがて強靭な翼となり、口は猛禽類のように鋭いカギ状の嘴となり、足も鋭い爪を生やした力強い猛禽類の足となっていた。
そして目を見開くとその眼は黄金の瞬きを放ち、獲物を見定めるかのような鷹の眼であった。
改めて全身を見渡すと、鷹と人間の中間とも言うべきその姿が此処にあった。
そう、何を隠そう彼は所謂「鷹男」であり、猛禽類の時空獣と人間の混血児である。
「しかし怪くんも相っ変わらずのご様子で、ある意味羨ましいですな。まあ私は君の助手くんに挨拶をしに来ただけ。それにこっちも予定があるのでそれでは。」
そう言い残して鷹史は何処へと飛び去った。
怪揮は鷹史の一部始終の様子を見ており、珍しくファヴロスに同情していた。
それを踏まえて怪揮はファヴロスに鷹史について語りだした。
「彼奴は元々動植物を身内とも思っている程優しい奴だった。しかし、17年前に両親を失って以降今のように捻くれた性格が出来上がってしまったと云う訳だ。放浪癖だけは相変わらずだったがな。」
怪揮の発言にファヴロスは「それにしては暗さが見えませんが…」と返す。
それに怪揮はこう答えた。「アイツには絶対に成し遂げたい野望とそれに対する覚悟がある。だから笑っていられるしむしろ笑ってないと始まらん。アイツも性格までごまかしたつもりだろうが俺にゃ変わっとらん事なんざとっくに見通している。確かにアイツには周りを翻弄する悪癖があるが、何故かアイツの周りじゃ人間も時空獣もひっきりなしだったからな。この間なんざ…おろ!長話になってしまった。まあアイツは感情暴走を起こす程ヤワな奴じゃないって事よ。」
話を終えた二人は、飛び散った手紙を拾い集めて分別作業を再開したのは言うまでもない。
毎度期待はずれで申し訳ありません。
この話は前から考えておりまして、取り敢えず形にしてみました。
もし作品を読む機会がありましたらよろしくお願いします。