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CLEATER  作者: ディノニクス
Forest Label
5/9

山林ノ若キ大蛇

茂み事件の後編です。

ファヴロスの時空界能力も初登場します。

此処は椎岳の山林。異様な静けさに包まれた山林の奥深くで彼は苦しんでいた。

その顔つきはまるで蛇のようであったが、何かを叫んでいるような表情だった。

彼は自らの能力が暴走を起こしており、彼の周囲には茂みが育っていた。迫害に巻き込まれていたらしい彼は形なき憎悪を込めて言葉を発した。

「ニクイ...恨メシイ...」


一方、ルリチュウブによって飛ばされたファヴロスは背中の羽根を羽ばたかせて何とか無事に着地した。

「此処が山林ですか...やけに静かですね。」

早速辺りを見渡すファヴロスだったが、山林はかなり鬱蒼としており、かなり深い。この自然の迷宮を手掛かりもなしに捜索するのは困難であった。

それに気づいたファヴロスが途方に暮れる中、山林に突如けたたましくも悲しい声が響き、ファヴロスの耳にも届く。

ファヴロスは、この声の先に何か手掛かりがあるとして声が聞こえた方角へと向かった。


漸くの間ファヴロスは、声へと向かって真っ直ぐに進んだ。茂みに襲われながらもなお道無き道を進んだ。

やがてファヴロスは声の主の元へたどり着く。声の主は蛇のような顔と長い尾、そして器用な手と丈夫な足を持つ時空獣の青年であった。

彼の名は「関口ヤマタ」。ヤマタは長きに渡る迫害から自らの恨みや憎悪に飲み込まれており、時空界能力をろくに制御できない状態に陥っていた。

ファヴロスはヤマタを一目見た時、周囲で茂みが活発化している事から茂みの原因がヤマタにあると分かり、同時に暴走状態である事にも気付いていた。

しかし、気付いた頃には既に遅く、ヤマタの眼光はファヴロスに向けて光り始めた。


「恨ミマス...クアアアアアア!!」

ファヴロスの存在に気付いたヤマタは、茂みの矛先を一気にファヴロスへと向け、一斉に攻撃した。

「うあああああ!何なんですか!?何なんですか!?一先ず逃げましょう!!」

予想外の事態にパニックを起こしたファヴロスは背中に生えた翼を広げ、森林の中を飛び回り、茂みの攻撃を回避した。

そう、ヤマタの恨みの篭った連続攻撃に、ファヴロスは退却するのに精一杯だった。

それでもヤマタの攻撃は激化するばかり。幾らファヴロスが上へ上へと逃れようと恨みに飲み込まれたヤマタはひたすら目の前の敵を追うだけ。空中での撤退戦に発展するのも時間の問題であった。

何とかヤマタの攻撃から逃げ切ったファヴロスだったが、長い飛行でファヴロスの体力は消耗の一途を辿っており、遂にヤマタの一撃はファヴロスの右翼を貫いた。

飛行バランスを失ったファヴロスは墜落してしまい、追い討ちとばかりにヤマタの植物が墜落寸前のファヴロスに襲いかかった。


溺れる者は藁をも掴むと言うべきか、ファヴロスは右翼からこぼれ落ちた風切り羽根を咄嗟に掴み取った。そして、驚くことに手に持っていた羽根はその姿を槍へと変えていった。

「何ですかこの槍は!?しかしこれであの獣間の暴走を止められるかも知れない。反撃開始と行きましょうか!」

ファヴロスは空中での機動力を取り戻したかと思えば、集中攻撃を即座に躱しきった。予想外の事態に驚く両者だが、ヤマタも武器を生成し、槍を持ったファヴロスに直接挑んでいった。

こうしてファヴロスとヤマタの一騎打ちは椎岳上空を舞台とした攻防戦となったのだ。


飛行しながら槍で突っ込んで来るファヴロスに対し、木を伸ばして懐に入ろうとするヤマタ。彼らの鮮やかな戦いの末、両者ともに体力をかなり消耗した。

そんな中ヤマタの憎悪はさらに高まり、完全に暴走を遂げてしまう。

暴走を続けるヤマタの前にファヴロスが改めて立ちふさがり、槍を向ける。

「ヤメローーーーー!!」

ファヴロスの叫びと共に槍からは突風が吹き始めた。

その突風はヤマタから恨みや憎悪を一気に吹き飛ばし、ヤマタを正気に戻した。

「あれ?此処は何処?私は...」

バタン!

ヤマタは正気を取り戻したかと思うと、安心感から眠ってしまったようだ。

一方ファヴロスも、消耗しきった体で茂みの沈静化を見届けた後に怪揮の元へ帰ろうとするも、「やっと、事件解決ですよ.....」

バタン!

空腹と疲れで限界をきたし、気絶するのだった...


ハッ!!

ファヴロスが目覚めた場所は、怪揮の目的地だった。そこは民葉で最も格の高い犬神にして怪揮の育ての親である時空獣「利己崎アケン」の社であった。

気絶したところを怪揮とルリチュウブに運び込まれ、アケンが医療を施していたのだ。

起きるなりファヴロスは早速怪揮に事件を解決させた事を知らせるも、怪揮は既に知っているとの事。

どうしてかとファヴロスが問うと、「それは私が説明したからです。」と言いながらヤマタが社へと入ってきた。

ヤマタはファヴロスに会うなり真剣な表情で涙ぐみながら謝った。

「ファヴロスさん、本当に申し訳ありませんでした!私の都合に貴方を巻き込んだばかりか大怪我までさせてしまいました!」

しかしファヴロスもまたヤマタに会うなり謝った。

「ヤマタさん、私の方こそ本当に申し訳ありませんでした!暴走を止める為とは言え心ならずも貴方を傷つけてしまいました!」

この余りにも律儀な二人の堂々巡りには怪揮もアケンもルリチュウブも呆れ果てるばかりであった。


二人が落ち着いたところで、怪揮はファヴロスが怪能力を見出した事に食いついた。話を聞くなり怪揮はファヴロスの時空界能力に名前をつけようと言い出す。

「羽根から生まれた槍だからプテランスなんてどうだ。」

ファヴロスは怪揮のあまりにも安直な命名に呆れるばかりだったが、名前があった方が不自由しないと言うことであっさりその名前ん8決めてしまうのであった。


プテランスを編み出したファヴロスに冗談交じりに「折角怪能力を見出したからこれからはファヴロスに全て押し付けちまおうかね。」と語り、ファヴロスの失笑とそれ以外の時空獣の爆笑を買ったのは言うまでもない。

ファヴロスの初戦闘、お楽しみいただけましたか。

相変わらず期待はずれで申し訳ございません。

次からはまた日常路線で書いてみたいと思っておりますのでご了承下さい。

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