翼竜初メテノ依頼
第2話です。
ファヴロスが単鉱怪揮の仕事現場に初めて立ち会う話です。
成り行きで単鉱探偵事務所の住み込み助手となったファヴロス。当然彼は街の事情はもとよりどんな仕事なのかすらまだ知らずにいた。そこで単鉱怪揮は、ファヴロスに民葉町や探偵の基礎を叩き込むことにした。
「まず、民葉町は昔からの大田舎だ。それに加え、クレーターとか言う変な雲も昔から空に浮かんでいる。ここ民葉で出現する時空獣の半分はここから出現すると言う訳だ。」
怪揮の説明にファヴロスは異議を唱える。
「ちょっと待って、私たちを指している時空獣って何なんですか!?」
怪揮は説明ついでに教えた。
「時空獣は、本来俺らと変わりない有機生命体だ。しかし、進化の道筋が違ったのだよ。」
「進化の道筋...ですか。」
ファヴロスの納得したようなそうでないような表情を見て、怪揮は更に説明を続ける。
「実はこれもまたクレーターの影響だ。実の所民葉で出現する時空獣のもう半分はここ民葉で生まれるのだ。それはクレーターが...」
トントントン!
単鉱怪揮の説明を遮ったのは扉を叩く音であった。依頼であろう。
説明はまた今度とばかりに依頼内容を聞くこととなり、ファヴロスも実地訓練とばかりに同行させられた。
依頼人は何処にでもいるようなサラリーマン。
今回の依頼は彼の家にあった車が突如スクラップ同然となっていた原因を突き止めて欲しいとの事だった。
この件にて単鉱怪揮は既に検討が付いていた。ファヴロスが来た日に交差点で暴れたトカゲ時空獣の仕業だと考えているのだ。
しかし、実際に調べなければ本当にあのトカゲ時空獣の仕業か確信できないのだ。
現場に着いた途端怪揮は、よりにもよってスクラップの解体を始めた。壊れた原因を突き止めるためである。
呆気にとられるファヴロスと明らかに絶望している依頼人を尻目になおも解体を続ける怪揮。
そして怪揮は確信した。明らかに交差点を襲ったトカゲ時空獣と同一犯である事を。
証拠は車の壊れ具合。フロントからでなくシャーシから力が掛かって潰れていた。
これは恐らく、交差点で車をひっくり返す事に味をしめたトカゲ時空獣が手近な車をひっくり返すが、それでも物足りなかった為、更に踏み潰したというのが真相である。
真相は解いたものの、失われた車は戻らない。依頼人が悲観していた矢先、件のトカゲ時空獣「カプレス」がそこにいた。依頼人は即座に逃げ出すが、当然怪揮は引き止める。引き止めた理由は解体した車を修理しようというのだ。
幾ら何でも無茶だと唱える依頼人だが、怪揮は耳にも入れす修理を始めてしまう。
時空獣がいるにも関わらずこの行動を取ったことにはファヴロスも呆気を取られた。
数時間後、怪揮は車の修理を完了した。新品同様の出来であった。
依頼人は依頼料を怪揮に差し出して感謝を述べた。
「車さえ戻ってくれればもう言うことはありません。ありがとうございます。」
ちょっと強引ではあるが、ある意味これで依頼達成である。
ところが、一部始終を見ていたファヴロスはある事を申し立てた。
「それで、目の前のトカゲはどうします?」
「あっ、すっかり忘れとった。」カプレスはすっかり怪揮に忘れられていたようだ。
それはともかく依頼達成として事務所に帰ろうとしたが、忘れられていた事に怒ったカプレスはいきり立って怪揮に襲いかかる。
「俺を忘れてもらっちゃ困るダローが!!」
単鉱怪揮一巻の終わりと思いきや、何故か一眼レフカメラを取り出した。かと思えばそのカメラはいつの間にか猟銃となっていた。
怪揮の目は獲物を定めた肉食獣のように眼光を宿し、カプレスに狙いを定めた銃口は引き金と共に容赦なくはじけ飛ぶ。
弾はカプレスに命中したが、皮膚が硬かったのか致命傷までには至っていない。
それでもすっかり単鉱怪揮と言う恐怖を思い知らされたカプレスは、「ゴメンなさーい!!!」と叫びながら逃げていった。
怪揮の恐怖を思い知ったのはこれまた一部始終を見ていたファヴロスも同じで、「彼の怒りを買ったらオシマイだ。」と内心思いながら帰路に着いた。そんな中でファヴロスはある疑問が一つ残っていた。
「ところで、何故車を直せたんですか?」
怪揮は笑いながら「昔から手先は器用でな、模型造りに凝っていた時期もあったものよ。」
ファヴロスはかなり驚いたようで、「模型感覚で作っていたんですか!?」と叫んだ。
怪揮の余りにも予想外の答えにファヴロスは呆れるやら凄いやらで怪揮がどういう人物かさっぱり分からずじまいであった。
お楽しみいただけましたか。
相変わらず期待はずれで申し訳ございません。
次回より彼ら単鉱探偵事務所の日常や舞い込む事件の物語を書いていきます。
途切れとぎれになるかもしれませんのでご了承下さい。