暗殺者
明けましておめでとうございますm(_ _)m
新年も良ければよろしくお願いします。
更新が遅くなり、多少なりとも楽しみにしてくれる方々…いますよね?…いるよね?
申し訳ないです。
遅くなった分ちょっとだけ長いかな~。と思います。
勇者様達の食器を下げに二階に登ると、アベルとニースとマリーさんには「美味しかった。夜も楽しみだ」と言われ、サーシャも悪態をつきつつも気に入ったようだった。
まだあんまり話ていない帝国様こと、ブラッドにも「ふん…。なかなかどうして旨いではないか。魔王を倒して、国に凱旋したあかつきには我専用のシェフにしてやろう!」とまで言われた。
嬉しい事だ。
黒づくめの…確かフェアリスにも扉の前に置いてあった食器を下げるときに「…おいしかった…」聞き取れるギリギリの音量で言われた。どんな人か、まだ分からないけど、きっとシャイなだけのイイ人だと思う。
色々と宿の雑用をこなしていると、夕方になった。
そろそろ食事の準備をしようとすると、カルラさんとリラと、まだ8歳になったばかりのリラの妹、クラリちゃんが訪ねて来た。
おや…?と思っているとクラリちゃんが全速力でかけて飛び込んで来る。
「カフッゴ…!」
思わず変な呻き声が息と共に出てしまった。
腹を的確に体重20キロ前後が速度を乗せて飛び込んでこれば息も漏れる。
腹筋に力を入れる事も出来るが…それしたらクラリちゃんが頭を痛めるだろうから、入れる訳にもいかないのだ。
「ヤマトお兄ちゃんっー!!!」
クラリちゃんはそのまま抱きついて、ギュッと服にしがみついた。
「あはは…今日も元気だね」
そう言って頭を撫でると、目元が穏やかな事以外、リラをそのまま小さくしたようなクラリちゃんは嬉しそうに笑い、顔をうずめて来る。
「アハハ…?クラリは本当にヤマトちゃんが好きだねぇ」
その姿を見てカルラさんが笑う。
…そしてなぜか、リラの機嫌が悪くなっている。
「うんっ!将来お嫁さんになるんだもん」
クラリちゃんはさらにギュッと抱きついて来た。
そしてさらにリラの機嫌が悪くなる。なぜだ…!?
「ところでどうしたんです?」
とりあえずクラリちゃんをあやしつつ、話題転換しようとカルラさんに言う。
「実は皆で話あって、勇者様達の歓迎会をして、労ってやろうって事になってね。悪いけど勇者様達を誘ってもらえる?」
歓迎会…か。
「もちろん喜んで。なら場所はここに?」
カルラさんが笑顔で頷く。
「料理は色々持ち寄るつもりよ。酒も男達が秘蔵のを出すって息巻いてたわ」
「なら僕は簡単につまめる軽食とエールでも用意しますね」
「ええ。よろしく頼むわ」
「ヤマト!勇者様達に粗相するんじゃないわよ!あと…私も料理を出す…」
「「ダメ「止めてください」なさい」だよ」
リラ以外三人の声が見事揃う。
「な、何でよっ!私の料理をメインに…」
動揺したようにリラがそう言うが…
「リラ…あんたは勇者様達を毒殺するつもり?」
「…僕以外が食べたら死ぬよ?本当に…」
「お姉ちゃん…。あのね?お料理はもっと練習してから、出す方がいいよ」
口々に三人が諭すように止める。
不満そうに頬膨らませるが、僕が泡を吹いて倒れたのでも、思い出したのか思いとどまってくれた。
三人は準備のために一度家に帰っていった。
さて…と、勇者様達を誘わないとな。
なんとなく腰をトントンと叩いて、二階に向かう。
★
テーブルとイスをセットしていく。
勇者様達は戸惑っていたが心よく応じてくれた。
ただ…残念なことにフェアリスだけには断られた。
「ありがとう…。でも、ごめんなさい…。…私はそういうのには…」
と…強要する事ではないので仕方ない。
テーブルとイスを大人数用にセットして料理に取りかかる。
メインは色々持ち寄ってくれるそうなので、簡単な軽食を作っていく。
ウガドリの唐揚げ、ウガドリのオムレツ、ローストビーフ、羽海老のフリッター、フラウ野菜のサラダ、などを並べて行くと何人もの人たちが色々な物を携えてやってきた。
女性のカルラさん達は料理を、レイダーさん達男集は酒を持ってきたようだ。
それに続いて勇者様達が来ると、宴が始まった。
「今日は皆さん、私達の為にこのような宴を催してもらって、ありがとうございます」
飲み物が皆に行き渡ると、先ずはアベルが立ち上がり、礼を述べた。
「わはははっ!皆、我の為にご苦労!感謝するぞ!」
「おい…ブラッド!失礼だろう…」
偉そう…というかそれが地らしいブラッドがそう言うとアベルが窘める。
「がはははっ!若いもんがあんま気にすんなや!ま、とにかく乾杯だっ!乾杯!」
皆は少しも気にせず、レイダーさんに苦笑しながらも
「「「乾杯っ!」」」
と木製のグラス打ち鳴らす。
そしてガヤガヤとした酒の席、独特の喧騒に包まれる。
皆が思い思いのもの食べ、飲み、話していく。
「あ…あの…リラ・ワーズボアと申します。勇者様達のご活躍はよく耳にしてます」
顔を赤らめ緊張したように身を強ばらせ、リラはアベル達に話かける。
「そうなのかい?よろしく。アベルと呼んでくれ」
とアベルが持ち前の爽やかな笑顔を向けると、リラは熟れたトマトのようにさらに真っ赤になった。
その後もなんとか緊張しながらも、嬉しいに勇者達と話してるようだ。
………………。
何か妙な気分だ。
「なーに?ヤマトちゃん…もしかして嫉妬?」
リラの様子を横目で見ていると…カルラさんが、にまにま趣味の悪い笑みを浮かべ話しかけてきた。
「…や、たぶん…。違いますよ?何か複雑な気分ですけど…」
リラに村の若い男などが、言い寄る事は何度もあったが、リラがマトモに相手したことはない。
そのため親をなくしているリラが親しい男などレイダーさんと、同世代だと僕だけだ。
嫉妬と言うよりは…親しい人間が、知らない人間と仲良く話してると感じる、疎外感とも、独占欲とも言える思いだ。
「ふーん。何はともあれイイ傾向ね…。そういえば…レイダーに昔の話を少しされたんだって?」
一瞬悪い笑みを浮かべたあと、探るような顔で言われる。
「ちょっとだけですけど…カルラさんって【絶炎姫】と呼ばれてたんですか」
そう言うと、カルラさんは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「え、ええ…。それで…?他になにか私の事を聞いた?」
「いや…それだけしか教えてもらえませんでした」
「そ…なら良かったわ」
カルラさんが安堵するように息を吐いた。
それと共に、様子を何気ないように装って、こちらを伺っていたレイダーさんもホッとしている。
余程昔の事は知られたくないのだろうか。
それだけ言うと、カルラさんは「楽しみなさいよ〜」と言い僕の頭を撫で行ってしまった。
賑やかな周りを改めて見ていると、横から腕を掴まれる。
「ん…?」
「ちょっと…来なさいよ」
リラだった。
「えっ…?ちょ…何さ?」
僕の疑問に答えるつもりはないらしく、そのまま引きずられるように歩かされる。
すると勇者達のところにやって来た。
どうやら会話が続かなかったようで、僕を間に入れて話を弾ませようとしてるらしい。
やれやれ…。
そんなこんなで特に何もなく歓迎会は終わった。
勇者達もこれで勇者達も少し心を開いてくれただろうか?
★
夜行性の動物と昆虫しか起きてるものは存在しない深夜。
月明かりも、雲によって遮られた闇夜を影が音と気配の一切を殺し、アルド村に忍び寄っていた。
影達は村に入り、奥にある目的の建物に近づく。
すると6つの影が建物を囲む。
「「「愚者の眠り/フールスリープ」」」
6つの影が同時に呪文を唱えると、建物を覆うように魔法陣が浮かび、魔術が発動する。
気配と音を一切絶ったまま、6つの影は堂々と入り口から宿屋侵入する。
木製の床を、一切足音を鳴らさずに歩き二階に上がって行く。
目的の人物を探す為に何度か扉を開けるが、開けられた部屋の住人は何事もなく眠っている。
そう…何も気づかずに勇者達は寝ている。
【愚者の眠り/フールスリープ】は一定時間必ず睡眠状態にする魔術である。
必ずだ。肉体に損傷が与えられようと、何をされようと…自発的にも、外部から何かをしても一定時間眠り続ける。
ただし…通常状態では睡眠状態に陥らず、寝る寸前か寝ている状態でしか効果は現れないが。
影達は何度か扉を開け、目的の人物を発見すると、視線を交わす。
影は部屋に入り込み一人は馬乗りになり、二人はベッドを挟むように左右に、残りの三人は扉の方に留まり警戒する。
馬乗りになったリーダー格の男が寝ている人物に「解呪/ディスペル」と唱えると、身が強張ったあとすぐに意識が覚醒した。
「ッ…!?お前達は…!!」
すぐさま起き上がろうとする黒ずくめだった少女…ヤマトにフェアリスと名乗った少女は、左右に居た影に体を抑えつけられる。
「久しぶりですなぁ?ルナス殿」
馬乗りの男が、目以外の頭部全てを覆っていた頭巾を脱ぐと、くすんだ焦げ茶色を短く刈り込み、それなりに整って顔を残忍そうににやけさせた顔が現れる。
もっとも目は奥底まで暗く、笑っていないのだが。
「
マギアの暗部であるお前らが私になんのようだっ!」
隠していた短めに切った白銀の髪を震わせ、年齢の割に大人びた美貌を歪ませて、その紫水晶のような瞳に憎悪を込めて少女は言う。
「クッククッ…!嫌われたものですねぇ。短期間だけとはいえ、短剣術の指導をした仲ではないですか?」
何が指導だと!アレは単にいたぶられただけだ。と少女は心の中で吐き捨てる。
「…っ…!」
少女は何にも言わず男を睨みつけた。今にも殺してやると言わんばかりの殺意を込めて。
「クッククッ…!怖いですねぇ。仕方ないですねぇ…。昔話に花を咲かせようと思ったのですが…」
さらに少女は睨みつける。
「ではハッキリと…残念ながらルナス…アナタは用済みになりました」
「えっ…!?」
男の言葉に少女は呆然としたように、絶望したように呟いた。
その様子に男は満足げに笑う。
「もう一度言いましょう。用済みです。フェアリス様の身代わりに勇者をする必要がなくなったのですよ」
「なん…で…どうして…母さんは…」。とルナスは絞り出すように言う。
「導師様が、フェアリス様を勇者として送り出す決意を固めたのですよ。フェアリス様の力量も上がったからと…いやはや、我が子を危険な旅に送り出すのだから、大変な決意です」
男は芝居かかったような口調でそう言ったが、ルナスの耳にはほとんど入っていない。
(母さんは…?私が用済みなら…母さんは)
ルナスの頭で渦巻くのは、唯一この世界で己に愛情を与えてくれた母の安否のみ。
母は自分を動かすための人質として、捕らわれていた。
…私が用済みなら…母…母さんは。
ルナスの瞳から憎悪が薄れ、不安を瞳に移しだす。
「そういえば…アナタの母親ですが…処理しました」
ルナスの不安を見て取った男は、喜悦を顔に浮かべて言った。
「…あっ…ああ…!殺してやるッ!殺してやるッ!苦痛を与えて殺してやるッ!」
ルナスは目から涙を流して、憎悪と殺意を込めて男を睨む。
飛びかかろうとするが、左右から抑えつけられて抵抗すら許されない。
「そう…その顔が見たかったのですよ。訓練でアナタの苦痛や憎悪で、歪んだ顔を見る度に私は興奮していた!」
男は暗い欲望を顔に浮かべ、ルナスの服を引き裂く。
ビリッ!
「…っ!?貴様っ!」
「半魔族なんていう、薄汚い血を引くアナタですが…感謝しなさい。導師様の護慈悲で【娘】に男を教えてから殺してやれとの事だ」
男から慇懃無礼な物腰は失われ、荒々しい口調と雰囲気に切り替わる。
この時ルナスは憎悪と憤怒を抱きながらも、頭の奥底で冷静に、冷徹に、目の前の男達を殺す為に魔力を練り上げていた。
が…
「それと…だ!」
「かはっ…!」
男はルナスの首を力を込めた手で、抑えつけられ顔を歪める。
すると…ルナスが練り上げていた魔力が抜けていく。まるで吸い取られるように。
「オレはある固有能力を持っててな…?魔族限定で魔力を吸い取る事が出来るんだ。反撃を狙ってたようだが、残念だったなぁ?」
男の言葉にルナスは絶望するしかなかった。
男はそれを見て、達成感を得ていた。
導師様の命令は全てに絶望させてから、殺すようにする事。
薄汚い血を引くとはいえ、半分は己の娘なのにである。
いや…己の血を引くからこそか。
正直男にはどうでも良かった。
本来、暗殺者たる己はただ迅速かつ正確に標的を葬る。
わざわざ犯したりなどしない。
だが…今回は違う。訓練によって感情も欲望も制御出来るが、性欲無いわけでもない。
それに目の前にいる女は、薄汚い魔族の血が流れているとはいえ、間違いなく最上級の女だ。
そして己の嗜好を大いに満足させてくれるだろう。
男はまずは服の中から、露わになった形が良く適度な大きさの胸を力いっぱい揉む。
「…っ…!」
先端は淡くピンクに色づて、触り心地は絹のように滑らか、指がすぐに沈むほどに柔らかくも、確かな弾力で弾いてくる。
「こいつは凄いな…。胸だけでこれなら穴の方は…」
男は赤く手の跡が残るほどの力を込めて揉んだあと、そう呟いた。
過酷な訓練によって制御しているはずの性欲が、周りの男達から溢れている。
「少し待ってろ…。俺が済んだら、お前らにも味わせてやる。何…朝までは長いんだたっぷり楽しませてもらおう」
ルナスは抵抗の余地がない事と、朝まで凌辱される事を思い知り…ただ心を殺して耐えるしか…
ガチャ!
「「「………ッ!?」」」
一瞬の驚きの後、扉の方に居た三人が即座に反応し、入って来た人物を殺すべく、三人が同時に腰から短剣を抜きはなち、入って来た人物に三方向から必殺を一撃を放つが…
ダンッ!
「ギャ…!」「ガッ…!」「フギャ…!」
三人は攻撃した瞬間に腕と脚をねじ曲がらせ、地面に叩き伏せられる。
「なっ…!?何者だ…?お前ら全力で殺せ!」
ルナスを犯そうとしていた男が、驚愕に顔を歪ませる。
この場にいる者達はマギアの精鋭だぞ!?
…それが…なぜ地面に簡単叩き付けられている!
左右の二人に命令を下すと、二人は気による【孔活性】と【身体強化】魔力による【限界突破/リミットブレイク】を己にかけ、命令を実行する。
「オレの宿屋で…」
入って来た人物が顔を伏せ、怒りを抑えつけるよう喋るが…そんなものは気にも留めず、二人は目にも止まらぬ速さで、命を奪うべく襲いかかる。
伏せていた顔を上げると、左右から先ほど以上の脅威と殺気を載せた短剣が迫る。
「えっ…?」
半ば呆然としていたルナスが人物の顔を見て、驚いたように声を漏らした。
それと同時に…入って来た人物…ヤマトは左右の攻撃を捌き、円を描いた手で絡め捕り、そのまま肩に掌底を叩き込む。
「「…っ…!」」
与えられた衝撃に息を漏らしながらも、二人は怯まずにそれすら動きに折り込み、二人は無事な片手で首と心臓を狙う。
「…はっ!」
ヤマトは目を細め、口角をつり上げると、一歩下がり最小の動作で避けると、両脚を踏み込み…その力で全身の関節を駆動させる。イメージは螺旋…各関節を回し、それを抜き手と掌底を合わせたような不思議な手形で心臓に打ちつける。
「螺子切り…」
「「がっは…!」」
二人の暗殺者は肺の息を吐き出して、白眼を向き倒れた。
「っ…!…本当に何者だ!?」
男はヤマトに畏怖と驚愕に満ちた目を向ける。
「別に何者でもない…」
ヤマトは呟くと、何でもないように近づき、頭を掴み持ち上げる。
「ガァ…!あが…っ!」
苦痛にもがく男を凄みを込めて見つめる。
「単なる宿屋の息子だ。で…お前らは単なる強姦魔じゃないんだろう?」
「…っ…」
握る手に力を込める。
「がっ…あああっ…!」
「…ま、正直どうでも良いんだけどな…。…殺すのは後始末が面倒だから止めておいてやる」
ミシッ!と何かが軋むような音が確かに鳴る。
「や…やめ…やめ…て…」
「が…変わりにこの人に永遠に関わるな?お前より上がいるなら、そいつにも伝えろ…。それでも…また来るようなら…」
…男は自分の意思とは関係なく、身が震えるのを抑えられなかった。
「…皆殺しだ」
ヤマトから溢れる膨大な殺意と威圧感に…。
ヤマトは手を男から離す。
男は先ほどの姿が幻だったかのように、恐怖で幼子のようにガタガタとただ震える。
「転がってる奴らを連れて失せろ…」
ヤマトの言葉に震えながらも、勢いよく頷き。倒れた男二人を殴り起こし、ドアで変な形に体がねじ曲がった三人を、それぞれ抱えて出て行った。
「ふぅ…。あ〜、と遅れてごめんなさい。とりあえずこれを…。目のやり場に困るので…」
ヤマトはルナスに謝罪して、目を逸らしながら、着ていたシャツをルナスに羽織らせる。
ヤマトも男なので、さすがに…ルナスのような魅力的に過ぎる美少女の半裸には目のやり場に困るのだ。
「…………」
ルナスはそんなヤマトを、まだ呆けたように無言で見つめた。
まるでヤマトが己で生み出した幻想であるように…。
そんなルナスに、若干の気まずさを覚えるヤマト。
「「………」」
無言の静寂が少し流れたその時…雲によって遮られていた月明かりが、窓から入り込み、ルナスを照らした。
「…綺麗だ…」
「あっ…」
ルナスに注いだ月光が白銀の髪にキラキラと反射して、幻想的な美しさを身に纏う。
ヤマトは惚けたように見とれ、呟いた。
「そんな…訳ない…私は穢れた魔族の血を持つ忌み子…。なんで…助けたの」
髪を手で隠し、ルナスは顔を伏せた。
「あ〜…ごめんなさい。実は僕異放人なので、魔族が邪悪とかなんとか言われても分かんないですよ…。それに助けたかったから助けた。それだけです」
ヤマトは頬をかきながら、そう言った。
「異放人…」
ルナスは少し驚きを込めて、ヤマトを見つめる。その目には少しだけ涙が浮かんでいた。
「えっと…それじゃ」
ヤマトは、夜中にこれ以上いるべきではないだろうと、部屋を出て行こうとすると…。
「えっ…?」
「あっ…ごめ…んなさい…」
服の裾を引っ張られる。ルナスは謝りながらも、服をぎゅっと握り締めている。
「…っ…っ…!」
涙が今にも溢れそうな瞳を揺らし、ルナスは自分がなぜ…ヤマトを引き止めているかも分からず、困惑していた。
今まで一人で生きて来た。これからもそうだ。…でも母さんは?私が生きて来たのは、幼い頃引き離された母さんと一緒に暮らす為だった…。
なら…母さんが死んだ今は?
そんなルナスを見てヤマトは数年前の自分を思い出した。
『大丈夫だから!私がいるよ!』
幼い自分を抱きしめて、救った少女の事を…。
だから…
「大丈夫…!泣いても大丈夫だから…」
「あっ…ああ…うっ…っ〜!」
ヤマトは昔、自分がされたように…目の前の壊れそうなほど、儚い少女を抱きしめた。
…ルナスは安心するように…縋るように…ただの子供のように…ヤマトの胸で泣き続けた…。
読んでいただきありがとうございます。
えっ…?なにか…?
ツッコミあるなら聞きますよ?
では次回は…義父が出て来るかな?