客人
間があいちゃいました。体調が悪くて。
月が凝固すれば、こうなるのかもしれない。
寝椅子に寝そべり、肩肘をついて頭をもたげているものは、見事な銀糸の髪をしていた。
白い肢体がけうたげに伸びている。
貴族趣味の、宰相が止まるにふさわしい部屋によく似合っている。
ササルユエ
先ほどまで、血まみれだったはずの男から血臭は一つもしない。
ただ、月の怪しげな、それでいて美しい静けさがある。
思わず見とれそうなものだが、ルキアは総毛立ち間合を詰めず、対峙する。
「お前……」
「ササルユエ。ルキア、そう呼んで。私の名前を呼んでお前の声で」
甘えたような声で。男は甘えるように見上げてくる。
一見すると男を待ち、ベッドに侍っている娼婦のようだが、ルキアは何だか子供みたいな気がした。
まあ、ルキアに男の色気に惑うような気がないとも言える。
「とりあえず、座ったら?」
「はああ!?」
男がひょいっと体をおこし、椅子に座りなおす。
ルキアは柳眉を逆立てるが、ついでがっくりと肩を落とした。
ソーナッシュがさっさと男の前の椅子に座ったから。
「お前な、さっきまで殺すか殺されるかだったんだろう……」
「やだな。殺す気なんて私にはないよ。ゆったじゃない。お前を助けたいって」
銀の男、ササユルエはにこにこしている。
ルキアはこめかみを指で掻き、金の髪を掻きむしり、覚悟を決めるとソーナッシュの横に座った。