努力を奪われた人間は
初短編です。感想、ブクマ、評価、レビューよろしくお願いします。
たくさんの人に読んでいただき感謝です!! 誤字脱字報告ありがとうございました。
続きが読みたいという声がありましたので続編を書いてみたいと思います。
これからもよろしくお願いします!!
2026/8/9
1 位
[日間]ヒューマンドラマ〔文芸〕 - すべて
1 位
[日間]ヒューマンドラマ〔文芸〕 - 短編
快挙です! ありがとうございます!!
誤字脱字報告ありがとうございます。
皆様のおかげでより良い作品が作れることに最大級の感謝を。
すべてを奪われた。
そう思ってもいいだろう。
2歳年下の妹は違うと答える。
『ボロボロのお姉さまは見ていられないの』
13歳のときからの婚約者だった男は言う。
『キミはもう限界だ。もうこれ以上は無理をさせるわけには……』
生まれた時から見てきた両親は言う。
『ゆっくりと領地で過ごしなさい』
「ゆっくり休め」と言われ連れていかれたのは大きな湖や畑以外に何もないただの田舎だった。
生まれてから王都で過ごしていた私には不便極まりない土地だった。
私はここに至るまでのことを思い出す。
◆
自分のことは分かっている。
私には才能はない。
私にはないが才能というものは存在する。才能がない私はよく自分との能力差を突きつけられ、劣等感や無力感を感じさせられる。
私の知っている「天才」の代表的な存在が妹だった。2歳年下の妹は才女だった。
ただの天才ではなく姉の私と違って愛嬌もあり可憐だった。
私には妹のような頭脳や愛嬌はない。悪く言えば「地味」「平凡」「並」というあたりだ。
妹は幼いころから才能を遺憾なく発揮し、周囲から認められていた。加えて両親譲りの美貌だ。愛想もいいので友人も多く非の打ちどころがなかった。
私は妹のように才能や容姿に恵まれなかった。
だからこそ努力した。
教育係から与えられる課題をこなし、それでもまだ足らないと思ったから自主的に勉強もした。それでも私の能力は“人並み”だった。
周りは言うのだ「努力が足りない」「妹は優秀なのに」「あー……まあ、キミはそれでいいよ」とそれでも諦めなかった。
「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」
ある日、父にそう言われた。端的に言えば「もっと頑張れ」ということだった。
「そうよ。貴方だってあの子と同じ血が流れているのだからきっとできるわ」
母の言葉は「妹に負けるな」ということだった。
まだまだ足りないのだろう。
努力が足りないと言われたら自分の行動を見直し、客観的に何が足りないのかを学んだ。睡眠時間を削り、充てられる時間をすべて勉強に費やした。
効率が悪いかもしれないが私にはそれしかできなかった。
もともと両親は私よりも出来のいい妹を可愛がっている節があった。
私よりも妹が優れていると分かったのは私に与えられた課題を妹がなんなくこなしたことによる。
最初は優れた妹は自慢だった。それが徐々にプレッシャーに変わった。
私が何を頑張っても妹はその先をいく。
一番いやなのは私が先に始めたことを真似してなんなくその上を行くことだ。幼いころの妹は純粋に私のしていることが楽しそうに思えたのだろう。私が先に学んだことでもあっという間に抜かれた。
今では嫉妬よりも諦めや妹に対する嫌悪や忌避感の方が強くなった。
◆
「……今、なんとおっしゃいましたか?」
両家の両親、婚約者、なぜかそこに私の妹もいる。
最初は訝しげに思ったが口を開いたのは婚約者だった。
「……キミとの婚約を解消したい……」
「なぜ?」
この婚約は両家の仕事の取引のためにだった。だから、婚約を解消するということはおいそれとはできないはずだ。
「この婚約がどれほど大切なものか分かっているでしょう? 急にそんな解消なんて」
私は自分の言葉がやや鋭くなっているのを感じたが止めることなんてできなかった。
「お姉さま」
私が話しているのは婚約者なのに妹が声を挙げた。
まるで庇うような声掛けに私はなんとなく理解した。
「……婚約者には妹——クリスティーナがなる。だから心配はいらない」
父は私を窘めるように言う。心配なんて綺麗な言葉でまとめようとする。
ああ、両家や仕事には問題ないのか。そこに私の心情は含まれていないだけだ。
「……妹に惹かれましたか? 1か月前のオペラもクリスティーナと観に行きましたものね。半年ほど前からお茶もしなくなりましたね」
「……違う、惹かれたとかじゃない。それにオペラやお茶会はキミは忙しいと思ったから」
「私があなたの誘いを断ったことがありましたか? 毎回きちんとスケジュールを空けるようにしていました」
私のスケジュールの管理をしているのは私の侍女だ。
私はそちらを見ると私から視線を逸らす。
ああ、この侍女が伝えたのか。私のスケジュールを勝手に調整して私に伝えなかったのね。そして、婚約者が妹と会うためのお膳立てをした。
「その時間は君に休んでほしいと思ったんだ……クリスティーナからキミはもう限界だと言われて……」
「……どういうこと?」
妹の勝手な言葉に私は妹を睨んだ。
「だって、いつもお姉さまは夜遅くまでお仕事をされていて、いつか壊れてしまうのではないかと思いました。現につい最近もお倒れになられたではありませんか」
「それでも私には相談もなしに決めたの? 私から婚約者を奪うという発想には至らなかったの?」
「……申し訳ございません」
天才の妹には人並みの私の気苦労は全く理解できないのだろう。私が1時間やってできることをこの妹は10~20分でできる。私は一度で物事を覚えることはできないし、いつまでも覚えているなんてできない。私は無理だが妹にはできる。いつもいつもこの天才と比べられ、くじけそうになりながらも今迄頑張ってきた。
それをこの妹は身体を壊しながら無理をしているように見えたようだ。痛々しくて自分が代わろうと思ったようだ。私が今まで積み上げてきたものなんてものは目に入らなかったようだ。
「………お父様たちもそうお思いですか?」
「……ああ。お前には無理をさせた」
「『努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない』そうおっしゃったのはお父様ではないですか」
「……すまない……私がお前を追い込んだ……お前には無理なことをさせた」
「お母様は『貴方だってあの子と同じ血が流れているのだからきっとできるわ』でしたよね? 私は出来が悪かったようですね」
お父様は肩を落とし、お母様は涙を流すだけで何も言わない。
無理なこと? それは無駄な努力、徒労に終わったということ?
元婚約者を見る。
「……私は最初から妹の方がふさわしいのではと言いましたよね? それでもあなたは私がいいと言った。私は期待外れでしたか?」
「……」
婚約者の両親を見る。
「私が何かミスでも致しましたか? 成果はしっかりとあげられていますが。貴方たちには物足りませんでしたか?」
「……」
相手側の家は何も言わない。
だが、それは肯定しているようなものだった。
妹が天才なのはもう仕方がない。
だが、私は私なりに仕事をして成果を出し、結果も出してきた。私には何の非もないにも関わらずそれをいきなりすべて取り上げられるという心情を理解できないのだろうか。
「お前にはうちの所領に行ってもらう。そこでゆっくりと休みなさい」
「……なるほど、私はもう用なしですか」
私の言葉にショックを受けたような顔をする父親。誰がそんなことを言わせたと思っているんだか。
「違う……そうじゃない……違うんだ……ただ体を休めてほしくて」
声に力が入ってませんよお父様。
つまりお父様の言ったあの言葉はその場しのぎの慰めで私に期待をしていたというわけではなかったのね。人並みの人間が努力しても天才の前には無駄。今新しくあなたの教えが加わりましたよ。今までの教えが私にはもうおためごかしのゴミ以下の存在になりましたけどね。
「キミはもう限界だ。もうこれ以上は無理をさせるわけには……」
「ボロボロのお姉さまは見ていられないの」
お父様を庇うように私に領地に引っ込めと言う2人。
仲がいいわね。最初からこの2人が婚約していればよかったのに……。
「……なら、私の気持ちはどうなるのですか」
私の言葉に両親が顔を上げ、妹と婚約者……元婚約者は目をそらした。
「私の今までの努力は? すべてなかったことにしろということですか? 今までの成果もすべて妹に渡せと? 私の身体が心配? 今更、私の身体のことを考えられるのであればなぜ私の心のことを考えてくださらなかったのですか!? すべてを奪われて終わってもなにも思うことはないのですね!?」
私は両親を睨む。私のすべてを無駄になったと言ったに等しいこの2人はかつて「もっと努力せよ」とか「妹に負けないで」とか言っていたくせに。それをたった今踏みつぶした。
そして、私からすべてを奪った妹の顔を思いっきり叩き部屋を出て自室に戻った。
部屋に鍵をかけ誰も入れないようにする。
部屋の前に何度か両親や侍女が訪ねてきたがすべて無視した。
もう仕事はしなくてもいい。
私の筆跡が大量にあるノートは天才にかかれば効率が悪いのだろう。使っていたペンやノート、資料などをすべて壊し使い物にならなくした。
頑張るしかなかった。けれども、私にはこれしかなかった。
苦だとは思ったけれど、その努力の先にある自信や結果、そして未来のために惜しむことはしなかった。
今までの努力や成果がすべて妹に奪われる形で終わった。あいつらは休めと言うが私には「取り上げられた」という結果しかない。もうやってられない。努力なんてしたくもない。
元婚約者から贈られてきた物も処分し、妹が私の元婚約者と一緒に買ってきたというアクセサリーもズタボロにする。まとめてゴミとして扱った。
そして、所領に送られる日が来た。
最後まで父は気まずげに目を合わせない。
母と妹は泣きながら私を送る。「元気でね」「むこうでゆっくり休んで」「手紙を書くから」などと温かい言葉を私はすべて無視し、馬車へと乗り込んだ。2人は私の対応にショックを受けたようでさらに泣き出した。
所領には私の侍女が付いてくると言い同乗した。
そして、馬車は動き出す。
所領までは馬車で1週間ほどかかる。
私が王都を離れ3日が経過した時に私は侍女に解雇を宣告した。
初日から解雇にしなかったのは本家からいらぬ人材をつけられたくなかったからだ。今から戻ったところで私はもうすでに領地入りをしている。あとから追いかけてきた人間なんて来ようものならすべて追い返すつもりだ。
「……私のスケジュールを勝手に他人に教え私に嘘をつく侍女なんていらないわ」
「も、申し訳ございません! お嬢様……私は……クリスティーナ様に頼まれて。お嬢様に無理をさせないようにと……」
「私のためってこと?」
「は、はい……」
「貴方がしたのは裏切り以外の何物でもないけれどね」
「——っ——」
「妹の言葉が重要なら私よりあっちに仕えればいいじゃない。どうせ、領地で私のしていることを両親に報告するようにとでも命令されたのでしょう」
「あ……」
私の言葉にびくりと肩を震わせる。図星のようだ。
街には王都に向かう辻馬車もある。適当に辻馬車を拾えば王都に戻れるだろう。袋いっぱいの金貨を渡し馬車から追い出した。退職金も込みの乗車賃だ。侍女は涙を流し謝罪したが私はそれに何か思うことはない。
そこから先、私を乗せた馬車は止まることなく領地まで進んだ。
◆
領地に来て半年が経過した。
私がいなくなったことで家が困ったという話は聞かない。
王都の仕事が回らなくなったという話も聞かない。
ただただ人並みの令嬢がいなくなっただけだ。私以外の仕事ができる人間が代行しているのだろう。
所詮、私は替えの利く人材だったということだ。いいことではないか、人ひとりいなくなって機能しなくなる仕事なんてうまくいくはずがないのだから。
だが、もうどうでもいい。
私は所領で領主の仕事をこなしていた。王都にいた時ほど多忙ではない。貴族として教育を受けた人間がやればできるような仕事だった。
本を読んでいると植物に興味を持つようになった。
見よう見まねでガーデニングを始める。植物を育てるのは意外と私の性格に合っていた。マメに世話をすれば成果としてはっきりあらわれる。しっかりと花が咲けばまるでお礼を言われているようでうれしかった。お礼を言って花を手折り、私が育てた花で屋敷を飾ることが私の趣味になった。
ある日、何の連絡もなしに両親が私の様子を見にとこちらにやってきた。笑顔で私に手を振る。私はそれを見ると部屋へと戻り一切顔を合わせなかった。予定外の来客に付き合う道理はない。使用人たちには私を両親に会わせないようにと命令を出した。使用人たちが事情を知ったのか私が会いたくないことを察したのか両親がそれぞれ謝罪に来た。
父親は「すまなかった」と謝罪し罪滅ぼしのつもりなのか新たな縁談を持ってきたが「私の気持ちを考えられない人の世話にならない」と手紙で断る。その日の夜に部屋の前で「すまなかった、すまなかった……」と父親が泣いているのが不気味だった。わざわざ私の部屋の前で泣かないでほしい。私に罪悪感でも抱かせるつもりなのか。
次は母親だった。お茶だかおしゃべりに興じたいようだった。今まで誘ってくれたこともなかったというのに。ドア越しではどうやら妹の結婚式のことについて話をしたいようだった。そんなものに私が参列するわけがないだろうに。「私から奪った結果を見せつけたいのですか? それとも妹との差を見せつけたいのですか?」と問いかけると泣き出した。
「貴方たちがいるせいで私は仕事ができません」と言えば去っていくが、また翌月にはやってくる。いい加減にしてほしいものだ。
◆
そして、領地に来て5年が経過した時に両親たちと一緒に妹夫婦が来た。
妹の相手は私の元婚約者だ。
どうやら私の元婚約者との間に子供が生まれたらしい。扉向こうで勝手に話しかけてくる両親から聞いていたが、自慢でもしに来たのだろうか。
無論、会うようなことはしない。私の屋敷だというのに我が物顔でのさばる妹夫婦に苛立ちを覚える。
「……ねえ、これはどういうこと?」
妹たちが来てから数日。湖に遊びに行ったと聞いたので私は部屋から出て屋敷を歩いているとある物が目に入った。
私の視線の先にあるのは私の部屋に見たことのない花が活けられた光景だった。
「あ、そちらはクリスティーナ様が領主様にと。お優しい方ですよね。領主様がお花が好きだと聞いて持ってこられたようです。それにクリスティーナ様が育てられた花のようです。新種のバラということで——」
年若いメイドがどうやらこの部屋の花を活けたようだ。
ピンクで可愛らしいバラ。まるであの妹のようだ。
私はその花を活けてある花瓶ごと掴み床に叩きつけ割ってやった。その様子にメイドが驚く。
「領主様、何を!?」
「……ねえ、この花の前に活けてあった私が育てた花はどうしたの?」
「え、あ……」
私の館にある花はすべて私の庭園で咲いた花だ。私が管理をしているものだ。
それを知らない使用人ではない。どうやらたった数日一緒にいただけであの妹に毒されていたらしい。
私の花は捨てられた。妹の育てた新種のバラに比べれば私の育てた花は取るに足らないものだったようだ。
私は屋敷を見て回る。
私が活けた花が勝手に替えられている。昨日活けたばかりの花たちがもうどこにもない。私だけの空間をあの愚妹に汚されているようでたまらく気持ち悪かった。
あの妹はまた私の真似をして私以上の成果を出したようだ。
新しいバラの品種? そんなものは私はどうでもいい。あの女の関わった全てが私は気に入らない。いたるところがあの妹に毒されている気がしたのですべて処分することにした。
「お姉さま!?」
エントランスの花瓶ごと叩き割っている私を見て妹が声を上げた。ちょうど帰ってきたようだ。
久しぶりに見た愚妹の顔。
少女らしかった顔は母親になったためか立派な大人の顔になっていた。隣には私の元婚約者とその子供。両親までもがいた。
「……相も変わらず私のことを考えないのね」
私は妹が開発したバラを握りつぶす。手に棘が刺さろうが血が出ようがそんな痛みは気にならなかった。それ以上に言葉にできないような苛立ちが強かった。
「私の屋敷にゴミを活けないでくれる?」
「あ、も、申し訳ありません」
私が何を言っているのか分かったのか妹は申し訳なさそうに頭を下げる。
「お、お姉さまがお花が好きだと聞きましたので……私が作った花をと思いまして……」
「それで主人気取りで好き勝手したのね」
「……そのようなつもりは……申し訳ございません」
今回の一件は使用人が気を利かせたのか、妹が命令したのかは知らないし、どうでもいい。
「メイドは今から全員解雇するわ」
「「「!!??」」」
「お姉さま!?」
メイドたちは突然の解雇に驚く。
「私の言うことは聞けないけれど、貴方の言うことには忠実なようだからね。いつ私のことを裏切るか分からない使用人なんていらないわ」
主人の言うことも聞けないような使用人などいらない。全員等しく解雇すれば問題ないだろう。
「使用人も全員いなくなるから、今日から給仕も世話もできないわね。もうお帰りください」
どのみち歓迎する気などなかったのだから目の前の人間たちの扱いなんてこんなもので十分だ。
「お姉さま……」
「ねえ。どうして私の屋敷に来たの? 貴方が来ると迷惑なのだけれど。私から奪ったものを見せつけたかったの?」
「ち、違います。私たちは……お姉さまと仲直りがしたくて……」
「私のことを何も考えられないのにできるわけないでしょう」
この人たちは「こっちがいい」と判断したら私の意見なんてお構いなしだ。やることなすことが全てが——
「そんな無駄な努力をする暇があれば仕事をしなさい。すきでしょう? 私から奪ってまで手に入れたものなんだから」
その言葉を告げられて両親は顔を青くしている。
妹の夫も私の努力をすべて徒労に終わらせたという自覚があるのか気まずそうな顔をする。泣きそうな顔をしている妹の肩を抱き踵を返してそのまま屋敷から出て行った。
来客が帰る。
王都から連れてきた使用人たちが荷物を馬車に積み込む横で妹の子供がはしゃいでいた。走り回っているといきなり転んだ。どうやら何かにつまずいたようだ。結構な勢いで転んだので両親や妹夫婦は慌てふためいて泣き出した子供をなだめる。
それを見て思わず笑ってしまった。
……ああ、笑う。
しばらくそんなことはなかった。
何年ぶりだろうか。
いや、笑い方も忘れていたんだろう。案外悪くない。
「遊覧船……湖……」
その日の夜。
月夜が照らす大きな湖を見ながらあれを使って何かできないかと私は考えた。
「ああ、食事に何か混ぜてみるのもいいかもね。食べ合わせを考えれば……アリバイもできるかもしれない」
楽しい。
今までで一番楽しい。
目的達成のために心身の力を尽くす。これも努力だろう。
もうしないと思っていたけれど、こんなにも楽しい努力というのは初めてだ。
その先にある結果が成功だろうが失敗だろうがそんなものはもうでもいい。
こんな努力なら私は苦ではなかった。
私はもう一度庭園に行き、自分の屋敷に飾る花を見繕いながら考えを巡らせた。
「花を使ってもいいかもしれないわね。確か根に……」
最初は誰がいいかしら。
私はペンを手にした。
後日、復讐を題材にしたミステリー小説が書店に並ぶようになった。
殺人の手段は残酷ではあるが復讐への正当性を感じさせる犯人であり主人公に共感すら覚える人もいたという。本から殺意が伝わってくると批評家は言った。
彼女は一躍有名な作家となった。
その家族は登場人物たちが自分たちにあまりにも酷似していたため、その小説を読み震えた。
姉が来る集会には決して顔を出さなくなったという。




