35. 星脈の導く場所
【惑星Earth テラ軍 医療棟】
リラは、医療ポッドに横たわり、透明な上部カバーをぼうっと見つめていた。
惑星Dahlia上空で、ルークがメビウスを自爆させた。
その星脈エネルギーは、天の川銀河オリオン腕全域に広がり、カルザ帝国軍のミサイルは無効化されて宇宙に消えた。
同時に星脈エネルギーは、惑星Zeroniaにも影響を及ぼした。
カルザ族は、神経リンクを無効化された状態にある。
ルークは、惑星Dahliaとダリス族を救った。
リラが乗った脱出ポッドは、Earthへ帰還し、軍に無事回収された。
軍の医療室で検査を受け、かすり傷程度で健康状態は問題なく、お腹の子どもは無事着床していることがわかった。
これで、〝妊娠〟の段階にたどり着いた。
だが……
肝心の、この子の父親。
ルークの行方が、わからないままだった。
ルークは、自爆シークエンス起動後、自分も脱出ポッドに乗ると言っていた。
その脱出ポッドが発見されていない。
リラは今も確かに、ルークの生命反応とも言える星脈を感じている。
ルークは、きっと無事だ。
ポッドの再生が終わって、ドーム型の上部カバーが左右に開く。
その横にはキリュウが座っていた。
「気分はいいか」
リラは体を起こして脚を床に下ろした。
「ええ、いいわ。もう大丈夫」
キリュウはうなずくと、一瞬、視線を下に向けてリラに戻す。
「ルークの宇宙船なんだが……」
その態度から、いやな予感がした。
「機関システム部隊が設計図を確認したところ、脱出ポッドは……一機しか無かったことがわかった」
え……
リラの思考は止まった。
「うそ……」
キリュウは何も言わなかった。
「うそよ……ルークは、自爆シークエンスを起動したら、自分もポッドで脱出するって……」
ルークは──
どうなったと言うの?
「リラ」
キリュウはリラの方に身を寄せる。
「ルークは、きみと〝サン〟の命を優先したんだ」
「ルークは生きてる!」
リラはキリュウの言葉を遮るようにそう言った。
「感じるもの……彼の、星脈を……」
震える唇。
──絶対に、生きている。
そう確信しているのに涙が出る。
「リラ……」
キリュウは取り乱すリラを腕に抱いた。
「そんなの、信じない……」
リラはぎゅっと強く目を閉じ、唇をかむ。
彼が自分や子どもたちを残して死ぬはずがない。
「カイ、なんとか言ってよ……」
左手の指輪とブレスレットはまだ温かく、彼の存在を示しているのに。
嗚咽と共に涙が次々にこぼれ、キリュウの軍服の胸を濡らした。
【惑星Dahlia 南部】
一人の老人が、日課の散歩で砂浜を大型犬と歩いていた。
「バゥッ、ワゥッ」
何かを見つけて吠える犬。
「なんだなんだ、どうした」
老人は、犬をなだめながら、その視線の先を追う。
「なんだ、ありゃ……」
そこには、打ち上げられた、機械の残骸らしき物体があった。
老人は引き寄せられるように、その物体へ近づく。
「──大変だ、人が倒れてる」
こうしてルークは、アストラ族の長老に発見される。
「おぉい、誰か! 来てくれ! 医者を呼べ!」
……いや、医者はここにいるんだが。
老人の声で、ルークは意識を取り戻した。
体中が痛い……
「クゥン……」
近寄って来た犬がルークの頬をつつく。
一瞬リアムかと思ったが、シェパードではなく、レトリバーだった。
「ワゥ、ワウッ」
ルークが目を開けると嬉しそうに声を上げる。
静かにしろ、体が痛い。
そう言いたかったが声は出なかった。
しかもそのレトリバーは、不思議な白銀のレトリバーだった。
頭のてっぺんから、まるでユニコーンのような角が生えている。
──あれ?
ルークは、惑星Dahliaの軌道上でメビウスを自爆させたことを思い出す。
もしかして、オレ──死んだ?
ここは天国か?
とりあえず、Earthではないようだ。
ということは──
どこまでも続く白い砂浜と、ピンク色の珊瑚礁。
ここは、惑星Dahliaだ。
ルークは漂流し、みずからが向かうべき場所へたどり着いた。
その瞬間──
星脈は、
かつてない強さで、
ふたたび脈動を始めていた。
星脈のネクサス Season1〜The Awakening〜
【了】
Continued in the next season.




