【短編小説】I did it for the Nookie
その日、ヌーク・モリーは機嫌が悪かった。
駅では恥知らずなのろまが改札機の中でモタモタとICカードを探して通勤者たちを堰き止めていたし、会社近くのコンビニでは見栄っ張りがセルフレジですっトロい会計をして店内を半周する渋滞を作っていたからだ。
これだから電車通勤やセルフレジはイヤなのだとヌーク・モリーは思う。
敷居を跨いだ先は実家や自分の部屋では無いと言うのに、そう勘違いしているとしか思えない傍若無人なひとがあまりにも多い。
社会の最適化を最優先に考えて欲しい。
社会全体のスムーズな運用に比べたら、自身の主義主張なんてのはまるで存在意義が無い。
そもそもヌーク・モリーがバイク通勤から電車通勤になったのも傍若無人なドライバーを轢殺しかけたのが原因だ。
イカ釣り漁船みたいな爆光フォグランプのワンボックスが左折しながらウインカーを一度だけ瞬かせたのが気に食わなかったヌーク・モリーは、バイクの煽り運転でその爆光クソ左折ドライバーを路肩に停車させて車内から誘き出すと、そのままバイクで轢いてしまった。
人間は近くから発進したバイクで一度くらい轢いた程度だと死なない。
だからヌーク・モリーはアクセルターンを繰り返して何周まで生き残るかの遊びを始めようとしたが、通報されてやってきたミニパトが目の前に停車したので遊びを止めざるをえなかった。
そしてミニパトから出てきたのがやけに野暮ったい婦警だったので、ヌーク・モリーは思い切って「あなたに欲情してしまったから逮捕して欲しい」と言って怒張した陰茎を差し出してみた。
それは婦警の処女性に賭けたギャンブルだったが、陰茎を見た野暮婦警はたちまち顔を赤らめながらそれを口に含み、ゆっくりと前後に動き始めたのでヌーク・モリーは賭けに勝った事になる。
そして野暮ったい婦警はヌーク・モリーの爆発的な射精を顔面で受け止めると、そのままヌーク・モリーをミニパトに押し込めて警視庁ラブホテル分署に連行してしまった。
それから数時間後、ヌーク・モリーが野暮ったい婦警とアナルファックを除いた大抵の行為を済ませて先ほどの事故現場に戻ると、ヌーク・モリーが乗っていたバイクは消えて無くなっていた。
「盗まれちゃったじゃん」
ヌーク・モリーが不満を言うと野暮ったい婦警は「わたしの心があなたのチンポにね」と笑ったので、ヌーク・モリーは腹を立てて婦警の乳首を捩じ切ってしまった。
野暮ったい婦警は絶頂しながら警察手帳で汗と精液を拭ったりして死んだ。
こうして電車通勤を余儀なくされたヌーク・モリーは痴漢冤罪で女が叫ぼうとする度に駅のトイレで示談ファックをして切り抜けていたが、トイレがヌーク・モリー待ちの行列を作ってしまうので、ついにあらゆる駅を出禁になってしまった。
ヌーク・モリーが不貞腐れていると、いつか毟りとった野暮婦警の乳首がヌーク・モリーに囁いた。
「わたしに帰りなさい」
驚いたヌーク・モリーが振り向くと、今までに毟ったり捻り切ったりした乳首たちがヌーク・モリーを見ていた。
言葉を失ったヌーク・モリーが口をパクパクさせていると、何か白いものが押し迫ってくるのが見えた。
それはヌーク・モリーが今まで出してきた爆発的な精液が押し寄せているのだった。
やがて爆発的な射精液の波が全てを飲み込み、夜明けの光にも似た白金に染めていく中で、ヌーク・モリーはその暖かさに包まれながら、かつて受験シーズンに母親が拵えてくれた夜食のおにぎりを思い出して泣いた。
そして野暮婦警の乳首を握りしめて死んだ。
ヌーク・モリーは、死んだ。




