表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

"終末医療"

掲載日:2025/12/22

「複製躰だと言うのに、飽きないものだな」


姿見の形をした透過鏡から、実験室を覗き込む

取り押さえられた襤褸を纏った少年が、涙と唾液でべたべたになりながら叫び狂う様は、『そういう趣味』の無い私の眼にすら官能的なものとして映った



今回の新薬の実験は、理性剤だ


本来、強過ぎる負荷が精神に圧力を与えた場合、脳が損傷し精神に異常が発生する

多くの精神的疾患は、こうした原因によって発生するとされて居る

いま実験している新薬は、精神が傷付けられた瞬間、それが脳に損傷を与えるのを防ぐという効果が有る



私の眼前、鏡の向こうに在る部屋では、少年が弟───無力な赤児の精巧な複製躰を、何度も暖炉の火で炙って殺害する実験が行われて居た


少年は両腕を研究員に拘束され、強制的に膝立ちの姿勢でそれを視る事を強要されて居る


普通に生きていれば生涯聞いた事も無いであろう、濁った赤児の声がこだまする部屋で、仏頂面の研究員が鶏肉でも炙る様に淡々と、その泣き声の発生源たる複製躰の子供の両脚を片手で掴み、火炙りにして居た


一見すれば非人道的な行為に思えるかも知れないが、実の所、当実験は法に抵触して居ない

少年自身を物理的に傷付ける行動は、厳重な規則により禁止されて居るし、焼かれて居る赤児は複製躰であり、法的には人間では無い

実験動物や、それらに類する存在だ


当然、こうした実験を『非人道的である』と断ずる世論は在る

しかし、だからこそ、我々は法が改定され総てが台無しになる前に、新薬の完成を急ぐ必要が有った



実験室の音声は筒抜けの状態だ

私の耳にも炙られる子供と泣き叫ぶ少年の声が、聴こえて居た


声変わりして居ないソプラノだ

昔ピアノをやっていた事もあり、聴こえた悲鳴の音階すら、リアルタイムで把握する事が出来た


ふと、少年の顔を視る

全身を濡らす汗で、長めの前髪が顔に張り付いて居る

眼はうつろで、唇もまた汗と唾液に塗れ、暖炉の明るさを、ゆらゆらと映して居た



少年を視る私の視線が熱いものだと知れてしまったのか、側近が近付くと耳打ちした


平素、私は仕事中は表情一つ変えない事で知られる

しかし報告が終わると、私は自分の口の端が、僅かに上がって居る事に気が付いた


透過鏡は扉にもなって居る

私は実験室に自ら出向くと、研究員達に実験の終わりを知らせた



「必要量のデータが得られた、実験は終了だ」


視線を少年に向ける



「こいつを脱がせろ」


少年が恐怖に眼を視開いて、こっちを視る

二人の研究員も少しは戸惑いが有ったようだったが、彼らも濡れそぼった少年の肌に思う所が有るらしく、一瞬顔を視合わせると、直ぐに二人掛かりで着ていた襤褸をびりびりに破り、剥ぎ捨てた


その際も少年は綺麗な声で鳴いた 

私も研究員達も、すっかりこの悲鳴が奏でる歌に魅了されてしまった様だった



「恐らく、右脚の付け根だ」


「視せろ」


私が指図すると、二人の研究員は「もしや」という顔をしたが、速やかに少年の四肢を拘束した

具体的には一人が羽交い締めにし、もう一人が脚を掴んで開いた

脚の方は一人では大変だったらしく、側近が静かに近寄ると片足を掴む


やはり、少年の躰には、十二桁の数字と記号が記載されて居た



「こいつも人間では無い」


「要するに複製躰とかと同じ、人工の有機生命だ」


語る間でも無かったが、私はそれを口にした

そして、視線を部下達に向ける



「お前ら」


「こんな実験ばっかで疲れたろ」




「───最初は私からだぞ?」


少年が力無く、「やめて下さい」と呟いた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ