桜の季節、再び
翌年の春。またあの桜の季節がやってきた。
いつものようにカフェで原稿を書いていると、中村さんから手紙が届いた。
『桜井さんへ
今年も桜が咲きましたね。僕は毎年この季節になると、亡くなった親友のことを思い出します。でも最近は、悲しみだけじゃなく、感謝の気持ちも湧いてくるようになりました。
彼がいたから今の僕がある。別れは辛かったけれど、出会えたことは幸せだった。そう思えるようになったのは、桜井さんとお話しするようになってからです。
突然ですが、もしよろしければ、今度一緒にお花見をしませんか?友人として、お互いの大切な人を偲びながら。』
手紙を読みながら、私は微笑んでいた。拓也への愛は変わらない。でも、新しい友情や、もしかしたら愛情を受け入れてもいいのかもしれない。
窓の外では桜が満開だった。風が吹いて、花びらがひらひらと舞い散る。まるで拓也が「いいよ、君の幸せを見ていたい」と言ってくれているみたいに。
私はペンを置いて、返事の手紙を書き始めた。
『中村さんへ
お花見のお誘い、ありがとうございます。ぜひご一緒させてください。
私も最近、愛することには色々な形があるのだと気づきました。過去への愛と未来への愛。失った人への愛と、今ここにいる人への愛。
全部大切にしていいのかもしれませんね。』
手紙を書き終えて、もう一度空を見上げる。
「拓也、私、少しずつ前に進んでみるね。でも、あなたのことは絶対に忘れない。あなたがくれた愛を胸に、新しい愛も受け入れてみる」
そっと心の中で話しかけると、また桜の花びらが頬に触れた。
きっと彼も笑顔で見守ってくれている。私の幸せを、心から願ってくれている。
二十年という歳月が、ようやく私の心を癒してくれたのかもしれない。拓也への愛は永遠だけれど、私の人生はまだ続いている。彼がくれた愛の記憶を大切にしながら、新しい愛にも心を開いてみよう。
そう決心した春の午後だった。




