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新しい出会い
それから数ヶ月後、書店でのサイン会で一人の男性と出会った。
「桜井先生の作品のファンです。特に『君がくれた季節』は何度も読み返しています」
彼の名前は中村健一。三十五歳の小児科医だった。温厚で優しそうな人だった。
「実は僕も、高校時代に病気で亡くした親友がいるんです。先生の小説を読んで、当時の気持ちを思い出しました」
彼の話を聞いているうち、なぜか心が通じ合うような気がした。同じような経験をした者同士の共感。
その日から、彼とは文通のような形で手紙のやりとりを始めた。恋愛関係ではなく、友人として。
彼は小児科医として、限られた命と向き合う子どもたちと接している。私は作家として、愛と別れをテーマに書き続けている。立場は違うけれど、どこか似た思いを抱えていた。




