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10.兄上と私その2

「エリカ嬢は…いや、今日は本当に良い天気だね」

「ええ」


 ミッシェルさんは何かを言いかけ、結局は微笑を浮かべるにとどめた。なのでこちらとしても、ニッコリと笑顔を返すのみだ。目には目を、歯には歯を、笑顔には笑顔だ。しかし、カトリーヌと一緒にいるときは話題に困ることがないけれど、ミッシェルさんとは何を話したら良いのか分らない。きっと向こうもそう思ってるんだろうなあ。しかし、こちらから話題を振るにしても「領地」に関することには触れない方が良いような気がする。かといって貴族の恋愛ゴシップには、あまり興味もない。

 紅茶のカップを手にしながらチラリと彼の方を見ると、こちらが何か言おうとした雰囲気を察したのか、それを促すように微笑んだ。

 

「ミッシェルさん。こちらに来られる前は、王都にいらしたのですよね」

「ああ、そうですよ」

「なにか変わったお話でもありまして?あちらに居たのは2ヶ月程前なので、すっかりと流行のファッションについても疎くなってしまって」


 3日目にしてこの質問かよ!…初日に聞くだろってことを今更ながら聞いてみた。まあ、似たようなことはすでに聞いたかも知れないけどね。ニッコリ。


「うん。ドレスの型はあまり変わらないようだけれど、今は大きな刺繍を入れている女性が多いですね。それも同色ではないものが多いかな?」

「そうなのですか。それでは、夜会以外でも真珠や宝石を縫いこんだドレスのご婦人が多いのでしょうね」

「本当にね。派手な方だと、ドレスとアクセサリーが喧嘩していたりもする」


 肩を少しすくめながら言うミッシェルさんを見て、私は小さくふきだした。それを見たミッシェルさんが、とどめを刺すように「某男爵夫人」の最近の装いについて教えてくれた。一応は匿名だったけれど、きっとエレノイア男爵夫人のことだろう。あの人は派手で目立つのが好きなので、奇抜な格好をしていることが多い。それで得意げに歩くから、ある意味サマになってると言えるかもしれない。

 それにしても、大きめの刺繍かあ。モノにもよるだろうけど、ちょっと私には難しいかも知れない。

 

「そうだ。エリカ嬢はあまり宝石は身に着けないのだね」


 ああ、確かに。ふとミッシェルさんの首下を見ると、タイをアメジストのピンで留めているのが目に入った。彼の今日の上下の服はグリーン系統なので、ミスマッチのような気もするけれど、何故か似合っているから流石だ。カトリーヌみたい。

 そんなことを考えながら、そういえばそうねと頷きつつも答えた。


「そうですね。もちろん、特に気に入っているものもありますわ。でも、そういう品ほど見ているだけで満足してしまいます。正式な場では着けますが、日常ではリボンや生花の方が好ましく思いますの」

「そうですか。貴族の女性にしては珍しい」


 ミッシェルさんの素敵スマイルに、何か含むものを感じたのは気のせいだろうか。貴族とはいっても、形だけの養女だけどな。ダントン家の血は1滴も流れていないし?

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