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むじょうだったら  作者: ロヒ
彼此両立自治国家ルルフニア
15/16

おめでとう!只今あなたは誕生しました!

生者と歌え!亡者と踊れ!


たっぷりのアルコールで消毒したら、ニコチンとタールで嫌なことは全部煙に巻こう。

欲望に身を任せ、楽しく暮らそう。

皮を剥がずとも、みんな同じことはルルフニアの住人は知っている。


前時代的な考えに潰されることなく、血と油と少しの腐臭が染み付いた、アンティークなトタンの家に住むといい。着飾らないコンクリートもモールス信号を学んだ街灯も、酔っ払った蛾でさえも、眠らないアナタの味方だ。


騒げ、騒げ、騒げ、月は全てに寛容さ。


合言葉はひとつだけ。

どうか一斉にご唱和ください。

ミシカ・ムスカ・マサカ!


でも夜道には気をつけて

酒場にいる、顔色の悪い2人の子供は退屈そうだった。

酒が飲めないからじゃない、親が酔っ払ったわけじゃない。だだ自分たちの現状に憂いて酒場に愚痴を言いに来てみれば、その現状を知らない住民がどんちゃん騒ぎをしているのを見て、自分たちの仕事の退屈さに気付いてしまったのだ。


「ねぇ、ユーフラス」

「なに?ティグス」


片方は女、片方は男。ヘンテコで歪な服を着て、お揃いのサングラスを頭にかけている。薄暗い酒場の中で光る猫のような目は、正面のオーナーに向けられていた。


カウンター席で、カクテルを作るツギハギだらけの身体をじっと見ている。

———にしたって顔色が悪い。


「今月の配給まだかな」


目下の問題はそれだ。恩人の脛齧りである我々は配給に頼って生きている。それは食料ではなく、医療品でもない。

酒という娯楽だ。


この国で子供だから飲んではいけないという規範を一体誰が守るのだろうか。

体に悪いと言えども時すでに遅し。死人である。

そもそもこの国には法律だなんてハイソな物は無いたとえ未成年でも昼間から飲んだくれる国だ。


二人は下戸だから飲まないが。


「お酒が無いと大家さんキゲン悪いんだもん。早く来ないかなー」

「でも聞いたぞ?“みつば園”の園長先生が居なくなったって。そのせいで配給が滞ってるらしい。あの人どこ行ったんだろうな」

「ウッソ!さ、探さなきゃじゃん!!」


驚く彼女を横目に、彼は冷静になって、代理の責任者になるであろう人物のことを尋ねた。


「“ハート”さんは?」

「さてね。でもこの国にゃ来ないだろう。日の昇らない国だが、彼、綺麗好きだろ?…前回来た時顔を顰めてた。どうやらネズミも虫もダメらしい」

「じゃあ“クラブ”さん?」

「かもな」


オーナーはまたカクテルを———軟水と硬水のカクテル作りを再開した。


「酒が飲みてぇなぁ」


ため息をつくオーナーに双子は顔を見合わせた。いつもお世話しているオーナーだ。ここは人肌脱がねばならぬ。

隣人として、友人として、“国長”として。


「ティグス、どうする?」

「ユーフラス!強奪するよ!」


少女は間も開けず、強奪を選択肢に入れて決定コマンドをベタ踏みした。


よし、アクセル全開で犯罪だ!

といったところ。


ただし、犯罪になるのは《ルルフニア》以外の国の中での話。道徳観だとか常識だとかは、墓場に捨て置いて《ルルフニア》に皆来たのだ。酒場の誰も、大人も子供も老人も咎めやしない。

もちろん、双子の片割れも。


双子の行動の主導権は常に彼女にあった。


「にしたってどこで?俺ら国を出ちゃいけないし。相当な物好きでもなきゃ、この国を迂回するだろうしなぁ」


ユーフラスのこの言葉がトリガーとなり、ティグスは自分のジャンパーから古い携帯ゲーム機を取り出した。

怪しい笑み付きで。


「ユーフラス、コレ見てよ、車。今こっち向かってるの」


それはもちろんゲームなどではなく、監視カメラの映像だ。入国窓口とと繋がっていて、灰色の地面しかいつもは見えない。

しかし幸運なことに、何十年ぶりか、入国する車があった。


驚きはそれだけではない。


()()()だ…!」

「車内広そうだよね。キッチン絶対あるよね」


彼女は無邪気に笑って彼の腕を引っ張った。別に二人で行く必要はないが、生前からの習慣だ。


路地から噴き出る煙よりも速く、その車が到着するであろう、錆びた検問所に向かって走り出す。


「ゾンちゃんどいて!わたしやる!」

「あ、国長ー。どうぞー。内臓ー」


検問所に在中している、頭が半分欠けたゾンちゃんを退かし、無理やりプラスチックの席についた。


「でも注意ー。危険ー。眉間ー」


不思議な喋り方をすることで有名だが、ここまで内容に具体性があるのは珍しかった。


「無関係ー。休肝日ー。葬儀ー」


しかし残念ながら、ティグスはそんなことを気にも留めない。窓口のマイクに向かって、マニュアル外の案内を出した。


「へい、お車さん。ここを通行したくば問題に正解しな!」


ハンドルを握っていたエルフは不要のようなガンを飛ばしてくる。ティグスの行動は意味が分からないから仕方ないだろう。


「最終問題!『“ミシカ・ムスカ・マサカ”とは何でしょう』!」


車は苛立ったようにクラクションを何度も鳴らした。


「もし不正解の場合、お酒貰います。冷蔵庫にあるでしょ、どうせ」

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