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いきなり異世界に飛ばされましたが、私は幸せです~奥手なクマ系騎士隊長の無自覚溺愛生活〜  作者: 麻咲 塔子


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32 いきなり異世界に飛ばされましたが、私は幸せです

ヨハンおじさんと腕を組み、ブーケを持って扉の前に立った。


「おじさんも今日のことは知っていたんですか?」

「そうだな、一か月くらい前かな。ふふっ、黙っているのが大変だったよ」

「まあ、そうだったんですね」


そんな話をしていると、聖堂の中からオルガンの音色と賛美歌のような歌声が響いてきた。


「扉が開いたらゆっくり進んでください」

「わかりました」


係の指示に従い、ヨハンおじさんと一緒に前へと進んだ。聖堂の扉の向こうには、ズラリと木の椅子が並んでいた。広い! そして天井が高い! 白くて大きな柱には金色の細工が施され、天井には聖人と思われる絵が描かれていた。

なにこれ凄い! 地球なら世界遺産になってるよね! さすが王侯貴族も結婚式を挙げる大聖堂だよ! ナニ教かわかんないけど!


「リコちゃん? 進むよ」

「あっ、ごめんなさい」


あまりの豪華さに、つい観光客になってしまった。いけない、私の結婚式だったわ。

さすが王都で一番大きな大聖堂、祭壇までにかなり距離がある。ヴァージンロードを半分以上進んだところで、やっと参列者が見えてきた。私の方には、グレタおばさんにイリスさんとマリーさん。

ベルノルトさん側にはラルフさんを始め、ドレッセル騎士団長や副官のシュルツさん、第五副隊長のヘッセさんの姿も見えた。他にも騎士服姿の管理職っぽい人達がズラリと並んでいる。


祭壇には聖職者が立ち、その前にはあの格好いい正装の騎士服を着たベルノルトさんが私を待っていた。


「隊長さん、リコちゃんを頼むよ」

「亭主、心得た」


ヨハンおじさんからベルノルトさんへとエスコートが移った。ベルノルトさん、ちょっと緊張してる? 表情が強張っているみたい。


「ただいまより、ベルノルト・バウムとリコ・エトーの結婚式を始める」


聖職者さんの言葉で結婚式は始まった。この国の結婚式を見たことはないけれど、日本の教会式とそんなに変わりはなさそう。

聖典を朗読したり、お祈りをしたり、賛美歌を歌ったり……しかし、なんの予備知識もなく、どうにかなったのはここまでだった。


「では、お互いに誓いの言葉を」


フンフン、あれね。牧師さんの言葉に『はい、誓います』ってやつ。親戚のお姉さんの結婚式で見たことがあるわ。

って、あれ? なんでベルノルトさんは、私の手を取って(ひざまず)いたの!?


「私、ベルノルト・バウムは、騎士として夫として、生涯をかけてリコ・エトーを愛し、守り抜くことを誓います」


ウッソ、誓いの言葉ってオリジナルなの? その言葉はとても嬉しいけれども、それならそうと先に教えといてよ! この国の結婚式に出席したこともないのに、ぶっつけ本番でわかるわけがない!


「あ、ありがとうございます」


私がお礼を言うと、ベルノルトさんはスッと立ち上がった。お礼を言うので合ってる? 正解がわからないー! 


「新婦もどうぞ」

「は、はい」


どうしようどうしようどうしよう――もうやるしかない! 私はベルノルトさんの手を取った。


「私、リコ・エトウは、病める時も健やかなる時も、喜びの時も悲しみの時も、生涯ベルノルト・バウムさんを愛し、お互いに支え合うことを誓います」

「「「オオーー!」」」


なぜか感心されてる! 日本の教会式で定番の言葉を言ってみたんだけど、こちらでは一般的ではないのかな? やけに感動している人が多い。

でも、私も心からそう思っているから大丈夫よね?


「リコ……ありがとう」


こっちのクマさんもウルウルしてたーー! もう私はいっぱいいっぱいで、自分の結婚式なのに泣きどころを逃してしまった気がする。


「新郎新婦、女神様の御前で誓いの口づけを」


向かい合い、ベルノルトさんが私のベールをそっと上げた。そしてなぜか目を見開き固まっている。


「新郎。いくら新婦が美しいからと、誓いの口づけを忘れるのはどうかと思いますよ」


聖職者さんのお茶目な言葉に、参列者からは笑いがこぼれた。


「す、すまない。こんなに美しい人が俺の花嫁だなんて信じられなくて」

「もう、なにを言ってるんですか?」

「本当だ。リコ、愛してる」


ベルノルトさんは私を抱き寄せると、優しく口づけた。


「おふたりは女神様に認められ夫婦となりました。皆様も、拍手で祝福を」


参列者から大きな拍手が巻き起こる。私達は参列者席の方を向き、腕を組んでヴァージンロードを歩いた。

参列してくれた人達は皆、笑顔で『おめでとう』と送り出してくれた。


私達を祝福するように、鐘楼からカラーンカラーンと鐘の音が響いている。


入口までたどり着き、聖堂の扉が開かれると、目の前の階段には騎士の正装をした人達が、ズラリと向かい合わせで二列に並んでいた。


「えっ、なに?」


どこからか号令が掛かると、騎士達は一斉に腰の剣を抜き向かいの人と切っ先を合わせる。


「リコ、行こう」

「えっ? ここを通っていいんですか?」


剣でアーチを作ってその中を新郎新婦が通るのが、騎士団では恒例なんだって。ふわ〜なにこれ格好いい! 写真に撮りたい!


「リコ、みんなで写真を撮ろう」

「いいんですか?」

「写真屋も呼んでいる。ドレス姿のリコを撮っておきたいからな」

「じゃあ、この騎士さんのアーチの前がいいです!」

「第五はむさ苦しいのに……」


アーチを作ってくれてたのって、第五隊の皆さんだったのね。イリスさんやラルフさん、副隊長さん達も入って、アーチを作ってくれた。マリーさんやグレタおばさん達も私達の隣に並ぶ。

写真屋さんがカメラを構えると、ベルノルトさんはアーチの前で私をヒョイとお姫様抱っこして頬に口づける。


「「「フゥ〜〜!」」」

「ちょっ、みんなが見てますよ!」

「俺の花嫁を見せつけてるんだよ」


いつの間にか、大聖堂の前には市民の人集りができている。笑顔で手を振る人達や、『おめでとう』という祝福の声で溢れていた。


「なんでこんなに人が集まってるの!?」

「アタシの連載が今日で最終回だったからね。最後はこの大聖堂で結婚式の場面にしたのよ」

「マリーさん!? じゃあ街の人もみんな知ってたの?」

「そうなるわねぇ」


本当に私ひとりだけが知らなかったみたい。なんて盛大なドッキリだ。ベルノルトさんが眉を下げて申し訳なさそうに言った。


「リコ、すまない。陛下に口止めされていたから言えなかったんだ。ここでリコと結婚式を挙げたいと、討伐の褒美に願ったのは俺だがな。陛下も、純粋にリコを喜ばせたかったらしいぞ」

「そうだったんですね。びっくりしたけど、怒っているわけじゃないですよ。ベルノルトさん、こんなに素敵な結婚式にしてくれてありがとう」

「こちらこそ、俺の家族になってくれてありがとう」


ふわりと笑ったベルノルトさんを見て、この人と本当の家族になったんだと心が温かくなった。


「リコ、スマホでも写真を撮ろう。ほら、俺が預かっている」

「あぁ、それで持ってくるように言ったんですね。じゃあ大聖堂をバックに撮りましょう」


私達は顔を寄せ合い、大聖堂の前で写真を撮った。うん、今回はベルノルトさんも緊張していない自然な笑顔だ。スマホの画面には、幸せそうに笑う私達が映っていた。


「日本の家族にも見てもらいたかったな」


私は届くはずのない日本へのメールを、ふたりの写真と共に家族のグループメッセージへと送信した。


『いきなり異世界に飛ばされましたが、私は幸せです』




「そろそろパーティー会場へ移動するぞ! そこのおふたりさん、続きは向こうで存分にイチャついてくれ」

「なっ、イチャついていませんよ!」


ドレッセル団長さんの言葉に抗議をしたけれど、騎士達の笑い声と冷やかす声にかき消されてしまった。そのため、グループメッセージの既読の文字に気付くのは、随分経ってからになった……



◇◇◇◇


「ベルノルトさん! りんごの実が赤くなってる!」


朝、洗濯物を干しに裏庭へ出ると、いくつかりんごの実が赤く色付いているのに気付いた。


「ああ、本当だ。今年もりんごの前で写真を撮るか?」

「はい! スマホを取ってくるね」


私は二階で大事に仕舞ってあるスマホを取って戻り、りんごの木の前でベルノルトさんと並んだ。


「ほーらブルーノ、カメラを見てごらん」

「だあ!」


ベルノルトさんが、一歳になったばかりの息子ブルーノを抱っこしてあやし、家族の写真を撮った。


結婚してから二年、私達は時折写真を撮っては日本の家族のグループメッセージへと送っている。結婚式からしばらくして気付いたのだけれど、こちらから送ったメッセージに既読が付いていたのだ。だけど毎回届くわけでもないらしく、異世界へ来た経緯を説明したメッセージには既読が付かなかった。


「こちらとニホンとの波動が合うタイミングがあるんだろうな。リコがこちらに来た時みたいに」

「そうかもしれないね」


日本からメッセージが届くことはないけれど、きっと家族は私の無事を喜んでくれているはず。


「日本のおじいちゃんとおばあちゃん、それに伯父さん達に写真を送ろうね」

「ぶぶ〜〜!」


写真を撮り終わると、ブルーノは小さな手をりんごへと伸ばした。


「なんだブルーノ、りんごの方が気になるのか?」

「ふふっ、ヨハンおじいちゃんとグレタおばあちゃんのところに行って、りんごのケーキを焼いてもらおうか」

「んま!」

「やーね、この食いしん坊は誰に似ちゃったのかな」

「俺かな……」


焦げ茶色の髪と深い青の瞳を持った息子を眺め、ベルノルトさんは目尻下げる。

厳つい見た目のせいで若い女性から怖がられていた騎士隊長は、大きな魔物を倒したことで英雄となった。今ではどこへ行くにも()()を抱っこしているからか、子煩悩(こぼんのう)なクマ隊長として通っている。


「やっぱり、いいお父さんになりそうって予想は当たったね」

「ん? なんか言ったか?」

「ううん、なんでもなーい」

「なーい」

「ハハ! ブルーノ、リコの真似が上手くなったな」



かつてベルノルトさんが望んだように……小さなかわいいお家には、今日も家族の明るい笑い声が溢れている。


最後まで読んでくださって、ありがとうございました。これですべて完結しました。

リアクションを毎日してくれた方、ブクマや評価で応援してくださった方、お気に入りに入れてくださった方も、本当に本当にありがとうございます!

この作品を見つけてくださって、すごく嬉しかったです。

引き続き、応援よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
おもしろかったです。 まあ読みながら何度も 「くましっかりしろ!」 と、発破をかけてしまいましたが:笑) 可愛がられていたお嬢さんなので(確信) 日本のご家族に幸せだと伝わって良かった…! 可愛…
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