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いきなり異世界に飛ばされましたが、私は幸せです~奥手なクマ系騎士隊長の無自覚溺愛生活〜  作者: 麻咲 塔子


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14 カフェで女子会

今日は騎士団第五隊の女性騎士、イリスさんと近所のカフェに来ている。こちらの世界に来てから、色々とお世話になっているうちに仲良くなったのだ。知り合いが少ない私にとって、イリスさんは貴重な女友達だ。


「イリスさんって、いくつなんですか?」

「私? 二十五歳だよ」

「えっ、年下?」

「そうそう、だからそんな(かしこ)まった喋り方をしなくてもいいのに」


てっきり年上のお姉さまかと思っていたわ。仕事中はキリッとして格好良くて、私服になるとお化粧もして大人っぽくて色っぽい。私もこんな女性になりたかったなー。凹凸がないから無理か、ハハ。



「それで、こんなところに呼び出したってことは、何か相談があるんじゃない?」

「なんでそれを!」

「わかるわよ〜リコさんの顔に書いてある」


やだ、私ってそんなにわかりやすいのかな? 自分じゃ気付かなかったわ。


「遠慮しないで。女同士の方が話しやすいこともあるでしょ?」

「はい、じゃあ遠慮なく……最近、ベルノルトさんの様子がおかしくて」

「隊長が? いつものことじゃない?」


いつもなんだ? ……いや、やっぱり最初の頃とは違う気がする。


「なんていうか、甘やかしすぎ? みたいな」

「例えばどんな感じで?」

「そうだなぁ、ドライヤーで髪を乾かしてくれたりとか。部屋を移動する時にお姫様抱っこをしたりとか、あとはリビングにいる時はずっとソファで抱っこされています」

「なにやってんだあの人……」

「やっぱり変だよね? そんなことをするタイプじゃない気がするんだけど」

「う〜ん、ちょっと暴走してるな」

「ボウソウ?」

「あ、いや、こっちの話。それで、リコさんは嫌なの? やめてほしい?」


嫌かと言われると嫌じゃない。むしろ居心地はいいんだよね。


「嫌じゃないんだけど……なんだか寂しい、かな」

「寂しいの? それだけくっついてるのに?」

「たぶん、私のことは子供かペットだと思っているんじゃないかな」

「そんな事はないでしょ」

「だって、抱っこをして食べ物を口に入れてくるんだよ? そんな事をする相手は、子供かペットでしょ」

「あーー」


あれ、イリスさんが頭を抱えてしまったわ。やっぱり変な相談をして悪かったな。


「リコさん、その、もうちょっと待ってくれる? たぶん隊長もそんなつもりはないと思うの」

「そうかな……この前私が熱を出して以来、過保護になっちゃって。私、見ての通り凹凸もなくて色気ゼロだし、大人の女性だとは思われていないみたいなの」


イリスさんの胸部を見て更に凹んだ。私もあれくらいあれば、大人扱いしてもらえたのに。


「リコさん、体型は関係ないわ。男はね、なんだかんだ言っても好きになった人が好きなタイプなのよ」

「そういうものなの? 私、あまり男女交際の経験がなくてよくわからないから」

「そういうもんです! 第五の男どもが言ってたし。だから自信を持って、ね?」

「イリスさんがそう言うなら……こんな私でも好きになってくれる人は現れるのかな」

「絶対に現れるわ! むしろもういるかも」

「あはは、ありがとうございます。ちょっと元気が出てきた」


イリスさんのおかげで、少し心が軽くなった気がする。やっぱり女子会って楽しいな。私達はケーキを食べコーヒーを飲みながら、他愛もない話で盛り上がった。



◇◇◇◇


「リコ、片付けが終わったならおいで」


夕食の後、ベルノルトさんがソファに座り自分の膝の上をトントンと叩く。そこに座れという意味だ。むん、私だって大人の女性なんだぞ。昨日までは流されて座っていたけれど、今日は絶対に座るもんか!


「ここで大丈夫です」


ベルノルトさんから人ひとり分開けてソファに座った。


「リコ……」


あれ? ベルノルトさんがショックを受けたような顔をしているわ。漫画だったら頭の上に『ガーン』って描いてありそう。子供が親離れする時って、こんな感じなのかな。でも、ここは流されてはいけない。


「どうしました?」

「リコ……」


もー! またしおしおのクマになっている。別にベルノルトさんを傷付けたいわけじゃないのに。


「そんな泣きそうな顔しないの! ほら、おいで」


私はソファの上にひざ立ちになると、ベルノルトさんの頭を胸に抱えた。こうなったら、私が大人だとわかってもらうために、逆にベルノルトさんを子供扱いしてやろう。凹凸はどうにもならないけどね。


髪をよしよしするように、()いてあげた。硬そうだと思っていた茶色の髪は、触ってみると案外柔らかかった。ふふっ、モフモフのクマちゃんを抱きしめているみたいね。

ベルノルトさんは大人しくされるがままになっている。こんなに大きな男の人だけど、なんだかかわいいな。子供扱い、くせになりそう……


ベルノルトさんの頭に頬を載せて、しばらくよしよしを続けた。ゆっくりとベルノルトさんの手が私の腰に巻きつけられる。ん? なんか胸の辺りで息が……くすぐったい!


「スンスン」

「ひゃっ、何してるんですか!」

「だってリコがいい匂いだから。ずっと嗅いでいたい――」

「ひぃ〜駄目です! 嗅ぐのは禁止!」

「リコぉ」

「そんなかわいい顔で言っても駄目です! 今日はもう終わり!」

「そんな……」


また頭の上にガーンという文字が見えた気がしたけれど、匂いは勘弁してほしい。今日はイリスさんと外に出掛けたから、汗だってかいているのに!


「もうお風呂に入ります! ベルノルトさんはそこで大人しくしていてください」

「俺も――」

「待て!」

「うっ、」


ベルノルトさんは、ソファから立ち上がろうとした姿勢で止まった。クマにも待てって効くの? その隙に私はそそくさとお風呂場に逃げ込んだ。


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