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日食のグーグードン

作者: 清水進ノ介

日食のグーグードン


 ずっと昔のこと、グーグードンという名前の、巨大なナニカがいた。一足で海を越え、頭は雲の上より高い、巨大なナニカだ。グーグードンはとても貪欲で、どれだけものを食べても満腹になれず、いつもお腹を空かせていた。ウシもブタも、クジラさえも、グーグードンにとっては小さすぎた。山を一つ食べ尽くしても、それでも足りずに、世界を食べ続けた。その腹の音は地の果てまで響き、その音を聞いた人間達は、ナニカに「グーグードン」と名前をつけ、畏れるようになったのだ。


 グーグードンは、どんなものでも、ひたすら食べた。グーグードンが通った後にはなにも残らず、砂漠になった。人間達は、住む場所や食べ物を、グーグードンに全て取られてしまい、困り果てていた。するとある日、グーグードンを止める方法を思いついたという、勇気ある一人の若者が現れた。若者はグーグードンの脚にしがみつき、十日をかけて背を上り、五日をかけて耳の近くまで来ると、大声でこう叫んだ。


「やい、グーグードンよ。お前はそんなに体が大きいのに、この星にいるからよくないのだ。天を見上げてみろ、そんなに腹が空くのなら、宇宙へと飛び出し、あの太陽を食べてやれ」


 グーグードンはゆっくりと太陽を見上げると、地響きを起こしながら、宇宙へと跳躍した。若者は大急ぎで海へと飛び降り、泳いで故郷へと帰り、これでもう大丈夫だと皆に話した。その時、さっと辺りが暗くなり、人間達は驚き空を見上げてみると、太陽が欠け始めた。グーグードンが、太陽を食べ始めたのだ。太陽は少しずつ小さくなっていき、ついに光は消え、世界は真っ暗になってしまった。人間達が不安と恐怖に怯える中、若者は落ち着き払い、皆に大丈夫だから見ていなさいと言った。


「太陽は形の無い、光の球だ。形が無いのだから、食べられたって、グーグードンの体から抜け出して、すぐに元通りになるさ」


 グーグードンは太陽の光でお腹を一杯にすると、満足して眠りについた。太陽はその隙に、グーグードンのお腹の中から抜け出し、再び光が世界を照らし始めた。やがて太陽は元通りのまん丸となり、人間達は安心して暮らせるようになった。しかし今でもグーグードンは、時折目を覚ましては、太陽を食べてしまう。その度に世界は暗くなり、しかしまた、明るさを取り戻すのだ。


おわり

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