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 預かった名刺の画像を小塚さんに送ったら、繋がるきっかけが嬉しい、落ち着き次第かならず連絡すると返してくださった。ありがとうの追伸にも、お節介にならずにすんだと胸を撫で下ろせた。

 自分もガンバるぞと思っていたら、地元に寒気が降りてきた。


 許されるなら冬ごもりをと願う穏やかな日曜日。グダグダと布団にくるまっていると、傍らの携帯に起こされる。

 おひさまは既に空高く、メッセージ着信はサクトから。


『引越しの片付け済んだ』


 毛布のなかで『おつかれさまー』と返し、重い瞼を再び閉じる。まどろみながら(入寮出来てよかったネ)と脳内で感想を述べていると、またたく間に次の着信。


『早いうちに遊びに来なよ』


 途端に目が開き、頭のなかをグルグル回す。連動してお腹が鳴る。もういい加減に起きないと。


 寮のある街には有名な神社がある。門前仲町の食べ歩きは観光名所だ。お土産おでんの練り物本舗も出店していて、

(えーと、コレはココで乗っかっといた方が、ヨイショ)

 どうして掛け声がいるんだろ。スケジュールを思い出しながら、


『じゃあ今度の土曜……


 モタモタと指を動かしつつ、短文にまとう緊張感にマイ小心が縮こまる。経路検索によると、車より電車が早くて便利。しかも途中の駅までは定期区間で、会社の最寄駅からだとちょうど一時間。


 ……定期がきくから電車かな』

『りょーかい。なら駅まで迎えにいく』


 レスポンス早いなあ。ヨロシクと唄う鳥スタンプを返して何故か溜息、さらに謎の使命感。

 それでも連絡が来てよかった。あの後は多忙にかこつけて、自分からは動けていなかった。けれどもこのまま放っておくのは、良くないとは思っていた。

 それにしても眠い。冷え込むとなんてツラいんだろう。もっとうーんと散々と寝たい。向き合おうと思っていたのに気持ちも全然まとまらなくて、これはもう全部、寒気のせいだ。

 再び大きな溜息が出て、ついでに深呼吸もして、ようよう布団から這い出した。




 そもそも会社の最寄り駅から先に向かった事が滅多に無い。

 約束の土曜、早朝の列車内は空いていたけれど、殆どが出勤組のようだった。停車のたびに乗客が増え始め、大きな駅でドッと降りる。

 会社の最寄り駅では習慣で降りそうになって、慌てて座り直して、ドアが閉まって発車して……やっと休日の概念が降りてくる。

 でも気持ちが休日ぽくなくて困った。気も進まなくて弱った。伴う緊張感に背筋を伸ばしたり。あらためて流れる景色を眺めたり。


 線路沿いにはしばらく工業地帯が続く。遠くには古い野球場、大きめの商業施設。コンクリート物件ひしめく産業街から住宅街にかわり、一級河川をひとつ越えると、今度はのどかな田園地帯。

 目に優しくうつる作物の緑。収穫後の土の薄茶。ポツポツと佇むビニールハウス。自分の街より海抜が低い分、山並みがなだらかで空も広い。

 県境と川と街を幾つか越えただけなのに、郷愁を誘うのが不思議。そういえば姉も、進学先から帰省する度に、よその空気を纏っていた。


 最寄り駅を出て三十分したところで、電車がふたつめの一級河川を渡る。

 秋色の草木に包まれた堤防の先に田畑、そのまた向こうに地方の街。

 なんだか良い感じ。

 どんな街だろ。

 吸い寄せられるように途中下車してしまった。とある武将で有名な、その地域の主要駅だ。



 改札口の真正面には、立派な観光マップが掲げてあった。

 東西に綺麗な通路が伸びて、東口に大きなロータリーがある。城下町行きのバスやタクシー乗り場、広い駐輪場もある。武将の推し活らしい同世代女子の二人組が、明るく笑いながら歩いていく。


 西口はどんなだろう? 赴くままに向かってみると、こちらはゆるゆるとした住宅街。控えめなロータリー沿いに、塾の入ったテナントビルと小さなたこ焼き屋、昔ながらの喫茶店。

 直したばかりらしい駐輪場。横には大きな街灯が並ぶ遊歩道。手押し車を押す年輩女性につられて歩いてみると、賃貸物件や分譲マンションがそびえる一画があった。駅近をうたっているらしい。

 生活道路を挟んだ向かいには素敵な日本家屋、と近づけば実はお寺だったり、公園らしい樹木に引き寄せられれば、地域の方に大切にされている古い神社だったり。何十年前に現役だったであろう、火の見櫓も立っている。


 雲ひとつない良い天気。街の動きも土曜らしい、穏やかな空気。


 ウロウロ歩いていたら、携帯にメッセージが入っていた。

(あ、いけない、)

 サクトだった。今朝は家を出る前に連絡をして、近くまで行ったらもう一度メッセージを入れる約束をしていた。


『今ってどこよ?』


 問われて気付く。とうにサクトの街に着いていてもいい時刻だ。

 慌てて駅の名前を打って返すと、


『なんでソコに? 具合でも悪くなったの?』

 そうだよね、そう聞くよね。


『なんとなく』

『なんでなんとなくよ』


 一拍おいて素直に打つ。

『気配が良さげだったから、つい降りたくなって』

『今日車だからそっち行くわ。まってて』


 まってて。と平仮名で返すあたりに、戸惑いと怒りのニオイがする。

 思わず深呼吸。

 ホントにね、なんでだろうね。サクトの街まで行く筈だったのにね。

 こんな風に振り回しちゃってね、どうしてここで降りちゃったんだろうね。







 今週のはじめ、市内の設計事務所から母宛に、立派な封書が届いていた。

 中身は家の設計図だ。一階部分のリフォーム案。

「病気も治ったことだし、今後はおばあちゃん達の介護も有るかもだし、今のうちに自分の終活をしようと思ったの」

 父の友達の設計士さんに見積もりを頼んだそうだ。七周忌に大きなお花を持ってお参りに来てくれたひとだ。

「改築が得意だって言ってらしたのを入院中に思い出してね」


 見ると、北西にある玄関を東側に持ってくる案だった。母の使う和室部分を三分の一ほど使って玄関に。削れた和室部分は、リビングと同じ床板で全面フローリングに。

「お母さんの部屋が狭くなるけど、仕切りのおかげで寝室になるし」

 更に現在の玄関部分は、雨避け部分まで増築して細長いサンルームに。結果、姉が気にしていた水回り動線が一直線。家事が全て一階でカタがつくので、今よりグッと住みやすそう。


「北西のサンルームね、西日があたるから洗濯物はバッチリ乾くんだって」

 何より家相が良くなるそうだ。今の間取りは北西の玄関部分が欠けていて、家の主人に障りが出るらしい。

「今回その欠けを無くすから家庭円満になるんだって。家相なんて迷信だし、お母さんも絶対信じないけど、それでももしお父さんが生きてるうちに改築してたらと思うと、やっぱり悔しかったりしてね」

 あの時は毎日玄関の掃除をして、南天の鉢植えも置いたのに。

 今更仕方ないけどね。ぼやく母の心の奥はわからない。寂しさは消えないものだろうし、姉も自分も精一杯、やってきたつもりなのだけど。


「だからこれを機にもっと縁起を担ごうと思って」

「東玄関になると門からのアプローチがあるね。またクレストも植える?」

「それもいいね」「施工はいつから?」「それなんだけど」

 母に見つめられる。

「お母さんのことは気にしないで、ヒサキも巣立っていいよ。若い今のうちにやってみたいこと、何でもしてみると良いよ」

 小塚さんと同じことを言った。

「わたし、追い出される?」

 役に立たなかった?

「そうじゃない、そういう訳じゃないよ。ずっと思っていたんだよ。お葬式の後、お父さんが使ってた布団や色々、ヒサキ、お姉ちゃんと一緒に片付けてくれたでしょ。助かったよ。あの時のお母さん、お父さんのものを触るなんて、とても出来なかったから」


 父の葬儀から七日ごとの法要で手一杯だった春。憔悴し切った母を横目に、姉妹で父の遺品整理を、特に闘病生活の品を、少しずつ片付けていた時の話だ。

 当時の姉は隣県で就職して三年目。大変な労力だったと今更ながら思う。

 それでも帰省する度、作業に入る前に、姉は私にいつも言った。

「今おとうさんは単身赴任中。お父さんが向こうで使うものを選んで荷作りするよ」

 自身にも言い聞かせていたと思う。

 流れで家じゅうの大掃除を。家事に終わりは無いので、悲しいことを考えない様に、無心に身体を動かした。

 聡い姉は、母と過ごす妹への気配りも忘れなかった。

「私は向こうに戻れば気持ちの切り替えが出来るから」

 大学生になったんだから身綺麗に、気晴らしもするんだよ。帰り際にはいつもお小遣いをくれた。

 結婚の時も「立つ鳥跡を濁さず」と、自室に残っていた私物を更に片付け、想い出の品をポリケースひとつにしてしまった。

 姉妹お揃いの木の椅子だけは「記念だから」と置いてある。


「お姉ちゃんもヒサキも、本当に良く動いてくれたね。これ以上甘えたら、どんどん依存してしまう」

 そんなことないよ。役に立ってたなら良かったよ。

「大学も就活も自宅から通える所しか受けなかったでしょう。早く解放しなくちゃって、ずっと思ってたよ」

「大学は……就活だって……だって、お姉ちゃんは優秀だったけど、わたしが入れる所なんて」

「家が騒がしかったから気を使ってたよね」

 返事に困ると母は「受けられる所は沢山あったのに」と続けて言った。

「もう充分やってくれてるよ。お姉ちゃんと自分を比べる必要も無いよ。ひとは皆違うし、家族でも皆それぞれなんだから」


「お金も心配しないで。元々この家の住宅ローンは団体信用生命保険だったし、リフォームだってこの見積もりなら貯金も大きく崩さずに済むの。お母さんのことは大丈夫」

 二階は綺麗だからこのまま残すね、でも決してヒサキを追い出す訳じゃないんだよ。

「どんなに気をつけていても、死ぬときにはどうしても周りに迷惑をかけてしまう。お母さんだってそう。だからヒサキも」

 動けるうちが花と口説かれた。また小塚さんと重なった。

「でもわたし、やりたいことって、ホントに、別に無いんだ」

「そっか。でもまあ、ウォームアップ期間を味わうといいよ。ヒサキなりに気楽にね」

 小塚さんも母も、やたら背中を押すのは何故だろう。


 ちまちま貯めた銀行口座の数字。財経を足せばやっと大台に乗りそうな、でも世間的に見れば微々たる金額。ローン済みの軽自動車を手離せば少し増えるけど、それでも可愛らしい数字。

 急に好きにしろと言われても、今の仕事は手放せない。パン屋のお姉さんみたいに、就きたい職業も別にない。

 母たちの主張も、わからなくない。友人達の結婚ラッシュや別の職種への挑戦を横目に、焦らない訳でもない。

 根っからのナマケモノだ。無理に変わろうと思うほどの気力がない。






 サクトが来るまで、駅前にある喫茶店で時間を潰すことにする。

 日差しは暑いからと注文したクリームソーダには、バニラアイスが大盛りだった。アイスとグリーンのソーダ水の境には、赤い桜ん坊が乗っていた。溶けそうなアイスをすくっていたら、桜ん坊が底に逃げた。


 本当にサクトに好かれているのなら、それは喜ばしいことだけれど。

 いつだったか、サクトに言われた台詞。

『ヒサキはヒサキで、それでいいんよ』

 やっぱり何処がいいんだろう? 本人は言ったことすら忘れていそうだけど。多分忘れてるだろうけど。


 本当の自分はたいそうな怖がりで面倒臭がりで、自ら取りに行くのが得意じゃなくて。気楽な話ならともかく、重要なコトほど躊躇して。

 親の欲目で上げてくれた母には悪いけど、自分はぬるま湯ライフが大好きだ。華やかな上流思考への劣等感は、本能が向いていないと叫ぶから。家の片付けだって、姉の音頭があったから。


 ぼんやりし過ぎたせいでアイスが溶けてソーダ水が濁り、桜ん坊の救出が困難に。同時にサクトからのメッセージに気づいて窓の外を見ると、こちらに向かう人影が。

 目の前のスイーツを急いで平らげる。お会計を済ませて外に出る。青空の下でサクトに会う。

「御免、遅くなった」

「わたしこそ途中下車しちゃって。道は混んでた?」

「そうでもないけど、生活道路が狭くて」「車は?」「東口の駐車場に」

 見ると顔色が良くない。

「運転疲れたんじゃないの。お店に入り直して休もうか」

 覗き込むと慌てたように「いやいい、全然大丈夫」と手のひらを横にぶんぶん振る。けれど、どうにも心配。困惑していると、

「今日はこれからフラれるのかと思って、憂鬱になってただけ」

 吐露されて益々混乱した。

「わたし別に、サクトのこと、嫌ってなんかないよ」

「でも途中下車したじゃんよ。それって、来たくなかったからだと思うじゃんよ」

 口を尖らせて言われて喧嘩に発展しそうになって、これも変化のうちだろうか。




 近隣を歩くことにする。

 濃い青の初冬の空が作る影は柔らかく、サクトの表情の芳しくなさが微妙な対比。流れ的に自分が気を使うべきなのかと案じたけれど、ヤバい。機嫌を取るのが面倒くさい。

 苦虫を噛み潰していると、

「あの、引導渡されるんならマジで早めにお願いします」

 サクトがサクッと折れてきた。

 引導。引導って何さ。

「重ねて言うけど、わたし、サクトをキライとかフルとか、そういう感覚は持ってないよ」

「じゃあ何で途中で降りちゃったの」

 さっきのメッセージの通りだよ。この街が目にとまったから。言おうとして、やっぱり直球を投げようと思い直す。

「母や先輩に、自分のしたいことがあったらするようにって、最近立て続けに助言されて、ずっと困惑してたの。わたし、何がしたいんだろう……って。こんな話をサクトにぶつけるのも変だけど」

 背の高いヒトが膝から崩れた。

「じゃあ、オレ、いま首の皮いちまい?」

「そう言う訳では」「二枚あるかな」

「それはどうかな」「いやもう駄目かな」

「こっちこそ聞きたいよ。サクトはわたしの何がいいのか謎」

「初めて会った時から関心してたけど。何時でも何処でも淡々と粛々とこなすとこ」

 間髪なかった。

 高二の教室。あのカオスなクラスでマイペースを貫いて過ごしていた様子が非常に宜しい、のだそうだ。


 そんな時分の話、日々で必死だったから覚えてない。でも小塚さんも言ってた。毎日必死だったから覚えてないって。何なら今もだって。だったら自分もあの時が、今が転換期かな。気付いていないだけで、自分は変わっているのかな。




 新しい流れに乗る勇気は出るだろうか。

 黙り込む自分を覗き込んでいたサクトはむっくりと立ち上がると、先に見える集合住宅群を、おもむろに指差した。

「じゃあ提案。オレらシェアハウスしよ。この街に興味が湧いたんなら、あの辺りの物件どうよ」

 今度は自分が固まった。

「待って。いきなりなんで。なんでそうなるの?」

「何がしたいかわからないなら、動けば何か見えるかもよ」

「でもどうして、なんでシェアハウス」

「初期投資は持つから。ついでにそこでオレの事も見極めてもらって良いから」

 サクトはそっぽを向いて歩き出す。


「待ってよ、だって、サクト、寮に入ったばっかりじゃん」

「それはどうにでもなるから。女性がひとり暮らしするよりヤロウが居た方が安全ぽいし、前提なら親御さんだって安心する」「前提!」

 マズイぞこれは押し切られるぞ。

「わたし、まだ家を出るって決めた訳じゃないよ」

「でもそういう意味じゃねえの? お母さんや先輩の言い方って」

「そんな、そうなの?」

「お母さんも第二の人生を歩みたいんじゃないの? ウチの母なんて『今が子育てと介護の狭間だー』って、めっちゃ満喫してるぞ」

 はたと気付く。そういえばあの建築士さん、割とダンディだった。確かバツイチだった?


 いやいや、親のそういうのって邪智したくない。

 でも母にはこれから人生を楽しんでほしい。

「……でもシェアとか、急に決められないよ」

「ヒサキがそういう性格なのも知ってる。でもオレは必要としている。今後はヒサキに必要とされる、そういう間柄になりたい」

 唐突に高校の同級生達の名前を、何人か言い出す。

「あの時からヒサキは鈍い、かなり押さないと気付かれないぞってアイツらに言われてたけど、本当だ。ココまで延長になるとは思わなかった」

 携帯で検索も始めると、

「そこの賃貸、今だと2DKが空いてるって。一階と五階に空室アリ、取り扱い不動産は、東口から歩いて五分」

 オレは運がいいから、きっと掘り出し物が見つかるよとも言い切った。




 待って待って待って。このまま押し切られるのってどうなのかな。

 コンパスの長いサクトの後を必死で追いかけながら、全く違う話題を振る。

「あのさ、そういえば、城前公園にあったパン屋さん、復活するかもって聞いた!」

「カレーパンの? すげえ楽しみだな」

 思うほど響かなかったらしく、話題が終わってしまった。西口の階段をズンズン上がる。

 待って待って待って。このまま進んでもいいのかな。

「そういえばサクト、栗の渋皮煮って好き?」

「おお、秋のご馳走じゃんよ」

 あっ、足が止まった。いにしえの時代劇スキーの血でも騒いだかな。

「先輩が立派な栗を、沢山送ってくれたんだ。有機農法なんだって」


 小塚さんご夫妻は、身内の有機農家さんと養子縁組をしたのだった。お子さんのいない伯父さん夫妻が後継者を探している所に、丁寧に守られてきた桃栗梨、柿畑の素晴らしさに惚れ込んだ小塚さんのご主人がマッチして、そういうことになったとか。


「ゆうべ届いたから今キッチンで水に浸けてるの。サクトの分も炊いとくよ」

 小塚さんの新しい暮らしの地は、ここから北西に二十分。

 そしてこの街は、私の会社とサクトの職場のちょうど真ん中。


 二人で西口階段を登り切る。改札前で人混みにぶつかったので、流れが途切れるのをしばし待つ。

「何故そこで固まるかな」

 ひとの流れに見惚れて佇み過ぎていたら、先に急いでいたサクトが慌ててUターンをしてきた。

「……やっぱり今日はこのまま帰りたくなってきた」「は」

「急に渋皮煮が炊きたくなって」

「待って。冗談でも今、そういうコト言うのは辞めてください。こう見えてもオレ既に、結構ダメージ喰らってる」

 サクトの表情がみるみる変わる。今日は朝から青くなったり赤くなったり。身振り手振りもジタバタかしましい。ひとつひとつが新鮮で、サクトって、こんな表情するんだ。今まで気付かなかったし、全然知らなかった。

 この駅から通勤するわたしの姿が目に浮かぶ。




 おしまい


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