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寝る子は起こすな 寝る子は育つ  作者: 技兎
一年目
3/18

身を削る大人


 行動を起こすには前提が必要。

 目的や目標は継続の活力になる。

 今回の場合は土台が必要となる。


 『専門の研究機関』『発病した患者』

 『膨大な臨床実験』『新薬の被験者』

 『政府からの許可』『正確な検証結果』

 『莫大な資金源』『惜しまない協力者』


 最低限、これらが必要となる。

 画期的な薬を偶然にも開発出来たとして、それをどう広め増やしていくのか。起承転結でいう起結がこの大前提なのである。


「……旧友の呼びかけに馳せ参じてみれば。目的は私ではなく、私の後ろにある巨大金庫と言うわけですか」



 【出雲(イズモ) 黒兎(クロト)】 国会議員

 性別:男 年齢:57歳 身長:159cm

 歩民党(ほみんとう)に所属する議員。

 世間的評判と知名度は中の下。ネット上での評判は中の上。派手さは無いが実直さな愛国者としてそこそこの評価を得ていた。


 最近の悩みは増え続ける白髪と抜け毛。

 一日中、疲労感が絶えず付きまとう。


 しかしそれも過去の話。

 今は世間もネットも評価は下の上。

 彼が何かをしたわけでは無い。

 むしろ評価はまだマシな部類である。夢幻病の対策や補助金など諸々が重なり、名の売れている議員は一律に評価が下の下にまで落ちている。



「変な駆け引きはナッシング。俺は我が子に目覚めてほしいだけだ。また家族一緒に、蜂蜜たっぷりのトーストとココアを飲みながら他愛もない会話をしたいだけ。その『ついで』に世界中の子供も救ってやんよ。その為にはまず政府(おまえ)の力を貸して欲しい」


 旧友の案内を受ける出雲。

 突拍子の無さと場所の胡散臭さが鼻に付くが、

 親交深い友人の頼みで且つ珍しく時間の隙間があった。


 場所は港近くの倉庫街。

 両開きの鉄扉を開いた先にはがらんどうの景色。

 持て余した広い空間は音をよく反響させる。

 奥の床にはカーペットが雑多に撒かれている。

 それを掻き分けると地下へと続く扉がお目見えする。

 鍵を開けると冷ややかな風が下から吹いてくる。


 まるで子供の頃に夢見た秘密基地。

 ヒーロー達の隠れ家の様だった。


「……貴方は昔から変わっていない。知りたい事、やりたい事を何よりも最優先に考える。他の一切は勘定に入れていない。その度に私は口をすっぱく言ったはずです、振り回される身にもなって欲しいと。分かってますか? 多忙な時期に私が貴方の元を訪れた理由が」


「唯一無二の親友だからだろ」


「全くもって違います。貴方が『(ドリーム)の研究者』だからです。正確には脳の研究をしている脳科学者。そんな君から『夢幻病の治療法に関して 希望を見つけた』何て送られれば、職務を放り出して向かうのが真の愛国者というもの」



 【三寸木(ミスギ) (ユメ)】 脳科学者

 性別:男 年齢:56歳 身長:168cm

 人間の脳の仕組みを調べる日本の研究チームに所属。

 研究チームはいくつもにも分かれているが、

 三寸木は睡眠時に観る夢を主な研究対象としている。


 何よりも睡眠の重要性を訴える。

 そしてそれを体現する様によく眠る。

 世間では薬頼りの睡眠が流行する中、彼だけは普通に眠れている。寝不足クマ知らずが、ちょっとした自慢だった。


 知りたがりで努力家な飽き性。

 興味を持ち、入れ込み、途中で放棄する。

 これを何度も繰り返す人生を送っている。

 (ドリーム)の研究だけは生涯一貫として入れ込んでいる。



 二人の関係性は過去の親友。

 連絡を取り合わなくなり数十年が経つ。

 時折思い出したかの様に、ネットニュースで互いの名前を検索する事がある。


 二人が邂逅した理由。

 それは三寸木の一人娘が夢幻病を発病したからである。

 出雲の子供は発病ラインを超えていて難を逃れた。


「今は実質無職だよ。元愛しの職場で俺の意見は馬耳東風に過ぎ去られたからな。秋の思い出だアレは。夢幻病発病してから一ヶ月で職場に休暇届を出した。そっから休暇届、休暇届……ついには無断欠勤だ! そっから独学で約一年、人間死ぬ気でやれば何とかなるものだなあッハっはっは」


「……一応聞くが正常(まとも)だよな?」


 三寸木の目の下には大きなクマ。

 逆さ富士の様にくっきりと真っ黒び出来上がっている。

 そして充血した眼はさながら太陽のよう。


「その判断もしてもらいたい。主観的(おれ)ではなく客観的(おまえ)に。俺の夢をこんな形でお前に見せるとはな。だがそんな事は後回しだ。見極めてくれ、夢幻病に立ち向かえるのか否かを!」


 長い通路の終わりを告げる扉。

 扉の先は部屋は1R(ルーム)程の広さ。

 中央にある手術台を取り囲む様に器材が並べられている。そのどれも素人目には用途不明である。


「これが昔よく話してくれていた」


「そう【夢の鍵】だ。これを応用して『子供達を夢の中から救い出す』!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 夢の鍵…一体どんなものなのでしょう…!すごく気になります。
2022/08/04 23:46 退会済み
管理
[良い点] 謎の病気に立ち向かう二人の活躍に期待が膨らみます。 [一言] 文脈の繋がりが読んでいてすごく勉強になりました。 次話、更新されたらまた読みに伺わせて頂きます。
2022/08/01 12:55 退会済み
管理
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