報告書part.1
報告書 20〇〇年〇月〇日12時34分
監督責任者:三寸木 夢 立会人:出雲 黒兎
被験者:三寸木 真
使用AI:雪解 ボタンver.1
三寸木真を被験者とする実験を開始。
今回の実験は監督者三寸木夢の独断で開始。
独断に至った理由は我慢の限界。
旧友である出雲黒兎に説明をしてから一ヶ月が経過。準備万全の状態で待機する事に痺れを切らしたことが原因。
雪解ボタンの自己判断意より、当時職務の最中であった出雲黒兎が途中から合流。以後、今回の実験終了まで立会人として参加する。
実験終了時、雪解ボタンの自我データ破損。
原因は滞在時間の長期化に伴う精神汚染。
雪解ボタンver.1を廃棄。今後の課題として改良予定。
【ダイヴ】
雪解ボタンを用いて夢に侵入、又は侵入していたした時間。今回のダイヴ時間は約八分。
その間、雪解側からサルベージ要求の痕跡ナシ
しかし後に回収された記録ディスクには、雪解ボタンがサルベージを度々要求していたことが判明。原因不明。
【記録ディスク】
雪解ボタンの視界を通して録画された夢の映像。
計測可能時間はディスク容量に依存。
今回は八時間以上録画可能ディスクを使用。
ディスク内には1297回の暗転が記録されており、ディスク容量の限度一杯まで録画されていた。何分時点で容量に達したか不明、またその後どれだけの時間が経ったかも不明。
録画されていた夢と三寸木真の関連性はナシ。
その後の調べで350回目の夢のシーンの際に登場したカートゥーンのキャラクターは、実際の映画キャラだと判明。日本国内でもレンタルされていた。
【精神体】
夢の中にいる自分という存在。
今回の実験中、三寸木真の精神体と接触できず。
本来精神体は夢の中心に存在している。
しかし今回は介入した雪解ボタンが中心となって夢が進行。原因不明、今回の事例を参考に精神体を探す機能を追加予定。
今後の課題
①雪解ボタンの記録判断基準の抜本的見直し
②雪解ボタン追加機能を付与
②サルベージ手段の見直し
③夢幻病患者の情報収集
④夢の鍵の改良
追記
夢とは本来、その人の記憶から構成されるもの。
別の記憶同士が混成することはあるが、
その人が知らない記憶を夢に観ることはあり得ない。
しかし三寸木真の夢はそのルールから外れていた。
あるいはその可能性がある。
人間の脳が普段と視界から取り込んでいる映像を、どれだけ鮮明に記憶しているかは現代科学でも計り知れない。
テレビに一瞬映った学校内風景。
学芸会や友達の家で見たカートゥーン映画。
教科書の挿絵として出てきた脱衣所。
それが夢に反映されただけかもしれない。
しかし可能性として考慮する必要はあり。
夢幻病患者が観ている夢は、
就寝者本人が観ている夢ではない可能性。
つまり別の誰かの夢である可能性を。




