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寝る子は起こすな 寝る子は育つ  作者: 技兎
一年目
14/18

1


 雪解ボタン視点と三人称視点で切り替わります。

 カッコの種類は段落開けで判断を!


 今、私は学生で窓際の席に座っている。

 窓の外は暗黒で何も視認不可。

 周りにはクラスメイトと思しき28名。

 教室の種類はコンピュータ室だと推察。

 後ろが分厚い旧式パソコンが間の前にある。

 生徒達は談笑をしているが内容は不明。


 女子生徒とは黒のセーラー服に黄色いリボン。

 男子生徒も同じ黒い制服を着ている。

 マスター三寸木の制服では無い。


 コンピュータ室の構造は階段状。

 上へ上へと伸びているが部屋が狭く圧迫感あり。

 類似性及び現実性も無し。


 御息女であられる真様も無し。

 私は三寸木真様の夢の中に入った筈。

 しかし夢の主人は見当たらず、この景色を真様が見たという情報は私のデータには見当たらない。


 不可解な事象が発生、サルベージを要きゅ



『やあ皆、おはようございます』


 教室の扉を開けて入ってきた二人の男性。

 一人は笑顔が眩しい和装で糸目の大学生。

 もう一人は裸ワイシャツと短ズボンを履いた、眼鏡をかけた太った男。


『今日ここで講演会をさせてもらえる事を嬉しく思うよ』


 学校行事で毎年行われる講演会。

 その年その年で行われる内容は違う。

 今回は神仏に関する講演。

 若者の宗教離れを危惧したとある教員が発案。


『僕は付喪神社(つくもじんじゃ)から来た──です。今日は皆さんの付喪神を呼び出す為に参上した次第です』



「……確定、三寸木真の夢では無い。共有されたデータに類似するものが見当たら」



『ふざけんじゃねえよ! 何が付喪神を呼び出すだ。急に来てオカルトめいたこと言ってんじゃねえよ』


 一番後ろの席に座る不良の男子生徒が声を上げる。

 目上への敬意、初対面の相手に対する礼儀など知ったことでは無いと机に足を置く。


『オカルトではありません。れっきとした真面目な話です。貴方達は運がいいですよ。何たって私の力を拝めるのですから』


『だから意味わかんね事言ってんじゃねえ!』


 不良生徒は文句を言い続ける。

 構わず説明を続ける──だが、

 あまりにうるさく説明が聞こえてこない。


『……いい加減にしやがれ』


 重低音な声が教室に響く。

 思わず不良生徒の言葉が途切れる。


 ──の横に立っていた男。

 太って眼鏡をかけた裸ワイシャツの男の声だった。

 見た目にそぐわない声。

 声の出所が分かっても生徒達は信じ切れていない。


『やれやれ』


 太った男が歩み始めると異変が起こった。


 初めに身長が目に見えて高くなった。

 150後半だった身長は170後半の高身長に。

 体格も痩せて筋肉質に変化していった。


 裸ワイシャツも気付けば変わっていた。

 黒いブーツに黒いスーツ。

 シャツは灰色でネクタイは血と同じ真っ赤な一品。

 灰狼のマフラーを首に巻き、ブラウンのティアドロップサングラスを掛けている。


 男も惚れるイケメンへと姿が変わった。

 男は不良生徒の横まで歩み寄る。


『よう』


『な、何だ!? 何なんだよテメェは!!!?』


「俺かい? 俺はクソッタレなお前の付喪神だよ畜生』


『……は、はあ? 俺の付喪神ぃ??』


『そう俺はお前の付喪神。主人を守り、主人の為に尽力する付喪の神。俺が望むのは……お前の幸せだけだ』


 付喪神は不良生徒の耳をかじる。


 和服の男が柏手(かしわ)を打つ。

 すると他の生徒の周りに付喪神が姿を現し始める。

 人の姿をする者、異形の姿を形作る者。


 姿形は万物夢幻。

 けれど皆一様に思うは主人の幸せ。

 夢の希望もない現代に舞い降りた付喪神。

 月夜の満開桜が舞い落ちる日に顕現(けんげん)する。



「理解不能。窓から見える学校外の風景が桜が舞う満月の夜に変わっている」


 今の今まで行動不能に陥っていた。

 会話の内容と話の概要が脳に入り込んでくる。

 容量をくった感覚がある。


 話の流れ上、私にも付喪神が現れた。

 しかしその姿を視認することが出来ない。

 居る事は分かるが、目には見えない。

 この(せかい)にとって私はモブに過ぎないらしい。


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