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プロローグ

 途端、悲鳴が舞った。


 自身の操るワイバーンから放たれた炎によって、地べたに這う兵士たちから吐き出される悲鳴。

 視線を下へと落とすと、彼らは身体にまとわりつく火から逃れようと暴れ、もがき、苦しんでいた。なんて光景なんだろう、とアビーは眉をしかめ、目を閉じた。しかしそうしても悲鳴はまだ続き、それに風にあおられて肉の焼けるいやな臭いまで漂ってくる。それに耐えながら、目を閉じていても任務は遂行できないので、開けざるを得なかった。


 これは自分がしたこと、これが戦争なんだ――


 自分が望んで竜騎士になり、戦場に出ることを望んだ。アビーはこうなることを完全に理解していない状態で騎士になってしまったことを、今更ながら後悔した。平民()の自分が騎士までになり、どこか浮かれていたせいで。わかっていた気になっていただけなのだ。


 この悲惨な光景を目の当たりにして、アビーは吐きたくなるような気持ちをぐっと堪え、最愛のワイバーン――ココット――の手綱をぎゅっと掴んで、飛んでくる矢を避けようとさらに上空へと昇るよう指示する。


(隊長やギデオンはこれを見ても平気な顔をしている……。慣れているのはわかるけれど、でも私は慣れたくない……)


 近くを飛んでいる隊員たちは作戦通りに、城壁の歩廊ではしごを使ってよじ登ってくる敵兵を落とそうと、待ち構えている兵士たちを焼き殺している。私もやらねば、と作戦を遂行しようとは思うが、人殺しをまだするのか、とアビーの良心が囁いている。


 それを何とか振り切り、またココットに指示を出して炎を吐かせ、何十、何百という人たちをアビーは殺していった――

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