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剣と魔法の世界から日本に転生した賢者~バカとテンサイはカミヒトエ~  作者: 九傷
三章 津田朝日

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第85話 これからのことについて

 


「その……、本当に、すまなかった……」



 俺の腕に残った痣を冷やしながら、悟さんが申し訳なさそうに頭を下げてくる。

 俺はそれを、逆の腕で制して首を横に振る。



「いえ、大したことはありませんので……。それに、俺の方こそ申し訳ありませんでした」



 悟さん達の前で犯人を挑発したのは、いささか軽率であった。

 二人にしてみれば俺の発言で夕日達に危害が及ばないか、気が気ではなかっただろう。

 犯人の行為に苛立ちを覚えていたとはいえ、もう少し冷静に対処すべきであった。



「……それで、犯人からは何と?」


「俺に対する脅し、でしたね。どうやら、奴らは俺の素性についても調査済みらしいです。余計なことをすればタダじゃおかない、と言われました」


「そ、そんな……、なんで神山君まで……」


「……まあ、バイトとはいえ、一応俺もこの店の店員ですからね。俺が余計なことをしないように、釘を刺しておきたかったんでしょう」



 もちろん、理由はそれだけではない。

 奴等はこの店の魔術的痕跡から、俺が魔術師であると予測したのだろう。

 そうでなければ、ワザワザただのバイトの素性まで調べたりはしないハズだ。



「……本当に、すまない。まさか、君にまで迷惑をかけることになろうとは……」


「それについては、悟さん達が謝る必要はありません。この件に関しては、俺が進んで関わったことですから」



 俺の言葉を、悟さんと陽子さんは理解できない様子であった。

 津田ベーカリーに関わった経緯について説明していないため、当然の反応と言える。

 本当は最後まで話すつもりなどなかったが、二人の罪悪感を薄れさせるためには話しておくべきだろう。



「……大変失礼だとは思いますが、この店の状況については調べさせてもらいました。だからこの店が、以前から嫌がらせの類を受けていることも、承知しています。そのうえで、俺はこの店の助けになりたいと思い、色々と協力させていただいたのです」


「っ!?」



 二人の顔に動揺が走る。

 自分の子供達にすら秘匿していたことを、俺が知っているなどとは露とも思っていなかったのであろう。



「しかしその結果として、奴らを刺激してしまった……。だからむしろ、今回の件に関しては俺に責任があると言えるでしょう。本当に、申し訳ありませんでした」



 何らかの妨害があることは予測していたし、対策も取ってはいた。

 しかし、まさかここまでの強硬手段に出るとは思ってもいなかった。

 魔術師であれば当然想定しておくべきことだというのに、この世界に順応し過ぎて平和ボケしていたのかもしれない。



「そんな! 神山君は何も悪くないわ! だって、私達のために力を貸してくれたんでしょう!?」


「……ええ。ですが、結果は結果です。だから、今回の件は、俺が責任を持ってどうにかするつもりです」



 既に静子には連絡済みだ。

 次の電話がかかってき次第、奴らの場所を追跡する。



「どうにかって……、一体どうするつもり?」


「奴らの本拠地を暴いて、夕日達を救出します」


「っ!? そんな! 危険よ! 警察に任せた方が……」


「残念ながら、警察への連絡は監視されています。この状況で警察に連絡を入れれば、奴らは容赦しないでしょう。何しろ、奴らはその手の専門家ですから」



 奴らの中に魔術師がいる以上、何の痕跡も残さず人を消すことくらいワケないことだ。

 現状でも誘拐という強硬手段に出ている以上、それを躊躇(ためら)うとも思えない。



「……専門家? 神山君、君は一体、何を知っているんだ?」


「……先程も言った通り、俺は事前にこの店の状況について調査しています。嫌がらせをしていた業者についても、その時に調べました。奴らは……、タチの悪い地上げ屋ですよ」


「地上げ屋……」



 地上げ屋という単語に、悟さん達は思い当たる節があるようだ。

 少なくとも、ただの不動産屋でないことくらいは勘づいていたのだろう。



「今はほとんど聞かなくなっていますが、地上げ屋は暴力団などが関わっているケースがあるのはご存知でしょうか? ……今回の件は、残念ながらそれに該当します」


「そんな……。でも、神山君はどうやってそれを……?」


「……昔から色々とやっていたもので、調査とか情報収集には色々ツテがあるんです。今回は探偵経由で裏も取っていますので、ほぼ間違いないかと」



 探偵というのは完全に嘘だが、静子の電子介入はそんじょそこらの探偵よりも遥かに優秀だ。

 ネットワークに繋がっている限り、静子の監視網に引っかからない情報は存在しないだろう。



「探偵、ですか……。あの、そこまでして、何故ウチに協力しようとしてくれたの? やっぱり……、朝日がいたから?」


「いえ、朝日さんは関係ありません。自分はただ、この店のパンが好きだから、この店に潰れて欲しくないと思っただけです。そのためなら、労力を惜しむつもりはありませんでした」


「……………………」



 まあ、きっかけは津田さんだったので、全くの無関係ではないが……



「……それはともかくとして、夕日達の行方については、その調査網を使って必ず突き止めてみせます。だから、俺に任せてくれませんか?」



 困惑している様子の二人に対し、少し卑怯だが魔術を行使する。

 意識を強制するような類ではないが、判断力を揺さぶって、こちらの要望を通しやすくする効果がある。



「………………こちらからも、お願いするよ。どうか、夕日と朝日のことを、救って欲しい……」






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[一言] てめーは俺を怒らせた( ˘ω˘ )
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