表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法の世界から日本に転生した賢者~バカとテンサイはカミヒトエ~  作者: 九傷
三章 津田朝日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/112

第77話 ステルスマーケティング

 


 ◇津田朝日





「おはよー!」


「おはよー! ねぇねぇ、朝日! ちょっと聞きたいことあるんだけどさー」



 ……やっぱり来たか。

 昨日の時点である程度予測はしていた。

 みんなの聞きたいことというのは、やはりアノ(・・)ことなのだろう……

 案の定、近寄ってきた友達は一斉にスマホの画面を見せてくる。

 そこには、接客をしている私の姿や、お客さんの姿が写った画像が表示されていた。



「朝日の家ってパン屋さんだったんだねぇー! 全然知らなかった! なんで言ってくれなかったのよ!?」


「は、はははー、いや、だってちょっと恥ずかしいしさー」


「えーっ! そんなことないよ!」



 まあ、本当の所、言わなかったのには別の理由がある。

 私はそれで、昔嫌な思いをしたことがあるのから、言いたくなかったのだ。



「……それでさ、これって本当なの?」



 これ、とはバストアップ効果のことだろう。

 しかし、そんなのは私が聞きたいくらいだった。



「いやぁー、どうなんだろう? 多分ウチはそんなつもりで作ってるワケじゃないけど……」


「でも朝日は胸大きいじゃん!? それって家で自分とこのパン食べてるからなんでしょ?」



 確かに食べているけど、それとこれとは恐らく関係ないハズだ。

 ……いや、完全にないとは言えないかもしれないけど。



「ホラ、コレって雨宮さんでしょ? これって、雨宮さんの胸が大きい理由も、朝日ん所のパン食べてるからってことなんじゃないの!?」


「あはは……、どうだろうね……」



 当然、これも勘違いである。

 何故ならば、神山はウチのパンを食べて、「あんなに美味いパンを食べたのは初めて」と言っていた。

 そのことから、雨宮さんがウチのパンを口にしたのも初めてだったんじゃないかと推測できる。

 雨宮さんの胸が大きいのはもっと前からだし、ウチのパンが理由ってことはまずあり得ない。



「この人も胸大きい……」



 みんなは、投稿されたSNSの写真を次々に開いては感嘆の声を漏らしている。

 私はそんな中、愛想笑いを浮かべながら、ほとぼりが冷めるのを待つしかなかった。





 ……………………………………


 ……………………………


 ……………………





「で! コレはどういうことよ!?」



 次の休み時間、私は友達に声を掛けられる前に、ダッシュで神山を外に連れ出した。

 ちょっと大胆な行動だったかもしれないけど、それを気にしていたらまた機を逃してしまいそうだったからだ。



「コレ、とは?」


「とぼけないで! このSNSの投稿! コレ、絶対神山が絡んでるでしょ!?」



 SNSに投稿された写真には、雨宮さんや山田さん、それに杉田さんらしき人物のものもあった。

 他にも写真はあったし、投稿者もバラバラだったけど、私はすぐに「これは神山の仕業だ!」と思った。

 彼らの部活動は、何やら慈善事業のようなことをしているらしいので、恐らくはその活動でこんなことをしたに違いない。



「……ふむ。確かにこの写真は俺が提供したものだね。しかし安心してくれ。ちゃんと各位に許可は取ってる」


「許可ぁ? 嘘でしょ! 他にもいっぱい女の人映ってるじゃん!」



 写真に写っているのは学生だけではなかった。

 やけに色気のある女性や、落ち着いた大人の女性など、普通に考えて神山の知り合いであるなどとは思えなかった。



「ああ、あの人たちはだね……、津田さんは如月君を知っているかい?」


「如月って……、1-Cの……?」


「そうだ。ほら、実はこの女性、如月君の母上なんだよ」



 そう言って神山が見せてきたのは、件のSNSの画像である。



「……嘘、若すぎない?」



 SNSに投稿されていた、色っぽい格好をした女性の写真……

 これが如月の母親と言われても、とても信じることができなかった。

 こんな若くてキレイな女性に、私達と同じ年齢の子供がいるなんて思えるワケがない。



「驚くのも無理はないだろうけど、事実だよ。相当若い頃に産んだんだろう。さぞ苦労したことだろうね……、っとまあその話は置いておくとしようか。それで、この如月君の母上なんだけど、仕事がホステスでね。そのツテを使わせて貰ったんだ」



 そういことか……

 それであれば、やけに魅力的な女性が多いのも納得できる。

 ホステスが厳密にどんな商売かはわからないけど、少なくとも魅力の無い女性では難しい商売であることは想像できる。



「そう……、って! そういう話じゃないでしょ!? 私が言いたいのは、なんでこんなことをするのかってこと!」



 危ない、危ない……

 危うく話の流れを逸らされる所であった。



「それは前に言ったじゃないか、宣伝させてもらう、と」


「宣伝って……、そんなレベルじゃないでしょコレ!」


「宣伝には違いないだろう? まあ、ステマと言われても仕方ないやり方ではあるが……」



 ステ……?

 なんのことだろう?



「よ、良くわからないけど、コレって悪いことなんじゃないの!? しかも、バストアップ効果とか……、これって嘘でしょ?」


「いや、別に騙しているワケではいし、悪いことではないよ。それに、バストアップ効果に関しても、事実だ」


「……へ?」



 神山の発言に対し、私は物凄く間抜けな声を出してしまう。

 バストアップ効果が、嘘じゃない……?

 一体、どういうこと……?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱ宣伝て大事( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ