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剣と魔法の世界から日本に転生した賢者~バカとテンサイはカミヒトエ~  作者: 九傷
三章 津田朝日

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第70話 津田家でお風呂

 


 さて、どうしたものか……

 津田さんの母上だけならともかく、まさか父上まで出てくるとはな。

 いや、自営業なのだから当然と言えば当然なのだが……

 あれ? でも、それなら今は誰が店を……?


 ……まあいい、今はとりあえず名乗っておくか。

 誤解は当然解くべきなのだろうが、俺が無理に解かずともあとで津田さんが訂正するだろうからな。



「……初めまして。自分は津田 朝日(つだ あさひ)さんのクラスメートの、神山 良助(かみやま りょうすけ)と申します」


「あらあら、ご丁寧にどうも~」



 温和そうな津田さんの母上は、どうやら俺に対して警戒心を抱いていないようである。

 父上の方は、なんというか、複雑な顔をしているが……



「突然お邪魔して申し訳ありません。本日は息子さん、夕日君と遊ばせていただいたのですが、ちょっと疲れたのかぐっすりと寝てしまいまして……」


「まあ、それでわざわざ運んできてくれたんですか? 起こしていただいても良かったのに」


「いえ、折角熟睡しているところを起こすのも悪いですから。元々は自分と遊んで疲れたことが原因でしょうしね……」



 子供は元気に溢れているが、その体力自体は余りにも少ない。

 俺自身、それで何度か痛い目を見ているので良くわかる。



「お父さん! お母さん! 誤解! 誤解だから!!!」



 そのとき、津田さんが遅ればせながらようやく参上した。



「やあ津田さん、一体どこまで走っていったんだい?」


「調理場よ! そしたら二人ともいなくて……って、なんで神山はそんなに落ち着いてるの!?」


「まだあわてるような時間じゃない」


「なんでこんなときにス〇ダンネタ!?」


「こんなときだからこそさ。それにしても、津田さんもスラ〇ンを知ってるんだね。今度色々と話そうじゃないか」


「いいけど……って、そうじゃなくて!」


「朝日! 落ち着きなさい!」



 やや過呼吸気味になっていた津田さんを、津田さんの母上が(なだ)める。

 流石は母親、絶妙なタイミングである。



「はぁ……、はぁ……、え~っと、本当に、彼氏とかじゃないから」


「はい。お二人とも安心して下さい。僕はあくまでもただのクラスメートですよ」


「……最初にそれを言ってよ」


「あらあら、神山君は最初からそう言ってたわよ? お父さんは疑っていたけど」


「そ、そんなことはないぞ!?」



 津田さんの父上は慌てて否定するが、流石にそれはちょっと無理がある。

 というか、今でも少し懐疑的な視線を感じるし。

 まあ、それはきっと愛情の裏返しなのだろう。

 大事にされているな、津田さん……



「う……、ん……? あれ? お父さんとお母さんだ……」


「お、夕日、起きたか」



 俺の頭に顔を押し付けるようにして寝ていた夕日だが、どうやら目覚めたらしい。



「あれ、良助だ……。良助がなんでウチにいるの?」



 夕日はまだ寝ぼけているらしく、状況がわかっていない様子だ。



「夕日、ちゃんとお礼を言いなさいよ? 神山がわざわざウチまで運んできてくれたんだからね? こんな汗だくになって……」



 うん? 俺は確かに多少汗をかいているが、別に汗だくってほどでは……

 って、ああそうか……



「津田さん、これは汗じゃないよ。夕日の涎だ」


「ええええぇぇぇぇぇっっ!?」





 ◇





「とりゃー!」



 夕日が湯舟の中で水をひっかけてくる。

 しかし、甘いな……



「水鉄砲とはこうやるのだ」



 俺は掌の中で圧縮された水を夕日に向かって放つ。



「うわ! それどうやるの!?」


「フッフ……、では教えてやろう。これは俺のオリジナルでな? こうやって……」


『た、楽しそうにしてるところゴメンね!? あの、代わりの上着、ここに置いておくから!』



 夕日に水鉄砲のやり方を伝授していると、ドアの外から津田さんの声が聞こえてくる。

 どうやら代わりとなる上着を用意してくれたらしい。

 サイズの心配はあったが、ややふくよかな津田さんの父上のものであれば、恐らく問題無く入るだろう。



「ありがとう津田さん。悪いね」


『い、いや、悪いのはコッチだから! じゃ、じゃあね!』



 そう言い残すと、津田さんは素早く洗面所から出て行った。

 まあ、同じ年ごろの男子が扉を一枚隔てた先で全裸なのだから、無理もない反応だと言える。



「あんなに慌てた姉ちゃん、初めて見た」


「そりゃ慌てもするさ。普通、同い年の友達を自分の家の風呂になんて入れないだろ?」


「そんなことないよ! 俺もトモ君のウチで入ったことあるし、トモ君もウチの風呂に入ったことあるよ!」


「……ああ、その年代なら確かにあったな」



 俺も幼少の頃はワンパク小僧だったのでわかる。

 確かに、人の家の風呂に入ったり、ひーちゃんや静子と一緒に風呂に入ったことも……

 って俺は何を思い出しているんだ……



 そもそも、俺が何故津田家の風呂に入っているかというと、津田さんのお母さんから強引に説得されたからであった。

 夕日の涎によりベトベトになった頭やらYシャツやらを洗うため、というのが理由なのだが、本当に良かったのだろうか……


 当然俺は、モラルやら世間体の問題もあるので断ったのだが、結果的にはそのまま押し切られてしまった。

 父上は反対だったようだが、母上の一睨みで黙らされていた。

 どうやら母上は、温和そうに見えてかなりの豪の者らしい。

 まず間違いなく、父上は尻に敷かれている。



「やはり、どの家庭も女性は強いのだな……」


「ん? なんだ良助?」


「なんでもない。それより水鉄砲のやり方の続きだ」


「おう!」



 夕日は生意気ではあるが、こうして懐かれると悪い気はしない。

 ついでに、という流れで一緒に風呂に入ることになったが、なんだか本当に父親にでもなったような気分である。


 しかし、ここまで遅くなると、一重や母さんにはなんて説明するかな……




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[一言] 着々と外堀が埋まっていく( ˘ω˘ )
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