クラスのみんなと仲良くなりたい
クラスのみんなと仲良くなる。
それが今の私の目標。
みんなと仲良くなって、学校生活をより良いものにしていきたい。
ママにその事を話したら、それは素晴らしい考えねとほめてくれたわ。
でも、パパに話したら、みんなと仲良くするのは難しいよと笑われた。
パパはいつもそんな感じだから、別にいいんだけど。
学校の先生も、テレビに出ている有名人も言っている。
差別なくみんなと仲良くするのはとても大事なことだ、って。
それができないから、大人の世の中は争いばかりなんだって。
だから、これからの時代を生きる私たちは、おたがいに仲良くするようにがんばらないといけない。
私と仲良くしてくれる子はクラスにたくさんいた。
きっとみんなも、私の考えを正しいと思ってくれているからだと思う。
クラスの中では、私はいつもだれかに囲まれていた。
それでも、クラスのみんなと仲良くなれた訳じゃない。
まだ仲良くなれていない子が、このクラスに5人くらい残っている。
ある日、私が仲良くなれていない子のうちの一人が、男子にいじめられたらしい。
先生が、教室でみんなにそう話していた。
いじめをした男子たちは先生にしかられて、みんなの前でその子に謝っていた。
でも、謝られた子は、ちっとも気持ちが晴れたような顔をしていなかった。
だから私は、いじめられた子をはげましたの。
そうしてあげれば、その子と仲良くなれるかもと思ったから。
私がみんなの前ではげましてあげたおかげか、いじめられた子の顔は少し明るくなったように見えたわ。
クラスメイトも先生も、私のしたことをほめてくれた。
だから私も、自分がやったことは正しかったと思っていたの。
でも、後で私と仲が良い子のうちの何人かからこんな事を言われちゃった。
「あんな暗い子と付き合う必要はないわよ。あなたまで暗くなっちゃうわ」
「あの子は独りでいるのが好きなんだよ。余計な事をされたって、かえって腹を立てているんじゃない?」
「君みたいな人気者が、あんな子とつりあう訳がない。もし君があの子と仲良くしているのを見たら、ぼくたちも変な気持ちになっちゃうよ」
私にそう言ってきた子たちは、みんないい子だった。
それなのに、なんてひどいことを言うんだろう、と私は思ったわ。
でも、すぐに私も、その子たちの言ってたことが正しかったんだって気がついた。
次の日から、そのいじめられた子が、私の事をそれとなく遠ざけるようになったんだもの。
人と仲良くなりたくない子がいるだなんて、私は思いもしなかった。
だから、私はいやな気持ちになった。
その子に対して、というよりも、自分に対して。
私が軽はずみな真似をしてしまったような気がして、情けなくなった。
後になって分かったんだけど、その子が私を遠ざけたのには別の理由があった。
クラスの男子から『あいつはお前の事をはげましていたけど、心の中ではお前の事をきらってバカにしているんだぞ』って、ありもしない事をふきこまれていたみたい。
だけど、それを知った私は、誤解を解いてその子と仲良くなろうとは思えなかった。
仲良くするのをあきらめたのは、私がその子から『本当はいじわるな子』だと思われたのがいやだったからではないの。
そんな事で他の子をきらったりはしないし、みんなと仲良くすることの大切さはよく分かっているわ。
あえて理由を言うなら、もし私があの子と仲良くなったら、みんなが何て言うか分からないから。
ただでさえ、その子が私をきらうように仕向ける子がいるくらいなんだもの。
私と仲良くしてくれているクラスメイトはみんな、少なくとも一つは良いところがある。
なのに、その子たちは私とあの子が仲良くなることを望んでいない。
クラスのみんなと仲良くなろうとすると、みんなのうちのだれかがいやがる事をしなければいけない。
いま仲が良い子と仲が良いままでいようとすると、仲が良い子を増やすことは出来ない。
へんなの。