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契約成立?

「何処から、その発想が出てくるんだ?」

意味が分からないとばかりに、颯太が頭を抱えた。

「ほ、ほら、私達ってかなり利害関係が一致すると思うのよ」

「利害関係って、おまえ…」

「そ、その、契約って言うか…偽装?…そう、偽装の恋人として契約するの」

「偽装?」

「相手への感情は関係なしに、対外的に恋人として振る舞うのよ。利害が一致している高校生の間は別れないって契約するの」

「卒業したら別れるのか?」

「解約の申し出がない限り、自動延長かな?」

「スマホの2年縛りみたいだな」

「そう、そんな感じ。私達にどんなメリットがあるか聞いて欲しいの」


汐梨は何かのプレゼンでもするように語り出した。

「まずは、虫除けね。私、結構な頻度で告白されるのよ。彼氏がいれば、そんな事も減るだろうし、断るのも楽になるわ」

「モテ自慢か?俺には縁のない話だ」

「何を言ってるの?今日の写真、もう拡散してるわよ。女の子のネットワークって凄いのよ。男の子も女の子も見てくれだけで、寄ってくる人が沢山いるわ。しかも、颯太、この間の中間試験で私に勝っちゃったでしょ。学年トップって、結構なステイタスよ。それに、背もソコソコ高いし、筋肉質でスタイル良いよね。既に狙ってる娘が沢山いる筈よ。先手を打って、私と付き合ってる事にしちゃえば、他の子も諦めるわ」

「写真も試験も誰のせいですかねぇ?あんな賭けしなきゃ、点数抑えたのに」

「私が颯太の魅力を引き出したのね」

「物は言いようだな、おい」



「対外的な問題だと、同性間の付き合いでも、恋人がいた方が都合が良いわ。彼氏がいれば、多少付き合いが悪くなっても、許されるもの。毎日毎日、カラオケに行こうだとか、試験の打ち上げだとか、断るのも大変なのよ」

「いっそ、俺みたいにボッチになっちゃえば?」

「急にそんな方向転換、出来ないわよ」

「まあ、汐梨には彼氏がいるメリットがあるのは分かったけど、俺には何もないよね。学校に友達いないんだから」

「そんな事ないわよ。このままフリーでいると、合コンの誘いとか執念しつこくなるわよ」

「そんなモン誘われた事1回もないぞ」

「顔を隠してたからよ。言ったでしょ、見てくれだけで寄って来る女の子も沢山いるって。このままだと颯太、撒き餌として使われるわよ。だから、合コンの誘いが来たら、全部私が断ってあげる。貴方、断るの苦手でしょ」

「そんな事したら、汐梨が独占欲の強い女みたいに思われるぞ」

「あら、心配してくれるの?でも大丈夫よ。他の女の子も巻き込んで、誘った男子が悪者になるように誘導するから」

「……」

「私も合コン大嫌いなのよ。これからは『颯太に怒られちゃう〜♡』とか言って、簡単に断れるようになるわ」

「…おまえ、俺の事トコトン使い倒す気か?」

「人聞きの悪い言い方しないで。らぶらぶアピールするだけよ」

「……」



「それとね、私も颯太も素で付き合える相手がいると、気分的に凄く楽になると思うの。私達、似たモノ同士だと思わない?ベクトルは真逆を向いてるけど、やってる事は同じよね。人との間に壁を作って、踏み込ませないようにしてる。颯太のは壁って言うより城壁だけどね」

「まあ、不器用なのは認めるよ。俺は汐梨みたいに、適度な距離感てのは作れないからな。完全に拒絶しないと、触れられたくない所まで踏み込まれそうで怖い」

「私は、無理に踏み込んだりしないよ。今日だって、本当に颯太が嫌がるなら、押し掛けて来なかったよ。でも、そこは颯太も同じなんだよ。ちゃんと私を見てくれた。本当は生徒会長になんか立候補したくなかった。気付いてくれたの颯太だけだよ。本当は、あの時ちょっと嬉しかった」

「嫌なら立候補、取り下げちゃえば?」

「今更?何て言って?」

「それこそ『颯太と一緒にいる時間が、減っちゃう〜♡』で良いんじゃね?」

「キャハハハ、それ面白い。やってみようかな?うん、それで行こう」

「マジでやる気か?」

「理由はともかく、立候補は取り下げるわ。この間のテストで颯太に負けちゃったし、もう完璧を演じる必要無くなったからね」

「俺達、何の為に賭けをしたんだ?完全に意味なくなったろ」

「仲良くなれたんだから、それで良いんじゃない」

「確かに悪くないな」

「じゃあ、お互いに仲良くなれた自覚ができた所で、お返事お願い出来ますか?」

「…契約書はあるのか?」

「口約束でも契約は成立します」

僅かな沈黙の後、颯太が汐梨に頭を下げた。

「契約成立という事で、お願いします」

颯太の言葉を受けた汐梨も、頭を下げる。

「こちらこそ、お願いします」

2人は、こうして、偽装恋人の契約を取り交わした。



話が終わると、既に時刻は18時を回っていた。

「汐梨、晩飯どうするんだ?」

「帰っても1人だし、一緒に食べて良い?」

「良いけど、この部屋なんにもないぞ。食べに行こう」

颯太の言葉に汐梨が眉を寄せた。


「颯太、冷蔵庫の中見せて」

「…何、怖い顔してるんだよ?」

汐梨の謎の迫力に颯太が押された。

「いいから見せて」

颯太の許可も得ず、汐梨は冷蔵庫を開けた。

「…やっぱり」

冷蔵庫の中にはペットボトルのお茶とスポーツドリンクしか入っていなかった。


「颯太、普段の食事はどうしてるの?」

「…朝はコンビニ。昼はゼリーとサプリ。夜は外食…です」

ボソボソと颯太が呟いた。

颯太の言葉を聞いた汐梨がソワソワし始めた。


(小言を言われるかと思ったけど、違うのか?)


「…そ、颯太、お、お願いがあるの」

いきなり汐梨が颯太の前で、土下座した。

「おい、止めろ!急にどうしたんだ?」

颯太が汐梨の様子に慌てる。

「そんな事しなくても、聞ける頼みなら聞くよ。頭上げろよ」

汐梨は頭を上げたが、正座したままだ。

「…契約内容に追加をお願いします」

「どんな?」

汐梨は大きく息を吐き出し、意を決すると再び、土下座した。



「屋貸を一つ、貸してください」




「………」




「対価の一部として、食事のお世話をさせて頂きます」




「………」




「お願いします」




「………」




「………」




「意味分かんねぇよ!」

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