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この過酷な世界で  作者: マリモ二等兵
7/7

レッサーウルフ

ダブルアタッカーVSアタッカー

「ガアアッ!!」


 レッサーウルフが威嚇しながら向かってくる。そのスピードは速く、もうすぐで攻撃できる距離まで近づいてくるだろう。

 わたしはその姿を見て、驚いている暇ではないことに気づき武器を構える。

 ソティアは双剣を逆手に持ち、レッサーウルフを見つめている。余裕そうに一瞬見えたが頬に汗があり、表情が険しいことから別にそうでもないらしい。


 逆手持ちのまま戦うのはやり辛そうだがそういう流派があるのかもしれないな。…後で教えてもらおう。


 「ガァオッ!!」


 レッサーウルフは爪の射程距離に入ったのか突進のスピードで引っ掻き攻撃をしてきた。

 標的はわたしのようで鋭利な爪が胸に向かって飛んできたため、さっき作った盾で防御。

 爪と盾がぶつかり切り裂かれることは無かったが、あまりの衝撃で後ろの木まで吹っ飛んでしまった。

 

 「ゔっ…おぇ…。」


 背中に強い衝撃が走り、肺の中が全て出される。咳き込もうとしたが喉で何かが引っかかり咳が出ず、代わりに出たのは女の子が出しちゃいけないような声だった。

 衝撃が全身に渡ったのか手足が痺れるし目や耳から入ってくる情報が全く認識出来ない。


 いきなりキツイの貰ったな。これ追撃来たら避けられずに死ぬんじゃないか?

 しかし追撃がまったく来ない、あのスピードならとっくに第2撃目が来てるはずなのに…。


 だんだんと認識できるようになっていくと肉を斬る音とレッサーウルフの鳴き声が聞こえてくる。

 見えるようになった目で見てみると、ソティアが素早い動きでレッサーウルフを斬り刻んでいた。


 レッサーウルフがこのままではまずいと思ったのか後ろに跳躍して距離を離す。


 「グルルル…。」


 そして怨み殺すような目で睨みつける。体中斬られたせいで血だらけだがどうやら数が多いだけで深くはないらしく、あまり弱った様子は見られない。


 「……ソファギさん。」

 「ケホ…なに?」

 「あのレッサーウルフ、皮と毛が硬いせいで攻撃が通りにくいです。」

 「そんなに!?どうするの?」


 ソティアは少し難しい顔をして笑う。


 「とりあえず血が出てるんでこのままで大丈夫でしょう!」

 「………そういうの嫌いじゃないよ。」

 

 すごい脳筋理論だけど時間かければ倒せるのは確か、このまま攻撃を続ければイケる。

 わたし一回も攻撃してないけどね!これじゃ足手まといだ!


 わたしは短剣をレッサーウルフに投げつけ、空いた手にメイスを生成する。かなり鋭い棘付の。

 これで叩けば大きなダメージを与えられるだろう。速く動けるレッサーウルフに当てられればの話だけどね。

 まあ…当たるまで振ってれば当たるでしょ。


 「グゥッ!!」

 

 レッサーウルフが投げつけた短剣を高速で一回転することで弾く。どうやら短剣に尻尾を叩きつけたらしい。

 おかげで全く隙が無いまま短剣を弾かれたため、頭の中で投げつけた意味を問われる。答えは知らない。


 「グルルルッ…。」

 

 レッサーウルフが体制を変えた瞬間さっきよりも強い威圧感が襲い、体に重りがつけられたように重くなる。

 よく見れば足にかなり力が入ってるらしく、ここからでも筋肉が膨れ上がっているのが見えた。

 目は血眼でソティアを見ており、今殺すと語りかけているようだ。どうやら先程斬られたことが許せないらしい。

 

 「ガアアアアアアアアアア!!!!」


 とんでもない叫び声と共に一瞬消えたかと思うほどのスピードで接近してくる。

 そしてあっという間に辿り着いたようで浮いていることから跳躍したことが分かり、ソティアの顔を噛み砕く為に口を大きく開いている。

 そのあまりの迫力にわたしはソティアの体が貪られるのを幻視してしまった。


 実際は身をかがめることによって回避しており、傷一つ無く、しかもレッサーウルフの腹に双剣を突き立てている。

 そのままレッサーウルフは飛び込んだ勢いで腹を裂かれ、大きなダメージを受けてしまったせいか着地できず転げ回っていた。


 「グッ…ガッ……ガッ…。」


 腹から血を滝のように出し、口からも血を出している。そんな状態でも足を震わせながら立ち上がり、わたし達を睨みつけた。

 そして何かを探すように辺りを見回し、探しものを見つけたのか首が止まる。


 その視線の先には青い葉脈をした植物があった。


 突然レッサーウルフがその植物に向かって走り出す。力を入れたせいで体中から血が吹き出しているが構わず走り続ける。


 あの植物に何かあるのか?


 「っ!まずいッ!」


 わたしがそう思っているとソティアが焦り始め、ソティアもあの植物に向かって走り出す。

 よく分からないのでわたしもあの植物に向かって走る。


 突如として植物が優勝賞品のレースが開催されたが、人間と狼では圧倒的な差がある。

 結果はわたしの予想通りレッサーウルフの勝利。早速手に入れた植物を食べることにしたようで、生えている植物に口を近づけている。

 

 その姿を見てソティアは目標を植物からレッサーウルフに変えたようで、今にも斬りかかろうとしていることが分かった。

 そしてレッサーウルフに到達すると内蔵がずり落ちてきそうなほど腹を斬り裂き、そこに大量に水を出して傷を広げると共に体内を洗うように水を動かしている。


 次に着いたわたしは食事中の頭にメイスを思いっきり振り降ろし、頭を粉砕する。

 どうやら頭蓋骨の中にある脳みそごと潰したようで、覗き込まなくても潰れた脳みそが見えるほど頭がえぐれていた。


 死んだ。


 わたしはそう思った。


 でも違った。


 「……へ?」


 わたしは自分の目を疑った。

 なぜならだんだんと脳が治り始めているからだ。いや、脳だけじゃない。

 粉砕した頭蓋骨が、飛び散った血が、飛び出た目が、抜け出た歯が、斬り裂かれた腹が、全て逆再生のように治り始めている。


 わたしはそんなレッサーウルフにさらにメイスを叩き込むが瞬きする間に治っている。落ちていた短剣で斬りつけても同じだった。


 再生能力とかそんなレベルじゃない!なにかもっと別の何かによって再生している!!ひょっとしてあの植物か!?こんな風になることをレッサーウルフは知っていたのか!?


 「っ間に合わなかった!ソファギさん!離れてください!!」

 「ぐぇ…。」


 ソティアに後ろから引っ張られる。喉が苦しくなるがそんなことはどうでもいい。

 

 「あれなんなの!?」

 「…あれはハイルリーフという薬草を食べたことによって起きる超再生です。」

 「そんな効果の薬草があるんだ…。」

 「はい、その代わり中毒性が極めて高い上に取りすぎると死んでしまいます。あの量だと致死量でしょう、ほっといても死にますよ。」

 「え、死ぬの?」

 「はい。」


 わたし達がそんな会話をしていると再生を終えたレッサーウルフがわたし達に向かって突進してくる。

 その速さは先程よりも素早く、もう爪が目の前に迫っていた。


 わたし達は屈むことで回避しレッサーウルフを見るがすでにそこにおらず、わたし達の背後に回っていた。


 「ガアアッ!!!」


 レッサーウルフが目の前で一回転して尻尾を叩きつけてくる。

 その攻撃も回避し反撃しようとするがもうおらず、見つけたときには攻撃を始めており回避が難しい。 

 どうやら周りの木を使ってわたし達の周りを動いているらしく、木には爪で傷つけられた跡があった。


 このままではまずい…。レッサーウルフはだんだんとスピードを上げており、もはや目で追うことすら出来ないほどになっていた。


 わたしはなんとか攻撃を当てるが受けた傷は一瞬で治り、一切怯むことなく攻撃が飛んでくる。

 やはりこちらが攻撃しても全く意味がないようだ。これは防御に専念したほうが良さそうだな。わたしは攻撃を完全に捨てデカイ盾を作って防御する。

 そのまま受けるとまた吹っ飛ばされるので衝撃を受け流せるように斜めに持つ。

 ソティアも同じく防御に専念する考えのようで水を上手く使って攻撃を受け流している。

 いやすごいな…。水属性はそんなことも出来るのか。


 10分ほどわたし達が防御し続けているとレッサーウルフの攻撃の激しさが無くなってきていることに気づく。

 どうやらレッサーウルフは限界が近いようで息を乱し体が震え始めている。


 「ガア……ガア……。」


 もう立つ力が残っていないのか震えてるだけで足がまったく前に出ようとしていない。

 そしてとうとう倒れてしまい、そこから動かなくなった。


 わたしはレッサーウルフに近づき目を見て生死を確認する。


 どうやら息絶えたらしい。


 「終わりましたね。さぁ、帰りましょう。」

 「……ちょっと待ってて。」


 帰ろうとするソティアを止め、待つように言う。

 わたしはレッサーウルフに向けて手を合わせ黙祷。


 「………魂よ、次の生に幸福があらんことを。」


 奪った命の幸福を祈る、変な考えだがそれがわたしなりの弔いだ。

 神らしき何かは見た気がするが、わたしの言葉に耳を傾けてくれるとは限らない。

 たとえ祈っても、神が聞いてくれなきゃ意味が無いと思う者もいるだろう。

 わたしもそうだ。

 …でもわたしは意味がないと分かっていても幸福を祈る。

 そうする事が正しいと信じているから。

 それだけでも…祈る理由になるだろう。

 


 

 




 


 

 祈りを捧げるわたしをソティアはただ意外そうな顔で見つめていた。

 


 

ちょっと書くのが難しかった。

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