仲間を手に入れよう
どこかで見たような?
冒険者協会にて。
「すいませ~ん!」
わたしは扉を思いっきり開きながら協会中に響き渡る声で言う。みんなの視線が集まる中わたしは受付に向かう。
近づいてくるわたしをよく思ってないようで、受付の人はわたしを拒絶する顔を見せる。そんな受付を無視してわたしは聞く。
「仲間を募集してる人っていますかー!わたし仲間がほしいので!」
その瞬間、協会内は静寂に包まれる。さすがのわたしでも分かる。この数日間でわたしはヤバい奴と思われており、できれば関わりたくないのだろう。
結構心にくる…。でもわたしはめげたりなんかしない。
「その…いないの?」
今度は受付だけでなくここにいる全ての人に聞く。悲しくなったせいで声が小さくなってしまっているが、静まりかえった空間では小さな音でもよく聞こえるのでわたしの声は通っているはずだ。
それでも誰も反応しないのはつまりそういうことだろう…。
目頭が熱くなっているのを感じる。このままでは泣いてしまいそうだったので素早く冒険者協会を出ようとしたその時、透き通った声がした。
「私が仲間になりましょうか?」
声がした場所へと視線が集まる。そこには青緑色の髪をした魔法使いらしい服装をした少女がスープ片手に座っていた。
髪は肩まで伸びており目はエメラルドのように輝いている。その容姿は同性としても異性としても惹かれるほど魅力的な人物だった。
そんな人物が笑顔でわたしに向かって言う。
「仲間になることが良いのならそんなとこで立ってないで、一緒に座って話しませんか?」
わたしは走って彼女の元に向かった。
ここの人はさっきまでの事を気にしないタイプなのか、冒険者協会は賑わいを取り戻していた。
人々の声が交差する中、彼女とわたしは対面に座り話をしていた。
「自己紹介しましょう、私の名前はソティア、水属性です。」
「わたしはソファギ、土属性だよ!」
わたしが続いて自己紹介すると彼女が驚いた顔になり少し不満を覚えるが、どうやら土属性に驚いただけらしい。
そんなに驚くことなのか聞いてみると1000人に1人くらいの確率らしい。
まぁまぁ珍しい。
「そうだ、ソファギさん。」
「ん?なに?」
「仲間になったということなのでなにか一緒に依頼をこなしませんか?」
その誘いは嬉しい…というかそれが狙いで仲間を作ったんだから断るほうがおかしいな。これでソティアの戦闘方法が分かるし、それに合わせて自分がどう動くか決めることができるからいい事だらけだ。
わたしは笑顔で快諾した。
レルルの森にて。
ここはわたしのトラウマの森。ここに来たのは依頼の場所がここだからである。
別にレルルの森がトラウマの森だったのを知らずに依頼を受けてしまったわけじゃない。
ソティアと一緒にやる依頼で何を選んでいいか分からずソティアに頼んで選んでもらったのがトラウマの森の依頼だっただけである。
いつもの水スライムの依頼にしようと思ったけど却下された。どうやら水スライムに水属性の攻撃は効かないらしく、自分が足手まといになってしまうということらしい。
それを聞いて土スライムとかが来たら自分が足手まといになるのではと聞いたらそんな事は無いらしい。
土スライムは頑丈でパワフルなだけのスライムらしく、ソティアは倒すのに時間がかかってしまうから苦手だと言っていた。
てか土スライムいるのね…。
でもこれで情報が手に入りやすくなった。もしソティアが居なかったら土スライムは依頼を見て存在を知ることになってただろうから。
閑話休題
レルルの森に来るハメになった依頼の内容はこうだ。
『レッサーウルフの討伐。
危険度E
レルルの森で発見。
報酬は650リル。』
狼は集団で行動する動物だがレッサーウルフは違うようで一匹狼らしい。
レッサーなのに群れないのか…とソティアに言ったらなぜレッサーと呼ばれているのか教えてくれた。
「レッサーウルフはほとんどが風属性ですが、魔力量が少なすぎてそよ風しか起こせません。しかしそんな弱点はどうやら群れることによって解決されるそうなのですが彼らが群れようとしないせいでその特性の意味が失われております。
そんな彼らを必要なのに群れようとしない馬鹿という意味を込めてレッサーウルフと呼ばれているそうです。」
レッサーって頭のほうのことかよ!そんな奴がよく自然界を生き残れたな…。
しかし弱いと思いきや身体能力は全然レッサーじゃないらしく、5mの跳躍に最大時速40km/hで走り岩を傷つける鋭い爪を持っているそうだ。
これでもし群れていたら風属性に集団という凶悪なものになっていてレッサーウルフなんて呼ばれなかっただろうに…。
わたしがレッサーウルフを哀れんでいると横を歩いているソティアから声がかかる。
「なに?」
「ソファギさんはどのような戦い方をしますか?」
そういえば教えてなかったな。
隠す必要は一つも無いし教えるか。
「わたしは土属性で武器を作ってそれで戦うよ!ハンマーとかナイフとか手斧とか…いろんな武器を使って戦うよ!」
実際にいくつか武器を作ってみせて言う。
それを聞いたソティアが目を細くさせどこか意地悪さを思わせる笑顔を見せる。
「へー…私と同じですね。」
「え!?同じなの!?」
わたしは自分と同じという言葉に驚き、手を動かして驚いてることを表現する。ちなみにこれは無意識でやっている…身体が大げさに動いてしまうのは慣れたものよ。
驚いてるわたしを見て気を良くしたのか上機嫌で説明し始める。
「はい、私は水属性で武器を作ってそれで戦います。作る武器は双剣や大剣といったところですね。ですが大剣をつかうのはほぼ無いので双剣だけと考えてもらって良いですよ。」
「えー!土属性のアドバンテージだと思ってたのに…。」
ショックだ…でもなんで土属性を門番の人や焼き鳥屋のおっちゃんは良いものって言ったんだろう?
「そんな落ち込まなくても…それに武器を作るなら土属性が良いですよ。燃費も良いですし、水属性だと形を維持し続けなければいけないので。」
「…え?あっそうか!なら大丈夫だね!!」
なるほど水属性だと形を維持する必要があるから大変なのか。
わたしが土属性の便利さを感じているとソティアが腰を低くする。
どうしたのだろうと見つめていると裾を引っ張られる。服が伸びそうだ。
「ソファギさん、魔物の気配です。警戒してください。」
「へ?魔物…?なにそれ?」
ソティアが何いってんだこいつみたいな顔をする。
「何って魔物ですよ…スライムと戦ってましたよね?」
「え?……あ!!」
そうだ思い出した!子供の時やったゲームでスライムのこと魔物って言ってた!!完全に忘れてたよ…。
それにしても魔物気配なんてよくわかるな…わたしは全然感じないよ。
「ねぇ、なんで気配がわかるの?」
「冒険者やってると勝手に身につきますよ。…あそこを見てください。」
ソティアが声を潜めながら木の向こうを指差す。その先には高さ70cm全長1m70cmの黄緑色の狼がおり、森の中であるおかげでかなり見ずらい。
「……あれかレッサーウルフ?でかくない?」
「はい、ですが2人で戦えば勝てますよ。」
「ほんと?」
「…ええ。」
なんで目を逸らしたのソティア?ひょっとしてレッサーウルフと戦うの初めて?
わたしがソティアに疑惑の目を向けていると観念したのかため息を吐き、本当のことを言う。
「その…あのレッサーウルフ…今まで見た中で一番デカイです。ふ、普通は全長1m20cmぐらいなのですが…。」
「えぇ…。」
じゃああれの強さがどんぐらいか分からないっていうこと?大丈夫なのか?それ。
「と、取り敢えず戦ってみましょう!勝てれば問題無しです!」
ソティアが良い笑顔でいう。それで死んだらどうするんだよ。
わたしはそう思いながらも戦う準備をする。
今回の武装は相手が素早そうなので短剣と攻撃を防ぐための盾だ。
攻撃を防御しつつ斬りつける戦い方をしようと思ってる。
うまくいくといいな。
ソティアも武器を作るようで手から水が出てきており、それがだんだんと形を変えていっている。
事前に言っていたように双剣を作るつもりらしい。
「『創造の水 一対の剣』。」
その言葉と同時に双剣が出来上がった。それは水でできているのに硬そうであり、鉄を切り裂けそうなほど鋭利な刃をしていた。
そんなことより……。
「ソティア…さっき技名みたいの言ってなかった?」
「え?は、はい。」
「あれって言わなきゃいけないの?」
ソティアはわたしの言葉を聞くと少し顔を赤らめる。
「その…あれは言う必要は無いです。」
「?…じゃあなんで言ったの?」
全く分からない。なぜだ?あれか、わたしのいちいち動きが大きくなってしまうやつみたいに魔法を使う度にそういうこと言っちゃうみたいな感じかな。
ソティアも苦労してるんだな…。
そう考えている間にソティアは顔を赤らめたまま言う。
「だってカッコいいじゃないですか…。」
「え?」
「だってカッコいいじゃないですか!技名を言って魔法を使うのって男の子の夢なんですよ!」
分からんでもない。わたしは男だったからな。漫画とかゲームの技名言ってはしゃいでたなぁ…。
…さっきのソティアの言葉、気になるのがあったな。
「男の子の夢っていうのは分かるけどさ…。」
「じゃあ分かってくださいよ!」
「いやだってソティア女の子じゃん。」
「え?」
「え?」
少しだけ時間が止まる。
そしてソティアが先に動き出した。
「あの…私男の子ですよ?」
え?
「男の子?」
「そうですよ見えませんか?」
全く見えない。幻術か?
「…ホント?」
「本当ですよ。何なんですかさっきから。」
は?
「はあああああああああああああああ!?」
「え!?ちょ、ちょっと大きな声出さないで下さい!レッサーウルフに見つかっ……てます!!驚いてないで戦闘準備をしてください!」
レッサーウルフとの戦いのゴングは予想外の形で鳴らされた。
✝創造の水 一対の剣✝
(そうぞうのみず いっついのつるぎ)
仕方ないね、男の子だもん




