初めての依頼
冒険者カードに死亡通知機能があるのにはこのような理由があります。
1、頻繁に行方不明になるので探しに行くかの判断材料になる。
2、遺体を発見しなくても死亡したかどうか分かる。
3、依頼を受け出発していた場合、その依頼がどれほど危険か分かる。
結構重要な機能。
冒険者登録をした後、ボードに貼られている依頼書を見て俺は唸っていた。
『ゴブリンの集落を滅ぼしてほしい。
危険度D
レルルの森でゴブリンの集落を見つけた。
規模はそこそこ。
報酬は1000リル。』
何だこれは…。分からない所が4つぐらいある。
ゴブリンってのはあれか、ゲームで見た緑色の人型生物だろうか。
危険度Dとはどのくらいだろう。ABCDの順番か?
レルルの森とはどこだ?俺が最初いた森だろうか。
規模はそこそこってなんだよ…アバウトでよく分からん。
全く分からん!こんなの受けられるか!別のやつだ!
『水スライムの討伐。
危険度F
レルルの平原で水スライムがいた。
5〜6匹くらい。
報酬は150リル。』
…水スライム…か。危険度Fで報酬は150リル。ゴブリンより報酬が少ない。ということは簡単な依頼なのか?
危険度はこの感じだとABCDEFの順番かな。
これは候補に入れておこう、次。
『ドロフィスの討伐。
危険度B
アルフ洞穴で発見。
調査達を派遣したところ8人の死者が出た。
ドロフィスは火属性の模様。
報酬は10800リル。』
あきらかにやばいな。やめておこう。
これ以外にもまだ沢山あるがどれも分からないことだらけで、悩みに悩みぬいた結果水スライムの依頼を受けることした。
なんとなく自分でも出来そうだ。
「受付さん!これやります!」
バァンという音を立てて受付に依頼書を見せる俺。勿論こんなことしたのは俺の身体だ。断じて俺じゃない俺は悪くない。
「……かしこまりました。ご武運を。」
受付は依頼に判子を押して俺に渡す。これで依頼を受けたことになるようだ。
「えへへへ。」
何を嬉しそうにしてるんだか…。
レルルの平原にて。
レルルの平原とは一体なんだと受付に聞いたらこの街の周りにある平原のことらしい。
街を出てすぐとは…中々良い依頼だ。
さて、水スライムを探しながら俺は魔法の練習をする。
受付に土属性とは何か聞いて見たら、
え!?そんな事も知らずに生きてきたんですか!?
みたいな顔をしながら説明してくれた。土属性とは土は勿論のこと石や鉱石を操ったり作ったり出来る属性で、鍛えれば鍛えれるほど自身の筋力と硬度が上がっていく攻守一体のそこそこ珍しい属性らしい。
どうやって出来るのか聞いて見たらまたあの顔になりながらも教えてくれた。
どうやら身体にある魔力を身体の外に出して操れば良いらしいが、魔力をどう操ればいいのか分からなかった。
受付が言うにはコツは中にある力のような物を操ること…というかこれ以外に方法が無いらしい。
だから俺は身体にある力のような物を探し見つけ、今は操る練習をしている。
ちなみにまだ身体の外に出せてない。だそうにもフタがされてるみたいで出せないのである。
水スライムが見つかるまでになんとか出来るようにしたいな。
2時間後。
水スライムを見つけた。8匹ぐらい。
おかしいな、依頼書には5〜6匹だと書いてあったんだが…間違いか?まぁいいか。
水スライム弱そうだからな。高さ30cmほどの水の塊で白い目らしきものがついていてそれが草むらでズリズリと移動したりぴょんぴょん跳ねたりしている。
そんな水スライム達を見つつ俺は右手にハンマー、左手にはナイフを作る。
そう、俺は魔法が使えるようになった。フタを開けるイメージを持てば簡単に出せた。
魔法といっても魔法陣が出てくるとかそういうのはなく、正直魔法っぽく無い。
作ったせいで魔力は結構減ってあと2回出せば無くなりそうだ。割と燃費悪い気がする。
「スライムさーん!こっちだよ〜!!」
俺の声に水スライム達が反応し、ぴょんぴょんと近づいてくる。予想していたがかなり遅い。
「よっ!」
ある程度近づくと一匹の水スライムが俺の顔面めがけて跳んできたので、肉たたきで打ち返す。
いや、打ち返せていない。なぜなら水スライムは肉たたきによってバラバラになってしまったからだ。
残った水スライム達は怯むことなく近づいていき、俺に体当たりを仕掛ける。
「うわわっ!!」
流石にやばいので回避。避けられたことにより空を舞っている一匹の水スライムをナイフで切り裂く。
真っ二つになった水スライムは形を崩し、ただの水になった。
そうやってヒット・アンド・アウェイを繰り返し9匹の水スライムを討伐した。辺りが水浸しである。9匹なのは途中でもう1匹来たからだ。
追加の報酬はあるのだろうか?それは帰ってからのお楽しみと言うことで。
さて帰る前にあれをしなくては…。
俺は手を合わせて目を閉じ3秒間黙祷する。
そして口を動かす。
「魂よ、次の生に幸福があらんことを。」
魂よ、次の生に幸福があらんことを。………あれ?
冒険者協会にて。
「確認しますので少々お待ち下さい。…確認が取れました、報酬の150リルです。」
受付がカメラのような、おそらく魔道具を俺に向けた後お金が入っているだろう袋を出す。
俺は袋を受け取り、そのまま冒険者協会を出て目的も無く歩く。
あの時に意味深な事を言った後、俺はずっとそのことについて考えていた。
なぜあのように言ったのか。前世ではあんなこと言わなかった。
どうしてか思い返してみると水スライムと戦っている時に傍観者のような感覚がなく、自分が肉体を動かしているようだった。
つまり作った性格が独立しかけている、というより俺が作った性格になりかけているということだろうか。
なかなかホラーだが納得出来る気がする。血液や内蔵を移植しただけで性格が変わってしまうというのに、俺は頭のテッペンからつま先の先まで別人のものなのだ。
性格の1つや2つ、変わってもおかしくない。ひょっとしたらこの体の本来の性格かもしれないしな。
……なら大丈夫だな!
それに前世の俺は死んだ。それを今世まで引きずるのおかしいだろう。
前世は終わった。今は前世じゃない。前世の性格は忘れて、今は今世の性格で動こう。
よし、決まったな、この話は終わり。
さて、お金の確認をしようかな。
わたしは袋からお金を取り出す。
それはかなりゴタゴタで綺麗な形をしていなかった。かなり凹んでいるが丸い形をしており、銅色が1枚、銀色が5枚あった。
貰ったのが150リルだから100リルが銅色で10リルが銀色か。
少ない…のか?多分少ないだろうな。これで宿とかは無理そうだ。いけたとしても全部使われそうだな。
うーん…取り敢えず周りの人に宿がどれくらいかかるか聞いておこう。
空がだんだんとオレンジ色に染まり始めたころ、わたしはかなり危機感を感じていた。
宿に泊まるには一番安いとこでも300リル必要で、わたしが今持っているお金じゃ全く足りないのである。
仕方ないので適当な店でご飯を食べて、どこか寝床を見つけよう。
わたしは近くにあった店で一番安い75リルの料理を食べ、どこか寝れそうな場所を探す。
しかしがむしゃらに探しても見つからない。だからどんな場所が望ましいか考えてみた結果、次のように決まった。
1、滅多に人が来ない、居てもバレないところであること。
2、屋内であること。
この2つを条件に寝床を探してしたら、これらの条件にピッタリな物件を見つけた。
それは街はずれにある木造の一軒家でところどころ蜘蛛の巣がある。窓はひどく汚れており中を見ることが出来ない。
扉を開ればとすればギィィッと音がし、床を踏めばギシギシと鳴るこの物件。
そう、これは廃屋、いつできたか分からない古臭い建物だ。
わたしはここに泊まることにした。いろいろと不潔なところだが何をされるか分からん屋外で寝るよりマシだろう。
わたしはホコリだらけの床を息である程度掃除する。ホコリが舞って顔にかかったり、息が苦しくなって思いっきり吸ったらホコリが口の中に入ったりといろいろあったが、わたしは問題無く眠った。
あっと言う間に主人公は前世の自分は終わったと順応します。




