転生
小説投稿始めました。
光。
星雲。
図形。
どう表現するべきか、悩みに悩みぬいた結果こう表現した。
そんな何かが、目の前にいる。
自分はただそれを見ていた。
自分がそこにいる感覚が無く、浮遊感がある。
自分はどうなった?
なぜこうなっている?
何も分からないまま、目の前が見えなくなった。
さらに、浮遊感も消える。
浮かばなくなったせいか、落下する。
だが恐怖は無かった。
なぜなら自分の肉体が出来ていくという感覚があった。
そして理解した。
今、
自分は、
転生している。
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俺はチュンチュンという鳥の鳴き声で目が覚める。
目に入ってくる情報は葉っぱ、沢山の葉っぱ。
後は葉と葉の間から光が漏れていることぐらいだ。
俺は上半身を起き上がらせ、周りを確認する。
木、葉っぱ、木、木、葉っぱ、葉っぱ、葉っぱ、実。
どうやらここは森の中らしい。
………いやここどこだよ。
たしか俺はコンビニに酒とスルメを買いに行っていたはず…。なぜ森の中にいるんだ?
その疑問に答えるべく、脳を必死に動かした。そして3つの仮説が出来た。
1、何者かによって攫われた。
2、酒で酔っ払って変なとこで寝てしまった。
3、転生した。
1は正直考えづらい。だって俺は屠畜場のおっさんだったからだ。自分で言うのも何なんだがすごい肉体を持っていた。
つまりごっついおっさんだ。攫う価値が無い…と思う。
2はそこそこ現実的だ。でも俺は酒に強いほうだし、あまり強いのは飲まない上多く飲んだりしない。
コンビニで買った酒も多く買ったわけじゃないし、そんな訳のわからない所に行くぐらいベロベロにならない。
3はなぜか思いついた。そして理由は分からないがこれだという確信がある。
でも転生なんて非現実的だ。起こるわけがないとは言わないが、ありえない。
そもそも転生したというなら何故記憶が残っているんだ?別の身体になっているんだから、記憶は前の体に置き去りにされているはずだ。
それに自分の身体だって前と変わっていない。
そう思い、自分に説明するかのように下を向き身体を映す。
そこにはほんのりと膨らんだ胸が映っていた。
一瞬脳が停止し、確認のためそれを掴もうとする。下から現れた自分の手はとても綺麗で、細かった。
また停止しかけるが、その手を操り胸を掴む。
…柔らかい。少々掴みづらいが、たしかにそこに、存在している。
「……え?」
見慣れぬ身体に疑問の声を上げる。その声はいつものゴツいおっさんのものでは無く、可憐な少女の声であった。
「え?…え!?」
なんだこの身体は!?いつもの身体はどこいった!?この指は!?この腕は!?この足は!?この太ももは!?
そして何処に行った我が息子よ!?
「はああああああああああああああ!?」
俺は森中に響くほどの声量で叫んだ。
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今までの人生の中で最大の声を出したあと、俺は転生説を信じる事にした。
身体が何もかも変わっていたからだ。腕の太さ、脚の太さ、身体のバランス、髪の量と質。そして身長と体重。
腕はポキリと折れてしまいそうなほど細かった。
脚は長くスラっとしていて、綺麗な形をしていた。
髪は黒く、長く、腰ぐらいあり、とてもサラサラしている。
身長は大きく減った。190センチはあった身長がだいたい160センチいくか位になっている。
体重もどうやら減っているようで、身体がとても軽く感じた。
顔は自分では確認できないが変わっていることだろう。というかこの身体で変わってなかったら気持ち悪いだろう。
急に不安になってきたので、顔を触ってなんとなく確かめて変わっている事を確認する。
良かった。変わっていなければどうしようかと思っていたが杞憂だったようだ。
そして、身体を調査している間にとんでもない事実が判明した。
俺服着てねぇ。
うんメッチャ恥ずかしい。気づくのが遅いように思えるが、性別が変わっていたことでそこらへんに気が付かなかった。
幸いにも今は暖かいので恥ずかしい以外は何も問題は無い。
もし今が冬だったら凍え死んでたんじゃないか?
そう思うと転生したタイミングが良かったことに感謝せねば。
…さて、感謝は終わったところだしこれから何をするべきか考えよう。
今の自分はか弱い少女。出来る事は限られるだろう。
人のいるところを探すか?
自分が人からどれだけ離れた場所にいるのか分からない以上、食料をどうするだとか水はどうするだとか色々心配がある。
この森で暮らすか?
俺にサバイバルの知識なんてほとんど無い。そんな奴が暮らす事なんて出来るのだろうか?
次の転生に期待するか?
諦めるには早すぎる。まだ案があるはずだ。
どうするべきか…この選択は今世を左右するほどのものになるだろう。
……よし、決めた。人を探そう。
そうと決まれば出発だ。荷物は何もないのですぐに行動できるな。
どちらに進もうか…。ここは木の枝に決めてもらおう。
俺は適当に落ちている枝を拾い、地面と垂直になるように立て、離した。
俺から開放された枝は俺に反撃を決意したようで、俺に向かって倒れてきたので軽く避ける。
進むべき方向は決まった。
俺は枝が指し示した向きへと歩き出した。
木を避け、根を越え、つたをどけ、おいさおいさと進んでいく。
体感で1時間ほどたったとき、ガサッと前で音がした。
一体何だと警戒して木に隠れ、そこからチラッとのぞき見る。
待っていると草の中から目が赤く、体毛が異常に黒いウサギがあらわれた。
…ウサギに詳しくないけどあんなに黒いウサギっているのか?墨汁ぐらい黒いぞ。
その異様なウサギに危険を感じ、ここにいることがバレないように願う。
しかし願いは届かなかったのか、黒いウサギは俺の方を向き、移動してくる。
バレたか!?そんな考えがよぎり、ウサギ相手だというのに心臓がバクバクする。
ササッ…そんな音が、だんだんと大きくなっていく。
そしてあと少しの所で止まり、引き返していった。
「ッぷはぁ!はぁ…はぁ…。」
無意識に止めていた息が待ってましたと飛び出る。
緊張が抜け、その場に座ったが草がくすぐったかったのですぐに立った。
「はぁ。なんだよあのウサギ…。」
あんなのがこの森にいるのか…。
もしあんなのがウジャウジャいたら、正直言って身体が持たない。
早く人を見つけて安全を確保しなければ。
そう思い足を進める。さっきより周りを警戒しながら。
そして体感で2時間ほど経った時、耳に水の流れる音が聞こえた。ちょうど良かった、喉が渇いていたんだ。
綺麗な水が飲めること期待しながら水の音がした方へと歩く。
その先には期待通りの綺麗な水が穏やかに流れていた。
その水を飲もうと近寄るが、ここであることを思い出す。
野生では、水があるところには沢山の動物が集まるということを。
すぐに周りを確認する。見た限りでは自分以外動物はいないようだ。
ほっと俺は息を吐き、手で水をすくいそれを口に流し込む。
…水が美味しいと感じたのは初めてかもしれない。
俺は一杯だけでは飽き足らず、二杯三杯と口にする。
自然の水というものを堪能したあと、俺は川から離れ人探しを再開したが結局人が見つかる事は無く、森が暗闇に包まれ始めた。
まずい、夜の森はまずい。
木の葉せいで光が遮られてしまうため、森はクローゼットの中のように真っ暗になってしまうのだ。
そんな中では動くことはできない。火があれば良かったかもしれないが俺は効率の良い火の付け方を知らない。
枝をこすりつけて火をつける方法は知っているが、それじゃ半日近くはかかるだろう。
今からやれば夜が明けてしまう。
ならどうするか。寝床を作るしかないだろう。
この森が完全に暗闇に包まれてしまう前に、出来る限り安全な寝床を作らなければならない。
…よし、やってやる。安全な寝床を作ってやる!
そう俺は意気込み、作るのにいい場所はないか森の中を探し始めた。
そして見つけた。
そこは木の上の枝がいい感じに分かれたところだ。
その形は手のひらのようで、試しに寝転んでみたが非常に心地よかった。
周りには獣道や動物のフン、足跡も無かったので寝てる間に死んでいたという可能性は低いだろう。
安全でしかも寝心地がいいときた。ここで眠るしかない。
そう決め俺は木の手のひらで目を閉じた。
続くぜきっと。




