6.桂子・菫vs彩・絵美子
ある日、長男の彩君が彼女を連れてやって来ました。「えっ? 彼女って?」そう思われる方もいるかもしれませんね。実は彩君、色々と事情があるらしく、沙希さんとは離婚して家を出ていたんです。沙希さんと空君はそれを機に実家の方へ戻ってしまいました。その彩君が彼女を連れてきました。まだ、菫ちゃんが出産する前のことです。
「私は反対だよ」
開口一番、菫ちゃんが言いました。
「私もまだ許すわけにはいかないかな」
桂子さんもそう言います。これには彩君が沙希さんと離婚した原因が大きくかかわっているみたいです。
「もう、ちゃんとしているから。仕事もうまくいっているし」
「今までのことを考えると、信用できないよ」
桂子さんの口調が荒くなる。
「本当に今はちゃんとしているんです」
彼女が助け舟を出します。
「あなたは本当にこいつでいいの? こんなのを貰ってくれるのなら、こっちは有り難いんだけど。後から後悔しても知らないからね」
「はい。大丈夫です。二人で協力してちゃんとやっていきます」
彼女の覚悟を知って桂子さんも少し態度を軟化させたようです。
「あなたがそこまで覚悟を決めているのなら、後は二人の問題だし、まあ、別に反対している言わけではないんだから」
彩君は少しほっとしたようです。
「一応、絵美子は初婚だし、向こうの家族にも花嫁姿を見せてあげたいから、身内だけで式を挙げたいと思ってる」
彼女は絵美子さんという名前なんですね。
「うちは金銭的な協力は出来ないからね」
「大丈夫。安くできるところを色々探しているから」
「それでいつ頃やりたいの?」
「私は早くやりたいです」
絵美子さんはそう言います。
「早くと言っても、菫が出産を控えているから、それ以降じゃないとね」
どうやら桂子さんも二人の結婚を許すようです。それからは結婚生活について桂子さんの長い話が始まりました。話すだけ話すと、桂子さんは出掛けてしまいました。
「まあ、そういうことだ。上手くやってくれ」
桂子さんが居なくなってしまったので、今まで黙っていた大輔さんがそう言って、その場を取り繕っていました。