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2.ジョジョとディオ

 引っ越しの日取りが決まると、娘が相談を持ち掛けて来た。

「今の部屋なんだけど、引っ越したら壁紙を貼り替えなきゃなんないんだけど…」

「そりゃ当然だろうな」

「それで…そっちも忖度できるかな?」

「そんなに忖度を安売りするな」

「やっぱり、そっちまでは無理か…」

「いいよ」

「本当?」

「ついでだ」

 そう言って父親は別の業者に話を持ち掛けた。


「実は娘が結婚してな…」

「そりゃ、めでたいじゃないですか! 是非やらせてください」

 こういう時に父親はつくづく思う。これまで真面目にやってきてよかったと。


 父親は娘と業者を連れて大家と打ち合わせをする。次に貸すのにオプションで色々追加工事を頼まれた。それはもちろん大家がお金を出すのだけれど、その大家というのは旦那の母親だった。こちらも業者が“忖度”で安く請け負ってくれた。こうして無事に引っ越しも終わり、双方のリフォームも完了した。旦那の母親も安くきれいに仕上げてもらって喜んでいた。


 さて、こうして家族が増えたわけなのだけれど、一つ心配の種がある。連れてきた二匹の猫だ。別に猫が嫌いだというわけではなくて、どちらかと言えば、娘の母親もその両親も猫は大好きだ。ゆえに既に買っている猫が一匹いるのだ。縄張り意識ではないのだけれど、古株の猫が新参者と馴染めるか…。

 三階建ての住宅で、娘たちの部屋は三階にある。連れてきた二匹の猫は三階のその部屋で飼われることになる。空き部屋だった三階のその部屋は古株の猫のテリトリーでもある。ただ、ドアさえ閉めていれば絡むことはないのだけれど、好奇心旺盛な猫は一部屋にじっとはしていない。ある日、新参者の猫…オスとメスが一匹ずつなのだけれど…のオスの方が開けっ放しのドアから二階へ降りて来た。そこで古株の猫とご対面。二匹の猫は対峙したままピクリともしない。やがて恐る恐る新参者のオス猫が一歩足を踏み出す。古株の猫は怯んで物陰に隠れた。

「あら、ジョジョ、来たの? こっちはパルだよ。パル、ジョジョと仲良くしてね」

 娘がそう言い聞かせる。その場にいた父親も面白そうに二匹の猫がどうするのかを見ている。ジョジョはパルも父親もお構いなしといった具合で初めての部屋を探検して回る。パルはじっとその様子を物陰から見ているだけ。そして、ジョジョの後を追うようにもう一匹。

「ディオも来たのね」

 メス猫の方は父親と目が合うとじっと見ている。やがて父親が座っていた椅子から立ち上がると一目散に三階へ駆けあがって行った。どうやらディオの方は人見知りのようだ。




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